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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
1章 始まり
14/40

14戦目 ボスモンスター

すみません、遅れてしまいました……。

「どうしよっか? まだ時間はあるけど……」



 リンクスが、壁掛け時計を見上げながら全員に問いかける。確かに下校時刻にはまだ余裕があるな。



「……はい」



 そこでブレイズが手を上げた。物静かではあるが、はっきり主張しているのを感じる。



「はい、どうぞ?」

「……ボス討伐に行きたい」

「「「えっ?」」」



 はからずも俺達三人の驚きの声が揃ってしまった。だが、ブレイズの提案は、そのくらい予想外のものだった。


 デイドリにはRPGのように野良モンスターは存在しない。だが、ボスモンスターなら存在している。決まった場所で待ち構えているタイプの超強力なモンスターなら。


 ボスモンスターは一体一体が圧倒的な力を誇る。例え最弱のボスだったとしても、複数人で当たらなければ厳しいと言われている。実際のところレベル50以上じゃなければ厳しいところだ。その分経験値も莫大で、レベル上げには事欠かないのだが……リスクと比べればローリターンだった。



「ええ……さすがにそれはどうかな……?」

「……このメンバーなら行ける」

「でも……」



 やたら自信満々なブレイズに対し、言いにくそうな声を出すリンクス。その視線はチラリと俺の方に向けられていた。


 ああ、そうか。俺がレベル1なのを気を遣ってくれているのか。確かに普通に考えたら連れていく訳にもいかないか。



「俺はいいよ」

「ゴースト?」

「俺は見学してるからさ、三人で挑んでみたら?」

「そんな……仲間外れはよくないよ!」



 俺は譲ろうとしているが、リンクスはあくまで皆でという部分を強調している。仲間意識が高いな。



「いいって、いいって。行ってきなよ」

「……ゴーストもこう言ってる。行きたい」

「ううん、お姉ちゃんは?」



 俺とブレイズは両方納得してるようだし、リンクスは口出ししづらいようだった。方向を変えて、姉に問いかける。



「わ、私は……見に行くくらいならいいかなって……」



 なんとなく()()った気がしなくもないが……ティアーは消極的に賛成のようだった。



「そこまで言うなら、行ってみよっか」

「……嬉しい」

「こ、怖いけど……」



 ボスのところまで行く方向で話はまとまった。だが、そこで疑問がある。



「ティアー、質問なんだけど……」

「ふえ? な、何……?」

「この学内サーバーに、ボスってどんなのがいるんだ?」



 サーバーごとにいるボスの種類は違う。どんなボスがいるのか情報収集は必須だった。



「えっと、色々いるけど……」



 ティアーとしては、どれから説明すればいいのか決めあぐねているようだった。質問が漠然とし過ぎていたか。



「質問が悪かったな。……ブレイズは何か希望あるか?」



 俺が問いかけると、ブレイズは下を向いてしばらく考え込む。俺達は少しの間、黙って回答を待っていた。少ししてブレイズが顔を上げる。



「……サーバーで最強のボスがいい」

「ええ?」

「マジか」



 まさか最初から、最強のボスを狙いにいくとは思わなかった。ブレイズは本当に向上心が高いな。



「え、えっと、それなら……」



 ティアーが語ったところによると、こうだ。この安楽高校のサーバー内で最も奥地にある【安楽山】エリア。その頂上に陣取っているのが最強のボスらしい。


 体全体が炎に包まれた巨大な怪鳥。通称フェニックスこと、【炎鳥王クリムゾン】だという。



「それって、どれくらい強いの……?」

「き、聞いた話だと、魔王級だって……」



 ボスモンスターは、それぞれ強さごとにランク分けがされている。下から順に英雄級、魔王級、災害級、亜神級、邪神級の五段階だ。ただ、最弱の英雄級でも本来チームを組んでやっと倒せるクラスだ。一番上の邪神級ともなると、レベル90以上がいてやっと倒せるレベルだと言われている。



「なんだ、魔王級か……」



 俺は思わずこぼしてしまった。すると、他の三人が驚いた顔でこっちを見つめてくる。次の瞬間、三人とも詰め寄ってきた。



「何言ってんの!? 魔王級だよ!?」

「……普通に考えても強い」

「ぜ、絶対、無理だよぉ……」

「わかった、わかったから!」



 三人に詰め寄られて、なだめるのが大変だった。いかん、つい口が滑ったな。しばらくして、三人が落ち着いてきたところで切り出す。



「で、本当に行くのか?」

「……もちろん。勝てなくても、挑戦することに意義がある」



 ブレイズの意思は変わらないらしい。さっきは強いって言ってたのに。さすがに絶対勝てるとは言わないか。



「じゃあとりあえず行ってみよっか!」



 リンクスの仕切りで、早速移動することになった。







「うわー、なんか寂れたところだね……」



 道案内のティアーを先頭にして、俺達はサーバー内を歩いていた。放課後ということで、ギルドホームを出てからしばらくは大勢のプレイヤーを見かけていたのだが、安楽山に近づくに連れてほとんど見かけなくなってきていた。



「こ、この辺は、中央から遠くて不便だから、ギルドホーム建てる人もいないの……」



 安楽山はふもとには木がまばらに生えていたが、山肌には全くと言っていいほど、植物は生えていなかった。岩や土ばかりで、例えるなら富士山のようだった。



「まぁ、いいじゃないか。山頂まではまっすぐ進めそうだし」



 俺はというと、四人のうち一番後ろを歩きながら観光気分で辺りを見回していた。実際俺は戦うつもりはないし、気が楽だった。



「……あとどのくらいで着く?」



 俺と反対に、早く着きたいと考えていそうなのがブレイズだった。腰の銃を抜き差しして、早く戦いたいと言わんばかりだ。



「えっと、もうすぐ山頂が見えてくると思うけど……」

「ギャオオオオオ!!」



 ティアーが答えたその矢先、大きな鳴き声のようなものが上から聞こえてきた。思わず四人とも足を止めて顔を見合わせる。



「お姉ちゃん、その、フェニックスは鳴いたりするの?」

「こ、これは多分、誰かが戦ってるんじゃないかな……?」

「……! 早く行こう」



 ブレイズが先頭に立って早足で登り始めた。慌てて俺達もついていく。



「ギャオオ!!」



 山頂に近づくにつれて、はっきり姿が見えてきた。まず山頂の上空には巨大な鳥が羽ばたいている。大きさはおそらく三メートルくらいだろう。全身は赤とオレンジが入り交じった色で揺らめいて見える。話の通り、体が燃えていると思われる。


 そしてその下に人影が見えた。一人や二人じゃない。ざっと見て十人以上はいるはずだ。わーわーと何か騒いでいる。俺達が登っていくと、徐々に声が聞こえてきた。



「怯むな! 遠距離から狙え!」

「突撃来るぞ、退避!」

「横から攻撃しろ!」



 どうやら大勢で、フェニックスと死闘を繰り広げているようだった。おそらく討伐にきた他のギルドだろう。



「先を越されちゃったみたいだねー」

「……残念」



 ブレイズは目に見えて落ち込んでいる。やっぱり戦いたかったらしい。



「ティアー、ここのボスは倒されたら復活までどれくらいかかる?」



 ボスによって、復活までの時間は微妙に違う。だが大抵何時間もかかるので、一応聞いてみた。



「く、詳しくは知らないけど、多分六時間以上はかかるかなって……」



 どうやら今日戦うのは厳しいようだった。いや、まだ倒されるとは決まってないが。



「せっかく来たんだし、見学していこうよ」



 リンクスの提案で、俺達は少し離れたところから戦いを眺めることにした。フェニックスのHPは既にかなり削られている。



「はあぁぁ!!」



 戦ってる中で、一人のプレイヤーが叫びながら集団から飛び出した。そのままフェニックスに向かっていく。ここからだとぼんやりだが、頭が黄色……いや金色っぽく見える。


 と同時に、フェニックスが嘴を大きく開いた。そこから火炎放射のように、炎の流れが吹き出す。



「危ない!」



 誰かが叫んだ。金色のプレイヤーは飛び上がると同時に炎に包まれる。一瞬姿が見えなくなった。だが次の瞬間、炎を突っ切って飛び出した。そのまま、フェニックスの嘴の前まで上昇していく。



「おらぁ!」



 金色のプレイヤーは、腕を大きく振りかぶり、フェニックスの顔面を殴り飛ばした。体格差があるにも関わらず、殴られたフェニックスは顔が横に向いてしまう。そしてバランスを崩した。



「今だ!」



 そのやり取りを呆然と見つめていた地上のプレイヤー達だったが、金色のプレイヤーが叫ぶとすぐに攻撃を再開した。遠距離攻撃が雨のように飛んでいく。



「すごいね……」

「う、うん……」



 リンクス達も今の動きに感心しているようだった。ジャンプ力といい、殴るパワーといいなかなかのものだからな。


 少しずつ、少しずつ削られて、やがてフェニックスのHPはほぼゼロに近いところまできていた。



「とどめだぁ!」



 金色のプレイヤーが再び飛び上がる。フェニックスの上から拳を叩きつけた。そしてフェニックスは地面へと落下する。地面に墜落したところで動かなくなり、やがて消えてしまった。


 一瞬の静寂のあと、集まっていた大勢のプレイヤーから歓声が沸き起こった。



「なかなかやるな……」

「なかなかなんてもんじゃないよ! 相当強いって! ……お姉ちゃん、あの人知ってる?」

「う、うん、あれは……」



 答えようとしたティアーだったが、その言葉は途中で途切れた。喜んでいた面々がこちらに気づいたからだ。そしてその中から一人がこっちに出てくる。



「なんだ、誰かと思えば、雑魚じゃねーか」



 あからさまに見下したことを言いながら、こちらにドスドスとやって来たのは、グリズリーだった。



「雑魚がこんなところで何してるんだよ?」

「グリズリー、そんな言い方ないでしょ!」



 俺が何か言う前にリンクスが前に出た。グリズリー相手に睨み合っている。



「見ただろ? 俺達、百獣団がフェニックスを討伐してたのを」



 まさかとは思っていたが、やはりこの集まりは百獣団のメンバーだったようだ。



「ま、雑魚には卒業……いや一生かかっても縁が無いだろうけどな」

「失礼でしょ!」



 高笑いを続けるグリズリー。一方俺はというと、驚くほど何も感じていなかった。別に笑われるくらい実害もないし、気にしなければいいだけだ。



「グリズリーだって大したことないじゃない!」

「なんだと!」



 今の今まで笑っていたのに、リンクスの一言で急に怒り出した。忙しい奴だな。更に言い争いが発展しそうな、その時だった。



「何の騒ぎだ?」



 いつの間にか、さっきの金色のプレイヤーがこちらに近づいてきていた。グリズリーの肩に手を置いている。


 間近で見るとわかるが、金色だったのは髪の毛らしい。長めの金髪をオールバックにして、後ろに流している。服装は薄手のシャツとジーンズと軽装だが、服の上からでもわかるほどがっしりした筋肉質の体だ。そして両手には銀色の籠手……ガントレットを装着していた。



「ボス!」



 グリズリーが声を上げた。どことなく畏まっているというか、緊張してるようにも見える。ボスと呼ばれた男は気さくな感じで、俺達に笑いかけた。



「よぉ、こんにちは」

「こ、こんにちは……」



 リンクスが恐る恐るといった感じに挨拶を返す。……なんかティアーみたいな言い方になってるな。



「俺は百獣団ギルドマスター、三年の【レグルス】って者だ。よろしくな」



 グリズリーの反応から薄々気づいていたが、やはりこの男が百獣団のギルドマスターだったか。それにしても、かなりの実力者だな、この人。さっきの戦いからしても、前線に立って進んで立ち向かっていたし。

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