↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第三部 文明発展編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
147/204

第146話 愛ちゃん先生

 第一回世界会議から数日後。


 ユージは、世界会議に参加した各国首脳へ一通の書簡を送った。


 内容は簡潔だった。


『共同製鉄事業に必要な人材育成の実証実験を行う。各国より、生徒一名の派遣をお願いしたい』


 その知らせは、各国で様々な反応を呼ぶことになる。



 王国。


 マイヤン王女は書簡を読み終えると、腕を組んだ。


「人材育成ねぇ……」


「優秀な子を送るべきかしら?」


 しかし、大臣たちは顔を見合わせた。


「危険です。」


「もし、その子がユージア国に残ってしまえば、我が国の損失になります。」


「それに。」


「優秀な子を国外へ送ることを、国民が受け入れるでしょうか。」


「そうよねぇ……。」


 マイヤンは少し考え込んだ。


 やがて肩をすくめる。


「じゃあ。」


「今回は実験ってことだし。」


「少し癖のある子にしましょう。」


 ニヤリと笑った。


「それで成功するなら。」


「本物ってことよ。」



 魔王国。


 宰相サムも、同じ書簡を静かに眺めていた。


「優秀な人材ほど、自国で育てるべきです。」


 部下が尋ねる。


「では、お断りを?」


 サムは静かに首を横に振った。


「いや。」


「教育法そのものには興味があります。」


「その真価を見極めたい。」


「誰を送りましょう?」


「最も扱いの難しい子です。」


「もし。」


「その子が変わるなら。」


「この教育法は、本物でしょう。」



 聖王国。


 枢機卿は目を閉じたまま微笑んだ。


「優秀な子を送れば。」


「成功して当然なのだよ。」


 修道士が尋ねる。


「では?」


「誰からも期待されていない子を送りなさい。」


「その子が笑顔になれるなら。」


「それこそ教育の奇跡なのだよ。」


「承知いたしました。」



 ネバランド帝国。


 ペーターは書簡を読むなり笑い出した。


「ははっ!」


「リーダーらしいこと考えるじゃねえか。」


 部下が尋ねる。


「どの子を送りましょう?」


「決まってんだろ。」


「一番手の掛かるガキだ。」


「実験なんだからな。」


「それで成功したら本物だ。」


「面白くなってきた。」



 こうして。


 四つの国は、それぞれ一人ずつ子供を選び始めた。


 王国では、授業を抜け出しては教師に叱られる少年。


 魔王国では、喧嘩ばかりして教師を困らせる少女。


 聖王国では、誰とも口を利こうとしない少女。


 ネバランド帝国では、一時もじっとしていられず、授業中ですら歩き回る少年。


 どの子も、教師や周囲の大人たちから、


「困った子」


「扱いづらい子」


 そう見られている子供たちだった。


 しかし。


 彼ら自身は、まだ知らない。


 自分の中に眠る才能にも。


 自分の人生が大きく変わろうとしていることにも。



 数日後。


 四人はユージア国へと集められた。


 互いに顔を見合わせることもなく、それぞれ好き勝手に振る舞っている。


 一人は落ち着きなく辺りを歩き回り。


 一人は腕を組んで壁にもたれ。


 一人は床だけを見つめ。


 一人は周囲を睨みつけていた。


 その様子を見たユージは、思わず笑った。


「あはは!」


「こりゃまた。」


「個性的な連中が集まったな。」


 ナーチャンは少し不安そうに尋ねる。


「ユージさま。」


「パイロットとはいえ、この人選で本当に大丈夫なのでしょうか?」


 ユージは笑って頷く。


「だからいいんだ。」


「最初から優秀な奴ばっか集めても意味がねえ。」


「教育が本物なら。」


「誰だって伸びる。」


 そう言ってリシュンを見る。


「リシュン。」


「お前の実力が試されてるぞ。」


 リシュンは四人を見渡し、ニヤリと笑った。


「望むところだ。」


「ここから先は、俺の喧嘩だ。」


 その時だった。


『いいえ、リシュンさん。』


 部屋に、優しい声が響く。


『私たちの喧嘩です。』


 一瞬。


 部屋が静まり返る。


 リシュンは目を丸くした。


 そして、ふっと笑う。


「……そうだったな。」


 ユージは満足そうに頷いた。


「よし。」


「始めよう。」


「世界初の、一人ひとりに寄り添う教育を。」


 こうして。


 人類史上初となる、新たな教育実験が幕を開けた。

今回は、私の好きな作品へのリスペクトを込めて、一か所だけ遊ばせていただきました。


三雲岳斗先生、ごめんなさい(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。