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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
1章 始まり
16/40

16戦目 交渉

 翌日、俺はなんとも言えない気分のまま登校していた。昨日は盛り上がったものの、いざ冷静になると勝てるかどうか不安がよぎっていたからだ。


 向こうだってバカじゃないはずだ。あからさまに手加減したり手を抜いたりするとは思えない。こちらが格下である以上、全力で挑まないと確実に負ける。


 どうしたものかと悩みながら、とぼとぼと歩き自分の席に着いた。すると、先に来ていた内助がこちらに寄ってきた。



「おいおい、聞いたぞ真偽」

「一応確認するけど……どの話だ?」

「どのってお前、平和の園と百獣団が揉めたんだって」



 内助の表情は興味本位や面白がっているのとは違い、明らかに不安そうというか心配そうだった。



「耳が早いな……」

「噂になってるからな。百獣団がギルド戦を行うって」

「マジか」



 だが疑問が湧いてきた。たかが一ギルドが試合を行うくらいで、噂になったりするものか? その辺を内助に突っ込んで聞く。



「何言ってんだよ、百獣団はギルドランク三位だぜ? どこのギルドも打倒目指して頑張ってるんだ。当然情報収集だってやってるさ」

「そういうものか……」



 考えてみれば、敵の情報を事前に調べるのは当たり前のことだな。最近は全然やらなかったから、すっかり忘れてた。



「で、どうなんだ?」

「どう、とは?」

「勝ち目があるのか? 大丈夫か?」

「お前、見かけによらず本当に面倒見がいいよな」

「茶化してる場合か。負けたらなんかリスクがあるんだろ?」



 どうやら賭けの内容までは知られてないらしい。おそらく噂の出どころは、あの時集まっていた百獣団の誰かだと思うが……。



「正直、わからないってのが本音だな。向こうの実力もよく知らないし」

「なんなら俺が助っ人に出てやろうか?」

「ありがたいけど……気持ちだけ受け取っておくよ」



 流石に他のギルドからの助っ人なんて、認めてもらえるとは思えない。



「そうか……俺にできることがあれば何でも言ってくれ。力になるからさ」



 その言葉に少し考える。せっかくこう言ってくれてるし、何か頼めることはないか?



「なら……百獣団の情報が欲しいな」

「なるほど……でも百獣団は結構人数が多いからな。全員分調べるのは骨が折れるな……」

「じゃあ、誰が出るかわかってれば何とかなるか?」

「そりゃまぁ……でもわかるのか?」

「そこは今から試しに行くさ」



 朝のホームルームが始まるまで、まだ充分に余裕がある。俺は早速腰を上げた。






 俺は廊下を歩いていた。ふと見上げると『三年』と書かれたプレートが教室の上に、設置されている。他の学年の廊下とはなんとも独特の空気が流れているように感じる。別にそんな事はないのだが、場違いに感じたり生徒達から注目されているように錯覚してしまう。大抵の場合は気のせいなんだが。


 俺は居心地の悪さを感じつつも、一つ一つ教室を覗いて回っていた。



「違う……違う……あ、いたいた」



 クラスを回ってようやく見つけた。一際体の大きな男子生徒。席に座って、他の生徒と談笑しているのが取れる。まだ目当ての人物である確証はないが……当たって砕けろだ。俺は教室にさりげなく入ると、まっすぐその人物に近づいていく。



「すみません」

「ん?」



 話しかけると大柄な男子生徒は不思議そうにこちらを見ていた。俺の次の言葉を待っている。



「レグルスさんですよね?」

「そうだが……君は?」

「平和の園のメンバーです」

「ああ……そういえば……」



 昨日一応会話は交わしていたが、俺のことはあんまり印象に残ってなかったようだ。まぁ今の俺は弱いし、影も薄いからな。



「そうか、改めて俺は三年の外濠(そとぼり)だ」

「一年の霜屋です」



 互いに本名を名乗りあったところで、本題に入る。ホームルームが始まる前に戻らないといけないので、ぐずぐずもしてられない。



「単刀直入に聞きます。今度のギルド戦、誰を出すつもりですか?」



 俺は淡々と尋ねた。できるだけ動揺や緊張を悟られないように。外濠……先輩はポカンとしていたが、やがて大笑いし始めた。



「は……ははは! はははははは!」



 しばらく笑い声は続いていたが、徐々に小さくなっていく。



「いや、すまんすまん。まさかこんな直接的に探りに来るとは思わなかった」

「でしょうね」



 昨日の対面で感じたこと。それはレグルスは真っ当なやり方を好むだろうということだ。卑怯なやり方はおそらく好まない。正々堂々とやりたがるタイプに見えた。だからこうやってストレートに聞けば、例え素直に答えなかったとしても何らかの反応は得られる。そう思ったのだ。



「ふふ……面白いやつだな、霜屋」

「はぁ……どうも」

「その面白さに免じて答えよう。だがその前に」

「?」



 勿体ぶったように前置きしてくる外濠先輩。何を言い出すつもりだろうか。



「まだギルド戦の細かいルールは決めてなかったはずだ。ここで決めてもいいのか?」

「……ええ、構いません」



 これはハッタリだった。というかこの行動自体、誰にも相談していない。俺の独断専行だ。だから、ここでできるだけ有利なルールを勝ち取れるように交渉するしかない。



「よし、では人数とステージだが……そちらの希望は?」



 問われて考え込む。こっちは人数的に圧倒的不利。だから最大でも四人までしか参加希望できない。一人だけ代表を出すと不安が残る。そうなると二人から四人だが……俺が出てもいいものか? 今はそんなに役に立たないんだが……。いや、でもいないよりマシという考え方もある。その分相手も四人になってしまったら戦力強化になるが。


 ステージも、相手の方が格上である以上、真っ向からぶつかるようなステージより、小細工が効くステージの方がいいかもしれない。


 瞬時に考えた結果、俺は口を開いた。



「……人数は三人。ステージは『廃墟』でどうですか?」



 やはりここは俺が出る必要はないだろう。三人に頑張ってもらえばいい。そう思っての提案だった。ここから相手の要望を聞きつつ、どうやって理想に近づけるか。考えて身構えていたので、外濠先輩の次の言葉は意外だった。



「ああ、全部それでいい」

「……は?」



 今度は俺がポカンとする番だった。そんな俺を見て、外濠先輩はニヤリと笑う。



「それでいいって……そちらからの希望は?」

「特に無いな」

「本当にいいんですか?」

「ああ、構わないとも」



 何か企んでいるのではないかと、心配になってくる。不都合がないってことか? それとも向こうもそれを狙ってた? 疑問は湧いてくるものの、答えは出てこない。そんな俺の心情を見計らったように、外濠先輩が続けてくる。



「別に何か企んでる訳じゃないさ。ただ……」

「ただ?」

「俺達の方が格上である以上、堂々と迎え撃つ。それだけだ」



 きっぱりと言い切られてしまった。どうやら相当に自信があるようだ。驕りではない、実力に裏付けされた自信が。



「勝負の日は……明日の放課後でどうだ?」

「明日ですか……?」



 急な話だと思った。時間がないと予習と対策も難しいだろう。



「場所と人数は譲ったんだ。せめて時間くらいはこちらに合わせてもらいたいな」

「……わかりました」



 そう言われてしまっては、こちらも言い返せない。とりあえず決まったところで、教室を後にしようと思ったその時だった。外濠先輩は更に声をかけてきた。



「ああ、そうだ。うちから出す三人だが、お前達が揉めたあの二人と畑江を出すつもりだ」

「そんなこと、教えてしまって良かったんですか?」



 確かに最初に聞いたのは俺の方だが。まさか全部答えるとは思わなかった。



「構わない」



 先輩は自信満々な態度を崩さない。チームメンバーを信頼してるのか。何にせよ、これで出来る限りの準備をしなければ。







「……という訳で、三対三に決まったぞ」

「……まず最初に言っておくけど、何やってんの真偽君!?」



 昼休み、投網に頼んで部室に集まってもらった。もちろん室町と網目先輩も一緒だ。そして朝のやり取りの顛末について説明した結果がこれだった。



「仕方ないだろ、話が進んじゃったんだから」

「いや、一回持ち帰って相談すれば良かったでしょ? しかも明日勝負だなんて……」

「そこはまぁ、勢いというか話の流れというか……」



 投網の質問に答えてるうちに、声がだんだん小さくなってしまった。あの場の雰囲気に飲まれた気はしなくもないな……。



「ま、まあまあ、とあちゃん。落ち着いて……」

「……決まったことは仕方ない。後は全力で準備にかかるべき」



 二人がフォローに回ってくれた。……室町は勝負にしか関心がないのかもしれないが。



「はぁ、もぉ……。そうだね、切り替えて考えようか」



 投網は呆れていたが、感情に関しては飲み込むことにしたらしい。助かった。



「でも三人ってことは……」

「そりゃ、投網と網目先輩と室町だろ」



 何か言われる前にすかさず割り込んだ。万が一にも、俺が出るような事態になったらたまらない。



「……待った」



 そこで待ったがかかる。言い出したのは投網でも網目先輩でもなく、物静かな室町だった。そのままポツリと呟くような声で続ける。



「……一縷」

「えっ?」

「……一縷って呼んで欲しい。私も名前で呼ぶから」



 俺達は三人で顔を見合わせた。もう一度室町の顔を確認すると、少しムッとした不満そうな顔をしていた。もしかして自分だけ名前で呼んでなかったから?



「うん! もちろんだよ、一縷ちゃん!」



 投網は感極まったのか、隣の一縷に抱きつきにかかる。一縷は無表情で、されるがままになっていた。一つまとまったところで、話を元に戻す。



「それで、メンバーの話に戻すけど……」

「やっぱり強い順で言えば、お前ら三人でいいじゃないか」

「それはそうだけど……」



 投網がチラチラとこちらを見てくる。その反応でピンときた。察するに、俺の回復能力について話そうかどうか迷ってるんだろう。



「……俺の回復技のことか?」



 そう言うと三人とも驚いていた。ただ、驚いている理由はそれぞれ違うだろうが。投網はあっさりバラしたことについて、一縷と網目先輩は回復能力を持ってること自体についてだろう。



「正直、あれは裏技みたいなものなんだ」

「そうなの……?」

「ああ、そんな気軽に使えるものじゃない」



 半分くらいは嘘だが、今は気軽に使えないってのは本当だ。騙してるようで胸が痛むが、仕方ない。



「だから、俺は戦力外として数えた方がいい」

「そっかー……。じゃあ私達三人で頑張らないとね!」

「……腕が鳴る」

「が、頑張るね……」



 三人は手のひらを重ね合わせて、えいえいおー、なんてやろうとしている。しかし重ねたところで動きが止まった。そのまま三人ともこっちを向く。



「何やってんの、ほら真偽君も!」

「え……いいのか?」

「もちろん!」



 俺は恐る恐る、一番上の投網の手の上に自分の手を重ねた。ほっそりした白い手は、春の陽気にも関わらずひんやりしている。



「よーし、いくよー、せーの!」



 えいえいおー、なんて声がそれぞれのトーンで部室に響き渡った。これやるの好きだな。

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