8_第八話【恐怖の檻にとらわれた二人】
シン、あいつ……!
デキルギシュ伯爵邸の前庭、いや。もう本邸すら飲み込みつつある……。
馬鹿でありすぎる、この屋敷の当主。
ウドール=デキルギシュが創り出した魔導の術と魔力が呼び出した、溶岩の領域!!
その溶岩の湖の中央に! 魔導弾丸・アンチマジックフィールドの効果によって完全に魔法から守られてはいるもの、まったくそれだけの状態であるために!!
その効果である、術対象から半径1メートルしかない防御領域が残した、小さな足場の上に立って、溶岩の湖の真ん中に取り残されている、銀髪の銃使い、シン!!
どーすんだお前、ここから!! って思っていたら、シンが言葉を紡ぎ始めた。
「……ふん、愚物が。伯爵ウドール!! 貴様、この膨大な熱量の溶岩術式が!! そう長時間保てると思っているのか? ほら、見ればわかる。もう、そこらの溶岩が冷めて岩石に戻り始めているぞ!!」
むうん?! なるほど確かに! 熱を激しく放ちすぎた溶岩の湖が、凝固を所々で始めている!! 維持のための熱量がでかすぎたんだな!
「フフフフフフフフフ」
フを並べるウドール!! その数だけ余裕があるのは分かるが、何の余裕なんだ?!
「フフフフフフフフフ。フ!! おまえは、銀髪の死神よ! 私が溶岩を作れて追加できぬとでも思ったのか!! ゆけ!! アッド・マグネス!!」
「!!?」
おがっ!! ウドールめ!! 両手で地面をたたく動作とともに! 魔導エナジーを地面に追加!! すると!!
「この……! 厄介なっ!!」
そのシンの舌打ちを肯定するように! 溶岩がまた熱を盛り返し、暴れ始めた!!
「ははははははは! そのアンチマジックフィールド、どうやって使ったのかはわからんが!! そろそろ効果が切れるころではないのか? さすれば貴様は終わりだ!! 銀髪の死神め!! われら貴族に歯向かった報いぞ!! 悔いのまま熱の中で死んでいけえ!! がはははははははぁっ!!!」
えっと、やばくね? これやばいよな? シン? たぶんシンがやられたら、次は俺の番だけど。そんなんどうでもいいや。俺はもう、あの女の生きざまに賭けちまったから。ばくちで負けたら、終わるのが筋だろ? だから、それでいいやもう。
「女は弱いな。追い詰められたら、媚びて身を売って、そうやって生きる。私もそうだ。いや、そうであった!! であるがゆえに、負けることはない!! 行くぞウドール!! 魔導弾丸! サイレス・ブリット開放!! 声を失えっ!!」
さいれす?! サイレスだと!! 風の六段魔導術!! イオシス王国で三本の指に入る『魔導師殺しTOP3』に必ず数えられる『沈黙』の魔導術! そんなもんストックしているシン!! ガチでやべえ女だろあいつ!!
銃口から迸る!! 指向性を持った緑色の光の霧!! 舞って輝いて! 堰を切ったように、ウドールに向かって殺到し!! 見事に取り込んで『絶音領域』を作り上げた!!
「!! ……かっ?! こぉ……!! かかっ!!」
へーい!! 大ボケヴェリーバカのウドールめ!! 見事に声を失って、動転! 自分の喉を強くつかんで、何とか声を出そうとするが!!
出るわけねーだろ? あの霧はサイレスの霧なんだからな!!
「お父様ぁ!!!! いやあああああああ!! サイレス?! そんなものを受けてしまったら!! 魔導師は魔法を封じられて!! 殺されるのを待つだけじゃないの!! だめ! お父様が死んだら! 次は私が殺される!! 銀髪の死神ぃ!! そうはさせない!! 殺すなら私を先にしなさい!! そのほうが楽に死ねるもの! 私だって!!」
「……っ!! このバカ娘っ!! 貴様は自分の父がどれだけ壊れた人格持ちかも!! わからんおつむしかないのかっ!!」
ある意味の激昂をして叫ぶシン!! ウドール前で盾になるマドール!!
状況! すんげえCHAOS!!
「二段土魔導術!! アースランサー!! おねがい! おねがい! おねがい! 土精霊神アードさま! 私たちに、生きるための勝利を!! もたらしてください!!」
うわっ!! たいして魔導段位が高くないであろうマドールが!! 自分の限界に近い術を三連発!!
「あっ!!」
そして出力を上げ過ぎでかかった負担で、毛細血管でもやっちまったのか? 鼻血噴きやがった!! あいつ!! 止めないと死ぬぞシン!!
「シィン!! 俺にこんなこと言う資格も権利もねえ!! でもよ!! あの貴族ガキ!! 生かしてやってくれ!! どう考えたってあれ!! 洗脳教育でくるっているだけだぞ!!」
「うるさいぞ!! パンチモンキー!! 私がそれを狙っているのがわからんのなら!! 黙っているんだ!!」
は? 最初からそう言うつもりだったのかよ? シンさんよぉーーーーーーーーー!!
8話 END




