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兼任監督  作者: けろ


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11/43

第11話 対外試合(1)

キャンプ3日目にして、早くも訪れた実戦の機会。

沖縄の眩しい日差しが照りつけるグラウンドで、両チームのスターティングメンバーが発表される場内アナウンスに、スタンドのファンと集まった報道陣がどっとどよめいた。


1番 サード 米丸慎也 背番号60

2番 セカンド 平山明彦 背番号0

3番 レフト 西橋賢介 背番号8

4番 DH ゲイリー 背番号42

5番 ファースト 小芦純 背番号35

6番 ショート 若狭大将 背番号7

7番 キャッチャー 中北元貴 背番号5

8番 センター 鎌倉大斗 背番号57

9番 ライト 上平健二 背番号39


「おいおいマジかよ!」

「監督が初戦から自分でライト守るのか!?」

「職権乱用だ!」

なんてスタンドから冷やかし混じりの声が飛んでくる。

俺はベンチの前でニヤリと笑い、背番号『39』の右袖をまくり上げた。

乱用と言われようが何と言われようが関係ない。俺は今年「選手」でもあるんだ。自分の目でグラウンドの景色を確かめ、チームの初陣に自ら立つ。これ以上の「所信表明」はないだろう。


「おい健二、本当に9番ライトで出るのかよ。ベンチから采配振る方が楽だぞ?」

「ガタさん、俺がライトから内野の動きを見ることで分かることもあるんですよ。それに、打席に立って相手投手の球筋を体感しとかないと」

「へっ、相変わらず欲張りな男だ。いいか、お前がライトの守備でポロリなんてしてみろ、俺が容赦なく即交代告げてベンチに下げてやるからな」

「勘弁してくださいよ(笑)」


ベンチからはガタさんが指揮を補佐し、グラウンドの中からは俺が声を出す。

プレーボールのサイレンが、沖縄の青空に響き渡る。

「よーし、みんな! 声出していこうぜ! 泥臭く一勝獲りに行くぞ!!」

「「「オーーーッ!!!」」」

世間のバッシングも、新生ライマルクリッパーズへの不安も、すべてこの白球とともに吹き飛ばしてやる。


先発のマウンドに上がったのは、

背番号『85』——モーガン・レイノルズ(31)

今年で来日10年目を迎える助っ人……いや、今シーズンからは外国人枠から外れ、名実ともに『日本人選手扱い』となるタフネス右腕だ。

9年連続で50試合以上に登板し、チームの火の車のような投手陣を陰で支え続けてきた。

実は昨オフ、俺が球団から戦力外通告を受けたというニュースが駆け巡った際、モーガンは

「健二さんがいなくなるなら、ボクもこのチームを辞めます!」と本気で退団しようとしていた。

俺の突然の監督就任によって急転直下で残留を決めてくれたのだが……とにかく俺への懐き方が凄まじい男なのだ。

そんなモーガンのこだわりが、「その年の最初の対外試合で、誰も踏み荒らしていない真っ新なマウンドに立つこと」。

普段は中継ぎ専門の彼だが、この1年を無事に走り抜くための「縁起担ぎのルーティン」として、毎年キャンプ初戦の先発を務めている。

プレイボール直前、ロジンバッグを手に取ったモーガンが、ライトを守る俺の方を振り向き、爽やかな笑顔で手を振ってきた。

「健二さん! 今年も1年がんばりましょう!」

彼の日本語はペラペラで発音も完璧だ。外国人にありがちなカタカナ交じりではなく、普通に平仮名と漢字で脳内再生されるレベルである。

「おう! 頼むぞモーガン! いつも通りテンポよくな!」

俺がライトから声を張ると、モーガンは満足そうに頷き、今度はセンターを守るルーキーの鎌倉に向かって叫んだ。

「鎌倉くん! 健二さんのまわりもカバーしてあげてね!」

「あ、はいっ! 任せてくださいモーガンさん!」

「おいモーガン! 監督扱いかロートル扱いかどっちかにしろ!」

俺がツッコミを入れると、ベンチでガタさんが腹を抱えて笑っているのが見えた。

——ビシッ!!!

148キロのキレのあるストレートが、正捕手・中北のミットを気持ちよく叩く。

相手バッターは手が出ない。

「ナイスボール! モーガン!」

「いいぞー! 日本人枠!」

スタンドから温かい声援が飛ぶ。

外国人として来日し、9年間この泥臭いチームで投げ続け、ついに「日本人」としての資格を得た男。そして、45歳の俺を慕って今シーズンも一緒に戦ってくれる男。

初回、モーガンは打者3人をわずか6球、

全球ストレートで打ち取ってみせた。

サードフライ、ピッチャーゴロ、空振り三振。

本当に俺の守るライトへは1球も飛んでこなかった。

「健二さん! 宣言通り、ライトには飛ばさせませんでしたよ!」

ベンチへ戻ってくるモーガンが、少年のような笑顔でハイタッチを求めてくる。

「ハハ、サンキュー、モーガン。完璧な立ち上がりだったぞ!」

バシッと力強いハイタッチを交わす。

緑と黄色のユニフォームを着た俺たちの、記念すべき1イニング目が、最高の形で刻まれた。

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