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「約束の夏」  作者: 高領 つかさ(TSUKASA・T)
「学園編」

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6 灰暗の闇


灰色の空が広がっている。

灰暗色に染まる空は、いまにも雨の降り出しそうな空気とともに、暗い空をいただく世界の空気さえも、闇に染めるようにしてあるとおもえる。それは、唯の感覚などではなく、単なる事実であるのかもしれない。

 人は、太陽の――光に照らされる時間の有無で、精神に異常を来すことさえある。それはよく知られた現象だ。それは、北欧――太陽の光が恵みとして地を照らすことが冬季に少なくなる地球上の緯度が高い地域で、まず認知された現象だといえただろう。

 日に当たることが少なくなるだけのことで、人は気鬱になる。

これが、日本という国のことであれば、太平洋側に住んでいた住人が、日本海側――つまり、冬がより厳しく、太陽が冬はほとんど姿をみせない地域――に仮に住むことになっただけのことで、冬季鬱――冬の季節に日照の不足を原因とする鬱状態に陥ることがあると医学的にも認められている事実があるのだ。

 人は、日の光が少なくなるだけのことで影響を受ける。

 で、あれば。

 こうして、曇り空が続き、雨が降るだけのことで。

 あるいは、大気が湿り気を帯び、日が陰り、―――。

 暗い雲が空を覆うそれだけのことで、人が闇に通じるなにものかを感じ、精神に影響を受けても当然というものなのだろう。雨の日に憂鬱になる、などというのはありふれたことにすぎない。

 雨の日に、―――暗い空を仰ぐことが。

 明るく晴れた天を仰ぐこととは、まったく異なる心持ちを連れてくるというのは。

 単純に、自然の中に生きる生命体であるヒトにとって、極普通のことでもあるのかもしれない。

唯、単に。

人工的に作る光で、気象をコントロールすることはできなくとも、箱のようにして空間を区切り、その中で人工的な温度調節をしてみせて。

それだけのことで、自然に変化する身体と心をコントロールしていると信じ込んでいるように。

影響を受けずにいることはできない。

それだけのことだ。

単純に。

暗灰色の雲が、一際濃く灰色の空を遮る。

あれは、雨が降る前兆の雲だと知識があればいうのだろう。

おそらく、それは正しいのだが。

単に雨を降らせる暗さの雲が、空を覆う一角にあるだけのことだと。

風は雨を伴い、気象は人の予測を超えてときに災害を持ち運ぶが。

それでも、それはそれだけのことだ。

人は生物として、雨の降る気配を知っている。

だからこそ、雨の降る暗さは精神を控えめな行動に導き、例えば、無意識のうちに雨が降りそうな日には消極的な行動になるように、生物としての調整が意識下になされ。

それは行動としては、雨が降るさいに身体が濡れないように、人工的な構造物などなかった太古、洞窟に閉じこもるといった「合理的」な行動となり発現していたのだろう。生物としてはとても正しい行動に。

しかし、いま人は人工的な覆いを造り、雨の中でも移動すること、あるいは行動することを可能としてはきたのだろうが。それでも、雨の日に人は外出がおっくうになる。商業施設では客足が鈍るといい、あるいはそれは経済動態にも影響する指標のひとつにも数えられているのだが。

それらは、ともかくとして。

灰色の空が、鈍色の雲が。

暗い空が闇を連れてくるように。

人の心持ちを暗くさせ、あるいはいまいる安全な場所から動かずにいるという選択肢を無意識にさせているのはある意味事実であっただろう。

それは、ほとんど意識に上らずに処理される。

それだけのことだ。

灰暗色の雲が空にあるだけのことで、人は今日の買い物はやめておこう、とおっくうになり思ったり。あるいは、単に今日は家にいようか、と決断をしたりするのだ。

その際、雨だから面倒だ、とおもうくらいのことはあっても。

本当に、何が人を動かしているのか。

何が意識下で決定され、そして自由意志で「自分が」雨の日に外に出ないことを決断したと思っている内側で。

本当には、何が決断を、行動を決定しているのかを。

人は、考えない。

誰も。

己の意志というものがある、という幻想を、――――。


大概の人は、抱いている。





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