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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
2章 校内ギルド
31/40

31戦目 先輩達

「という訳なので、ギルド戦して下さい」

「いきなり現れて何を言うかと思えば……」



 部内の方針を決めた次の日。俺は朝から三年の教室を訪ねていた。そんな俺の前で大柄な三年生、外濠(そとぼり)先輩がため息をついていた。



「そんなホイホイ受けられる訳ないだろ」

「どうしてですか。基本的に下位ギルドからの挑戦は断れないはずでしょう?」



 確か校則があったはずと、俺は首を傾げる。すると外濠先輩はますますため息を深くしていた。



「あのなぁ、確かに普段ならそうだが……他の校則については調べてないのか?」

「といいますと?」

「同じギルド同士が連続でギルド戦をすることはできない、って校則もあるんだよ」



 それは知らなかった。その理屈だと、うちも百獣団もどこか他のギルドと戦わないといけないことになる。



「というか、なんでうちとやりたいんだ?」

「いや、勝てそうだと思ったので」

「はっきり言うな!?」



 外濠先輩は席に座ったまま、腕を組み直す。俺は立ったまま、それを見ていた。



「霜屋……よく考えろ。もしうちとお前達がランキングを賭けて勝負したとして、お前達が勝ったらどうなる?」

「うちが四位になるってことじゃ?」

「つまり、他のギルドから挑戦が殺到するだろうな」

「…………」



 確かに言うとおりだ。俺達のランキングが上がれば、今度は逆に挑戦される立場になるだろう。下位ギルドからの挑戦が断れないなら、今度は俺達が断れない立場になる。



「もちろん、実力的にはお前の方が上だろう。だがお前一人に負担がかかり続けて、いつまでも勝ち続けることができると思うか?」

「まぁ、無理でしょうね」



 災害衆だって、最強ではあったが無敗だった訳じゃない。当然何度も敗けを経験している。そう考えると、仮に平和の園が四位に上がったとしても、他のギルドに負けていつかは転落するだろう。



「うーん……いいアイディアだと思ったんですけどね」

「今のまま、お前一人に頼りっぱなしじゃ、いずれは崩壊するだろう」



 先輩の言うとおりだった。やはりみんなを鍛えて強くしないと、やっていけない。



「わかりました、考え直すことにします」

「そうしろ。戦うことになったら容赦はしないが、応援はしてるからな」



 やっぱり外濠先輩は気のいい人だ。しみじみ思っていると、そこに声がかけられた。



「何をしてるんですか」



 声の方に先輩と共に視線がいく。そこにいたのは気の強そうな女子……カメリア先輩だった。



天ノ川(あまのがわ)……」



 外濠先輩が呟く。どうやら天ノ川先輩というらしい。そういえば、本名は確認してなかったな。



「ここは三年の教室ですよ。一年生が何してるんですか」

「そう言うな。霜屋はちょっと雑談しに来ただけだ」

「そうですか。なら用件が済んだら、さっさと出ていって下さい」



 相変わらず、きつい態度を隠そうともしない。男嫌いだから仕方ないのだろうが……。



「おっはよー! あれ、もしかして霜屋ちゃん?」



 外濠先輩が何か言い返す前に、陽気な声により遮られた。この軽い喋り方は……。



祇園(ぎおん)、朝からうるさいぞ」

「そー言うなって、外濠!」



 やはりパラディン先輩だった。まさかと思ったが、百獣団、黒騎士、ローズガーデンと三ギルドのギルドマスターが、全員同じクラスだったとは……。



「天ノ川ちゃんも、おはよー」

「話しかけないで」



 天ノ川先輩の態度が更に硬くなった気がする。そして祇園先輩を睨み付けると、さっさと行ってしまった。



「あらら、フラレちゃった。まぁしょーがないか」



 祇園先輩も鼻歌なんか歌いながら自身の席に向かう。



「やれやれ……困ったもんだ」

「外濠先輩、あの二人って仲悪いんですか?」



 俺の言葉に、先輩は一瞬チラリと視線を外したが、何か諦めたように話し始めた。



「実はあの二人と俺、三人は幼なじみでな」

「そうなんですか!」

「昔は仲が良かったんだが……小学生の時に色々あってな。天ノ川はすっかり男嫌いになってしまった」

「へえ……」

「俺としては昔のように戻れたらと思っているんだが……難しいだろうな」



 流石に深い事情を突っ込んで聞く気にはなれなかった。







「えー、皆さんにお知らせがあります」



 外濠先輩との会話を切り上げ戻ってくると、すぐにホームルームが始まった。船戸先生の声が教室に響く。



「もうすぐエキシビションマッチを開催します」



 クラスの反応は様々だった。戸惑っている者、わかっていると言いたげに落ち着いている者と分かれている。



「はーい、静かに! これは毎年この時期に恒例で行ってる行事ですが、簡単に言えば各学年から代表者を選出してみんなの前で対戦を行ってもらいます」



 なるほど、要するに見世物のようなものか。あんまり興味ないな……。



「そして、その日は外部からの来賓の方に見学して頂く形となります」



 話が読めてきた。おそらく学校外へのアピールを兼ねているのだろう。やはり学校としても、生徒の募集は重要な課題だからな。



「来賓の皆様に失礼のないように、よろしくお願いします。ではこれでホームルームを終わります」



 一時間目の授業に向けて準備をしていく。そこでふと畑江の奴と目が合った。



「……?」



 だが何か様子が違った。この前までは憎々しい言わんばかりの目付きで俺を睨んでいたのに、何か余裕のようなものが感じられる表情だった。何かあったのか?



「あ、霜屋君」



 しかしその考察は中断することになる。先生に呼び止められたからだ。



「今日、昼休みに時間ありますか?」

「構いませんが」



 それから昼休み。俺は教室でさっさと昼食を取ると、職員室を訪れていた。まっすぐ船戸先生の机まで向かう。



「失礼します。……船戸先生」

「霜屋君。ちょっと待って下さいね」



 先生に連れられて、職員室の隅っこにあるソファーに座り向かい合った。



「それで、ご用件は?」

「はい。単刀直入に言いますと、エキシビションマッチに出てもらいたいんです」



 嫌な予感はしていたが、的中してしまったようだ。断りたいところだが……話だけでも聞いておくか。



「えっと、どうして俺なんですか?」

「エキシビションマッチは学外に向けたデモンストレーションです。つまり……」

「なるほど。できればレベルの高い戦いを見せたいということですか」

「……察しがいいですね」



 先生は苦笑いしていた。確かに客観的に見ても、一年生の中で最強は俺だろうな。



「うーん……正直目立つのはあんまりやりたくないんですが……」



 俺は難色を示していた。だが、先生はそこで似合わないニヤリとした笑みを浮かべる。



「ただとは言いませんよ?」

「というと?」

「参加者には特別報酬として、素材アイテムをプレゼントすることになってます」

「ほう……」



 少し興味が湧いてきた。何かは知らないが、もらえる物はもらっておいた方がお得だろう。だが引き受ける前に、確認しておくべきこともある。



「俺が出るとして……相手はどうなるんですか?」

「それなんですが……実はエキシビションマッチは、二対二のタッグマッチなんです」



 予想外だった。てっきり一対一をイメージしていたので、驚きが隠せない。



「え、じゃあそもそもパートナーはどうするんですか?」

「パートナーは、もし霜屋君が引き受けてくれるなら、自由に選んでもらって構いません。……もちろん一年生の中からですよ?」

「わかりました。では対戦相手は……?」

「それは今、検討中ですが……仮に決まっても、当日まではお互いに秘密にしておくことになってます」



 どうやら情報収集は難しそうだ。決まりなら仕方がないが。



「それで、どうですか?」



 先生が決断を促してくる。その目は期待に満ちているように見えた。俺が引き受けることを期待してるのだろう。


 素早く頭の中で計算を始めた。俺が出れば素材が手に入る。それがどんなものかはわからないが、役に立たない可能性は低い。俺にとって役に立たなくても、ギルドの誰かに使える可能性はある。俺が多少我慢すれば済む話か……。



「……わかりました。引き受けましょう」

「そうですか! 助かります!」



 先生はほっとした様に息を吐いていた。俺が断ったら、また交渉の手間が増えるだろうからな。



「えっと、やっぱりこの件は内密にしておいた方がいいんですかね?」

「そうですね……ですが、霜屋君もパートナー探しで説明の必要があるでしょうから……多少噂が漏れるのは覚悟の上です」



 まぁ高校生同士で噂が広まるなんて、あっという間だろう。公然の秘密になりかねないな。



「じゃあパートナー探しをよろしくお願いしますね。決まったら報告に来て下さい」

「わかりました」



 俺は丁寧に頭を下げて、職員室を後にした。そして、その日の放課後、俺達は部室に集まっていた。



「……という訳で、エキシビションマッチに出場することになった」

「ほぇー……すごいじゃん、真偽君!」

「お、おめでとう……」



 姪原姉妹は笑顔で称賛を送ってくれた。が、一縷の様子がおかしい。下を向いて何かぶつぶつ言っている。



「一縷、どうかしたか?」

「……!」



 俺が話しかけると、一縷は勢いよく顔を上げた。そしてバッと手を高く挙げる。それに驚きつつも、話を促す。



「お、おお……どうした?」

「……ぜひ! パートナーとして出たいです!」



 ものすごい気合いだった。傍目からでもやる気がみなぎっているのがわかる。物静かな一縷らしからぬ言動だった。



「うーん……」

「……お願いします!」



 俺が考えていると、今度は机にぶつけそうな勢いで頭を下げてきた。そのまま微動だにしない。



「いいんじゃない?」

「投網?」

「こんなに熱意が溢れてるんだしさ、一緒に出てあげたら?」

「そうだな……網目先輩は二年だから無理だとして……投網は出たいとかないのか?」



 そう言うと、一縷は頭を下げたまま投網の方を向いた。ここからでは表情は窺えないが、投網がビクッとしたことからすごい顔になっているだろうと思う。



「わ、私はいいよ!? 特に興味ないし、一縷ちゃんに譲るから! だからそんな目で見ないでよ!?」



 半ば悲鳴じみた発言に、一縷はゆっくりと頭を戻して下げたままに戻った。動きが若干ホラーっぽい。



「うーん、まぁそんなに出たいなら、お願いしようかな」

「……ありがとうございます!」



 顔を上げた一縷は満面の笑みを見せてきた。普段の無表情キャラのイメージが崩れるほどの笑顔だった。



「さて、じゃあこの話は明日先生に報告するとして……もう一つ報告があるんだ」



 俺は今朝の外濠先輩とのやり取りについて説明した。聞くにつれて、みんなは何かを考え込むような表情になっていく。



「そっか……そう言われればそうだよね」

「わ、私もよく知らなかったから……」

「……難しい」

「だからまぁ、ギルド戦の前に特訓が必要かなと思ってさ」



 そこで投網が浮かない顔になった。何か言いにくそうに口を開く。



「やっぱり、私達が真偽君に比べて弱すぎるんだよね……」



 聞き捨てならなかった。俺はすぐさま待ったをかける。



「そんなことない」

「真偽君?」

「俺はみんなのこと、足手まといとか思ったことはないぞ」

「でも……」

「もしそう思ってるなら、他の強いギルドに移籍してるはずだろう?」

「うん……」

「だからさ、俺は居心地がいいからここに居るんだよ。強いとか弱いとか関係ないさ」



 そこまで俺が説得すると、少しは納得したようだった。網目先輩と一縷も少し顔が晴れる。



「ありがとね、真偽君」

「気にするな」

すみません、次回更新は少し遅れるかもしれません。

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