表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
2章 校内ギルド
37/40

37戦目 ボスラッシュ

side:リンクス



「みんな! 回復は俺に任せて、突っ込んで……」



 ゴーストが叫ぶ。でもそれを最後まで聞くことはできなかった。すごいスピードで大きな影が突っ込んできて、言葉を強制的に中断させたからだ。



「あんたはあたしが相手してあげる。一緒に遊びましょう?」

「はっ、楽しむ暇なんて与えるつもりは無いけどなぁ……!」



 一瞬反応が遅れた。見ると鞭を構えたブライアが、ゴーストと組み合っていた。そのままお互いに横に跳び、私達から少し離れた場所で戦闘を始めていた。


 私達は全員、一瞬棒立ちで見とれてしまっていた。余りにも二人の戦闘はレベルが高かった。ブライアはまるで鞭を生き物のように自在に操ってゴーストを襲っている。それに対してゴーストは、いつも両腕にはめてる腕輪を外しメリケンサックのように握り締めて鞭を打ち落としていた。それもようやく目で追えるくらいの流れるような動きだった。



「こ、これがゴーストの本気……」

「……圧倒的」



 私の両隣で、お姉ちゃんとブレイズが呟いたのが聞こえた。全く同感だった。今までのゴーストは全力なんて全然出していなかったんだ。私達に合わせてくれていたのがわかる。



「おい、来るぞ!」



 長々と見とれていたような気がしたけど、実際はほんの数秒だった。レグルス先輩が激を飛ばし、みんな正気に戻る。慌てて振り向くと、三体のボスモンスターはこちらに向かってくるところだった。



「ど、どうしよう……!?」



 お姉ちゃんがあたふたと慌てている。ブレイズは何も言わずに薙刀を握り締めていた。そこにレグルス先輩が指示を飛ばしてきた。



「グリズリーとパラディンは俺とケルベロスの相手だ! ローズガーデンはクラーケン、フェニックスは平和の園の三人で当たれ!」



 他の人達は特に文句を言うこともなく、素早く指示通りに当たっていく。私達も呆けてる場合じゃないね。



「お姉ちゃん、ブレイズ!」

「う、うん……!」

「……この前の借りを返す」



 ブレイズは気合いが入っているようだった。この前フェニックスと戦った時は、ほとんどゴーストの力だけで勝ったようなものだったしね。私もそれを見て気合いが入る。



「よーし、いつも通りのフォーメーションで行くよ!」



 私が声をかけると、お姉ちゃんは下がり、ブレイズは前に出る。そして巨大な炎の鳥と向き合った。



「にゃっ!」



 素早く走り出す。フェニックスの体は全身燃えてるものの、触れるだけでダメージを食らうとかそういうことはないから、少しは安心して戦える。


 フェニックスは急降下して突撃してくる。それをブレイズと左右二手に分かれながら回避する。そしてそのまま鉤爪で斬りつけた。こっちからは見えないけど、多分反対側でブレイズも同じようにしてるはず。



「……やっぱり効き目低い。むぅ」



 ダメージを与えたと言ってもほんのわずかだった。フェニックスは気にした様子もなく、再び飛翔して上昇していく。


 見上げていると、下から発射された弾丸が追いかけるようにフェニックスに命中した。お姉ちゃんの攻撃だ。



「ぜ、全然ダメージ低いよ……!?」



 お姉ちゃんはフェニックスに有利な水属性。だけど直撃したにも関わらず、フェニックスの体力ゲージはほとんど減ったかどうかもわからないくらいしか動いていない。



「これは厳しいね……!」



 私は持久戦になるのも覚悟していた。でも決して倒せない相手じゃない。周りをチラリと確認すると、それぞれボスと互角かそれ以上に渡り合っている。これならなんとかなりそう。……そう思っていたのは間違いだとすぐに知ることになる。



「『女王親衛隊(クイーンズガード)』!」



 一瞬戦場の音が途切れた瞬間だったので、その声はよく響いて聞こえた。聞き慣れない声、さっき初めて聞いたばかりのブライアの声だった。反射的に声の方を向く。見るとブライアはゴーストと少し距離を取り、鞭を振り上げていた。その先端から緑色の光が飛び出す。飛んでいく光は三つに分かれ、それぞれボスモンスターへ直撃した。



「ギャオオオオオオ!!」



 変化は劇的だった。光に触れた瞬間みるみるうちに三体とも色が変わっていく。三体のボスは毒々しい紫色に変化した。それを見たエレガンスが叫ぶ。



「あ、あれは……わたくし達を強化したのと同じスキルですわ!!」

「!」



 外見からして間違いない。どうやら隙を突いてボスを強化させてきたらしい。厄介なことになったね……。


 三体のボスは私達を取り囲むように動き、一ヶ所にまとめようとする。それにつられて全員で固まる。



「ど、どうしよう……」

「ヤバいぞ、これ!?」



 焦りの声が聞こえてくる。私も冷静に見えて内心は動揺していた。いつもならお姉ちゃんをサポートしないといけないけど、言葉が出て来ない。


 そこに三人が背中を見せながら立ちはだかった。



「ここは私達に任せて下さい」

「おっ、久しぶりに共同作業いっちゃう?」

「その軽いノリはどうにかしろよ……」



 三人のギルドマスター達が、私達を庇うように立っていた。頼もしくはあるけど……不安は拭えない。三人だけでなんとかなるのだろうか?


 そう思ってる間にも取り囲んだボスは攻撃を開始した。



「いきますよ……『幻惑の花園ボタニカル・テンプテーション』!」



 カメリア先輩が地面に杖を突き立てた。そこを中心として、荒れ果てた山肌に無数の草花が咲き誇っていく。そこから色のついた霧のようなものが巻き上がる。それに触れたボスモンスターは動きが鈍くなっているようだった。



「『王者の咆哮ハウリング・エクスプロージョン』!」



 レグルス先輩がスキルを発動させた。衝撃波が広範囲に巻き起こり、ボスは吹き飛ばされて若干距離を取ることになった。そこにレグルス先輩の後ろからパラディン先輩が飛び出した。



「『栄光の突撃(ソニックチャージ)』」



 気の抜けたような声とは裏腹に、その動きは目にも止まらぬほど機敏だった。一瞬でケルベロスと距離を詰めたパラディン先輩は、突撃槍を真っ直ぐに突き出す。



「ガァァァァァ!?」



 胸元に突き刺さったことでケルベロスが苦悶の声を上げた。なんとか槍から逃れようとするが、うまく抜けないようだった。そこにレグルス先輩からの追撃が入る。



「ふん!」



 飛び上がったレグルス先輩はケルベロスの中央の頭に、拳振り下ろすようにして殴り付けた。タイミングを合わせてパラディン先輩が槍を引き抜いて下がる。ケルベロスは地面に叩きつけられて動きを止める。


 だがそこへ、危険を認識したのか、クラーケンとフェニックスが挟み撃ちにするように二人に襲いかかる。



「危ない!」



 私はとっさに動こうとしたが、間に合わない。だが二人は焦ってるようには見えなかった。



「『百花吹雪ディスパージョン・ストーム』!」



 カメリア先輩の声が響いた。周囲に咲いていた花が一斉に散り、無数の花びらが宙に舞う。そしてそれらは風に乗り、襲いかかるボスモンスターへと殺到した。


 横から攻撃を受けたボスモンスターは怯んでいた。そのまま動きが止まる。



「はっ!」

「よっと」



 特に打ち合わせしていなかったように見えた。でもレグルス先輩とパラディン先輩はスムーズに動き、それぞれボスに向かっていく。そして一撃を加えた。



「す、すごいね……」

「うん……」

「……連携が上手い」



 私達は呆然と見ていた。あの三人はそれぞれ別々のギルドに所属しているし、つい最近まで疎遠になっていたはず。それなのに今は流れるようなチームワークを見せている。これが上級者のやり方というものなのかな……?


 三人はその後も的確に動いていた。カメリア先輩が後衛でサポート、レグルス先輩とパラディン先輩は前衛で直接攻撃を繰り返しながら、三体のボスを相手取っている。後ろで眺めている私達には、攻撃がいかないように工夫しているのがわかる。



「これで!」

「とどめだ!」



 多少被弾しているものの、その立ち回りは危なげが無かった。そして三体のボスはほぼ同時に倒されることになった。三つの巨体は動かなくなり、ゆっくりと消えていく。



「すげえ……! 流石マスターっす!」

「感動しましたわ!」



 三人が戻ってくると、それぞれ盛り上がっていた。私としても身が引き締まる思いだった。これが上級生達の実力……。


 私も一年生の中では強い方だって自信があったけど、まだまだだった。前の戦いでレグルス先輩を倒したことから自惚れていたのかもしれない。でもあれもゴーストの力があってこそだった訳だし。



「……もっと努力しないと」



 傍らにいたブレイズがぼそりと呟いた。その視線は三人に向けて固定されている。私も同じ気持ちだった。更に鍛えないと、このままじゃ足を引っ張るだけだ。



「よし、向こうの加勢に行くぞ!」



 レグルス先輩が再度指示を出す。それで全員ゴースト達がいた方に視線を向ける。しかし、見える範囲にはいなかった。



「あれ、どこに……?」



 私が疑問を呟いた瞬間だった。視界が緑一色に染まり、ついで黒になった。ガキン、と何かがぶつかったような音が聞こえてきた。



「惜しいわね……!」

「ナメるなよ……!」



 遅れて脳が目の前の光景を認識する。目と鼻の先にあったのは、ゴーストの手だった。それが緑色の長い鞭を掴んでいる。


 どうやらブライアは私を狙って来てたらしい。それをゴーストが間一髪阻止したってところみたいだった。ギリギリと力比べの音が鳴っている。


 周りの皆も、一瞬のことで何が起こったのか把握できていないみたいだった。



「……はっ! 今だ、みんなかかれ!」

「よせ! 離れろ!」



 レグルス先輩が号令をかけると同時に、ゴーストがそれを打ち消すように悲鳴のような声を上げた。でも動き出そうとしていたレグルス先輩とパラディン先輩は急に止まらなかった。



「『無差別徴兵令(タイラント・オーダー)』!」



 高らかにブライアが叫んだ。同時に鞭を振り回す。すると、鞭がある程度の長さで切れた。切られた部分の鞭は二本に分かれ、空中を舞う。そして蛇のように自立して動くと、前に飛び出していた二人の首に巻き付いた。



「ぐっ……!?」

「なんだ……これ……!?」



 レグルス先輩とパラディン先輩の様子がおかしい。急に動きを止めたと思ったら苦悶の表情を浮かべている。そして一瞬力が抜けたように腕をだらんとさせている。



「うおっ!?」



 次の瞬間動き出した。レグルス先輩は拳を振りかぶりながら飛び上がる。そして近くにいたグリズリーへと思いっきり振り下ろした。ただし、動いた本人は驚愕の表情を浮かべていた。幸いグリズリーは慌てて回避していた。



「どうしたんすか、マスター!?」

「わから……ない……! 体が勝手に動いて、言うこと聞かないんだ……!」

「ええ!?」



 その間もグリズリーに殴りかかる。それを必死でグリズリーは斧を使って受け止めていた。一方パラディン先輩も同様だった。



「ちょ、ちょっと! 何するんですか!?」

「わりい……! なんかおかしい……!?」



 向こうは向こうでカメリア先輩と、互いの武器を打ち合っていた。互いに動揺の声が隠せない。


 こうなった原因は明らかだった。二人の首に巻き付いた鞭の一部。そしてゴーストに聞いたブライアの能力。



「リ、リンクスちゃん、これってもしかして……」

「うん、多分、操れるのはボスモンスターだけじゃないってことでしょ」



 よりにもよって、あの二人が敵に回るなんて最悪だった。あのスキルがどのくらい持続するかはわからないけど、ここをしのがないと大変なことになる。


 ふと、ゴーストの方を見る。どうやら今度は近くで戦うつもりみたい。



「私達も加勢しないと!」

「……望むところ」

「ひいいい……」



 どれだけ力になれるかわからないけど、今できることをやろう。そう決意して、ゴーストの方に近づいていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ