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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
2章 校内ギルド
28/40

28戦目 フェニックス

 山頂に近づいていく。ある一定の距離を越えたところで、空気が変わった。辺りが静かになったように感じたのだ。特に境界がある訳じゃないが、別世界に踏み込んだように。


 久しぶりに味わう感覚だった。ボスモンスターに近づくと大抵こういった感覚を味わう。みんなもそれを感じ取ったようだった。



「そろそろ動き出すはずだな」



 それぞれ武器を構えた。そしてペースを落としてゆっくり登っていく。



「ギャオオオオオォォォ!」



 山頂から大声と共に何かが飛び上がった。太陽からの逆光を受けて、大きな影が俺達に被さる。


 この前みたのと同じ、体が燃え上がっている巨大な鳥、フェニックスだ。真っ赤に染まった瞳は俺達を鋭く睨み付けている。



「くるぞ!」

「どうするの!?」

「まずは様子見だ! 回避に徹して攻撃パターンを見極めよう!」

「了解!」



 俺の言葉にそれぞれ体勢を整える。そして遠距離攻撃が使えるティアーが、最初に攻撃を仕掛けた。水の弾丸がフェニックスの腹に直撃する。



「ギャオオ!」

「ひいっ!」



 案の定、ダメージを与えたことで、標的をティアーに定めたようだった。フェニックスは一瞬上に羽ばたくと、急降下しながら突撃してくる。



「にゃっ!」

「……なんの」



 直線的な攻撃だったので見切るのは容易かった。ブレイズとリンクスは回避に加えて、すれ違い様に一撃を加える余裕まであった。フェニックスの体力がわずかに減る。



「……効き目が悪い」



 ブレイズは、思ったよりもダメージを与えられなかったことに不満そうだった。無理もない。火属性同士では攻撃の効果が薄いのは、予想していたことだった。しかも相手がボスともなれば、その防御力は推して知るべしだろう。



「ひいぃぃ……!」



 一方でティアーはわたわたしながら逃げ回っていた。元々遠距離戦が得意だが、今回は相手が悪い。まず単純に相手が大きくて空を飛べるから、距離を詰められやすい。加えてティアーはスピードもそれほど速くない。唯一フェニックスに効果的な攻撃を加えたことで、標的にされるのは当たり前だった。


 かろうじてフェニックスの攻撃を回避するティアー。反撃するどころではなさそうだった。



「いかんな……。リンクス、ティアーのカバーに回れる?」

「任せて!」



 素早く飛び跳ねながら移動していくリンクス。そして俺とブレイズが二人残った。



「……どうしますか」

「回復役の俺としてはあれだけど……前に出るか。前衛で攻撃を仕掛けよう」

「……了解です」



 フェニックスは再び急降下してきた。先ほどと同じパターンだ。それをブレイズと二手に別れながら回避する。そして通り過ぎる瞬間を狙って殴り付けた。



「ふんっ!」

「……はっ!」



 両方から挟まれるように攻撃を受けたフェニックスは、一瞬動きを止めた。地面スレスレを飛んでいたので、そのまま地面をこするように落ちる。


 あれ? もしかしてこれ、いけるか? 


 ふと思い付いた事があった。それを実行すべく、俺は飛び上がるとフェニックスの背中に着地した。



「……ゴースト様?」



 それをブレイズが不思議そうに見ている。ティアーも、守りに入っていたリンクスもだ。



「ギャオ!」



 フェニックスは翼を羽ばたかせて、再び上昇しようとする。が、俺は背中に乗ったまま思いっきり、殴り付けた。



「ギャ!?」



 フェニックスの戸惑ったような悲鳴。AIが搭載されているとはいえ、リアルな反応につい感心してしまう。それからは同じことの繰り返しだった。



「てい」

「ギャ!?」

「てい」

「ギャ!?」

「てい」

「ギャ!?」



 飛ぼうとする度に上から殴り付けて叩き落とす。そして俺はトランポリンに乗っているかのように、背中の上で跳ねていた。ステータス差を用いた、作戦も何もない完全に力任せの強引な戦法だった。



「せーのっ!」

「ギャオオオオオ!?」



 そして最後に両手を使って全力で殴る。フェニックスは断末魔の悲鳴を上げて、力尽きるように落ちていった。やがてピクリとも動かなくなり、そのまま体が光り出す。そして音もなく消滅していった。



「「「…………」」」

「……………………勝ったな」



 唖然としたように俺を見つめてくる三人。俺はボソッと呟くのが精一杯だった。だがそれを聞くと、すぐさまツッコミが飛んでくる。



「いやいやいや! 何やってんの!?」



 リンクスに勢いよく詰められる。俺は両手を挙げて降参の意を示した。



「つい……」

「つい、じゃないから! なんで、一人で圧倒してるのさー!?」



 返す言葉もなかった。いつもの癖というか、勝てそうだと思うと独断専行したくなったというか……。



「えーと、その、あれだ。もしもの場合は俺が一人でなんとかするって話だっただろう?」

「今はもしもの場合じゃないよねぇ!?」



 責められてたじたじになるしかなかった。しかしティアーとブレイズは、別の感想を持っていたようだった。



「ボ、ボスを殴って押さえつけるなんて……ひぇぇぇ……」

「……すごい。流石としか言えない」



 ブレイズは感心してくれているようだが、ティアーは感心を通り越して怖がっているようだ。やり過ぎたかな。そしてリンクスのお説教は続いていた。



「今回は協力して戦うのが、テーマだったでしょー!」

「わかった、悪かったって……」



 いかん、このまま責められ続けるのは分が悪い。話題を変えねば。



「えーと、そうだ! ドロップ! ドロップを確認しようぜ!」

「もー、ゴーストは……。それもそうだけどね」



 納得していないというか、話題逸らしをわかってて付き合ってくれたようだ。リンクスもそこまで厳しくはない。


 ドロップとは、対人戦では発生しない報酬のことだ。具体的には装備に使えるアイテムの事を指す。それらは主にボスモンスターを倒した時に入手するか、ゲーム内のショップで購入するかだ。また種類も様々だ。


 例えば剣や盾のような武器がそのまま落ちることもあるし、武器の素材のようなものが落ちることもある。活用方法は様々だ。ボスモンスターを倒すのは経験値を稼ぐのに加えて、アイテムを入手する為もある。



「何かあったかー?」

「うーん、こっちは無いねー……」

「み、見当たらないよ……」

「……あった」



 もしかしたらドロップゼロも覚悟していたが、ブレイズの呟きにみんな注目した。ぞろぞろと、ブレイズのそばにみんなで集まる。



「なになに、何があったの?」

「……これ」



 ブレイズが差し出して見せたのは、一枚の羽だった。真っ赤に染められた、三十センチ程の大きな羽。



「間違いなくフェニックスのドロップだな……どれどれ」



 メニュー画面を呼び出し、アイテムの詳細表示機能を起動する。これは全プレイヤーに備わっている機能なので、誰でも使うことができる。



「『炎鳥王の羽』か……」



 説明によれば、火属性の装備に使うと強化素材になり得ると書いてあった。これは使えるな。



「これはもちろん……」

「うん、そうだね」

「だ、妥当だと思う……」

「……?」



 俺達は三人で頷き合う。だが、肝心のブレイズだけがなんのことかわかってないようだ。代表して俺が口を開く。



「これはブレイズの強化の為に使おうって、言ってるんだよ」

「……!?」



 ブレイズは眼を見開いて驚いていた。そして狼狽し始めた。



「……それは、どうかと」

「どうして?」

「……ど、どうしてって。これは、ほとんどゴースト様のおかげで手に入れたものだし……」

「俺なら構わないよ」



 リンクスが不思議そうに問いかけると、ブレイズは更に焦りだした。俺は手を振って気にするなと告げる。



「……で、でも」

「うーん、ティアー、聞いていいか?」

「ふ、ふぇ? なぁに?」



 俺は気にしていたことを質問してみた。



「うちのギルドではさ、みんなで協力して手に入れた場合ドロップは誰が取ることになってるんだ? その辺決まりはあるのか?」

「そ、それは特に決まってなかったかな……。そもそも、ボスを倒すなんて縁のない話だったから……」



 どうやら平和の園は、ボスを倒したことなかったらしい。まぁ仲のいい者同士で作ったようなギルドだったみたいだし、意外って程でもないか。



「なら、別にブレイズが貰ってもいいはずだ」

「……でも」

「じゃあ倒した俺の権限で、ブレイズにあげよう。それでいいだろ?」



 それでもブレイズは躊躇していた。なので俺は話を強引にまとめようとした。こうでもしないと、受け取って貰えないと思うしな。ティアーとリンクスも笑顔で頷いた。



「……みんな、ありがとう」



 普段表情を表に出すことの少ないブレイズだが、今は微笑んでいた。



「さて、これからどうしよ?」



 リンクスがみんなに呼び掛ける。その言葉も尤もだ。なんせ俺のせい……ではなく、おかげで予想以上にフェニックスの討伐が早く終わってしまったからな。そこで俺が提案を出す。



「それなら、他のボスを探しに行くのはどうだ?」

「……」

「な、なんだリンクス。その疑わしそうな目付きは」



 思わずたじろいでしまった。しかしリンクスは目付きを隠そうともしていない。



「いや、他のボスのところに行くのはいいけど……」

「けど?」

「また一人で倒すつもりじゃないよね?」

「うっ!?」



 半分くらいは図星だった。時間がかかりそうなら、俺が始末をつけようと思っていた。



「もー、だからそれじゃダメなんだって」

「わかってるよ……染み込んだ癖がな」



 どうにも単独行動の癖が抜けない。今まではそれで怒られたことなんてなかったし。



「災害衆ではそんなことなかったの?」

「ぶっちゃけ適当だったな。俺は回復役だったけど、気が向いたら回復する感じで良かったし」

「それギルドって言えるのかな……」



 呆れられる自覚はある。他のギルドでは通じないだろう、非常識だってことも。



「とにかく! 今度はちゃんとチームプレーで倒すからね。わかった?」

「だいたいは」

「大丈夫かな……」



 不安そうな目で見られている。本当に自重しないといかんな。



「じゃあ早速他のボスのところに行こ!」



 リンクスが音頭を取って、全員で話しながらどこへ向かうかを決めていく。この日はあと二体のボスを倒すことに成功した。……もちろんみんなで協力して。



「お疲れー」

「ドロップも溜まって良かったな」



 ティアーの情報を元にして、サーバー内のボスを倒していった。フェニックスが最強だけあって、他のボスは実力的にやや落ちるものだった。なので、倒すのはそこまで難しくなかった。しかもティアーとリンクスの武器に使えそうなドロップも手に入った。



「さて、素材が手に入ったことだし……できれば早めに使っておきたいところだが」



 デイドリにおいて、アイテム及びゲーム内通貨は奪い取ることができる。それは通常のステージによる対戦では起こらず、フィールド内で戦闘した場合に限る。


 なのでフィールド内をうろつく際は、充分に警戒しておかないといけない。うっかり倒されて資金の大部分を失った、なんて間抜けだが悲惨な事態もあり得るからだ。


 ちなみにステージで勝利した場合は、運営というかシステムから報酬としてお金が貰える。敗者はプラスマイナスゼロだが。



「で、でも、簡単に使うのはどうかな……?」



 ティアーの懸念もわかる。弱い武器に強い素材を使っても大した強化には繋がらない。できれば強い武器の改造に使いたいところだ。



「その点は大丈夫だ」



 以前ティアーとブレイズにあげた、銃と薙刀。あれらはかなりレア度の高いものだし、強化のベースに使うには充分だろう。

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