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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第四部 環境対策編

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第180話 帰ってきたおっさん

お待たせしました。

本日より、第4部スタートです!


第3部完結後、たくさんの方に読んでいただき、本当にありがとうございます。

番外編を挟み、ユージたちの物語が再び動き始めます。


第4部も、どうぞよろしくお願いいたします。

――目を開けると、差し込む朝日が眩しかった。


思わずまた目を閉じる。


次にゆっくりと目を開けた時、視界いっぱいに飛び込んできたのは、見慣れた白い天井だった。


「……あれ?」


ぼんやりと身体を起こす。


ギシッ、とせんべい布団が軋んだ。


六畳一間の古いアパート。


小さな冷蔵庫。


使い込んだテーブル。


壁際に積まれた漫画。


窓の外から聞こえる車の走行音。


見慣れた自分の部屋だった。


うっすらと埃が溜まっているのは気のせいだろうか?


それともズボラのせいだろうか?


「……俺、帰ってきた?」


おぼろげに覚えていた。


仲間たちの慌ただしい声。


白く染まる視界。


そして――。


あらためて辺りを見回す。


異世界の面影はどこにもない。


(まさか……全部夢だった?)


いや。


夢にしては、あまりにも長かった。


あまりにも鮮明だった。


国造りや信仰、製鉄――。


あの世界で過ごした数年間の出来事が、次々と脳裏に蘇る。


あれが全部、夢だった?


……いや。


ともに酒を酌み交わし、笑い、苦労を重ねた仲間たち。


あいつらだけは、夢だったはずがない。


それだけは、不思議なくらい確信が持てた。


ふと、昔読んだ本の一節を思い出す。


中国の思想家が、蝶になった夢を見た。


目が覚めたあと、自分が蝶になる夢を見た人間なのか、それとも人間になる夢を見ている蝶なのか、分からなくなったという話だ。


「……俺も、そんな感じだな。」


苦笑しながら時計に目をやる。


「……げ。」


いつもの出勤時間だった。


「とりあえず会社に行くか。」


考えても答えは出ない。


作業着に着替え、安全靴を履こうとして気が付いた。


「ああ、あの靴、異世界に置いて来たんだった」


「まいったな。」


仕方なく、履き古したスニーカーを引っ張り出した。


玄関を開けると、そこには見慣れた朝の景色が広がっていた。


通勤する人々。


信号待ちの車。


コンビニから漂うコーヒーの香り。


昨日まで異世界にいたはずなのに、何も変わっていない。


しかし、見慣れていたはずの風景が、何故かやけに新鮮に感じられた。


そんな不思議な感覚のまま、ユージは会社へ向かった。


産業廃棄物処理場。


見慣れた事務所の扉を開ける。


「おう、おはよう!」


いつもの挨拶。いつものトーン。


しかし、その瞬間だった。


事務所の空気が止まった。


全員がこちらを見たまま固まっている。


「……あれ?」


次の瞬間。


「ユージさん!」


シゲルが叫びながら飛びついてきた。


「うおっ!」


勢いよく抱きつかれ、危うく転びそうになる。


「よかった……!」


震える声だった。


「ほんとによかった……!」


シゲルはユージの肩を掴んだまま、大粒の涙を流していた。


「俺……。」


「俺がユージさんを殺しちまったんじゃないかって……!」


「お、おいおい。」


ユージは困ったように笑う。


「男に抱きつかれても嬉しくないぞ。」


だが、誰も笑わなかった。


「ユージさん!」


「一体いままで、どこで何してたんですか!」


「警察まで来たんですよ!」


「目の前で人が消えたなんて前代未聞だって!」


「テレビも新聞も大騒ぎでした!」


「全国ニュースですよ!」


「……は?」


ユージは目を丸くした。


「ニュース?」


その言葉に、ユージは固まった。


「しかも一か月ですよ!」


「……え?」


「一か月?」


思わず聞き返す。


「嘘だろ……」


異世界では、四、五年は過ごしたはずだった。


国を作り。


戦争を終わらせ。


学校を作り。


製鉄所まで建てた。


それだけの年月を生きた。


それなのに――。


日本では、まだ一か月しか経っていなかったというのか。


その時だった。


事務所の奥からヨーコが姿を現した。


ユージの姿を見た瞬間、目を見開く。


カラン――。


手にしていたお盆が足元へ落ちた。


信じられないと言わんばかりの表情で、その場に立ち尽くす。


「ユージさん……」


その一言だけ。


次の瞬間。


ぽろり。


大粒の涙が頬を伝った。


一粒。


また一粒。


言葉は続かない。


「……え?」


ユージはおろおろして頭を掻いた。


「いや、ちょっとそんな、泣くことないじゃん」


「俺もよく分かんないんだ。」


「気が付いたら、アパートの布団で寝ててさ。」


「時計見たら、いつもの時間だったから、そのまま会社に来たんだけど……。」


誰も何も言わない。


ただ、ユージを見つめている。


まさか、異世界に行っていただなんて言える訳が無い。


それこそ、頭を打っておかしくなったと思われるのがオチだ。


やむをえず、苦し紛れに言った。


「なんか……不思議なこともあるもんだな。」


「あはは。」


「あははじゃありません!」


事務所中から声が飛んだ。


ユージは思わず肩をすくめる。


(……どうやら、本当に帰ってきたらしい。)

第4部、開幕です!


またユージたちとの旅が始まります。


今回は、いったい何が起こるのか。

そしてユージは、相変わらず何もしないのか(笑)。


当面は毎日更新を予定しています。

第4部も、どうぞよろしくお願いいたします!

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