第22話 開幕戦(3)
6回表
平山がセカンドゴロの後、1番・米丸がセンター前ヒットで出塁!
すぐさま盗塁を仕掛けた米丸だったが、相手キャッチャーの好送球に阻まれタッチアウト
続く若狭の右中間へのライナーも、相手ライトの決死のダイビングキャッチに阻まれ、ツキにも見放されて無得点。
6回裏
ここまで快投を続けていたエース今井の制球が突如乱れ、連続四球で無死1・2塁のピンチ。
そこからタイムリーを浴びて2点を失う。
その後、今井は気合で2死までこぎつけたものの、相手の粘りに屈して再びタイムリーを浴び、
5-3と2点差まで詰め寄られてしまう。
最後は渾身のストレートで三振を奪い勝ち越しこそ許さなかったが、今井はガッツポーズもなく悔しそうに顔を歪めてベンチへ戻ってきた。
「すみません監督……」
「気にすんな今井!6回3失点、リードを保ったままマウンドを守り切ったんだ。エースとして十分な仕事だぞ!」
俺は今井の肩を叩いた。
7回表
西橋、ゲイリーが内野ゴロに倒れた後、スチュワートの代わりに途中出場した5番・大広が意地のヒットを放つも、
小芦がセンターフライに倒れ無得点。
5-3のまま試合は終盤の7回裏へ。
「よし、ここから継投に入るぞ! 堀之内、行くぞ!」
「はいっ!」
7回裏
マウンドに送ったのは、ドラ5ルーキーサウスポーの堀之内由伸。
相手の打順は左打者が続く場面。堀之内はルーキーらしからぬ度胸で内閣を突き、見事に左打者2人を連続アウト!
「ナイスピッチング堀之内!満点だ!」
ここで俺はすぐさまベンチを動き、ピッチャーをモーガン・レイノルズへ交代。
「ヘイヘイ! 健二さん、俺に任せときな!」
グラウンドへ走っていくモーガン。
モーガンは独特のクセ球で相手打者を詰まらせ、打球は力ないサードゴロ!
無難に打ち取り、7回裏の攻撃をゼロで抑え切った。
8回表
相手は4人目のピッチャーをマウンドへ送ってきた。
その変わりばな、初球。
7番捕手の後藤紀之が快音を響かせる!
——バコォォォンッ!!
「行ったぞ! 打った後藤本人もビックリしてる!」
手ごたえ十分のレフトスタンドへのダメ押しソロホームラン!
リードを3点に広げると、ルーキー平山がサードへの内野安打で出塁し、米丸のショートゴロの間に進塁。
続く若狭もヒットを放ち1・3塁のチャンスを作ったが、西橋がファウルフライに倒れてこの回は1点止まり。
8回裏
サウスポーのベニー・エルナンデスが登板。
ヒット1本を許したものの、低めに集めるピッチングでゼロに抑え、試合は最終回へ。
9回表
主砲の勢いは止まらなかった。
先頭打者の4番・ゲイリーが、相手投手の甘い変化球を一閃!
——ガキィィィンッッ!!
打球は快音とともにまたしてもバックスクリーン横へ飛び込む本日2本目のソロホームラン!
「ゲイリー凄すぎるだろ! 」
「開幕戦から大暴れだな!」
後続の大広、小芦、後藤は凡退したものの、これでスコアは7-3。リードは4点へと広がる。
9回裏
ベンチ裏で、投手コーチが俺の顔を見て苦笑いを浮かべた。
「健二さん……4点差です。セーブがつかないシチュエーションになっちゃいました」
「だな。守護神の川井を出すのはもったいない。……よし、前田、準備だ!」
「はいっ! 締めてきます!」
ベテランの前田希がマウンドへ。
前田はさすがの投球術でテンポよく打ち取り、あっという間にツーアウトを奪う。
あと一人で勝利という場面で、俺は審球団へ歩み寄り、球場に告げた。
「ピッチャー、前田に代わりまして……『ピッチャー、上平』!」
球場アナウンスが響き渡る。
敵地にもかかわらず、スタンドからは
「えええっ!?」
「ここで監督が出てくるのかよ!」という歓声と、どよめき、そしてクスクスとした苦笑いが混ざり合った大歓声が湧き起こった!
「ヘイ!健二さん!頼むよー!」
ベンチからモーガンが爆笑しながら声を張り上げ、守備陣の米丸や平山がニヤニヤしながらマウンドの俺を囲む。
「監督、あと一人っす! 気持ちよく決めてください!」
「おう! チャッチャと終わらせて帰るぞ!」
ロージンバッグの粉を手に叩きつけ、俺は打者と対峙した。
……だが、現実は甘くない。
気合が入りすぎたのか、1人目の打者に三遊間を抜かれるヒット。さらに続く打者にもライト前へ運ばれ、2死1・2塁のピンチ!
「おいおい兼任監督!劇場開幕かよ!」
相手スタンドから容赦ないヤジが飛ぶ中、キャッチャーの後藤がマウンドへ駆け寄ってきた。
「監督、力んでますよ! 低めに集めて打たせていきましょう!」
「すまん後藤、つい色気が出た。打たせて取るぞ!」
ふっと肩の力が抜けた。
3人目の打者に対し、内角低めへシュートを投げ込む!
——ポコーンッ……
打球は力なくキャッチャー頭上へ上がるフライ!
後藤ががっちりとミットに収め、ゲームセット!!
「シャアッ! 勝ったぞー!!」
マウンドへ選手たちが駆け寄り、
俺の背中をバシバシと叩く。
1回表の米丸の超特大三塁打から始まり、ゲイリーの2本塁打、スチュワートと後藤の一発と、終わってみれば先発全員安打を記録。
投手も今井の力投、そして最後は兼任監督の冷や汗混じりの『リリーフ俺』。
評論家たちの低評価をあざ笑うかのような、開幕戦勝利!
「監督! 最高のアピール勝利ですね!」
「ハハッ、最後はヒヤヒヤさせたけどな!でもこれで弾みがついた。明日の香川、明後日の竹井で、敵地開幕カード勝ち越し……いや、3連勝狙うぞ!」
波乱と歓喜に満ちた最高のロケットスタートがここに切られた。




