11_第十一話【ソウルドレインwasエンド】
11_第十一話【ソウルドレインwasエンド】
シン放った、5発の魔導弾丸……。そのすさまじいチェインショットが。
最後の小太陽攻撃、炎魔導七段技術、『業却陽炎』で……。
とうとう止まった。
それを全弾まともに食らった、ウドールの野郎……は。髪が恐ろしく白くなっていた。まだあれは、銀には至らないだろうが、まあ。ウドの野郎は魔力なしじゃ弱々もいいところだろうし。
これでいいだろ、ほぼ無力化したしなぁ……、ま。俺は見ていただけだがなー。ははは。はぁ。
「シーン!! どーすんだ? あれは? ウドのやつだよ。バカみてえな大地震魔法で市街地まで壊しやがって……。あと一刻もすれば、宰相府直属の特殊治安部隊が出張ってくるような。とんでもねえ事態ってわけだけどよ?」
「……おい、貴族娘。どうする? お前の父は、すでに国家犯罪者なわけだがな? もう、お前は父を捨てたらどうだ?」
俺の質問をヘビースルーして。マドールに問いを向ける、はい。シンさんよぉ!! ひどくねえの? その俺の扱いは!!
「娘ってものは。自らの心を父にそむかせない。貧民庶民卑民ならともかく!! 伯爵家の青き血を!! 貴族が違え絶やすと思うの? 流石に害獣ども!! 卑しく臭い生き様ね、その発想自体も汚らわしい!!」
んっんー。あほだこいつ。ウドールはグレートフールだったけど、こいつは小グレートだ。
「そうか。ならば行け。父の所へ。生きてはいるぞ、まだな」
「当り前じゃない! 偉そうに指図しないで!!」
おーおー。Sサイズフールが。また食われに、懲りずに。お偉いことに、資格持たぬ父のもとに、娘として戻っていく。サルかあいつは、ったく!!
「……おとうさま……?」
「いま……その弱弱しい姿になって……」
「強くあれと私に言い続けた……その言葉の力を……どう示すの……?」
「教えて……私は……お父様を好きでいたいの……」
……なるほど、こう出たか、貴族嬢ちゃん。あながちバカの限りでもない質問をウドールにぶつけるマドール。ふぅーん……。
で? ウド野郎がどうこたえるよ? 俺がそう見ていると。
「……マドール……。来い……娘は……父に従うものだ……。清らかさは……汚れてこそ……価値が……ある……。前が……私のために……汚れれば……。私は……清らかに……戻れる……。土神アードの……愛は……。また……与えられよう……。わが……両手に……だ……」
けっ!! かましやがったぜ!! ウドールの奴の!! 酒場のねーちゃんたちが一番嫌いな!! 精神汚し正当化論法!! かんぺきワームヘッドかよ。ウドールの奴は。
でもよ。なんだ? マドールのやつ、首をかしげたぞ?
「おとうさま?」
「なにをいまさら?」
「私はずっとそうしてきましたよね?」
「あなたに力をささげ続けました」
「それなのになぜ?」
「なぜあなたは負けようとしているの?」
「わからない」
んぎゃはー!! やっべえ!! あのガキ最高の切り返しをウドールに用意してやがった!! すっげえ!! これが貴族かよ!! マドールって娘か!! 最高にハイになっちまう、ナイスリベンジワーズ!!
「……フフフフフフフフフフフフ……!!」
おう。フはもういいんだ、ウドール。
「マドール。よく聞け」
「世界とは正義と素晴らしき心と愛を殺して食らい」
「力と知性と心を維持することをなす」
「そして、今その世に食われようとしている」
「義人であり英雄がいる」
「お前の目の前にいるこの私だよ」
「さ、命を絶ちなさい」
「お前の魂は、この父がもらう」
「感謝しろ! この愚かな娘がっ!!」
ぁーあ!! いいやがった!! すっげえ正直に言いやがったウドール!!
『自己生産能力皆無宣言』!! つまり『私にはそれが作れないので、持っているあなたは死んでください』『私はそれが欲しいのです』ってまんまのことを!! 馬鹿野郎! 心を捨てるからそうなるんだ!!
俺がそう叫びかけたその瞬間──
マドールの顔が、
すぅ……っと冷えていった。
「……おとうさま……?」
その声は、
“従う娘”の声じゃなかった。
「世界がどうとか……。正義がどうとか……。英雄がどうとか……。そんなこと……どうでもいいの」
ウドールの目が揺れた。
「私は……。あなたの娘であることを……。誇りにしたかったの」
マドールの声は震えていない。
逆に、静かすぎた。
「でも……。あなたは……。私の魂を……。“ほしい”って言ったの……?」
「一つしかないのに」
「お父様だってそうでしょう?」
「私だったら」
「最後の、自分だけは。持つことを人に許せます」
ウドールの顔が歪む。
「黙れ!! 娘は父に従うものだ!! 魂を差し出すのは美徳だ!! それが清らかさだ!! それが愛だ!! それが──」
興奮して言い募るウドール。だが。
「いわゆる卑しき飢餓!! 己で己を生み出せぬもののみが生む、最悪の渇きが貴様のそれだ!!」
そう、高らかに宣言するシン!!
シンの声が、
空気を切り裂いた。
白いコートが、
風もないのに揺れた。
背筋に、俺は感じた。
ぞわりと冷たいものが走った。
シンは一歩、前に出た。
「ウドール=デキルギシュ。貴様は“父”ではない。“貴族”でもない。“英雄”でもない」
銃口が、徐々に。
ウドールに向けられる。
確かに狙いを定めつつ。
「そう、貴様はただの“魂の乞食”だ」
ウドールの顔が青ざめた。
「ち、違う……私は……英雄……私は……清らかであれば……私は……大地に愛されて、素晴らしきことをなせるはず」
「黙れ」
シンの声は、
氷のように冷たかった。
「魂を欲しがる者は、魂を持たぬ者だ。魂を奪おうとする者は、魂を失った者だ。魂を喰らおうとする者は、魂を捨てた者だ」
マドールが息を呑む。
おれは、気おされて、シンの冷たい激高を目の当たりにして。
ただその場に立ち尽くした。
シンは静かに告げた。
「貴様は“空洞”だ。だから娘の魂を欲した。聞くがな? なにをして、何に自分を使って。その空洞を得たのだ? 己を裏切らねば、人はそうはならぬのだがな?」
ウドールの喉がひくつく。
「いやだ……いやだあ……!! 死より怖いことでも……! 死より苦しい目にあっても……!! 死だけは……死だけはいやだああああああ!!!!」
シンは銃を構えたまま、
静かに言った。
「安心しろ。死より怖いものを、私は知っている」
空気が沈んだ。
「いいか? 貴様は」
「死すべきでない」
「だが学びが足らぬ」
「ゆえに愚行をなす」
「ならば答えは一つだろう?」
ん? シンのやつ? 二回も空になった魔導銃のリボルバーシリンダーを開いて。
弾を込めた。
ただし、一発だけだ。
11話 END




