第18話 オープン戦初戦(3)
6回表
2年目の山下友和がマウンドへ。
直球で押し込む強気のピッチングで
危なげなく相手打線を3者凡退に退ける。
7回表
来日2年目の助っ人サウスポー、ベニー・エルナンデスが登板。
独特の変速フォームから繰り出されるスライダーとチェンジアップで凡打の山を築き、こちらも完璧な1イニングを見せた。
打線の方は相手の継投陣に阻まれ追加点こそ奪えないものの、試合の主導権は完全にクリッパーズが握っている。
8回表
俺は一気に守備陣を動かした。
キャッチャーの後藤を下げて、若手の湯浅孝介を扇の要へ。
サードの米丸を下げ、ファーストを守っていた平山をサードへ回し、ファーストには廣中栄介を投入。
さらにライトの遠藤に代えて大広豊をライトの守備に就かせた。
「湯浅、前田さんとモーガンをうまくリードしろよ!」
「はいっ! 任せてください!」
マウンドにはプロ18年目のベテラン右腕・前田希
そして今年から日本人枠となった超タフネス右腕・モーガン・レイノルズが立て続けに登板。
湯浅の落ち着いたインサイドワークと、前田の動く打球、モーガンの唸りを上げる直球が見事に噛み合い、相手打線を三者凡退に打ち取ってみせた。
8回裏
先頭の大広、続く3番の西橋が、相手投手の投球を捉えきれず連続でキャッチャー寄りのファウルフライに倒れ、2アウトランナーなしとなった。
ここで打席が回ってきたのは、4番DHのゲイリー。
俺はベンチ裏でヘルメットをかぶり、グリップに滑り止めスプレーを吹きかけた。
「ゲイリー、ちょっと代われ」
「オー、カミヒラサン!? イクノ!?」
ゲイリーが驚いたように目を丸くし、ベンチ全体が「えっ!?」とざわめく。
俺はベンチ前へ歩み出ると、主審に向かって右手を高く掲げた。
「代打、俺!」
アナウンスが球場内に響き渡ると、スタンドからドッと大きな歓声とどよめきが巻き起こった。
選手兼任監督・上平健二の今季オープン戦初打席だ。
ネクストバッターズサークルからバッターボックスへ向かい、右打席に入る。
——初球、142kmの内角直球!
「ふんッ!!」
気合十分で振り抜いたスイング!
……だったのだが、臀筋を意識しすぎたか、見事に詰まらせてしまい打球は力なくピッチャーの足元へ。
——ピッチャーゴロ(ファーストへ送球されてアウト)。
「あーっ……ダメかぁ!」
一塁へ走り込みながら苦笑い。ベンチへ戻ると、ガタさんが腹を抱えて笑っていた。
汗を拭いながら兜を脱ぐ俺に、選手たちからも温かい拍手と冷やかしが飛んだ。
9回表
5-0のまま迎えた最終回。
マウンドに上がったのは、今期のクリッパーズの守護神として指名した2年目サウスポー・川井元。
「川井、最後ビシッと締めてこい!」
「はい、監督! 行っきます!」
背番号『20』がマウンド上で深々と一礼し、ロージンバッグを叩く。
ここからの川井のピッチングは、まさに「圧巻」の一言だった。
手元で鋭く曲がり落ちる独特の球筋から、最速150km超のストレートとキレ味抜群の変化球を次々と投げ込む。相手打者はバットの掠り傷ひとつつけられない。
1人目:外角低めの直球で見逃し三振!
2人目:落差のある変化球で空振り三振!
3人目:最後は渾身のエースボールで空振り三振!
圧巻の三者連続三振でゲームセット!
【 クリッパーズ 5 - 0 で勝利 】
「よしッ! ナイスゲーム!」
ベンチから選手たちが一斉に飛び出し、マウンド上の川井とハイタッチを交わす。
機動力と一発で奪った5点。
今井の快投から始まり、満塁を凌いだ中村、そして圧巻の締めを見せた川井までの完封リレー。
「ガタさん、最高の初戦になりましたね」
「ああ! 若手もベテランも新戦力も、全員が最高の動きをしてくれた。今年のライマルクリッパーズ、マジで面白いチームになるぞ!」
沖縄の青空の下、上平兼任監督率いる新生クリッパーズのオープン戦初戦は、これ以上ない「完封勝利」で幕を閉じたのだった。




