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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
2章 校内ギルド
34/40

34戦目 エキシビション

1日早めの投稿です。

『では、これよりエキシビションマッチを開催します!』



 司会をやっていたのはスモールだった。その宣言と共に静まり返っていた生徒達は爆発的な歓声を上げる。一年から三年まで、全てのプレイヤーが集まっていると流石に壮観だ。



「すごいねー!」

「こんだけ集まってるの、初めて見るしな」



 クラス毎に固まって立っている為、リンクスとジャベリンと一緒にいた。二人も辺りを見回して、ワクワクした声を上げている。



「しかし、観客も含めると驚くべき数になるよな」



 今回は外部から一般のプレイヤーも見学に参加している。フィールド内には観客席が設置されており、ぎっしりとプレイヤーが蠢いていた。観客席は円形……というかすりばち状に設置されており、まるでスタジアムのようになっていた。



「ねー、一万人超えるんじゃない?」

「全くだな」



 特に一年の盛り上がりは半端じゃなかった。まぁ入学してから最初のイベントだし、無理もないが。



「ところでゴーストの出番はいつなの?」

「ああ、一年は最初になるらしい」



 事前に打ち合わせしたところによると、一年、二年、三年の順に代表選手がタッグマッチを行う流れとなるらしい。つまり俺とブレイズが一番最初だ。



「……ゴースト様」

「お?」



 いつの間にかブレイズが近づいていた。こっそりクラスから抜け出してきたようだ。



「調子はどう?」

「……万全です」



 自信満々な顔で、わずかに微笑んでいる。特訓のおかげで自信がついたのだろう。



『出場選手は、所定の位置に集まって下さい』



 雑談していると集合を呼び掛ける声がした。聞き流していたがスピーチは終わったらしい。



「おっと、そろそろ行くか」

「……はい」

「二人とも頑張ってね!」

「負けんなよ」



 二人が笑顔で送り出してくれた。と同時にほとんどの生徒は観客席へと移動していく。俺達は観客席の裏側へと向かった。そこにはスモールが待ち構えていた。



「先生、お待たせしました」

「ええ、お二人とも、準備はいいですか?」

「……万全です」



 ブレイズが代わりに答える。もちろん俺も言うまでもなく、準備万端だ。



「ところで先生、対戦相手は誰なんですか?」

「それは秘密です。もちろん相手にも話はしてませんけど……もしかしたら情報が漏れているかもしれませんね」



 まぁ、完全に秘密にできていた訳ではないし、どこからか広まっていてもおかしくはないな。



「まぁ相手が誰であろうと、正面から倒す。それでいいか、ブレイズ?」

「……大丈夫です」

「二人とも頼もしいですね。頑張って下さい!」



 スモールが笑顔で送り出すと共に、司会と実況の為に表に出ていく。俺とブレイズは二つある入場口の一つの中で待機していた。反対側の入場口から相手が現れるはずだ。



『お待たせしました。まず一年生から試合を始めていきたいと思います! ……それでは選手の入場です!』



 入場口をくぐり抜けて出ていく。暗い通路から出て歓声の飛び交う中に出ると、明るくて少し眩しく感じる。



「ひゃー、この雰囲気久しぶりだな」



 思えば災害衆にいた時は正体を隠していたから、生身でこんな大勢の前に出るのは初めてだ。だが、ある意味慣れた雰囲気とも言える。



「ブレイズ、大丈夫か?」

「……も、もちろん」

「今ちょっと噛まなかったか?」



 少し緊張してるのかもしれない。ここは俺がリードしなければ。



「さて、対戦相手は……ん!?」



 俺は目を丸くした。正直驚きが隠せない。反対側の入場口、そこから出てきたのはなんと、グリズリーとエレガンスだった。



「なんでお前らが……」



 二人は不敵な笑みを浮かべている。自信満々と言った感じだ。



「はっ、そんなことはどうでもいい」

「そうですわ! 言えることは一つ。ここで貴方を倒す、それだけですわ!」



 一体何があったのか。どうして二人が手を組んだのか、あの自信はなんなのか。気になることは山ほどある。だが、今は余計なことを考えている場合じゃない。やるべきことは一つだ。



「いくぞ、ブレイズ」

「……了解!」



 走り出そうとしたところでバトル開始の合図が響く。と同時に向こうの二人も走り出した。フィールドの真ん中辺りでぶつかり合う。


 フィールドはよく見えるようにとの配慮なのか、障害物が全く無い。純粋に実力勝負となるだろう。



「おらぁ!」



 互いに目の前まで来たところで、グリズリーが斧を振り上げた。この前と同じだ。俺は受け止めようと手を突き出す。手のひらと斧の刃がぶつかり合って金属音が鳴る。



「ふんっ!」

「……何っ!?」



 だがそれでは終わらなかった。前回は受け止められたはずなのに、グリズリーは力任せに振り切った。結果として俺の手のひらが斬られた形となり、ダメージを負う。



「ばかな……!?」



 予想外の展開だった。今の威力……体感から言って相当レベルが高いはず。だがそんなはずはない。そんな一朝一夕でレベルが上がる訳ない。なのにこの威力……不可解だった。



「はぁっ!」



 掛け声と共に何かがぶつかる音が聞こえた。そして薙刀を構えたブレイズが後退りしていくのが見えた。



「ブレイズ!?」



 視線の方向を変えると、傘を突き出した格好で止まっているエレガンスがいた。この状況から察するに、エレガンスがパワーで押し勝ったのだろう。



「……どうして」



 ブレイズも無表情ながら動揺しているのがわかる。以前エレガンスとやり合った時には、スピードで翻弄されることはあってもパワーで押し負けるなんてことはなかった。



「一体何があったんだ……」



 気にしてる場合ではない。わかっていても気になってしょうがなかった。一方、向こうのコンビは余裕の態度を崩さない。



「これでお前らをぶっ潰してやれるなぁ!」

「グリズリー、あんまり時間かけるとまずいですわよ」

「おっと、そうだったな」



 何か気になることを言っていたようだが、それについて考える暇はなかった。二人が追撃を仕掛けてきたからだ。



「うらうらうらぁ!」

「いきますわ!」



 そこから猛攻が始まった。グリズリーもエレガンスも、スピードとパワーが以前戦った時と段違いだ。このわずかな期間にどうして……。


 俺は考えながらも防御に徹していた。だが俺は本来スピードもパワーも平均並みに近い。あくまでレベルが高いから通用していただけだ。だからスキルを活用する。



「『万死一生デッド・アンド・アライブ』!」



 少しずつ削られていた体力を一気に回復させた。これで準備は整った。



「『最悪の終わ……』」

「させるかよ!」



 俺が手のひらを向けた途端、グリズリーは離れるのではなく距離を詰めてきた。まさか読まれたというのか。


 俺のスキル『最悪の終わり』は手のひらから光線を発射する関係上、遠くにいる相手を狙い撃ちするのは得意だ。だが飛び道具であるから逆に、近づいて来られると狙いにくい。


 そういう意味ではグリズリーの対処は完璧だった。この対応は、完全に俺の動きを読まれている。



「ふん!」



 斧の一撃を、咄嗟に左腕を上げてガードする。だが、まともに喰らってしまい、ダメージと痺れが巻き起こる。



「くっ……」



 これは流れが悪い。何かイレギュラーなことが無いと押される一方だ。そう思ってグリズリーから一端距離を取りつつ、ブレイズの方を見た。



「はっ、はっ、はぁっ!」

「……くっ!」



 ブレイズも押され気味だった。エレガンスはひたすら接近して突きを繰り出す。前回の対戦で、ブレイズは懐に近づかれ過ぎると少々対応がしづらいと言うのを、わかった上での攻撃だ。



「なに余所見してやがる!」



 一瞬向こうに気を取られていた。その隙を狙ってグリズリーが斧を振るう。俺は拳を作ってカウンターのように斧に打ち付けた。互いに攻撃が弾かれる。



「おかしい……」



 どう考えても不自然だ。この短期間にここまで強化されるなんて……。



「『豪華剣乱パレイシャル・ストライク』!」



 自分のことにだけ集中するのもまずい。向こうではエレガンスがスキルを使った。傘が閉じた状態で高速回転し、ドリルのようになっている。そしてそのままブレイズへと迫る。



「ブレイズ!」

「……『炎の円舞曲(バーニング・ワルツ)』」



 心配で思わず叫んだが、ブレイズは冷静だった。自身を中心に薙刀を回し始める。薙刀から尾を引くように炎が流れ、みるみるうちに炎の球となって、ブレイズを包み込んだ。



「くっ!」



 ドリルと炎の壁が激突し、赤い火の粉が飛び散る。そのまま拮抗しているように見えた。


 俺はというと、さっきから回避に徹していた。グリズリーはあんまりスピードは速くないので、全力で回避すればなんとか持たせることはできる。



「くそっ、チョロチョロしやがって!」



 そしてグリズリーは更に焦っているように見えた。さっきの『時間かけるとまずい』と言ったのが、関係あるのか?



「はあっ!」



 エレガンスが気合いを入れて踏み込む。するとドリルが炎の壁を通過した。最初は少し穴が開いた程度だったが、徐々に穴は大きくなりそのまま貫通する。



「……っ!」



 炎が霧散すると同時に、ブレイズの姿があらわになる。そして体をくの字に曲げて吹き飛ばされる。



「とどめですわ!」



 エレガンスはその隙を見逃さなかった。自身も走り出し、ブレイズを追いかける。そして距離を詰めると、傘を振るう。


 俺も追いかけようとしたが、距離が少し遠い。グリズリーを放って行くには厳しかった。



「……かはっ」



 無情にもブレイズはとどめを刺され、その場に倒れ伏した。勝ち誇っているエレガンスがいる。



「やりましたわ!」

「おい、エレガンス! やったなら、こっち来て手伝え!」



 余韻に浸っているようだが、グリズリーが大声で呼ぶとこっちにやってきた。そして二対一で戦闘しようとする。



「だが甘い」



 俺は二人が合流した瞬間を狙って体をずらした。位置が入れ替わり、俺とグリズリーの間にエレガンスが入る形となる。



「きゃ!?」

「お、おい、邪魔だ!」



 向きをくるりと反転させると、二人の声を背に受けながら走り出した。多分すぐ追い付かれるだろうが、ほんの少し距離を離せば充分だ。そのまま死亡したブレイズのアバターのところまで向かう。



「『亡者の行進デスパレート・パレード』」



 スキルを使いながら横目で向こうを見ると、慌てて二人が追いかけてきていた。だがもう遅い。ブレイズは復活し、立ち上がっていた。



「……油断しました」

「気にするな。それよりまだいけるか?」

「……今度こそは」



 少し申し訳なさそうにしているブレイズの背中を叩く。すると、気合いを入れ直したように鋭い目付きとなった。



「お前のせいで、復活したじゃねーか!」

「わたくしのせいにしないで下さる!?」



 向こうはもめていた。どうやらチームワークなんてものは、皆無のようだった。チャンスだな。



「ブレイズ!」

「……!」



 俺達は二手に別れ、あの二人を挟み込むようにして左右から回り込む。そして攻撃していく。


 但し、さっきとは相手が逆。ブレイズがグリズリーを狙い、俺がエレガンスを狙った。



「あん!?」

「なんですの!?」



 二人も言い争ってる場合じゃないと気づいたらしい。背中合わせになって迎撃しようとする。俺の拳をエレガンスが傘で受け止める。が、予想外の事態が起きた。



「きゃあ!」

「えっ?」



 エレガンスはかなり押されて、バランスを崩した。攻撃した俺が言うのもなんだが、予想外だった。今のは確かに全力でやった。だが、グリズリーと同じように拮抗するものと思っていた。だから簡単に吹き飛んだことに驚いた。



「ま、まずいですわ、グリズリー! 『切れて』しまいましたわ!?」

「ちっ……、こうなりゃこのまま押し切るしかねぇな!」



 何かおかしな会話をしているようだが……とりあえず、今ならいけるかもしれない。俺は両手足を使ってエレガンスに打撃を加えていく。自分のダメージは気にせず、だ。……よし、いい感じに『死』が溜まった。



「『最悪の終わり(バッド・デッドエンド)』!」

「かはっ……!」



 傘を強引に押し退けて、もう片方の手でスキルを放つ。黒い光線は、狙い通りエレガンスの胸を貫いた。体力がゼロになったエレガンスは、そのまま前のめりに倒れる。



「くそっ、『荒ぶる大地(クエイクアックス)』!」



 エレガンスが倒れたことで破れかぶれになったのか、グリズリーはデタラメにスキルを放つ。だがそれは当たらない。ブレイズは高く飛び上がり、地面を伝う衝撃波を回避した。そしてそのままグリズリーの上から攻撃を仕掛けた。



「……『炎の輪舞曲(バーニング・ロンド)』」



 炎の輪がグリズリーを襲う。それを斧で防御した。



「喰らうかぁ! ……あ?」



 ブレイズの薙刀がグリズリーの心臓を貫いていた。スキルを使ったのは、対応させて隙を作る為の囮だったようだ。



「く、くそが……!」



 グリズリーは鬼の形相を浮かべながら倒れていった。

いつか評価が頂けますよう、精進致します。

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