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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
2章 校内ギルド
26/40

26戦目 VSエレガンス

ポイント評価して頂き、大変感謝してます!

 エレガンスは、ずかずかと人波を掻き分けて前に出てくる。そして俺の前に立つと、ズバッと指を突き付けて高らかに言い放った。



「勝負ですわ!」

「断る」

「へっ?」



 間髪入れずに答える。するとエレガンスは呆気に取られたような顔をしていた。俺はそれに背を向けて、話を戻す。



「どうする? 最初は俺とジャベリンでやるか?」

「お、おお……」

「あの、ゴースト……?」



 二人とも俺の後ろをチラチラ窺っていた。続けて何か言おうとすると、その前にエレガンスが三人に割り込んできた。



「ちょちょちょ! お待ちなさい!」

「なんだ、うるさいな」

「何をあっさり断ってますの!?」

「受けるかどうかは俺の自由だろう」

「そこは受けて立つところでしょう!?」



 気持ちはわかるが……それとこれは別だ。ぶっちゃけめんどくさいので、関わりたくない。そう思っていると、しれっとメイドが話し始めた。



「お嬢様、面白……ではなく残念ですが、ここは引き下がりましょう」

「嫌ですわ! ……今、面白いって言いました?」

「失礼いたしました。つい本音が」

「謝罪になってませんわよ!?」



 またしても面白漫才を繰り広げていた。どうしたらいいのか、これ。



「というか、この二人D組だったのか……」

「私も知らなかった……」

「えーと、二人とも知り合いなのか?」



 ジャベリンが、俺とリンクスの顔を交互に見る。展開についていけてないらしい。



「知り合いと言うか……知り合いたくないというか……」

「まぁ、知り合いかな?」



 俺達の会話が聞こえたのか、エレガンスはこちらを向いてキッと睨み付けてきた。



「ちょっと、聞こえてますわよ!」

「なんだ、うるさいな……とにかく俺は戦うつもりはない」

「逃げるんですの!? さっきは戦ってたじゃないですの!」

「だから、二連戦はめんどくさいから嫌なんだ」

「ぐぬぬ……」



 お嬢様らしからぬ歯ぎしりをしていた。いや、実際お金持ちなのかどうかは知らないが。



「なぁ、ゴースト」

「なんだよ」

「もう一度、戦ってやったらどうだ?」

「ジャベリン……俺はやりたくないっていってるだろ?」

「戦ってあげたら?」

「リンクスまで……」



 二人揃って俺を説得にかかる。一体どういう了見なのか。



「グリズリーとはやったんだしさ、エレガンスとはやらないのはおかしいよ」

「それに俺も、お前の戦いをもう一度見たいってのもある」

「なんだよ、お前の都合か」

「都合だな」



 なんとなく笑ってしまった。ジャベリンも笑っている。周りを窺うと、期待してるような空気が蔓延していた。これは逃げるとそれはそれでまずいな。俺の評判はどうでもいいが、災害衆の評判に傷がつくのはよろしくない。



「いいだろう。相手になろう」

「勝負ですわ!」



 早速バトルの申し込みを行い、ステージがランダムに決定される。さて、どうするかな。



「今度は『岩場』か……」



 文字通り、身長くらいの大きな岩がゴロゴロと転がっているステージだ。身を隠すのも楽だが、探す側になると厄介なステージでもある。そして、スタートの合図が鳴り響いた。



「~♪」



 俺は鼻歌を歌いながら、岩場をふらふら歩いていた。機嫌良さそうに見えるかもしれないが、そうでもして気分を上げないとやってられないのが本音だ。


 いや、本当になんでこんなことになったのか。……俺が災害衆だとばらしたからだよな。望んでいた平穏な生活とは、まるっきり逆になっている気がしなくもない。


 あの時、百獣団との戦いの時に本気を出さなければ良かったのか? いやいや、それで負けてしまってはブレイズが引き抜かれていた。


 じゃあ、災害衆だとばらしたのが問題だったのか? だが、もし何も言わずに本気を出していたら、それはおかしいってことになっていたかもしれない。そうなると調べられて結局俺の素性が明らかになっていたことだろう。


 俺の選択は間違ってなかったはず。そうなるとこの状況は、なるべくしてなったものということか。だったら甘んじて受け入れるしかないな。その上で平穏な生活が送れるように努力して……。



「見つけましたわ!」



 そこまで考えたところで、思考は中断されることになる。静かな中に響いた高い声によって、強制的に意識が引き戻されることになったからだ。


 声は後ろから聞こえてきた。振り向くと傘を突きつけたエレガンスが仁王立ちしていた。



「あ、お疲れ」

「え、あ、お疲れ様ですわ。……いや違いますわよね」

「ちっ」

「舌打ちされましたわ!?」



 できればやり過ごして時間切れを狙いたかったが、そういう訳にもいかなそうだ。俺のアバターは走るのは速くないから、逃げ切るのは少々厳しい。迎え撃つしかなさそうだ。



「はっ!」



 フェンシングのように傘を構えて、突き技を繰り出すエレガンス。俺は力を抜いて、ふらふら揺れながら避けていく。



「このっ、えいっ!」

「ふわぁ……」



 見たところエレガンスの動きは単調だ。ムキになっているのか、フェイントも何もない連続攻撃だ。だがそれは避けるのはたやすい。正直回避のみに徹していれば余裕だった。昨日ブレイズと戦ってた時は、もう少しやると思っていたが見込み違いだったか?



「そこですわ!」

「おっ?」



 エレガンスは攻撃を切り替えてきた。傘の持ち手を使って、俺の足を引っかけてきた。そのままバランスを崩して仰向けに倒れる。



「今ですわ!」



 そしてエレガンスが突きを繰り出した。狙いは俺の顔面だろう。だが、この動きは昨日見ている。



「よっ」

「えっ!?」



 俺は寝転んだまま両手を合わせ、傘の鋭い先端が突き刺さる前に受け止めた。真剣白刃取りのような動きだ。傘を挟んだまま、腕をひねりエレガンスの手から奪い取る。そのまま近くに放り捨てた。



「ああ!」



 慌てて傘を取りに行こうとするエレガンス。だがそうはさせない。背を向けたところで俺は起き上がり、後ろから飛びかかった。そのまま正拳突きを放つ。



「しっ!」

「きゃあ!?」



 エレガンスは背中を押されて転ぶ。急いで立ち上がろうとするが、その前に俺が背中の上に乗った。そして片足を上げて思いっきり踏みつける。



「あああああ!?」



 いい感じにダメージを与えられているな。だが、そこで一瞬気が緩んだ。エレガンスは全身の力を使って、上に乗ってる俺を撥ね飛ばす。



「いい加減になさい!」

「おっとっと……」



 俺はバランスを崩しながら、一旦距離を取る。その隙にエレガンスは素早く体勢を立て直し、傘を拾っていた。



「よくもやってくれましたわね……踏みつけられるなんて屈辱、初めてですわ!」

「貴重な体験ができてよかったな」

「きーっ!!」



 めちゃくちゃ怒ってる。だがそれは好都合。怒ってる人間の動きは読みやすいからな。


 再度フェンシングの動きで攻撃を繰り出してくる。俺は避けるのではなく、敢えて喰らい続けた。頭や心臓などの急所には当たらないように避けているが、ダメージは確実に溜まり続けている。……頃合いだな。



「とどめですわ!」

「『万死一生』」



 エレガンスは大きく傘を引いた。そして渾身の一撃を繰り出そうとしている。その前に俺は回復を使った。



「『最悪の終わり』!」



 攻撃してくるタイミングに合わせて、俺は腕を伸ばして更にスキルを使った。掌から黒い光線が飛び出す。そして攻撃したことで防御がおろそかになっていたエレガンスに、カウンター気味に直撃した。



「か……はっ……!」



 一撃でエレガンスは膝から崩れ落ちた。そして、そのままうつ伏せに倒れていき、決着がついた。







「ふう……疲れた疲れた」

「お疲れ様!」

「やっぱすごいな、お前」



 戻ってきた俺に、リンクスとジャベリンが駆け寄ってくる。今度は素直に称賛してくれている。まともにスキルを使って勝利したからだろうか。


 クラスメイト達も周りに集まって、口々にすごいとか強いとか、褒めてくれていた。面と向かって言われると、少々気恥ずかしいな。



「お嬢様、お疲れ様でした」

「ぐぬぬぬぬ……!」



 そして少し離れたところを見ると、悔しそうにしているエレガンスとその横に控えるメイドがいた。顔を上げてキッと俺を睨み付けてくる。



「今回は敗けを認めますわ。でも! 次こそは勝ってみせますわ!」

「いつでもかかってきなよ!」

「いや待ってリンクス。受けて立つ、みたいな言い方やめて欲しいんだけど」



 正直面倒なので、極力戦いたくないのだが。平穏が乱される。



「行きますわよ、メイド!」

「かしこまりました」



 プイッと顔を背けると、二人で去っていく。……一応今、授業中なんだけどな。



「よーし、じゃあ次こそ俺とやろうぜ」

「ええー……」



 ジャベリンが肩を組みながら誘ってくる。疲れてきたから遠慮したい。



「ゴースト君、次どうぞ」



 どうかわそうかと思っていると、先生が呼びに来た。面談のターンが回ってきたようだ。



「という訳だ。またあとでな」

「ちぇっ。仕方ないな」

「行ってらっしゃい!」



 二人に見送られながら、先生と共に歩いていく。そして校庭の隅までくると、椅子が二つ置いてあった。それに腰かけて向かい合う。



「さて、ゴースト君。面談を始めます」

「はい」

「といっても、正直あなたは……アドバイスすることはないんですよね……」



 そりゃそうだろう。俺は既に上限のレベル100だ。先生達のレベルは知らないが、俺より強いことはあり得ない。



「このまま何もしなくても、進級は可能ですからね……。もちろん一般教科の成績も必要ですよ?」

「わかってます」



 俺はデイドリをやりこんでいたので、勉強はあんまり得意ではない。それでも赤点を取るほどではないので、多少勉強しておけばテストはなんとかなるだろう。……多分。



「じゃあ面談は終わりですか?」

「そうですね……強いていうなら、ゴースト君には教える立場にも回って欲しいと思ってます」

「教える……ですか?」



 意外な言葉だった。予想もしていなかった発言に、驚きを隠せない。



「ええ、ギルドに入りましたよね? でしたらギルドの仲間の為に、その力を発揮して貰えたらと思います」



 人に教えることは自分の為にもなりますから、と先生は締めくくった。確かに一理ある。災害衆にいた頃は、全員が同格の強さを持っていたから、教えるなんてことはなかった。ある意味新鮮な視点と言えるだろう。



「ですが先生、俺は他人に教えたことなんてありませんし……」

「そんな、堅苦しく考えなくていいんですよ。友達に教えるくらい普通のことですから」

「はぁ……」



 どうだろう。仲間が強くなれば、俺が戦う必要が無くなっていく。つまり戦わずに済んで、平穏に過ごせるのでは? そう考えると、多少やる気が湧いてきた。楽する為に努力を惜しまない方向でいこう。



「わかりました。努力してみます」

「頑張って下さいね。あなたのことは本当に期待していますから!」



 先生はにこりと笑っていた。その笑顔からは特に含むものは感じられない。



「ただいまー」

「おかえり、どうだった?」



 戻ってくると、リンクスとジャベリンは座って話し込んでいた。



「んー、大したことなかったかな」



 とりあえず当たり障りの無い答えを返しておく。内容については、必要があれば説明する方向でいくとしよう。



「リンクスさん、次どうぞ」

「じゃ、いってくるね!」



 先生が呼び出したので、リンクスと入れ違いになる。俺はジャベリンの隣に腰を下ろした。



「どうする、やるか?」



 簡潔な言い方だったが、意味はわかる。戦ってくれるかという意味だろう。



「……悪いけど、面倒かな」

「ははっ、そういうと思ったよ」



 ジャベリンは気を悪くした様子もなかった。俺の背中をバシバシ叩きながら陽気に笑っている。


 結局ジャベリンの面談が終わって授業が終わるまで、雑談しながらのんびり過ごした。

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