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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
1章 始まり
20/40

20戦目 決着

本日3話目の投稿になります。


「ど、どういうこと、ゴースト!?」



 俺の存在に気付いたリンクスが詰め寄ってくる。ティアーとブレイズも同様だ。



「話は後だ。まずはレグルスを倒すのが先だ」

「う、うん、わかった……!」



 それぞれ武器を構えて、陣形を組む。レグルスは未だに動揺していた。



「そんな、バカな……!」

「みんな、今のうちに攻撃だ!」

「わかった!」



 一番速いリンクスがすぐさま距離を詰める。そして跳躍しながら爪で襲いかかる。



「にゃあ!」

「……ぬう!」



 しかし、寸前で正気に戻ったレグルスは太い腕をクロスさせて、両腕の手甲でガードする。ギイン、と金属がぶつかる鈍い音が響いた。



「うりゃあ!」

「にゃあ!?」



 お返しとばかりに、レグルスの重たい一撃がリンクスに迫る。腹部を狙ったそれは、爪でなんとか弾かれる。だが空中で踏ん張りの効かなかったリンクスは、軽々と吹き飛ばされる。


 続けてレグルスが追撃を仕掛ける。だが、それを阻む者がいた。追い付いたブレイズの存在だ。



「……今度は負けない!」

「面白い、やってみろぉ!!」



 そこから怒涛の攻防が始まった。レグルスはボクシングのように両手を使って鋭いパンチを繰り出す。一方ブレイズは、薙刀を遠心力に乗せて、それに対抗する。



「うらうらうら!」

「……くっ!」



 しかし手数から言っても押しているのはレグルスの方だった。一撃一撃が重たく、どうしても小柄なブレイズではいちいち受ける度にダメージが蓄積してしまう。



「もらった!」



 大振りな拳がブレイズに叩きつけられる。その瞬間だった。弾丸が飛来し、レグルスは回避の為に首を素早く動かした。



「お前か……」

「あわわ……」



 弾丸を撃った張本人であるティアーを睨み付けている。ティアーは自分のやったことにオロオロしていた。



「『両手招きダブル・キャットパンチ』!」

「むっ!」



 いつの間にか復帰していたリンクスが、背後からスキルで攻撃を仕掛ける。それに気付いたレグルスは、ブレイズを突き飛ばすとそちらに体ごと向けた。



「『王者の一撃(グランドフィスト)』ォ!!」



 そこでレグルスが取った対応は、防御でも回避でもなかった。右手を大きく振りかぶって、渾身の一撃を放つ。右手の手甲から白い光が吹き出し、パンチの勢いが加速する。



「にゃああ!」

「ぬうう!」



 互いのスキルがぶつかり合い、爆風が吹き荒れる。一瞬の膠着の後、押し勝ったのはレグルスだった。そのまま右腕を振り抜き、リンクスを殴りつける。



「うらあああ!」

「にゃあああ!?」



 そしてリンクスの爪を弾いて、腹部に強烈な衝撃が加わる。そのままリンクスは吹っ飛ばされて地面に転がった。



「……リンクス!」

「よそ見してていいのか!?」



 咄嗟にリンクスを気遣ったブレイズ。だがそれが仇となった。ほんの一瞬気を逸らした瞬間に、レグルスは拳の届く距離まで詰め寄ってきていた。



「……しまっ!?」

「隙ありぃ!」



 ブレイズは薙刀を構えようとしたが、間に合わない。今度はアッパーのように下から襲いくる拳を受けきれず、ブレイズの小柄な体は宙に舞っていた。



「あとは……」

「こ、来ないで……!」



 逃げようとするティアーだったが、レグルスの方がスピードは上だった。すぐに距離が縮まり、ティアーに攻撃が当たりそうになった瞬間だった。



「またかっ……!」

「どうも」



 俺が割り込んで、攻撃を受け止めた。レグルスは苦々しい顔で俺を見ている。



「お前は向かって来ないと思ったがな……」

「様子を見てただけですよ」



 できれば三人に勝たせてやりたかった。後から出てきて俺が横取りするのも違う気がしたから。だが、そうも言ってられなくなった。残念ながら三対一でも互角に戦えるほどの実力を、レグルスは持っていた。


 もう一度リンクス達を回復させることはできるけど、同じことの繰り返しになるだろう。ここは俺が出るしかない。



「ティアーは下がってて!」

「わ、わかった……!」



 ティアーを下がらせた後、改めてレグルスに向き直る。もう互いに手が届く距離だった。



「正直お前が災害衆だってのは半信半疑だが……実力は確かなようだな」

「それはありがとうございます」



 頭を下げてお礼を言ってみせる。向こうも挑発だとわかっているだろう。



「だから油断はしない。全力でいく!」

「やれるものなら!」



 その言葉を皮切りに、一対一の戦闘が始まった。レグルスは上下左右から、鋭いパンチを何発も放ってきた。一方俺は、ふらふらと揺れながら、かわしていく。



「くっ……!」



 レグルスの顔にも焦りが見えた。通常攻撃では、簡単に当たらないことに気づいているのだろう。



「『王者の咆哮ハウリングエクスプロージョン』!」

「『万死一生デッド・アンド・アライブ』!」



 スキルを使ったのは、ほぼ同時だった。正確には俺の方がわずかに遅い。


 レグルスを中心に放たれた衝撃波は四方八方に放たれる為、逃げ場はない。防御してもいいが、ダメージは避けられないだろう。だから俺は、()()()を選んだ。自身のHPゲージがみるみるうちに減っていき、またみるみるうちに増えていく。結果的に俺のHPは元通りだった。



「くそっ!」

「ふっ!」



 スキルを使っても逆転の決定打にはならなかった。その事実を目の当たりにしたレグルスは、自棄になったようにキレのないパンチを打ち出す。俺はそれに合わせて拳を繰り出した。互いの拳がぶつかり合う。



「ぐあっ!?」



 結果的に弾き飛ばされたのはレグルスの拳だった。これが現実世界だったなら、筋骨隆々のレグルスとガリガリの俺が殴りあったところで結果は目に見えている。だがこれはゲームの世界だ。ものを言うのは、見た目ではなくステータスになる。レグルスは拳を押さえながら後退りした。



「これでわかりましたか? 先輩と俺とではレベルが違うんですよ」

「ぐう……なぜだ」

「はい?」

「それだけの強さがありながら、どうして平和の園なんかに入ったんだ! お前ならもっと上のギルドにも入れるはずだろう!」



 その問いかけは尤もだと思った。俺は一瞬だけ上にいるギャラリーを見ながら、沈黙した。が、すぐに口を開いた。



「……俺は上を目指してる訳じゃありません。ただただ、彼女達と一緒にいるのが居心地がいいから。それだけです」



 最初はギルドなんてもう入るつもりはなかった。でも、実際入ってみたら、予想以上に楽しかった。こういうのも悪くないと思えた。



「だから、その居場所を守る為に、出すつもりじゃなかった本気を出すことにしたんですよ」

「ぐう……!」



 レグルスは立ち上がった。その目はまだ諦めていない。



「まだだ、まだ負けていない!」



 レグルスはもう一度腕を振りかぶり、こちらに突進してくる。ここでかわしてもいいが……それじゃつまらないな。



「『王者の一撃(グランドフィスト)』ォォォ!!」

「『最悪の終わり(バッド・デッドエンド)』」



 向かってくるレグルスに照準を合わせて、手のひらを向ける。手のひらの中心から黒く細い光線が放たれた。そのままレーザーのように真っ直ぐ飛んでいき、レグルスに直撃する。



「が……あ……バカな……」



 当たった瞬間、まだ三割以上残っていたレグルスのHPは一瞬でゼロへと変わった。その場に膝から崩れ落ちる。そしてグラリとうつ伏せに倒れた。


 一瞬、静まり返る。だが次の瞬間、歓声が沸き起こる。上を見上げると、興奮した様子で生徒達がこちらを見ているのがわかった。俺はそれを他所に、現れた扉をゆっくりとくぐっていった。


 こうして、ギルド戦は俺達『平和の園』の勝利で終わった。







「ちょ、ちょっと、どういうこと、ゴースト!?」



 扉をくぐった先、ステージの外には既に三人が待っていた。俺の姿を見た途端、リンクスはすぐさま駆け寄ってきた。



「あの技は何!? レベル1じゃなかったの!? 災害衆って本当なの!?」

「お、落ち着け、頼む、から」



 両肩を捕まれてぐわんぐわんと揺さぶられている。今の俺なら痛くはないが、目が回る。



「と、とあちゃん、今はそれどころじゃ……」

「むう……後でちゃんと説明してもらうからね!」



 ティアーの取り成しでようやく離してもらえた。VRだから気持ち悪くなったりはしないが、それでも視界が揺れるのはあんまり楽しいものじゃない。


 そこで、ふとブレイズが黙ってるのに気づく。普段無口だが、何かしら喋ってもいいと思うが……? 近づいて見ると、うつむいたまま、プルプルと震えているのがわかった。



「ブレイズ、どうかしたか?」

「……ゴ」

「ご?」

「……ゴゴゴ、ゴースト! いや、ゴースト様!」

「様!? いきなりどうした!?」



 顔を上げたブレイズは、いつもの無表情と違って興奮したように笑っていた。そのまま俺にぐいぐい顔を近づけてくる。



「……さ、災害衆のずっとファンでした! サイン下さい!」

「えええ……」



 そういえば、最初会った時に災害衆に入りたいって言ってたもんな……。しかし、こんな興奮したブレイズは初めて見た。



「えっと、俺サインしたこととかないから、書き方わからないし……」

「……そこをなんとか!」

「わ、わかった……」



 勢いに負けて、つい頷いてしまった。というか断っても、引き受けるまで食らいついてきそうな雰囲気があった。



「ほら、ブレイズ、その話は後で」

「……あ、ちょっ、絶対だから!」



 リンクスに首根っこを掴まれて、引きずられていく。名残惜しそうな目で俺を見ていた。


 そのまま四人で並ぶと、百獣団のメンバーが戻ってきた。全員が俺達のギルドホームの前で向かい合う。そしてその周りをギャラリーが取り囲む形だ。そこでレグルスが一歩前に出てきた。



「俺達の完敗だな」



 レグルスは腕を組んで頷く。その顔はとても清々しかった。



「くそ! 雑魚に負けるなんて、そんなはずねぇ! これは何かの間違いだ!」



 しかし、グリズリーがそこに割り込む。どうしても負けを認められないようだった。



「やめろ、グリズリー」

「でも、団長!」

「今さらごねても、俺達が負けたことに変わりない」

「くそっ……!」



 グリズリーは鬼のような形相で俺達を睨み付けている。ゴズとメズも同様だった。話を戻そうとリンクスが一歩前に出る。



「それで、約束通り……」

「ああ、引き抜きの話は無しだ。領地も引き渡そう」



 リンクス達からやったぁ、と喜びの声が上がる。三人で抱き合って喜び合っていた。



「詳しい領地の手続きは、また明日にでも話し合おう」



 今日のところは引き上げよう、と背を向けるレグルス。そのまま歩き出すかと思ったが、ピタリと足を止めた。そして首だけ振り返る。



「ああ、ゴースト」

「はい?」

「強かった。今度は最初から一対一でやり合おう」

「……できれば遠慮したいところですがね」



 そして百獣団はゾロゾロと去っていく。だがその瞬間、集まっていたギャラリーがこちらに押し寄せてきた。



「すごいな、おい!」

「本当に災害衆なの!?」

「もう一回見せて!」



 話題はほとんどが俺についてだった。まぁこんなこともあるだろうと、予測はしていた。なので素早くリンクス達の背中を押してギルドホームに入る。そして何か言われる前にドアをバタンと閉めた。



「ふぅ……」

「す、すごかったね……」

「……予想以上」



 ギルドホームに入ってしまえば、メンバー以外勝手に入ることはできない。ドアを叩く音がしばらくしていたが、こちらが何も反応しないとやがて静かになった。



「じゃあ、話してくれる。ゴーストのことについて、さ」

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