19戦目 死闘
これは本日2話目の投稿になります。
今朝、1話目も投稿してますのでご注意下さい。
予想より早く戦闘してるところは見つかった。俺がいない間にゴズとメズは合流していたようで、今は三対三の戦闘が繰り広げられている。
「おらぁ!」
「潰れろ!」
ゴズとメズがそれぞれ金棒を振り回して、リンクスに襲いかかる。だが、それをリンクスはひらりとバックステップでかわした。行き場を無くした金棒が硬い地面に叩きつけられる。衝撃による振動がこちらの方まで伝わってきた。
「ふん!」
「……甘い」
一方グリズリーはブレイズと応戦していた。だが斧と薙刀を巧みに打ち合っている。先ほどまでの突撃ばかりでなく、少し慎重さが見受けられた。苦戦したことで学習したのかもしれない。
そしてティアーは遠距離から援護するように、水の弾丸を撃ち出していた。今のところ当たったり当たらなかったりで、大したダメージにはなっていない。だが少しずつ着実にダメージは与えている。
「どうなるか見ものだな」
「……俺達が勝ちます」
レグルスは余裕の口振りだった。俺は心の中で応援し続けていた。大丈夫。三人ならきっと勝てる。
「チョロチョロすんな!」
「……!」
グリズリーが大振りな一撃を繰り出そうとする。そこでチャンスとばかりに、ブレイズが大きく薙刀を振り回した。カウンターのように、斧と薙刀が激突した。体格や破壊力で言えばグリズリーが圧倒的に上だが、勢いをうまく利用したことで互角となり弾かれた。
お互いに一瞬の隙ができる。だが、先に動いたのは小柄なブレイズの方だった。弾かれた勢いのままくるりと一回転して、そのままもう一度グリズリーへ一撃をお見舞いする。
「ぐはっ!? ……『荒ぶる大地』!」
バランスを崩しかけたグリズリーだが、体勢を無理やり立て直すと、スキルを発動させた。衝撃が地面に伝わり、ブレイズを襲う。
「……ふっ!」
しかしブレイズはそれを読んでいたかのように、素早く飛び上がった。空中から薙刀を地面につき、棒高跳びのようにして更に上に上がる。そしてグリズリーの真上の位置まで影が重なる。
「なっ……」
「……『炎の輪舞曲』!」
グリズリーは防御が間に合わず、炎を顔面で直撃を受けていた。そして棒立ちになっていたが、ブレイズが着地すると同時に崩れ落ちた。
「何っ!」
「マジか……」
それに気付いたゴズとメズが動揺している。そしてリンクスはその一瞬の隙を見逃さなかった。
「にゃあああ!!」
「げほっ!?」
「ゴズ!?」
狙ったのはゴズの方だ。リンクスはタックルするように低い体勢から腹部を狙った。そしてゴズに一撃をくわえる。そのまま押し込んで離れていく。
「くそっ!」
慌ててメズが追いかけようとする。しかしその足は止まることになる。ティアーの弾丸が足元に放たれたからだ。標的を変えてティアーを狙おうとする。が、それもうまくいかない。
「てめぇ!」
「……私が相手する」
ブレイズが回り込んでカバーしていた。金棒を薙刀で受け止める。そのまま殴り合いの応酬が始まった。
「『牛鬼の鉄槌』!」
一方、ゴズとリンクスはというと、ゴズがスキルを発動させた。金棒を両手で持ち、頭の上でブンブンと回転させる。すると回すほどに光り出した。回転させた勢いのままリンクスに振り下ろす。
「にゃっ!」
リンクスは咄嗟の判断で回避していた。金棒はリンクスの後ろにあった瓦礫の山に当たる。すると、瓦礫は一瞬で粉々に吹き飛んだ。恐ろしい破壊力だ。
「ちぃっ!」
「あっぶなー……」
リンクスは冷や汗をかいているようだった。回避せずに防御を選んでいたら、ひとたまりもなかっただろう。だが結果的に生きてる。
「まだまだいくよ!」
「なめんな、コラァ!」
ゴズは金棒を振り回すが、いかんせん金棒は重たくスピードではリンクスに劣る。対するリンクスは両手の鉤爪を巧みに使って連続攻撃を繰り出していた。
「ぐっ、はっ、ちょっ……!」
最初の内はゴズも受けきっていたが、次第に追い付かなくなり着実にダメージが増えていく。そして壁際まで追い詰めた。
「『猫招き』!」
「くっ!」
リンクスがスキルを発動させた。ゴズは咄嗟に金棒で顔と腹を守るような構えを取る。
「にゃっ!」
「はっ!?」
だがスキルは発動していなかった。スキルの発動には、技名を発声するのと、同時に決められたアクションを取る必要がある。リンクスは発声したものの、構えを取っていなかった。要するに、スキルを使うと見せかけたフェイクだったのだ。
「ほう……」
隣でレグルスが感心したようなため息を漏らす。俺も同感だった。
そしてリンクスは金棒を潜り抜けるように、更に低くしゃがみこみ、今度こそ本当のスキルを発動させた。
「『両手招き』!」
「ぐああああ!?」
腹部に直撃を喰らい、体がくの字に折れ曲がったゴズは一瞬止まった後、前のめりに倒れ込んだ。
「く、くそおおお!」
二人も倒されて焦ったのかメズは滅茶苦茶に金棒を振り回し始める。それをブレイズは当たらないように射程範囲の外から冷静に見極めていた。そしてここぞというタイミングで薙刀を突き出す。
「……はっ!」
「バカめ!」
隙が見えたと思ったのは、メズのフェイントだった。首を動かして薙刀を回避したメズは、反撃の金棒を撃ち込もうとする。
「『涙雨』……!」
「なっ!?」
しかし、その隙をティアーが補っていた。スキルで生成された無数の水弾が、攻撃に転じようとしたメズの体を襲った。
「がはっ!?」
こうして三人を見事に打ち倒すことに成功した。それを見届けた瞬間俺は走り出していた。三人を倒したってことは、すぐ隣にいるレグルスが動き出すってことだからな。
「あっ、ゴースト!」
「やったな、みんな」
四人で合流して喜びを分かち合う。だがそれもほんの一瞬のこと。すぐさまレグルスに対して迎撃体勢を取る。
「…………」
しかしレグルスは動いていなかった。腕組みしたまま、こちらを眺めている。
「どういうつもりかな……?」
「……何かの罠かも」
リンクス達も戸惑っていた。だが、このまま睨み合っていても始まらない。
「とりあえず、攻撃を仕掛けよう。このまま膠着状態になってもしょうがないし」
「わかった! ゴーストは下がってて!」
すぐさまフォーメーションを組んだリンクス達は、それぞれの武器でレグルスに襲いかかる。俺はそれを遠巻きに見ていた。
「にゃあ!」
「……はっ!」
「え、えいっ!」
三者三様の攻撃が襲いかかる。そしてその直前、レグルスが腕組みを解いた。両肘を曲げて力を込めた体勢で口を開く。
「『王者の咆哮』!!」
圧倒的だった。レグルスを中心として衝撃波が放射状に発生する。至近距離まで近づいていたリンクスとブレイズはもちろん、離れて攻撃していたティアーまでもが一度に吹き飛ばされた。三人は体勢を崩して地面を何度か転がる。
「リンクス! みんな!」
あっという間に三人のHPは一割ほどに落ち込んでいた。今までの戦闘で多少減少していたとはいえ、なんて威力だ。
「がああぁぁ!」
「にゃ……あ……!」
だがそれで終わりじゃなかった。地面が砕けるような音がしたかと思えば、レグルスは一瞬で倒れているリンクスの目前に近づいていた。そして手甲で包まれた拳を振り下ろす。抵抗する間もなく、一撃でリンクスは戦闘不能になった。
「はっ! ふん!」
「……ぐっ!」
「あ、あ……」
同じようにブレイズとティアーのところに回ると、一瞬で二人も戦闘不能にされた。通常攻撃にも関わらず、すごい威力だった。
「さて……」
ゆらりと立ち上がったレグルスは、まっすぐ俺の方を見ていた。そのまま堂々とした足取りで近づいてくる。そしてすぐ近くまで来ていた。
「残るはお前だけだな」
「三人を瞬殺とは……滅茶苦茶強いじゃないですか」
「一応ギルドマスターでもあるしな」
レグルスの顔には驕りは見られない。ただ事実を言ってるといった感じだった。
「残念だが、ここで終わりだ」
レグルスが拳を構えようとした。普通に考えて、レベル1の貧弱な俺のままじゃ、たとえHPが満タンでも一撃でやられるだろう。
いいのか、それで? 俺は自問自答する。俺のつまらない意地と仲間とどっちが大事だ? ……考えるまでもないな。
「ふふふふ……」
「? どうした、諦めたのか?」
俺はおかしくなって、思わず笑いが込み上げていた。
「いや、俺はあんまり期待してなかったんですよ」
「期待……?」
「高校に入ってもそんな大して強いやつはいないだろう、って」
「それは見込み違いだったと?」
「ええ。予想以上にみんな強かったです」
俺の仲間達にしろ、百獣団にしろ、思った以上に強いやつばかりだった。
上を見上げる。観客となっている生徒のアバターが、シャボン玉に入って無数に上空に浮かんでいる。きっと見ているあの連中は、明らかに俺の敗けを確信していることだろう。
そんな連中を眺めながら、俺は首のチョーカーを外した。
「だからそう、ここからは元『災害衆』所属メンバーとしてお相手しますよ」
「は……?」
レグルスは口をポカンと開けて、呆然としていた。ずっと冷静沈着だったこの人の驚いた表情が見れるとは。ガヤガヤと騒いでいたギャラリーも静まり返っている。そんな中、いち早く再起動を果たしたのはレグルスだった。
「何を言ってる……? お前が、あの有名な災害衆のギルドメンバーだと……?」
「元、ですけどね。災害衆は解散しましたから」
「そんなデタラメを俺が信じると思うのか?」
「デタラメじゃないんですけどねぇ」
俺は頭を掻いてみせる。上の観客から笑い声も聞こえてきた。どうやら誰も信じてないらしい。
「もういい。そんな下らない冗談を言うなら、一撃で潰してやろう」
言った瞬間、レグルスの姿が消える。次の瞬間目の前に現れたレグルスは、高速の正拳突きを放った。それは俺の顔面を確実に潰す────ことはなかった。俺が右手を挙げて受け止めていたからだ。
「な、何……?」
「少しは信じる気になりましたか? まぁ信じてもらえなくても、別に気にしませんけど」
観客のどよめきが大きくなる。そりゃそうだろう。普通に考えたら、レベル80のパンチをレベル1が受け止められるはずがない。
「あり得ない……!」
驚いてる隙に俺は体を回転させて、回し蹴りを放った。レグルスは瞬時にガードしたものの、後退りする。
「ちょっとだけ、本気を見せてあげますよ」
「なんだと!?」
「『亡者の行進』!」
俺の両腕、そこにはめられている腕輪から黒い光が飛び出し、倒れている三人のアバターに向かって飛んでいく。本来三人のアバターは既に死んだ扱いで、ホログラムのようにすり抜けるものだ。
だが、俺にかかれば違う。
黒い光は三人に触れると、そこから全身に黒い光が広がっていく。そして操り人形のように不自然な立ち上がり方をした。
「あ、あれ……?」
「……なんで?」
「こ、これって……」
三人は自身の体を見下ろして戸惑っている。だが一番衝撃を受けてるのはレグルスと観客達だろう。
「そんなバカな……!」
「どうしました?」
俺はことさら煽るようにレグルスに問いかける。
「これは、デイドリはRPGじゃない、対戦格闘ゲームだぞ! アバターの復活なんてあり得る訳がないだろう!?」
そう、回復技はあっても、復活させる技なんてのは存在しない。それが定説だった。しかし、それは俺以外のプレイヤーの話だ。
「さあ、第二ラウンドといきましょうか、レグルスさん?」




