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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
2章 校内ギルド
23/40

23戦目 お嬢様

投稿がなかなか進まなくて申し訳ありません……。

「えーと、具体的にはどこら辺が領地になってるんだっけ?」

「え、えっと……」



 リンクスの問いかけに、ティアーがわたわたとメニュー画面を操作する。そして、俺達にもわかるように画面を表示した。



「ち、地図で言うと、こんな感じかな……」

「これって……」



 改めて細かく確認すると、山を丸ごとだった。平和の園のギルドホームは山のふもとにある。そして今回新しく手に入れた領地は、その隣接する山をほぼ丸ごとだった。



「実際広いよねー」

「……探索は面倒」



 二人の言うとおり、広いとはいえ山になってるから歩き回るのは時間がかかるだろう。今日の放課後だけで全部回るのは、少々きつい。



「じゃあとりあえず、頂上まで登ってみるか?」

「そうだね、それくらいなら時間あるかも」



 多分登って戻るくらいの時間なら大丈夫だろう。ティアーとブレイズも頷いている。







「なかなかの険しさだな……」



 俺達四人は一列になって、山の中を登っていた。先頭が俺で、リンクス、ティアー、ブレイズの順だった。



「しかし……なんで俺が先頭なんだ? 普通はティアーが先頭じゃないか?」

「む、無理無理、私が先頭なんて怖すぎるからぁ……」

「お姉ちゃん、よしよし」



 相変わらずギルドマスターとしての、威厳はゼロだった。ある意味ティアーらしいと言えば、らしいのだが。



「それに、一番強いゴーストが先頭なら、何かあっても対応できるでしょ?」

「それはそうかもしれないが……」



 釈然としない。俺は能力的にも支援や回復がメインであって、団体行動の時はみんなを引っ張るようなことはなかった。だから正直違和感ありまくりだ。


 そもそも野良モンスターなんて物は、このゲームには存在しない。襲ってくるとしたら、獣よりも人の可能性の方が高いのだが。



「ところで、ゴーストって武器持ってないよね?」



 登る間、無言の時間が続いていたが、リンクスから声をかけられた。無言に耐えられなかったのかもしれない。



「ああ、基本は素手だな。強いて言えばこの両腕の腕輪が武器なんだが」

「へぇ、そうなんだ」



 俺は両腕にはめている、白い腕輪と黒い腕輪を見せてやった。両方とも一色に染められたシンプルなデザインだ。



「この二つはセットになってて、回復技の威力アップの働きがあるんだ」

「両方ともそうなの?」

「白い方がそうだな。黒い方は……スキルの威力アップだ」

「いいなー、私もなんか新しい武器探そうかなー」

「それもいいな……お、あの辺光ってる。頂上じゃないか?」

「はぁ、はぁ……」

「お姉ちゃん、しっかり!」



 この中でも一番動き回るのが苦手なティアーが、ダメージを受けていた。もっとも、実際に疲労している訳ではなく、疲労にあたるバッドステータスが付加されているだけだ。



「やっと着いたー!」



 リンクスが俺を追い越して、声をあげる。気持ち良さそうに手を伸ばしていた。



「やれやれ……ん?」



 頂上は円形の広場のようになっていた。山の全体像を見たときに、この山は台形になるんじゃなかろうか。そんな風に考えながらぐるりと見渡していると、視界の隅っこの方に何かが映った気がした。慌ててそちらの方にピントを合わせる。


 広場の隅の方、木で日陰になっている地点に人影があった。



「なぁ、みんな。あれ……」

「えっ? 誰かいるね?」

「……?」

「も、もしかして、敵……?」



 全員疑問符を頭に浮かべている。考えられる可能性としては、百獣団のメンバーがまだうろついている可能性か。



「とりあえず行ってみよっか」



 リンクスの号令で、俺達は一塊になって近づいていく。近づくにつれて、徐々に相手のシルエットが見えてきた。


 そこにいたのは、一言で言えばお嬢様とメイドだった。真っ白なテーブルと椅子を並べて、優雅に腰かけている。ご丁寧に食品アイテムである紅茶が並べられていた。お嬢様の方はふわふわの金髪にドレスを着ており、紅茶を飲んでいた。そして、テーブルの反対側にはメイド服を着た小柄な女性が、直立して待機してるようだった。……あそこまで寛がれていると、話しかけづらいな。



「どうする……?」

「リンクス、頼んだ」

「えっ、私? ……しょうがないなぁ」



 この中で一番コミュニケーション能力が高いのはリンクスだろう。ティアーは論外だし、ブレイズは無口だ。かく言う俺も、知らない人に話しかけるのはあんまり好きじゃない。


 俺達が見守る中、リンクスが一歩前に出た。そのまま声をかける。



「あのー、こんにちは?」

「あら、ごきげんよう」



 反応したのはお嬢様の方だった。笑顔でこちらに挨拶を返してくる。



「えっと、何してるんですか?」

「わたくし、ティータイムを楽しんでるところですの。見晴らしのいいところで、頂きたいと思っていましたらちょうど山がありましたので」

「は、はぁ……」



 リンクスが押され気味だった。あまりにも堂々と言われてしまって、二の句が継げないと言ったところか。仕方ないので、俺もフォローに回る。



「えっと、ここはうちの領地なんだが……」

「? ええ」

「勝手に入られると困るんだ」

「えっ? そうなんですの!?」



 お嬢様は心底驚いたようだった。そのまま隣にいたメイドに話を振る。



「で、でも、中川が……あの山で紅茶を飲んだら美味しいでしょうね、って……」

「お嬢様、私に責任をなすりつけるのはお止め下さい。私は、登ってもいいとは言っておりません」

「騙しましたわね!?」



 お嬢様は立ち上がると、メイドの前まで回り込み首を掴んでガクガク揺さぶっている。メイドは無表情のように見えて、口元が笑っているように見える。



「主人を騙すとは、どういう了見ですの!?」

「いえ、嘘は言っておりません」

「そういう問題ではありませんわ!? ……もうクビ! クビにしますわ!」

「お嬢様、それだけはお許しを。海よりも高く、山よりも深く反省しておりますので」

「そこまで言うなら……あら、今何かおかしくなかったかしら?」



 俺達は目の前で漫才のようなやり取りを続ける二人を、黙って見ていたが、そろそろ介入すべきかと思い割り込む。



「もしもし、話を戻したいのだが?」

「これは失礼いたしました。私は一年の中川、アバターは【メイド】と申します。そしてこちらの残念なお嬢様が……」

「わたくしは、一年の赤司、そしてアバターは【エレガンス】ですわ! ……今、残念って言いましたわね!?」



 キーッ、と金切り声を上げてメイドに突っかかるエレガンス。



「お嬢様の失態は私が謝罪を申し上げますので、どうかお許しを……」

「あなたのせいでしょう!?」

「そろそろ話を戻してもいいかな?」



 このままだと埒が明かない。そう思ったかは知らないが、リンクスが流れを断ち切ろうとした。



「これは失礼しました。平和の園の皆様」



 メイドの一言に俺達は驚きを隠せない。



「私達を知ってたの?」

「もちろんでございます。先日の百獣団とのギルド戦、私達も観戦させて頂きました」

「あら、そういえば見覚えがありますわね……あ!」



 そこでエレガンスが大声を上げた。俺の後ろでティアーがビクッと動いたのを感じる。



「あなた、ゴーストとか言いましたわね!」

「ああ、それが何か?」



 突然ビシッと指を突きつけられるが、俺としてはどういう意味かよくわからない。



「あなたが災害衆を騙る偽者ですわね!」

「はぁ?」



 何を言ってるんだろう、この人は。俺が元災害衆なのは、間違いない事実だ。張本人だし。



「偽者って……俺は災害衆の元メンバーなんだが?」

「そんなの嘘ですわ!」

「えええ……」



 取り付くしまもない。最初から決めつけられては、なんとも言い返せない。頭を掻く俺の隣にリンクスが進み出た。



「ちょっと待ってよ。ゴーストが偽者って失礼じゃない?」

「そんなことありません。そもそも証拠がありませんもの!」



 聞いてるうちに一理ある、と思ってしまった。確かに俺達災害衆は仮面を被って、マントを着込んで正体がわからないような状態で戦っていた。だからどういうプレイヤーだったのか誰も知らないのだ。現状、俺が名乗ってるだけと言われたら、それまでかもな。仲間達は素直に信じてくれたが、それは災害衆のエピソードを話したからでもある。あれをいちいち話して回る訳にもいかないし……。



「でも、ゴーストがレベル100なのは事実だよ!」

「それは、何かトリックがあるに違いありませんわ!」

「もー!」



 リンクスがカリカリと怒っている。後ろを見ると、ティアーも不愉快そうに眉をひそめていた。だが、一番まずいのはブレイズだった。普段表情が変わらないブレイズが明らかに怒りの表情を浮かべていた。まぁ無理もないか。



「……殺す」

「待て待て待て! いきなりそれはまずいって!」



 薙刀をいつの間にか取り出していたブレイズを慌てて押さえる。めっちゃキレてるなこれ。


 そして俺が取り押さえてる間に、いつの間にかメイドが音もなく近づいてきていた。



「申し訳ございません。お嬢様はどうも思い込みが激しくて……」

「……不愉快」

「お嬢様は災害衆のファンだったのでございます。ですのでこだわりがあるといいますか……」



 それで俺が本物だと簡単には信じられないって訳か。確かに時々俺達災害衆を名乗る人物が現れることはあった。大抵は俺達と無関係な偽者であり、俺達が直々に潰すことになっていたが。



「以前、真っ赤な偽者に引っ掛かったことがありまして……それ以来お嬢様には、災害衆の話題はタブーなのです」

「……むう」



 騙されたとあって、ブレイズも強くは言えないようだった。事情を聞いてる間にも、リンクスとエレガンスは言い争っていた。



「だから、ゴーストは本物なんだって!」

「信じられませんわ!」



 収拾がつかなくなってきた。どうしたものか。



「……ゴースト様。ここは私におまかせを」

「ブレイズ?」



 一応押さえてはいたが、冷静になったかの対応に、つい手を放してしまった。ブレイズはゆっくりと歩いていく。



「……そこのエセお嬢様」

「誰がエセですの!?」



 ブレイズは愛用の薙刀を突きつけて、宣言した。



「……私と勝負」

「なんですって?」

「……ゴースト様を侮辱するのは許せない。根性を叩き直してあげる」

「いいでしょう!」



 二人とも臨戦態勢に入ろうとしていた。俺はブレイズに近づいて耳打ちした。



「おい、さっきの話で納得したんじゃないのか?」

「……それはそれ。これはこれです」

「マジか……」



 どうやら同情はしてるものの、それはそれとして許せないということらしい。そして、エレガンスの背後に戻ったメイドが話しかけてくる。



「構いませんわ、受けて立ちます!」

「大丈夫ですか、お嬢様?」

「問題ありませんわ!」

「いえ、許可なく対戦すると、退学の可能性が……」

「えっ? そうなんですの!?」



 慌ててこっちを見てくるエレガンス。だが、そんなルールは知らない。



「そんなルールはないような……」

「えっ? ……メイド! また騙しましたわね!?」

「いえ、私は退学の可能性がないかもしれない、と言いたかったのでございます」

「紛らわしいですわ!?」



 またしてもおちょくられているようだった。あのメイド、なかなかお茶目だな。



「とにかく! 勝負といきましょう!」



 エレガンスは咳払いをすると、何事もなかったかのように勝負を仕掛けてきた。

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