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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
1章 始まり
18/40

18戦目 VS百獣団

 そして迎えた次の日。俺は緊張はしていたが、心配はしていなかった。大丈夫、あいつらならきっと勝てるさ。


 そこまで考えてふと気付く。まさかこんな気持ちになるとは思わなかった。かつてギルドを解散した時にそんな感情は無くしたと思っていたのに。


 しんみりした気持ちになりつつ、教室の扉を開ける。すると、なにやら騒がしい気がした。クラスメイト達が雑談してるのはいつものことだが、盛り上がってるように感じた。



「おう、おはよう真偽」

「おはよう。何かあったのか?」



 いつものように先に来ていた内助に問いかける。すると返ってきた答えは予想外のものだった。



「何言ってんだよ。話題の中心はお前だぜ」

「俺……?」

「正確にはお前達だな。平和の園、のさ」



 そこまで言われて思い至った。確認の意味を込めて聞いてみる。



「もしかして……」

「ああ、今日のギルド戦のことで話題は持ちきりだ」

「やっぱりか……」



 首を動かして教室を見渡す。すると机に座る投網を見つけた。女子に囲まれて盛り上がっている。ここから見る限り、好意的な反応のようだし、激励してもらっているんだろう。


 俺が安心していると、他の方向から声が聞こえてきた。



「よぉ、雑魚」



 確認するまでもなかった。嫌々ながら声の聞こえた方に首を向ける。そこには畑江がニヤニヤ笑いを浮かべて立っていた。俺は嫌な気分を隠そうともせずに、返事した。



「なんだ、お前か……」

「今日でお前らもおしまいだな」

「そう簡単にいくと思うなよ」



 俺は精一杯言い返すが、それでも畑江の余裕は崩れない。



「はっ! 何言ってやがる。どうせお前達の負けは決まってるようなもんだ」

「言ってろ。俺達平和の園が勝つ」



 俺の言葉を聞き流し、畑江は笑いながら自分の席に戻っていった。勝ちを確信した、負けなどあり得ないと思ってる感じだな。



「真偽、大丈夫か?」

「大丈夫だ。昨日遅くまで練習したからな」



 練習通りにやればきっと勝てるはずだ。いくら相手が学内三位のギルドでもな。







 あっという間に放課後が来てしまった。正直、授業にも全く身が入らなかった。何か作戦に見落としがないか、考えるのに必死だったからな。


 部室の扉を開けると、もう既に三人は集まっていた。視線がこちらに向く。



「待たせたな」

「……遅い」

「ま、まあまあ……」

「じゃあ早速行こっか!」



 三人はもっと緊張してるかと思ったが、焦りはなさそうだった。少なくとも表面上はいつも通りに見える。


 俺は席にかけると、早速VRグラスを取り出した。他の三人も同じように準備していく。



「「「「リンクスタート!」」」」



 ギルドホームにログインした俺達は、外に出る。そこには既に大勢が待ち構えていた。先頭にはレグルス、隣にグリズリー、ゴズ、メズ。そして後ろには百獣団のメンバーらしきプレイヤーが控えている。



「待っていたぞ」

「手際がいいですね」



 いつものように自信無さげなティアーに代わり、リンクスが前に出た。そしてレグルスとにらみ合う。だがレグルスは不敵な表情を崩さなかった。



「早速始めましょうか」



 リンクスが勝負を促す。だが、レグルスは手のひらをこちらに向けて話を遮った。



「その前に、頼みがある」

「頼み……?」

「ああ、戦いのルールだが……四対四にしてもらいたい」

「えっ!?」



 思いもよらない展開だった。まさか土壇場になってルール変更を申し入れてくるとは……。



「そんな、いきなり言われても困りますよ!」

「だろうな。だからその代わり、ハンデをつけさせてもらうということでどうだろうか?」

「ハンデ……?」

「まず、こちらは三人がやられるまで四人目は一切手出ししないし、その場から動かない」



 それだと四人目は観戦者と変わらないな。



「さらに四人目がやられたら、こちらは何人残ってても即降参する。それでどうだ?」

「それは……」



 それだと敵の三人を無視して、四人目だけ狙えば済む話かもしれない。しかも動かないって話だから、格好の的だ。なかなか破格の条件と言えるだろう。


 俺達は出された条件について話し合う為、小さく円陣を組んだ。



「どう思う?」

「……単純に考えれば好条件」

「で、でも……」



 ティアーはチラリとこちらを見た。そう、四対四となると俺も参加することになる。果たしてそれがどう転ぶかだ。



「心配ないさ」

「ゴースト?」

「昨日さんざん練習しただろ? 例え俺がやられたとしても、予定通り三人で頑張ればいいだけだ。なんの問題もない」

「うん……」



 三人は心配そうにしていた。だが一応納得してくれたようだった。リンクスが前に出る。



「わかりました。その提案受けます」

「おお、それは助かる」

「それで、四人目は誰なんですか?」

「俺だ」



 一瞬固まった。いや唖然としていると言えるかもしれない。



「俺って……レグルスさんが!?」

「そうだ」



 どっしりと構えて頷くレグルス。こちらの動揺に反して、全く動揺していない。



「そんな……勝てる訳がないですよ!」

「そうか? 流石の俺も三対一なら厳しいと思うが?」

「でも……」



 リンクスはこちらとレグルスを見比べていた。想定外の展開過ぎて、容量がパンクしそうになっている。ティアーはいつも通り頼りにならないし、ブレイズは黙って成り行きを見ている。仕方ないので、俺が前に出た。



「大丈夫だ」

「でもゴースト……」

「なに、最悪の場合は俺が頑張るからさ」

「ふふっ……わかった」



 俺がおどけて元気づけると、リンクスは笑ってくれた。少しは不安が紛れたかな。



「じゃあそろそろ始めようか」



 メニュー画面を互いに操作して、ステージの設定やチーム戦を選択していく。すぐに扉が出現するので、そこを順番にくぐっていく。



「ここは……端の方か?」



 くぐった先で、四人で一塊になって辺りを見回す。廃墟ステージなのは選んだ通りだが、ステージのどこに転送されるかはランダムだ。だからまずは自分達がどこにいるかを把握しないといけない。



「みんな、作戦通りいくよ!」

「う、うん……」

「……任せて」

「ゴーストは……」

「ああ、俺は邪魔にならないように、隠れて見てるから」

「うん、気をつけてね……」



 心配そうな顔で見送るリンクスを尻目に、俺は近くに隠れた。物陰からこっそり覗き見る。そこで咆哮が聞こえてきた。



「見つけたぞぉぉぉ!!」



 ドガン、と壁を破壊する勢いで飛び出してきたのはグリズリーだった。全員が警戒体勢を取る。



「ブレイズ、お姉ちゃん!」



 リンクスの掛け声で三人はそれぞれ散らばる。ティアーが後ろに下がり、リンクスとブレイズが前に出る形だ。



「死ね、こらぁぁ!」



 グリズリーは斧を大きく振り回して、突撃してくる。それをリンクスは冷静に回避する。そして、反撃の爪が飛ぶ。



「にゃ、にゃっ!」

「ぐおっ!?」



 リンクスの一撃は軽いが手数は多い。当然グリズリーの重たい斧一本ではついてこれず、少しずつ削られる。



「だぁぁぁ! うぜぇんだよ!」



 グリズリーは斧を振り上げた。そこから思いっきり目の前のリンクスに叩きつけようとする。だが、その顔面に水の弾丸が当てられる。



「へぶっ! ……何すんだ!」

「ひぃっ!」



 今のはティアーによるサポートだった。妹をカバーするべく狙い撃ちした結果だ。だが、攻撃の矛先が自分に向いたので、ビクッと体をすくませていた。



「……させない」

「なにっ!?」



 ティアーの方に突撃しようとしてきたグリズリーを、ブレイズが押し留めた。武器で受け止める。そしてスキルを放つ。



「……『炎の輪舞曲』!」



 薙刀をくるりと回すと、その刃の軌跡をなぞるように 炎が輪を描く。そして炎の輪ができると、グリズリーの方にフリスビーのように飛んでいく。



「ぐあっ!? チマチマグダグダうぜぇ技使いやがって!」

「にゃあ!」



 ブレイズにかかりきりになっていたことで、背中に隙が生まれる。そこに、素早く回り込んだリンクスが後ろから連続攻撃を繰り出す。



「ち、畜生……」



 ここに来て流石のグリズリーも気づいたようだった。前衛のリンクスとブレイズ。後衛のティアーできっちり役割分担をして、連携が取れていることに。いくらなんでも分が悪かった。



「このまま一気にいくよ!」

「くっ!」



 グリズリーは撤退を選んだ。向きを変えて走りだそうとする。だが、すかさず一番スピードのあるリンクスが回り込んで攻撃を仕掛ける。グリズリーもかわして逃げることはできない。その間にブレイズとティアーが追い付いていた。



「うんうん、特訓の成果だな」



 昨日チーム戦の練習を、徹底的に積んだ甲斐があったというものだ。網目先輩の人見知りも少しは改善されたようだし。


 だが油断はできない。あの二人……ゴズとメズは姿を見せていないし……レグルスは動かないだろうから、心配はないが。



「と、なると少し動き回って様子を見るか」



 向こうの戦闘は心配なさそうだ。なので俺は物陰に隠れながら移動を開始した。少し動いては辺りを見渡し、様子を窺う。もし見ている人がいたらじれったくなるくらいに。



「あ……いた」



 リンクス達から離れてしばらく動いた結果、廃墟の中、ビルとビルの間にポツンとレグルスが立っているのを発見した。腕組みをしたまま仁王立ちになり、目を閉じている。しばらくじっと見ていたが、微動だにしない。だが不意に目を開けた。



「そこにいるんだろう」



 人気のない付近では、レグルスの言葉は大きく響いた。俺は向こうに見つかっていることに気付き、渋々姿を現した。ある程度距離を取ったまま、向かい合う。



「よく気付きましたね」

「なんとなくな。野生の勘かもな」



 レグルスは口元に笑みを浮かべてみせた。野生の勘って……本当にライオンみたいな人だな。俺は会話で探りを入れてみることにした。



「こんなところで一人で寂しくないんですか?」

「そうだな。三人はお前達を探しに行ってしまったからな」



 どうやら手分けして探して回っているらしい。たまたまグリズリーが最初に遭遇しただけで、他の二人が発見するのも時間の問題だろう。



「一つ聞いていいですか?」

「ああ、暇だからな」



 発言には余裕があった。今ここで俺が攻撃を仕掛けても、約束通り動く気はないといった感じだ。



「どうしてこんなルールに変更したんですか?」



 それが不思議でならなかった。最初にルールを決めた時は特に問題なさそうだったのに。



「それは……いやそれも勘かな」

「勘?」

「ああ、なんとなく嫌な予感がした。だから万が一に備えた。それだけの話だ」



 拍子抜けするような答えだった。だが、その予感は正しいのかもしれない。



「嫌な予感って……三人が負けるかもしれないってことですか?」

「もしかして、とは思った。だから最悪の場合、俺が出るつもりでこんなルールにしたのさ」

「……あなたがいれば、俺達のチーム三人をまとめて相手できるような口振りですね」

「客観的に見て、そう思ってる。レベル80は伊達じゃないさ」



 驚いた。試合前に言ってたのはやはりブラフだったのか。しかも、まさかレベル80までいってるとは思わなかった。学生にしてはかなりの実力者と言えるだろう。



「俺達を甘く見すぎじゃないですか」

「どうかな、なら一緒に見に行くか?」

「……動かないルールじゃなかったんですか?」



 俺が皮肉を込めて返すと、レグルスは笑って答えた。



「戦わなければいいんだろう。それにもし、あいつらが負けた場合、俺が戦うんだ。探す手間が省けるだろ?」

「……わかりました。行きましょうか」



 なんだかおかしなことになってきたが……とりあえず俺はレグルスと一緒に戦闘してる現場へと歩いていくのだった。

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