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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
2章 校内ギルド
24/40

24戦目 エレガンス

「ティアー、この領土の設定はどうなってる?」



 一口に領土と言っても、色々と細かい設定をすることができる。その中でも重要なのが、領土内での戦闘に関する設定だ。例えば、一切戦闘禁止にすることも可能だし、ギルドメンバー間での戦闘禁止とか、設定変更が可能なのだ。



「え、えっと、百獣団から引き継いだ設定のままだけど……」

「つまり?」

「完全戦闘許可になってるかな……」



 完全戦闘許可ということは、メンバーかどうかに関係なく誰でも自由に戦闘が行えると言うことだ。


 流石は武闘派の百獣団。おそらく仲間内でも戦闘を繰り返していたのだろう。血の気が多そうだったし。



「と、なると俺達も巻き添えを食う可能性があるな。一回離れようか」

「うん」

「ひ、ひぃ……」

「かしこまりました」



 一人多かった気がして横を見ると、ちゃっかりメイドはこちらに並んでいた。本当に神出鬼没だな。



「なんで、こっちにいるんだ……」

「是非私もご一緒させて下さいませ」

「まぁいいんじゃない?」

「リンクスがそういうなら……」



 という訳で、仲良くではないが四人並んで観戦することになった。既に俺達は広場の端に移動しており、中央ではブレイズとエレガンスが対峙している。



「……今、謝るなら許してやる」

「それはこちらのセリフですわ!」



 二人とも戦意がみなぎっているようだった。まぁ見物だな。



「……!」



 特に合図も無しに戦闘は始まった。先に動いたのはブレイズの方だった。素早く間合いを詰めると、薙刀による突きを繰り出す。ブレイズもだいぶ薙刀に慣れてきたな。



「はっ!」



 しかし、その攻撃がエレガンスに当たることはなかった。エレガンスが突き出した武器によって、クロスするように受け止められたからだ。あれは……。



「傘……なの?」



 隣でリンクスが呟く。彼女の言うとおり、エレガンスが持っているのは傘にしか見えなかった。細い持ち手に、パステルカラーの彩り。どう見ても閉じられた状態の日傘にしか見えなかった。



「いきますわ!」

「!?」



 反撃とばかりに、フェンシングのように傘を突き出して連続で突きを繰り出す。その動きは非常に滑らかだった。



「……くっ!」



 もちろんリーチや破壊力で言えば、ブレイズの薙刀の方が上だ。だが今、ブレイズは攻撃に対応し切れていなかった。薙刀はリーチが長い分、接近され過ぎると対応が難しくなる。そういう時は、刃の反対側の石突きと呼ばれる部分で対応するのがセオリーだが、それも当たらない。エレガンスはくるくると踊っているかのような動きで、回避しているのだ。



「そこですわ!」



 ブレイズが薙刀を空振りしたところで、更に状況が変わった。エレガンスは素早くしゃがみこみながら、傘の持ち手と反対の先端を掴む。そして、ブレイズの足元を狙った。



「……なっ!?」



 傘の持ち手でフックのように足首を引っかけられたブレイズは、バランスを崩した。膝が曲がり、ガクッと崩れ落ちる。



「食らいなさい!」



 そして倒れ込んだところに、ブレイズの顔面をめがけてエレガンスは突きを出した。無防備になっているブレイズの顔面に鋭く尖った傘が迫る。



「……!」



 ブレイズは賢明だった。咄嗟に薙刀で防御しようとするのではなく、自身で転がって回避に徹した。標的を外された傘が地面に激突する。その隙にブレイズは体勢を整えて立ち上がった。



「いや相当やるな、エレガンス」

「うん、あの身のこなしはなかなか熟練者だよ」

「き、鍛えられてるね……」



 俺達が口々に感心していると、メイドがどこか得意そうに話し始めた。



「お嬢様は現実世界でも、フェンシングを習っておりますので」



 なるほど、たまにサッカーや野球とか現実でスポーツをやってるプレイヤーが動きがかなりいいことがあるが、その類いらしい。それにしても、まるで踊ってるかのような優雅な動きだ。



「……今度はこっちの番」



 話している間にも戦いは続いている。ブレイズはエレガンスの動きに慣れてきたのか、少しずつ対応できるようになっていた。大振りな攻撃を止めて、小刻みな攻撃に切り替えた。だが、あの顔は何かを狙っている顔だ。



「くっ、この、はっ!」



 やはり得物のパワーが違う。時々ではあるが、エレガンスが押されるようになってきた。そして、一瞬エレガンスの体勢が崩れた。



「……! 『炎の輪舞曲(バーニングロンド)』!」



 ブレイズはその隙を見逃さなかった。ここぞとばかりにスキルを繰り出した。薙刀の刃が輪を描き、その軌跡から炎の輪が放たれる。エレガンスはこれにどう対応するのか。



「はっ!」



 てっきりなんとか回避しようとするものだと俺は思っていた。だが違った。体勢が崩れながらエレガンスは傘を開いたのだ。そのまま両手で持って、傘を回し始める。



「『剣乱華麗パレイシャル・ハリケーン』ですわ!」



 まるでモーターがついているかのような高速回転。あれは手で回しただけじゃ、不可能だろう。


 回転により壁と化した傘に、炎の輪が激突する。……結果は壁の勝利だった。回転によって弾かれた炎は、そのまま霧散してしまった。なかなかいいスキルを持っているな。



「……!」

「えいっ!」



 体勢を整え直した両者はほぼ同時に踏み込むと、互いに相手に向かっていく。そして、互いの得物が再びぶつかりあった。


 その後は互角だった。一進一退の攻防が続き、互いに決定打を与えられない。じわじわと体力を削りあっているものの、ほとんど互角だ。



「……しつこい」

「お互い様ですわ!」



 どちらも焦れてきている。このままだと泥仕合になりそうだ。



「なんか面倒になってきたな。俺が回復させようか?」

「いや何考えてんの!?」



 俺の発言に驚きを隠さないリンクスとティアー。メイドは……俺達に背を向けてこそこそ何かしている。



「だって、ブレイズが負けたら嫌だし……」

「一対一の勝負だよ!?」

「構わん!」

「構う構う! プライドはないの!?」



 そんなこと言われても困る。元災害衆としては、基本的に勝つために手段は選ばなかったし。プライドよりも勝つ方が大事だった。



「もう俺が災害衆だってバレてるから、その辺はこだわらなくていいかなって……」

「そこはこだわろうよ!」



 リンクスの必死の説得に、渋々手を下ろした。まぁ言ってることもわからなくはない。勝つだけの生活に飽きて、俺は脱退した訳だし。



「……この!」

「甘いですわ!」



 そろそろ決着が着きそうだと思った、その時だった。俺は何かが飛んでくる気配を感じた。



「ん?」



 上から落ちてきたその何かは、ブレイズとエレガンスのちょうど中間の地点に刺さった。二人は咄嗟に後ろに下がる。


 刺さったのは杖だった。身の丈くらいの長い、木を削って作られたような杖。そしてその頭の部分には大輪の花が咲いていた。



「……え?」

「これは……」



 ブレイズは首を傾げて不思議そうにしているが、エレガンスはそれを見て動揺していた。



「全く、何やってるんですか!」



 全員が声の聞こえた方に注目する。山の反対側から誰かが登ってくる。


 徐々にその姿が見えてきた。それは女性だった。無数の葉っぱを張り合わせて作ったような服を着た、メガネに三つ編みの女性だった。



「マ、マスター!」



 それを見てエレガンスが叫ぶ。マスターと呼ばれた人物は動きを止めているブレイズ達のところまで来ると、先ほど刺さった杖を引き抜いた。そしてジロリとエレガンスを見る。



「エレガンスさん、どういうことですか!」

「そ、それは、違うんですの!」

「何が違うんですか! 全てわかってますよ!」



 そのままお説教のようなものが始まる。エレガンスは萎縮していた。



「なぁ、あれって誰だ? リンクス知ってる?」

「うーん……私は知らないけど……お姉ちゃんは?」



 リンクスにも心当たりはないらしい。そこでティアーに話を振ったが、意外なことに回答が返ってきた。



「あ、あの人、確か、ローズガーデンの人だと思う……」

「えっ、ローズガーデン!?」

「ローズガーデンって確か、前にリンクスが勧誘を受けたギルドだよな?」

「うん……」

「……初耳」



 いつの間にかブレイズがこちらに戻ってきていた。ついでだから回復してあげた。



「お帰り、ブレイズ」

「……中断したから戻ってきた」



 やがて説教が終わったようだった。二人はこちらに向かってくる。



「ごめんなさい、うちのメンバーがご迷惑おかけしました」



 礼儀正しく頭を下げてくる、マスターと呼ばれた女性。それに俺達は戸惑っていたが、リンクスが前に出た。



「気にしないで下さい。こっちは被害を受けた訳でもないですし」

「そう言ってもらえると助かります」



 穏やかにやり取りが進む一方、後ろでエレガンスがしょんぼりしていた。



「うう……どうしてマスターがこんなところに……」

「それは私が報告したからでございます」

「メイド! どういうことですの!?」

「はい、先ほどお嬢様が戦闘中にマスターから連絡が入りまして。どこで何をしてるか、現状を正直に伝えさせて頂きました」

「また裏切りましたわね!?」

「いえその方が面白……ではなくお嬢様の為になると思いまして」

「本音が漏れてますわよ!」



 と思ったら、後ろで愉快な漫才を繰り広げていた。



「申し遅れました。私は『ローズガーデン』ギルドマスターで、三年の【カメリア】です」



 改めて名乗るカメリア。やはり責任者だけあって、その態度はきっちりしたものだった。



「いえいえ、今回のことは水に流しましょう」

「待って下さい、マスター!」



 リンクスが締めくくろうとしたところで、エレガンスが割って入ってきた。



「エレガンスさん、どういうつもりですか?」

「そ、それは……そこのゴーストが、災害衆を騙るのがいけないのですわ」



 矛先がこちらに向けられてしまった。全員の視線が俺に集中する。すると少し驚くことがあった。さっきまで穏やかに話していたカメリアの視線が、俺に向けられた途端に鋭くなったのだ。



「はっきり言っておきます。私は男の人を信用してません」

「えっ?」

「だから、あなたが災害衆かどうかは知りませんが、できれば私達に関わって欲しくないです」



 俺としては苦笑いするしかなかった。初対面なのにこうも嫌われてるようじゃ、何も言えない。



「だから、エレガンスさんもあんまり仲良くはしないようにしてください」

「でも……わかりましたわ……」



 エレガンスは何か言いたそうにしていたが、それを飲み込んで了解していた。



「それではこれで失礼します。……ああ、平和の園の皆さん、もしギルドを移籍したいなら、うちはいつでも歓迎しますよ。……そこのゴースト以外ですけど」



 俺達がポカンとしている間に、言いたいことを言ってカメリア達は去っていった。メイドは頭を下げていったが。



「……なんだったんだ、あれ」

「さぁ……」

「……とにかく失礼」



 去っていってから数十秒。最初に口を開いたのは俺だった。続いてみんなも次々話し始める。



「え、えっと、噂で聞いたんだけど……」

「お姉ちゃん?」

「カ、カメリアさんは、昔男子にいじめられてから男性嫌いになったって……」

「そういえば、私も勧誘された時に聞いたけど、ローズガーデンって女子しか入れないらしいよ」



 なるほど。それならあの態度も頷けると言うものだ。それが愉快かどうかは別にして。



「……すごく不満。今度焼き捨てる」

「もー、ブレイズ、先走らないでよ?」



 ブレイズは不満そうに薙刀を振っていた。さっきの戦いも不完全燃焼だったから、余計にストレスが溜まったのかもしれない。



「で、でもカメリアさんはすごく強いって評判だよ……?」

「まぁ学内ランク二位のギルドだしな」



 探索する雰囲気ではなくなってしまったので、俺達は山を降りると今日は解散することにした。

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