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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
1章 始まり
21/40

21戦目 それから

本日4話目、最後の投稿になります。




「なぁ、もう戦うのやめないか?」



 俺の言葉に()()()の全員が振り向いた。みんながみんな不思議そうな顔をして、こちらを見つめている。疲弊はしてるものの、その目には光が灯っている。



「突然何を言い出すのさ」

「そうよ、おかしなこと言うわね」



 一番背の高い彼女と長髪の彼女が、何をバカなとでも言いそうな勢いで否定していた。


 言いたいことはわかる。でも俺はやめたいと思っている。



「私は賛成です」

「えー? もっとやらないの?」

「全くだな……」



 他の連中も意見は様々だった。賛成してるのは小柄な彼女だけだ。



「仕方ないだろう。頑張っても頑張っても無駄なんだ。この先に見込みがあるとは思えない」



 俺としてはここらが潮時だと考えていた。正直虚しさを感じていたからだ。頑張っても頑張っても代わり映えしない毎日。戦い続けることに疲れてしまったのだ。



「なんだったら俺だけ抜けてもいい。もう俺は疲れたんだ」

「気持ちはわかるけど……でも君が抜けると僕達のチームは成立しないよ?」



 背の高い彼女は言う。その意見も尤もだと思う。いや、俺だけじゃない。誰か一人が抜けただけでも上手くいかなくなるだろう。時々誰かが休むことはあったが、その時はいつもより調子が悪かった。



「ああ、それを承知で言ってるんだ。もうやめよう」



 みんなは複雑そうな顔をしていた。俺の言うことにも一理あると思うが、やめるのはどうかと思う。そんなことを考えているのだろう。


 なんとかやめられるように説得しよう。そう思った時だった。一番陽気なあいつが口を開いた。



「じゃーさー、こーいうのはどーかな? ……一回解散してみようよ」

「えっ、でも……」

「それでさー、自分たちが一人で、または新しい仲間を作ってさ、どこまでやれるのか試すんだよー」



 予想外の提案だった。だが、俺の定説を通せるなら好都合だ。これでしばらくは静かな生活を送ることができるだろう。ちょうど高校入学も控えてるしな。後は適当に弱い振りをしてひっそりと過ごせばいいだろう。


 他の全員も紆余曲折あったものの、全員提案を受け入れた。こうして最強……いや最凶を誇ったギルド『災害衆』を人知れず消滅した。







「……というのが顛末なんだよ」



 話を終えると、リンクス達はなんともいえない顔でこっちを見ていた。最初にリンクスが口を開く。



「じゃあ、災害衆を見かけなくなったのは……」

「解散してたからだな」



 俺達は普段、全員が仮面をつけていたから正体がバレていなかったのもある。だから俺は安心して、堂々と高校に入れた訳だ。



「え、えっと、じゃあ、ゴーストの本当のレベルって……」

「レベル? 一応100はあるぞ」



 恐る恐る聞いてきたティアーにあっさり返すと、愕然としていた。何か恐怖を感じてるかのようにも見える。



「でもレベル1って名乗ってたよね?」

「それはこれだな」



 俺は首に巻いていたチョーカーを、アイテムボックスから取り出した。



「これは『逆境のチョーカー』っていう装備で、装備したプレイヤーを任意のレベルまで下げることができるんだ」



 当然ステータスもそれに合わせて弱体化するから、偽装には便利だ。



「そうだったんだ……。でも、レベル1はやり過ぎだったんじゃ……」

「そこは、まあ、認める」



 正直高校生の平均レベルがどんなものかわからなかったから、後でなんとか調整しようと思っていた。だが、レベル1なら弱すぎて誰もかまってくる奴はいないと思っていた。



「まさか、ギルドに誘われるのは想定外だったがな……」

「でも、私の選択は正しかったってことだね!」



 リンクスが胸を張ってみせる。自慢気な表情に、俺は思わず苦笑する。



「……ゴースト様」



 そして今まで黙っていたブレイズが口を開く。かしこまった感じで、今までの態度とは大違いだった。



「だから、様とかつけなくていいって」

「……そういう訳にはいきません。災害衆はずっと私の憧れだったから」



 試合直後に比べれば幾分興奮は収まったようだが、それでもその目はギラギラと輝いているように見える。



「まぁいいか……それで?」

「……これからどうするんですか?」

「どうするとは……?」



 唐突な質問に首を傾げる。どういう意味だろうか?



「……ゴースト様の実力なら、もっと上のギルドから勧誘がくるかもしれません」



 ブレイズは深刻そうな顔をしていた。俺が移籍する可能性を心配しているのだろう。リンクスとティアーもそれに気付いたのか、不安そうにこちらを見ている。


 俺は頭をガリガリとかきむしると、話し始める。



「最初はさ、正直ギルドなんてめんどくさいと思ってたんだ」



 災害衆にいた時は個人行動が多かったし、好き勝手やってても文句言われることもなかった。



「だからリンクスに半ば無理やり入れられた時、憂鬱でもあったんだ。これから自由に活動できなくなる、ってな」

「ゴースト……ごめん」

「でも」



 そこで一回言葉を区切った。本当は面と向かってこんなこと言いたくないが、それでも言っとかないといけない。



「なんだか楽しかったんだ。それこそ煩わしいなんて感じることもないくらいにさ」

「……」

「だからさ、できればここに置いて欲しいかな」



 追い出されるなら話は別だが、とおどけて付け加える。正直シリアスな空気に耐えきれなかった。


 それを聞いた三人は一様に明るい顔をみせる。



「じゃあ……!」

「ああ、これからも俺は平和の園の一員だよ」

「やったぁ!」

「よ、良かったぁ……」

「……私はゴースト様についてく」



 一部不穏な発言が混ざっていたが、三人とも納得してくれたようで助かった。



「という訳でこれからもよろしくな」

「うん、よろしくね!」



 こうして、改めて俺は平和の園のメンバーになったのだった。







「ふぁ~あ……」



 翌日、俺は眠い眼をこすりながら登校してきた。昨日は結局祝勝会をやろうということで、みんなでファミレスで話し込んでしまったからな。正直疲れた。そんな日の翌日でも、普通に学校はあるんだから辛いところだ。

 


「あっ、霜屋君」



 昇降口を通って廊下を歩いていると、後ろから俺の名前を呼ぶ声がした。足を止めて首だけで振り返ると、パタパタと急ぎ足でこちらに向かってくる人物がいた。船戸先生だった。



「おはようございます!」

「おはようございます……」



 元気よく挨拶してきた先生に対し、俺は眠そうな声で返すことしかできなかった。それでも先生は気にした様子もなく笑っている。



「聞きましたよ、霜屋君」

「何をですか?」

「本気を出したそうですね」

「ああ……」



 入学するにあたり、学校側にはこれまでの戦績などのデータを提出する必要があった。なので、教師陣は俺の正体も当然最初から知っていた。



「まぁ、成り行きです」

「先生は嬉しいですよ!」



 にこにことした表情を崩さない先生。彼女は俺がレベル1で居続けることをずっと心配していたから、無理もないだろう。



「……まぁ、ぼちぼちやっていきますよ」

「期待してますからね!」



 俺は眼をそらしつつ、適当な返答でお茶を濁した。先生は機嫌よく職員室の方へと去っていった。俺はそのまま廊下を歩いて教室へと向かう。そして、さりげなく静かに教室のドアを開いた。



「!?」



 その瞬間、ガヤガヤとクラスメイト達がこちらに集まってくる。一気に喋り始めた。



「霜屋君、サインして!」

「うちのギルドにぜひ!」

「あの、握手して下さい!」



 目を白黒させていると、誰かが手をパンパンと叩いた。みんな音の方へ顔を向ける。そこにいたのは内助だった。隣には投網もいる。



「みんな落ち着けって、それじゃ話できないだろ?」

「そうそう、真偽君は私達と話があるからさ」



 クラスの上位カーストとも言える二人が言うと、みんな引き下がった。なんとか人を掻き分けて自分の席まで向かう。と、その時向こうの方の席に座っている畑江が忌々しそうに、俺を睨み付けているのが見えた。


 なんとか鞄を下ろして、腰を落ち着ける。



「二人ともありがとな。助かった」

「気にすんな。それより……」

「ん?」

「お前、まさか災害衆だったとはなー」

「ああ、黙ってて悪かったな」

「いや、俺もお前の立場だったら言い触らしはしないだろうし」



 もしかしたら怒っているかと思ったが、笑って許してくれていた。やっぱ気のいいやつだ。



「それより真偽君、今日も放課後集合だからね?」

「わかってるって」



 あっという間に放課後になった。休み時間の間も多くの生徒が俺を見に来たり、勧誘しに来たりしていた。当然勧誘の方は断ったが。



「おや?」



 長い道のりを歩いて、部室まで到着する。ドアを開けると既に三人が集まり、更にもう一人座っていた。



「よう、霜屋」



 その人物は軽く片手を挙げて、こちらに挨拶してくる。昨日戦ったばかりのレグルスこと外濠(そとぼり)先輩だった。



「しかし、ここは遠いな。来るのが大変だ」

「それはどうも。……なんのご用ですか?」



 若干警戒した感じで問いかけてみた。



「おいおい、忘れたのか? 領地を明け渡す約束だろ」

「あ」



 そういえばそうだった。あれこれあってすっかり頭から抜け落ちていた。



「ちょうどお前達のギルドホームと隣接するように、うちの土地があったからな」



 そう言いながら、外濠先輩は端末を取りだし何かを操作している。そして俺達に画面を見せた。四人で覗き込む。



「ほら、これが約束の領地の範囲だ」

「こ、こんなに……!?」



 網目先輩が思わず声を出した。それは予想以上の広さの土地だった。今のギルドホームの広さで換算すると、一気に二十倍くらいに広がる計算だ。



「これはいくらなんでも貰いすぎでは……?」

「構わんさ。元々圧倒的にこっちが有利な戦いだったんだ。負けたからには、それ相応のリスクを負って当然だろう?」



 言葉通り、全くこだわった様子は見られない。本気で譲渡してもいいと考えてるようだった。



「み、みんな、どうしよ……?」



 あまりのことに、網目先輩は俺達に意見を求めてくる。



「んー、いいんじゃない? もらえるものはもらっとけば」

「俺も賛成かな」

「……それでいいと思う」



 特に示し合わせた訳じゃなかったが、三人の意見は一致していた。それに後押しされたのか、網目先輩も覚悟を決めたようだった。



「じゃ、じゃあ、それで……」

「交渉成立だな」



 ギルドマスター同士、端末を操作し合っていた。これで無事に領地は頂くことができたな。


 操作が終わると外濠先輩は素早く立ち上がった。長居をするつもりはないらしい。そして、出ていこうとした時にふと立ち止まってこちらを向いた。



「ああ、そうそう。一つ忠告しとくぞ」

「?」

「俺達を破ったこと。そして霜屋、お前が災害衆を名乗ったことで、学校中のギルドがお前達に注目してる」

「……」

「これから色々なギルドが狙ってくることだろう。充分注意することだ」



 言うだけ言うと、返事も待たずに外濠先輩は出ていった。ドアが閉まると同時に喋りだす。



「ど、ど、どうしよう……!?」

「お姉ちゃん、落ち着いて!?」

「……腕が鳴る」



 三人のリアクションはほぼ予想通りだった。網目先輩は軽くパニックになり、それを投網がなだめる。そして一縷はやる気に満ち溢れていた。



「やれやれ……」



 そんな三人を見て俺は思わずため息をつく。自業自得とはいえ、当分静かな日々はやって来そうにない。それでもまぁいいかと思っている自分がいる。


 まぁなんとかなるだろう。この個性的な三人がいれば、きっとやっていけるはずだから。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

この作品はここで完結となります。


反響次第では続きも一応考えてはおりますが、ひとまずこれで終わりとさせていただきます。


また新作の構想を練っておりますので、そちらでお会いできることを祈っております。


最後にもう一度、本当にありがとうございました。

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