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【新装版】枯れたおっさん、何もしないで異世界を救う  作者: アズマユージ
第三部 文明発展編

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第122話 巨人の足跡

 鬱蒼とした森の中を、一行は進んでいた。


 木々が空を覆い、わずかな木漏れ日しか差し込まない。


 獣道のような細い道は何度も枝分かれし、方向感覚を狂わせる。


「うーん、この方向であってるのかな?」


 ユージが周囲を見回しながら呟く。


「そうじゃな」


 神楽耶も辺りを見渡した。


「こんな時、ハミータがおったら助かるのじゃが」


「このまま真っ直ぐで大丈夫です」


 背後から声がした。


「うおっ!?」


 ユージが飛び上がる。


 いつの間にか、ハミータが立っていた。


「ハミータ!?」


「おぬし、どこから湧いて出たのじゃ!?」


 神楽耶も思わず振り返る。


 ハミータは不思議そうな顔をした。


「どこからも何も、ずっとお供しておりましたが」


「絶対嘘だろ!」


 ユージが即座にツッコむ。


「お前、相変わらず登場方法が心臓に悪いぞ」


「失礼ですね」


 ハミータは少し不満そうに言った。


「まあ、諜報員としては褒め言葉として受け取っておきます」


「褒めてねえよ!」


 そんなやり取りをしながら、さらにしばらく歩く。


 やがて森が途切れた。


 そして――。


「なんじゃ、これは……」


 神楽耶が息を呑んだ。


 一行の目の前に広がっていたのは、巨大な窪地だった。


 山肌が大きく削られ、まるで巨大な何かが山を抉り取ったかのような光景。


 斜面には不自然な段差が幾重にも残り、その底には水が溜まって小さな湖になっている。


 自然の景色とは思えなかった。


 リシュンが目を細める。


「これは……」


「人工的だな」


 ユージが言った。


 アルノルトも頷く。


「自然地形には見えませんね」


 神楽耶は目の前の光景を見つめたまま呟いた。


「まるで巨人が暴れた跡じゃ」


「そう見えるだろ?」


 ユージは苦笑した。


「でも実際は、人間が掘った跡だ」


「人間が?」


「鉱山だよ」


 ユージは周囲を見回す。


「山を削って、鉄鉱石を掘って、木を切って炭を作る」


「それを続けるとこうなるのさ」


「なるほど、それで巨人の足跡ですか。言い得て妙ですね」


 アルノルトが頷く。


「つまり、ユージ殿の推理は正しかったということじゃの」


 神楽耶が感心したように言った。


「推理ってほどじゃないけどな」


 ユージは肩をすくめる。


「鉱山跡なんて、俺の世界じゃ珍しくもないからな」


 そう言って足元の石を拾い上げた。


 黒っぽく重い石。


 ところどころ赤茶けた色が混じっている。


 リシュンが石を受け取り、しばらく観察する。


 そして確信を持って言った。


「鉄鉱石だ」


 神楽耶の目が見開かれる。


「本当か!?」


「ああ」


 リシュンは頷いた。


「間違いない」


 アルノルトも石を手に取った。


「なるほど」


「秘伝書にあった『黒き星』とは、これのことだったのでしょう」


 ユージは周囲を見回した。


 露出した岩肌のあちこちに、同じような鉱石が顔を覗かせている。


 素人目にも分かる。


 まだ大量に残っていた。


「あとはこっちの方が重要だな」


 ユージが笑う。


「重要?」


 神楽耶が聞き返した。


「ああ」


 ユージは周囲を指差した。


「とにかく、これで鉱山の場所がわかった」


「しかも見たところ、まだかなり埋まってるぞ」


 リシュンも頷く。


「採掘量次第だが、しばらく困ることはなさそうだな」


「だろ?」


 ユージは満足そうに言った。


「まだまだ鉄鉱石がわんさとある」


「つまり――」


「材料は確保できたってことだな」


 その言葉に、一同の表情が明るくなる。


 だが。


「材料はな」


 リシュンが腕を組んだ。


 ユージが苦笑する。


「だよな」


「まだ終わりじゃない」


 アルノルトが鞄から秘伝書を取り出す。


 残る伝説は二つ。


 おかめ。


 そして八岐大蛇。


 神楽耶がため息を吐いた。


「まだ続くのう」


「お前の親父、ミステリー好きだったんじゃないか?」


 ユージが言う。


「みすてりー?」


「しかも中二病寄りの」


「ちゅーにびょう?」


 神楽耶が首を傾げた。


「なんじゃそれは」


「まあ、それはいいや」


 ユージは肩をすくめる。


「とにかく、あと二つの謎を解かなきゃな」


 山を吹き抜ける風が、静かに木々を揺らした。


 おかめ。


 そして八岐大蛇。


 秘伝書に残された最後の謎が、彼らを待っていた。

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