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13_終 話【永遠に続く積み重ねの日々こそ】



 ウドールが、シンの一撃によって――

何処かへと転送され。

 戦場は、嘘のように静まり返った。

 地鳴りは止み、

溶岩は冷え始め、

崩れた大地だけが、そこに残っている。

 

マドールは、

父が消えた場所を、じっと見つめていた。

 そこには、何もない。

ただの、空白。

 彼女は、ひとこと、言った。


「……とうさまが」

「まけた」

「なぜ?」

「銀髪の民に」

「負けるなんて……おかしい」

「わからない」

「なぜ……」

「……いえ」

「これが、本当なのね」

「私たち貴族は」

「本当には、生きていなかったのね」


 マドールは、空を見上げた。

 悔恨が、胸に広がる。

だが彼女は、逃げなかった。

 小さく、けれど確かに、頷く。

 そして、シンを見る。


――マドールの目は、死んではいなかった。


 シンは、鼻で笑った。


「ふん」

「いい目だな、子供」

「して」

「どう生きていきたいのか?」

「聞こうか?」


 マドールは、言葉を切り刻むように答えた。


「辛かった」

「痛かった」

「苦しかった」


「泣きたかった」

「泣けなかった」

「心から逃げた」

「嘘をついた」

「強くなった」


「……だけど、偽りだった」

「全部、わかった」


「でも私は」

「生き直したりしない」

「ただ」

「この先も、生きる」


「そしてもう誰にも」

「なにより、自分にも負けない」


「だって」

「目が、醒めてしまったから」


「……本当に」

「おかしな私だった」

「笑うしかないみたい、ね」


 シンは、

すごく悪い笑いを浮かべた。


「では」

「鍵を貸してもらおうか」

「魔導錠の鍵だ」

「貴様らデキルギシュ家の」

「宝物庫のな」


 マドールは、沈黙した。


「……あなた達って」

「押し込み強盗だったの?」


 シンは、腹を抱えて笑った。


「人の屋敷の鍵を勝手に開けて」

「不法侵入して」

「中で暴れまくる」

「私たちを、それ以外の何かだと」

「思っていたのか?」

「私が連れている、あの混血児」

「盗賊ギルドのホンモノの盗賊だぞ?」


 マドールは、声を荒らげる。


「警吏を呼ぶわよ」

「捕まりたくなかったら」

「さっさと逃げ散りなさい」


「銀髪の賤民!!」


 一瞬。

 シンは、マドールの胸ぐらを掴んだ!!


「舐めるモノではないぞ?」

「お嬢さん」

「私が、同胞の銀髪の民を」

「食わせるための金を得るのに」

「容赦や躊躇をすると思うか?」

「よく考えろ」

「賢い選択をしろ」


 すぐに、手を離す。

 マドールは、激昂しかけ――

だが、頭をぶんぶんと振った。

 冷やすように、言い直す。


「……わかった」

「宝物を、分けてあげる」

「でも、全部じゃない」

「すこしだけ」

「それでも、銀髪の民に」

「おいしい思いをさせるくらいは」

「できるんじゃないかしら?」

「着いて来て」

「銀髪の死神」

「……それと」

「こんなことを言うのも、おかしいかもしれないけれど」


「感謝してる」

「ありがとう」


 シンは、大爆笑した。


「まあ」

「大したお眼鏡だ」

「貴族の宝物で手に入れた」

「贅沢な飯を与え過ぎれば」

「銀髪の民は腹を壊すさ」

「安い飯を」

「大量に買わせてもらう」


「質より量だ」

「銀髪の民にはな」


* 宝物殿


 ロッツは、宝物殿で叫んだ。


「やばすぎるだろ!」

「なんだこれは!」

「金貨の山に」

「宝剣に宝器がゴロゴロだぞ!」

「おめえらデキルギシュ家」

「相当やべえことしてきたんだな」


 マドールは、

彼をじっと見つめ――

意地の悪い笑みを浮かべた。


「やーね、貧乏人って」

「資本の積み方も知らないんだ」

「こんなの、可愛いものよ」

「地魔導師団長で、農政大臣」

「地の最高司祭エートグラン様の」

「貯蓄資本に比べれば」

「米粒みたいなものだわ」


 ロッツは、肩をすくめた。


「責めたいところだがな」

「このスケールは……」

「認めるしかねえ」

「貴族の財産管理の見事さを」


 マドールは、少しだけ誇らしげに笑った。


「でしょ?」

「貴族って、いい所も多いの」

「ただ」

「競争が激しすぎて」

「とても怖い世界だけどね」


 宝の山から戻ったシンは、

宝珠ひとつと、宝剣ひと振りだけを掲げた。


「これを貰う」

「十分すぎる」

「いいな?」


「いいわよ」

「それだけでいいの?」

「もっと必要じゃないの?」


 シンは、満足げに笑った。


「過剰に奪う愚と慾は」

「私の頭と腹にはない」

「これでいい」

「感謝する」


*枯れ木森の砦亭、再び


ロッツは、

ドゥットが焼いた安いが厚みのあるステーキに、

舌鼓を打っていた。


「うめえ……」


ドゥットは、笑いながら言う。


「やってくれやがったな」

「最高だよ、お前ら」


シンは珍しく、

カウンターではなく、テーブル席に座り、

火酒を――オンザロックで飲んでいた。


「で?」

「デキルギシュ伯爵家は」

「どうなるんだ?」


シンは、薄く微笑む。


「さあな」

「血統は、絶えていない」

「目も、死んでいない」

「どうなるかは、わからぬ」

「だが……」

「もう、負ける娘ではないだろう」


そして、誰に言うでもなく、

小さく呟いた。


「Go for it. Your future is open.

You are allowed to live.

Show them how to live.」

________________________________________

魔導銃の使い手

第一部 Fin


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