12_第十二話【パラレル・リィンカーネイト】
「ウルト。貴様から最初に預かった、この、蒼き黒金の弾丸! 使うぞ!! 跳躍せよ!! ウドール!! 汝が最もいる時空へ!! それを自らの魂で選ぶのだ!!」
うおおおおお?! 魔導銃の!! シンが構えた魔導銃の銃口から!!
ものすごく魅了される、蒼き光を放つ、闇の練り絹のような波がほとばしり!!
「魔導弾丸開放!! ディスディアルランダムテレポートブリット!! 時空転移するがいいウドール!!」
蒼き雷光をまとう、巨大暗黒スフィアが成り立ち、ウドールに向かって!! 突っ込んで炸裂した!!!!!!
重力震が身に染みるように余波で跳ねとび!! すべての音は吸われて無音!! 雷光が乱舞すれども音はせず!! そんな中で。
暗黒スフィア効果を終えて消えた時。
ウドールは跡形もなく消えいていた……!!
* * *
最初に戻ってきたのは、音だった。
木が軋む音。
遠くで、朝の鳥が鳴いている。
ウドールは、息を吸い込んだ。
肺が軽い。
痛みが、ない。
「……?」
目を開けると、天井があった。
見覚えのある梁。
古いが、整えられた寝室。
――伯爵邸?
違う。
違うはずだ。
身体を起こそうとして、手を見る。
皺がない。
骨ばった指先も、老いも、ない。
若い。
自分の身体が、若い。
頭の奥で、何かが引っかかった。
溶岩。
崩れる右腕。
光の粒。
そして――銃口。
夢だ。
そう、夢だ。
そう思おうとした、その時。
「……あなた?」
柔らかな声が、背後から届いた。
振り返ると、彼女がいた。
穏やかな光の中で、湯気の立つ茶器を手にして。
長い髪を肩に流し、困ったように微笑んでいる。
「どうしたのですか?」
「ひどく、うなされていましたよ?」
クレール。
名を呼ぶ前に、胸が詰まった。
声が、出ない。
「大丈夫ですよ」
「今日は、何も予定はありません」
彼女は、当たり前のようにそう言った。
それが、ひどく恐ろしかった。
――これは、戻ったのではない。
戻されている。
ウドールは、息を整えようとして失敗した。
喉が、震える。
「あなたは……」
クレールは、少し考えるように首を傾げた。
「あなたは、一生懸命でした」
「みんなのために、頑張っていて」
その言葉に、胸の奥が、ぎしりと鳴った。
「私は、あなたが大好きですよ」
逃げ場が、なかった。
「……それから」
彼女は、悪戯っぽく目を細める。
「貧民に、銀貨をこっそり渡していたこと」
「ばれていますよ♡」
――知って、いた。
ウドールの中で、何かが崩れた。
膝が、力を失った。
その場に崩れ落ちる。
声にならない嗚咽が、喉を突き上げる。
気づいた時には、彼は彼女に縋りついていた。
子どもみたいに。
みっともなく。
「……おそろしかった」
言葉が、零れ落ちた。
「……だから」
「おそろしくなれば……」
「勝てると……思った……」
クレールは、何も言わなかった。
ただ、
その背中に手を回し、
静かに、抱きしめる。
しばらく、時間が流れた。
泣き止んだあとで、
ウドールは、胸の中で問いかけた。
――また、同じことになる?
答えは、すぐに出た。
いや。
私は、それをしない。
……そう、生きていくのだ。
クレールの腕の中で、
彼は、ようやく呼吸を取り戻した。
外では、朝が進んでいる。
世界は、何も知らない顔で回っていた。
ウドールは、平行世界へと隔離された。
もう、元の時空には戻らない。
だが――
それが、罰であるか。
それとも、不幸であるか。
それを決める権利は、
もはや誰にも奪われていない。
ウドール自身が、
選べばいいことである
12話 END




