59話 勝利の方角へ
今現在、森の外ではアルベイン率いる銃撃隊が敵陣右翼に回り込み、強襲を仕掛けている。
なぜ一部隊として扱えるほどの銃があるのか? その理由は単純である。僕は三年前、本当の意味で戦争に身を投じると決意したその日、エドモンドさんに頼みごとをしていた。それは、銃の改良と量産だ。
エドモンドさんの知るいくつかの信頼がおける鍛冶屋に設計書を流出させないという制約の元、量産を進めてもらっていたのだ。
三年前は、実際の運用は僕がどこかの隊を任されてから試験的にやっていくくらいに考えていたのだが、事態が深刻だったため、アルベインの部隊に少しの訓練をうけさせてから実践投入する運びとなった。
アルベインたちがもっているのは僕が設計した火縄銃の原案のそのままのものを三千丁である。
鉄砲は少しの訓練で高威力の攻撃を誰でも出すことができる。それは地球の歴史が証明している。発射までに時間を要する火縄銃であっても日本の戦国時代においては無類の強さを誇った。
対して僕がもっているのは試作品のデザインも西洋風にアレンジされた鉄砲。火縄銃のように発射までにほとんど時間はかからない。射的屋のライフルとかそっちに近い。装弾しておけば一発限りではあるがすぐに発射できるようになっている。
こちらは生産が難しく、量産が追い付かないため、僕が装備することになった。おかげで何とかみんなの仇をとることはかなった。
僕は念のため、球を装弾して折れたツヴァイヘンダーの代わりにカルネラの斧槍を手に取り、近くに転がっている死体のロングソードをはぎ取った。
そして重い足取りで森の外に出た。
森の中から出ると、戦況は一気に変化していた。帝国軍は指揮官不在の中、見たことも聞いたこともない兵器による大打撃を受け、たちまち混乱状態に陥り、副官たちが新たに指示を出した時にはすでに手遅れで、命令は全く機能しなくなっていた。
強烈な破裂音が一定間隔で周囲にこだまし、そのたびに鎧を貫く確実な一撃が放たれ、犠牲者が出てくる。突撃すれば確実に死が待っているため、誰も銃撃隊を止めることはできない。
決死の突撃を命令できるのは、己、もしくは信頼厚き司令官のみ。その最高司令官は死に、もはや帝国に僕らを止めることはかなわなくなっていた。
そうなってからは早かった。
しばらくしてから帝国兵たちは我先にとその場から敗走しだした。それを僕らは容赦なく後ろから追撃し、この戦いに参加した帝国兵たちに得も言われぬ恐怖を植え付けることとなった。
加えて、アーギュの部隊によって足止めを食らっていた騎馬隊は逃げ遅れたため、合流したアルベインたちによって必要以上の大打撃を受ける羽目になり、襲撃を受けた一帯には馬の死体が数多く転がっていた。
「勝ちましたよ。エドモンドさん」
躯の広がる大地を前に僕は小さくそう口にした。
「おーい!」
遠くのほうから声が聞こえる。目を向けると、そこにはアーギュがこちらに手を振りながら向かってきていた。
「帝国の連中は引いていったが、どうするよ」
どうする、とは、これ以上の追撃を加えるか否かという意味だ。
これだけの損害を受けてなお、帝国であればいまだ戦争を継続することは可能である。それだけ、僕らの敵は強大なのだ。
しかし、これだけの大敗を喫して連中が無策にこちらに攻め込んでくるとも思えない。
「たぶん、これ以上何かしてもお互いに数を減らすだけでいいことはないよ。ハルメリアの砦を拠点に防衛ラインを形成しよう。それでたぶん大丈夫だと思う」
「守りに徹するのか? こんなこと言うのも何だが、ここで連中を放置して力を蓄えられたんじゃ最初に逆戻りだぞ」
「うん。わかってる。だから一つだけ考えがある」
「?」
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