表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第二部 聖王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/91

第89話 神託のパターン解析

 リシュンは、机いっぱいに資料を広げると、まるで宝の地図でも見つけたかのような顔になった。


「いやー、これは面白いな」


「いきなりか」


 ユージが苦笑する。


「面白いぞこれ」


 リシュンは紙を何枚か抜き出した。


「神託っていうから、もっとこう……」


「意味不明な詩とか、抽象的な言葉ばっかりかと思ってたんだが」


「意外と具体的だ」


 アルノルトも頷く。


「社会的な指針として機能しています」


「政策助言に近い内容も見受けられます」


 ナーチャンが補足する。


「たとえばこちら」


 一枚の文書を示す。


「干ばつが続いた年の神託」


「“分かち合い、備えよ”」


「その後、穀物の備蓄政策が進められています」


「こちらは国境紛争の前」


「“秩序を守り、内を整えよ”」


「軍備の再編が行われています」


 ユージは腕を組んだ。


「普通に有能だな」


「はい」


 ナーチャンは淡々と答える。


「内容自体は合理的です」


 リシュンが身を乗り出す。


「注目すべきはそこじゃない」


「時期だ」


「全部」


「タイミングが良すぎる」


 アルノルトが紙に印を付ける。


「状況変化の直前」


「あるいは初期段階で提示されています」


「後出しではない」


「予測してるってことか?」


「可能性は高い」


 アルノルトは静かに言った。


「社会状況の分析」


「リスク評価」


「最適行動の提示」


「構造としては、意思決定支援モデルに近い」


「それって」


 ユージが言う。


「ナーチャンと同じことやってるってことか?」


「概念的には近似します」


 ナーチャンが答える。


「ただし」


「こちらは“神の言葉”として提示されている」


「検証不能な形で」


 リシュンが笑う。


「ブラックボックスってやつだな」


「中身が分からないから、ありがたく見える」


「ありがたみ大事だろ」


「ブランド戦略としては優秀だ」


 アルノルトが冷静に言う。


「信頼性の担保を権威に依存している」


「再現性は不要」


 リコが少し不安そうに口を開いた。


「つまり……」


「あの子がやってることって」


「間違ってるわけじゃないの?」


 少し沈黙が落ちた。


 ユージが答える。


「間違いってわけじゃないだろ」


「問題は」


「それを誰が決めてるか、だ」


 リシュンが頷く。


「そういうことだな」


「神様が言ってるなら仕方ないって空気になる」


「でも」


 紙を軽く叩く。


「中身が人間の判断なら」


「話は別だ」


 アルノルトが言った。


「意思決定主体の透明性の問題です」


「検証可能性が存在しない」


 ナーチャンが補足する。


「判断過程が不明な場合」


「誤りがあっても修正されません」


「神の意思ですから」


 ユージが小さく息をつく。


「便利だけどな」


「責任取らなくていいし」


「楽ではあります」


 ナーチャンが同意した。


「ですが」


「選択の主体が存在しません」


 リシュンが笑う。


「要するに」


「人間が考えるのサボれる仕組みだな」


 ユージがぽつりと言う。


「楽だけどな」


「それじゃ生きてるって感じがしなくないか?」


 少しだけ静かになった。


 リコがその言葉を噛みしめるように頷く。


 アルノルトが資料をまとめながら言った。


「仮説ですが」


「神託は完全な不可知ではありません」


「十分なデータがあれば」


「近似モデルを構築できる可能性があります」


 リシュンが口角を上げる。


「再現」


「できるかもしれないな」


 ユージが笑う。


「神様の真似事か」


「怒られないか?」


「神様が本当にいるならな」


 リシュンは肩をすくめた。


「だが」


 紙を整える。


「やる価値はある」


 ナーチャンが頷く。


「必要データの収集を開始します」


「よし」


 ユージが立ち上がった。


「方向は見えたな」


 まだ答えは出ていない。


 だが。


 少なくとも。


 神託は、触れられないものではなさそうだった。


 整いすぎた国の正しさに。


 小さな仮説が、差し込もうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ