第23話 開幕第2戦(1)
開幕2戦目
スチュワートが昨日の自打球のため、
大事を取ってベンチ外に。
スターティングメンバー
1番 サード 米丸慎也 背番号60
2番 セカンド 平山明彦 背番号0
3番 レフト 西橋賢介 背番号8
4番 DH ゲイリー 背番号42
5番 キャッチャー 後藤紀之 背番号33
6番 ショート 若狭大将 背番号7
7番 ファースト 小芦純 背番号35
8番 ライト 恵良 和幸 背番号68
9番 センター 鎌倉大斗 背番号57
先発 香川 素弘 背番号22
背番号68の恵良和幸が、目を見開いてビシッと背筋を伸ばした。
育成選手として入団して4年目でついに獲得した
支配下登録の座。
そして、1軍登録された韋駄天が、いきなり「8番・ライト」でスタメンに抜擢されたのだ。
「恵良、お前の一番の武器は50m5秒5の足だ。打席でも塁に出ても、守備でも、その足で相手に圧をかけまくれ!」
「任せてください! 出塁したら即、盗塁狙います!」
そして、俺はマウンドへ向かう準備をしている32歳のベテラン・香川素弘の元へ歩み寄った。
「香川、任せたぞ」
「はい、監督。……僕がプロ12年目で、開幕2戦目の先発を任されるなんて、3年前には想像もしてませんでしたよ」
香川はグローブを愛おしそうになでながら、しみじみと呟いた。
3年前にトレードでこのチームにやってきた時、香川は「中継ぎの敗戦処理・便利屋」としてのキャリアしか持っていなかった。
転機は昨年後半、守護神の中村翔平の不調により川井が抑えへ転向した際、空いた先発枠に香川を抜擢したことだった。
そこで香川は見事な投球術と抜群のスタミナを発揮。敗戦こそ先行したものの、3完投を叩き出して「先発適性」を証明してみせたのだ。
「昨日の今井の見事なピッチングを見て、胸が熱くなりました。中継ぎで培った度胸と、去年掴んだ完投の感覚……全部ぶつけてきます!」
「ああ! 1年間ローテを守り抜く最初の1ページ、最高のピッチングを見せてこい!」
「「「おおっ!!!」」」
開幕戦の勝利で勢いに乗るクリッパーズ。
超・機動力打線と、ベテラン右腕・香川を立てて、開幕カード連勝を狙う第2戦が幕を開けた。
1回表
三者凡退で終わった。
1回裏
マウンドに上がった香川素弘は、立ち上がりから圧巻の省エネピッチングを見せた。
最速こそ144km/h程度だが、ストレートも変化球もすべてのボールに絶妙なシュート回転がかかっている。打者の手元でキュッと微妙に芯を外すボールに、相手打線はことごとく内野ゴロの山。
奪三振はゼロながら、1回・2回をなんとわずか13球で完璧な三者凡退!
「素晴らしいな香川……! 打者の手元で全部ボールが生き物みたいに動いてるぞ」
「ハハッ、中継ぎで培った生き残り術ですよ、監督」
ベンチに戻ってきた香川が、汗もほとんどかかずに爽やかに笑う。
3回表
クリッパーズ自慢の機動力が爆発する。
先頭の7番・小芦が右中間を破る二塁打で出塁すると、続く8番・恵良和幸が打席へ。
「恵良、初球から足使っていけ!」
恵良は相手サードの前に絶妙なセーフティバント
恵良の爆風のような走りに、相手サードは一塁へ送球すらできず、内野安打で無死1・3塁
さらに恵良はすかさず初球から2塁へ走り、無死2・3塁へとチャンスを広げる。
「鎌倉、最低限でいいぞ!」
9番・鎌倉がきっちりライトへ犠牲フライを打ち上げ、小芦が生還して1点先制
続く1番・米丸が四球を選んで1死1・2塁となると、ベンチの俺は即座にサインを出した。
「米丸、恵良! 行くぞ!」
投手が始動すると同時に、1塁走者の米丸と2塁走者の恵良が同時にスタート! 相手バッテリーの意突くダブルスチールが見事に成功し、1死2・3塁!
ここで2番・平山がライトの深い位置へ大きなフライを打ち上げた。
3塁走者の恵良が悠々とタッチアップでホームインして2点目。
そして、2塁走者の米丸も三塁を蹴って一気にホームへ爆走!
——バシッ……アウトッ!
ライトからの好返球で、本塁は間一髪でタッチアウトの判定。
「タイム!リクエストだ!」
俺はベンチを飛び出し、審判に大きな長方形を描いてアピールした。
モニターで検証画像が球場の大画面に映し出される。
米丸の左足が、相手キャッチャーのミットが触れるよりもコンマ数秒早くホームベースの角を掠めていた。
『検証の結果、判定を覆しセーフとします!』
「よっしゃあああ!!」
ベンチは大歓声! 2塁からの暴走とも言える超走塁で判定をひっくり返し、3点目をもぎ取った。
続く西橋はショートゴロに倒れたものの、足を絡めた強烈な攻撃で試合の主導権を完全に握る。
3回裏
この回も香川は老獪なピッチングで
下位打線を危なげなく封じ込める。




