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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第四部 環境対策編

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第203話 救助活動開始

その時だった。


『聖王国の民たちよ』


広場に。


若い女の声が響いた。


「ん?」


ユージが。


顔を上げる。


少し離れた場所に。


簡素な壇が設けられていた。


そこに立つ。


一人の少女。


聖王国の。


新しい巫女だった。


『神の言葉を』


『お伝えします』


人々が。


一瞬だけ。


手を止める。


そして。


巫女の背後。


何もなかった空間に。


淡い光が浮かび上がった。


そこに。


神託の言葉が。


巨大な文字となって。


映し出されていく。


遠くからでも。


はっきりと見える。


『今なお』


『助けを待つ者がいます』


『動ける者は』


『救助へ向かいなさい』


『互いに手を取り』


『一人でも多くの命を』


『救いなさい』


「…………」


ユージは。


それを。


じっと見つめた。


見覚えがある。


ものすごく。


見覚えがある。


「おい」


ユージが。


隣にいたリシュンの肩を叩く。


「なんだ?」


「あれ」


ユージは。


空中に浮かぶ文字を指差した。


「あれって」


「お前が作ったやつじゃねーか?」


「ああ」


リシュンが。


あっさり頷いた。


「なんで」


「あいつらが使ってんだよ?」


「なんか」


リシュンが。


頭を掻く。


「どうしても欲しいって」


「聖王国の連中に頼まれたから」


「分けてやったんだ」


「…………」


ユージは。


もう一度。


空中に浮かぶ神託を見る。


かつて。


聖王国の神託を。


ひっくり返すために。


自分たちが使った。


立体魔導投影装置。


それが。


今では。


堂々と。


神託を伝えるために。


使われている。


「おいおい……」


「久しぶりなのだよ」


後ろから。


聞き覚えのある声がした。


ユージが。


振り返る。


そこに立っていたのは。


聖王国を率いる。


あの枢機卿だった。


「おっさん」


「元気そうだな」


「おかげさまでなのだよ」


そういえば。


ユージは。


ふと思った。


何度も会っている。


何度も話している。


なのに。


「そういえば」


「枢機卿って」


「名前なんていうの?」


「…………」


今さら。


聞くことでは。


ない気もする。


だが。


聞いてしまった。


枢機卿は。


いつもの調子で。


答えた。


「ロウ・サトージ・ホートケヤークなのだよ」


「…………」


ユージは。


しばらく。


枢機卿の顔を見る。


「飛び出すテレビのメガネかけないと」


「見えなかったりする?」


「何を言っているのだよ?」


「いや」


「こっちの話」


ユージは。


それ以上。


追及しなかった。


そして。


再び。


巫女の背後に浮かぶ。


巨大な文字を見る。


「それより、おっさん」


「神託の言葉が」


「えらく先進的になってるな」


「いいのか、それ?」


「実に便利なのだよ」


枢機卿は。


平然としている。


「巫女の声だけでは」


「遠くにいる者には」


「届きにくいのだよ」


「だが」


「この装置を使えば」


「神託の言葉を」


「より多くの民に」


「伝えることができるのだよ」


「なるほど」


確かに。


その通りだ。


これだけの人数が。


広い場所に集まっている。


声だけでは。


全員に伝えるのは難しい。


文字なら。


遠くからでも。


見ることができる。


災害時なら。


なおさら。


「考えたな」


「それに」


枢機卿が。


続ける。


「空中に」


「神託の言葉が浮かび上がると」


「より神聖なものに見えるので」


「都合が良いのだよ」


「…………」


ユージは。


枢機卿を見る。


まったく。


悪びれていない。


「ちゃっかりしてやがるぜ……」


「新しいものを取り入れていくのも」


「継承の本質なのだよ」


「はいはい」


ユージは。


手を振った。


「まあ」


「それはともかく」


再び。


瓦礫の山を見る。


「とっとと」


「作業に取り掛かろうぜ」


「俺は」


「重機で瓦礫を取り除くよ」


「リシュン!」


「あいよ」


「例のやつ」


「出してくれ」


「了解」


リシュンが。


支援隊の荷車へ向かう。


掛けられていた。


大きな布が。


取り払われた。


その下から。


次々と。


姿を現したものを見て。


セシルが。


目を丸くする。


「これは……?」


四本の脚。


長く突き出した鼻。


ぴんと立った耳。


だが。


生き物ではない。


金属で作られた。


犬。


それも。


一匹や二匹ではない。


何十匹もの。


犬型ロボットが。


荷台の上に。


整然と並んでいた。


ユージが。


ニヤリと笑う。


「人間が入れないところは」


「こいつらに探してもらう」


「リシュンが作った」


「犬型ロボットだ」


リシュンが。


胸を張る。


「狭い隙間にも入れる」


「人の声も拾える」


「匂いも探せるようにしてあるぞ」


「……いつの間に」


セシルが。


呆然と呟く。


「まあ」


ユージは。


苦笑した。


「こいつ」


「俺がいない間に」


「いろんなもん作ってたみたいだからな」


「リーダーが言ったんだぞ」


「俺が?」


「人が入れない場所を探せる機械があったら便利だって」


「…………」


ユージは。


少し考えた。


「俺」


「そんなこと言ったっけ?」


「言った!」


「まあいいや」


「よくねえ!」


ユージは。


笑った。


ほんの。


一瞬だけ。


そして。


すぐに。


瓦礫の山へ向き直る。


「よし」


「行くぞ」


「まだ」


「助けられる人がいるかもしれない」


犬型ロボットが。


一斉に。


立ち上がった。


重機の。


エンジンがかかる。


聖王国の兵士たちが。


動き出す。


神託の言葉を受けた。


住民たちも。


次々と。


救助へ向かっていく。


「一人でも多く」


ユージは。


重機へ乗り込みながら。


呟いた。


「見つけようぜ」


災害発生から。


まだ。


七十二時間は。


経っていなかった。

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