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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第四部 環境対策編

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第202話 困った時はお互い様

ユージたちが。


連日の猛暑と。


増え続ける川の水に。


頭を悩ませていた頃。


その知らせは。


突然。


ユージア国へもたらされた。


「ユージ様」


ナーチャンが。


いつになく険しい表情で。


執務室へ入ってきた。


「聖王国で、大規模な災害が発生したとのことです」


「災害?」


ユージが。


顔を上げる。


「はい」


ナーチャンは。


一枚の報告書を。


机の上に置いた。


「山間部で、大規模な土石流が発生しました」


「…………」


「被害は?」


「まだ、詳細は分かっていません」


ナーチャンが。


報告書に目を落とす。


「ただ」


「複数の集落が被災」


「多数の死者と」


「行方不明者が出ているとのことです」


「そうか……」


ユージの表情から。


いつもの軽さが消えた。


「セシルは?」


「無事です」


「枢機卿も?」


「はい」


「そうか」


ユージは。


小さく息を吐いた。


「それと」


ナーチャンが続ける。


「セシルさんが進めていた予兆管理と」


「事前に下された神託によって」


「危険地域から、多くの住民を避難させることには成功したそうです」


「じゃあ」


「それでも、この被害なのか?」


「はい」


ナーチャンが。


静かに頷いた。


「老人や」


「身体の不自由な者」


「移動手段を持たない貧困層など」


「避難できなかった住民も」


「少なからずいたようです」


「…………」


ユージは。


しばらく。


何も言わなかった。


予兆はあった。


神託もあった。


避難もした。


それでも。


全員を。


救うことはできなかった。


「ユージ様」


ナーチャンが。


静かに尋ねる。


「どうなさいますか?」


「通常であれば」


「物資と人員を集め」


「支援隊を派遣するというのが妥当でしょうが」


「それじゃダメだ」


ユージが。


即答した。


「え?」


「災害ってのはな」


ユージは。


椅子から立ち上がった。


「何が起きるか分からねえんだ」


「予定通りにいかないことなんて」


「いくらでもある」


「道路が使えない」


「物が足りない」


「人が足りない」


「想定してなかったことが」


「次から次へと起きる」


ナーチャンが。


黙って聞いている。


「だから」


「現場で臨機応変に動ける人間がいないと」


「いろんなところに支障が出るんだ」


「こういう時には」


ユージは。


上着を手に取った。


「トップが動かねえとな」


そして。


部屋の外へ向かって。


声を上げる。


「みんな!」


「とっとと準備しろ!」


「聖王国へ行くぞ!」


廊下の向こうから。


慌ただしい足音が聞こえた。


「今日中に出る!」


「リシュン!」


「なんだ?」


どこからともなく。


リシュンが。


顔を出す。


「例のやつ」


「用意してくれ」


「例の……」


一瞬。


考えて。


「あー」


「あれか」


リシュンが。


ニヤリと笑った。


「了解だ」


「使えるやつ」


「全部持ってくぞ」


「ああ」


ユージが頷く。


「一台でも多い方がいい」


ナーチャンが。


小さく息を吐いた。


「相変わらず」


「決めると早いですね」


「こういう時に」


「会議なんかしてる暇ねえだろ」


「それに」


ユージは。


少しだけ笑った。


「困った時は」


「お互い様さ」


こうして。


知らせが届いた。


その日のうちに。


ユージたちを中心とする支援隊は。


救援物資と。


重機。


そして。


大量の『例のやつ』を積み込み。


聖王国へ向けて。


出発したのだった。


     ◇


聖王国。


災害が発生した地域へ。


ユージたちが到着した時。


そこには。


想像を超える光景が。


広がっていた。


「…………」


ユージは。


言葉を失った。


山肌が。


大きく抉れている。


そこから流れ出した。


大量の土砂。


岩。


倒木。


それらが。


谷沿いにあった集落を。


飲み込んでいた。


家だったもの。


道だったもの。


畑だったもの。


その区別すら。


つかない。


「ひでえな……」


ようやく。


それだけを。


口にした。


すでに。


聖王国の兵士や。


住民たちが。


救助活動を始めていた。


瓦礫を運ぶ者。


怪我人を担架で運ぶ者。


水や食料を配る者。


誰もが。


泥だらけになって。


動き回っている。


「ユージ様!」


声がした。


「セシル!」


泥で汚れた服のまま。


セシルが。


こちらへ走ってくる。


「来てくださったのですね」


「ああ」


「被害は?」


セシルの表情が。


曇った。


「避難は」


「かなり進めることができました」


「神託のおかげで」


「危険地域の住民には」


「事前に避難を呼びかけていましたから」


「それでも」


セシルは。


被災した集落を見る。


「間に合わなかった方が」


「大勢います」


「行方不明者は?」


「まだ」


「正確な人数も分かっていません」


「そうか」


ユージが。


時計を見るように。


自分の腕を見る。


もちろん。


腕時計など。


していない。


「……癖だな」


「はい?」


「いや」


ユージは。


首を振った。


そして。


表情を引き締める。


「こういうのは」


「時間との勝負だ」


「七十二時間以内に見つけないと」


「生存率が下がるんだぜ」


「七十二時間……」


「ああ」


ユージは。


瓦礫の山を見る。


「まだ」


「助けられる人がいるかもしれない」


「俺たちも手伝うよ」


セシルが。


深く頭を下げた。


「ありがとうございます」


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