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第三話

 放課後。


 僕らは坂田金子に鞄を返すため聖林女学園に向かった。

 鶯東高校の近所だけあって、徒歩20分で行ける距離だ。


 慣れない道を歩き続けていると、徐々に聖林女学園の制服を着た女生徒たちが増えていく。

 時間が時間だけに、帰宅する生徒も多い。


 でも普段歩かない道のため、聖林女学園の女生徒たちは池田くんの姿を見て何度も振り向いていた。

 中には「キャッ! 誰!?」と口を押さえてる子もいる。

 やっぱり池田くんは歩くだけで絵になる存在だ。



 そんな僕らは、聖林女学園の校門にたどり着くと、一人の女生徒に声をかけて坂田金子を呼んでもらうことにした。


「生徒会長補佐の坂田さんですか?」

「ああ、呼んできてくれるかな?」


 池田くんがさわやかマスクで笑顔を振りまくと、声をかけた女生徒は「はい、よろこんで!」と顔を赤らめながら校舎に走って行った。

 やっぱ池田くんはすごい。



 数分後。



 今朝会った坂田さんが息を切らしながら校門までやってきた。


「ああー! あなたたち!」

「来たか、坂田金時」

「金時って誰よ! ってか、私の鞄持ってったでしょ!」

「持ってったのはお前の方だ。オレの鞄返せ」

「あんたのせいで、今日の授業、まったく分からなかったんだからね!」

「そりゃこっちのセリフだ。むしろ教科書に落書きしてる時点で授業なんて聞いてねえだろ」

「み、見たの!? 最悪! ちょー最悪!」


 校門前で超絶イケメン池田くんと坂田さんがギャーギャー言い争ってるもんだから、周りの生徒たちが「なんだ、なんだ?」と奇異の目で見てくる。


「池田くん、おさえておさえて」

「北川、オレやっぱこいつムカつくわ」

「うんうん、そうだねー」

「おもしれー女と思ったけど、撤回する。こいつ、クソだ。クソ女だ」

「それもおもしれー女のフラグだね」


 なんとか池田くんをなだめすかしていると、坂田さんは僕を見て「ああああ!」と叫んだ。


「……え? なに?」

「お、お、お、王子様……!!!!」


 え? 誰が?


「え? 誰が?」



 思ってることとセリフが同時に出た。


「え? え? ちょっと待って、ちょっと待って、どういうこと? どうして王子様がここに? え? いや、あり得ないんですけど……」

「ど、どゆこと?」


 坂田さんに問いただすと、彼女は「ぎょえわ~!」と謎の悲鳴をあげて顔を隠した。


「お、王子様がここにいる……。ヤバい、死んじゃう……」

「坂田さん?」


 名前を呼ぶと、坂田さんはポカンと僕を見て「あふん」と倒れ込んだ。


「さ、坂田さん!?」

「……お、王子様が私の名前を呼んでくれた……もう、死んでもいい……」

「いや、死なないでくれます!?」



 結局それから数十分、僕は坂田さんに「死ぬな」「生きろ」を言い続けたのだった。

 ものの◯姫かな?


 その間、池田くんは終始「おもしれー女」を連発していた。


 助けろよ。





 その後、池田くんが坂田さんに話を聞いたところによると(僕が話しかけると精神が崩壊するらしい)どうやら坂田さんが好きなのは僕のほうだったようで、毎朝僕と会えるか楽しみにしてたんだそうだ。


 今朝は久々に生徒会の仕事があって遅刻しそうになってたため僕がわからなかったという。



「っていうか、オレもこいつと毎朝一緒に登校してるんだが? オレとぶつかった時に北川の友人だって普通気づくよな?」

「ああ! 王子様は北川くんって言うんですね? 名前まで神!」


 全国の北川くんは神に認定されました。


「オレの話、聞けよ!」

「あ、うん。王子様のとなりにウジ虫みたいのがいるなって思ったけど、興味ないから顔は見てなかった」

「ウ、ウジ虫……」

「あ、北川くんに比べたらウジ虫はランク高いか。ミジンコかな。ぷぷっ」

「北川! こいつ、マジで! マジでムカつく!」

「まあまあ、おさえておさえて」


 こんなに感情むき出しになる池田くんは初めてかも。


「あ、あの、北川大明神さま」

「な、なに?」


 大明神じゃないけど。


「差し出がましい申し出だとは思いますが、私とお友達になってくださいませんか?」

「と、友達?」

「ダメでしょうか?」

「い、いいけど……」

「本当ですか!? ああ、やっぱり北川大明神さまは広い心を持った神! ゴミ以下の私と友達になってくださるなんて……!」

「言っとくが、北川の一番の友人はオレだからな? お前なんか北川の友人一覧の最下層だからな? オレも敬えよ?」

「は? 北川大明神さま以外の人間はみんなゴミだが? 一番最下層なのは受け入れるけど、あんたを敬う理由はこれっぽっちも感じないんだが?」

「北川~、オレ、こいつ、嫌い!」

「あはは、池田くんは僕の一番の友人だよ」

「北川~」


 笑いながらも僕は思った。


 これはちょっとめんどくさい子と友達になっちゃったなあ、と。


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