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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
1章 始まり
12/40

12戦目 タッグ戦

「いくよ!」



 最初に飛び出したのはリンクスだった。得意パターンだろう、飛び込みからの鉤爪での引っ掻き攻撃だ。



「はっ!」



 しかしそれは、難なく受け止められる。モヒカンの先輩の方だ。使用する武器はなんと、金棒だった。伝説の鬼とかが所有してる、太い鉄の塊。それを横に構えてリンクスの爪を受けていた。



「まだまだ!」



そのままリンクスは両手の爪を交互に使い、連続攻撃を繰り出す。だがモヒカンは焦ることもなく、金棒一本でさばいていく。なかなか器用だな。



「おらぁ!」

「ひぃ!?」



 一方ティアーの方はというと、兜を被った先輩と打ち合っていた。兜の武器もモヒカンと同じく金棒だった。それを片手で振り回し、ティアーを殴ろうとする。


 だがティアーはひたすら下がりながら、防御に徹していた。薙刀をうまく使い、金棒の攻撃を受け止めるではなく受け流していく。


 どちらの組み合わせも、慣れた動きで立ち振舞っているのがわかる。



「どう思う?」



 俺は、隣にいるブレイズに話を振ってみた。彼女がどのくらいの実力を持ってるか知りたかったからだ。



「……四人とも結構レベル高い。鍛えられてる」



 どうやら見解は一緒らしい。リンクスとティアーのレベルは知らないはずなのに、それを見破っているようだった。



「『猫招き(キャットパンチ)』!」



 俺達が話している間にも、戦闘は続く。リンクスは腕を大きく後ろに振り、勢いをつけてスキルを発動させた。光の爪がモヒカンに迫る。これは喰らうか?



「甘いな!」



 だがモヒカンの行動は意外だった。金棒で防御体制を取るでもなく、回避に徹するでもなく、迎撃に出たのだ。姿勢をリンクスから見て半身にし、バットをスイングするように金棒を両手で振り回し爪を打ち落とそうとした。



「にゃっ!?」



 両者の中間地点でぶつかった爪と金棒は、互いに弾かれた。そして衝撃で両者ともに後退りする。仮にもスキルを通常攻撃で打ち消すとは、なかなかやるな。



「今度はこっちの番だ!」



 今の攻防をきっかけに、攻守が逆転した。今まではリンクスが攻め込んでいたのに、今度はモヒカンの方が攻めに出た。それをリンクスは器用に避けていく。



「おらっ、おら!」

「にゃにゃ!」



 だが、金棒のスピードもなかなかだった。重たいものの方が勢いがついた時に速くなる。振り回された金棒は次第にスピードを上げていく。



「そこだ! 『馬鬼の鉄槌(デモニックインパクト)』ぉ!」



 モヒカンは前に出て、光り出した金棒を横薙ぎに振り切る。距離を詰められたリンクスは下がりきれないと踏んだのか、腕でガードしようとした。



「にゃあああ!?」



 だがそれは計算が甘かった。ガードに当たった瞬間、リンクスは不自然な動きで吹き飛ばされたのだ。


 リンクスは明らかにダメージを受けてるようだったが、空中でくるりと一回転すると、砂の上に着地した。その体は若干ふらついているように見える。



「どうだ! 俺のスキルはガードした相手を衝撃で吹き飛ばすのさ!」

「むうう……」



 金棒を肩に担ぎ、勝ち誇るモヒカン。それは虚勢ではなく、事実として有利になったからだった。今のでリンクスのHPは大幅に削れている。



「なら、当たらなきゃいいんでしょ!」



 リンクスは砂を蹴って再び前に飛び出した。そのまま果敢に攻めていく。今の一撃を食らったことで、縮こまるかと思ったが、全く臆してないようだった。



「にゃあ!」

「おらっ!」



 一方のモヒカンもリンクスの攻撃を的確に防御し、隙を見ては攻撃しようとする。手数で言えば、両手使えるリンクスの方が上だが、威力の高い金棒を受けるには片手では厳しいものがある。結果、リンクスは防御の際は両手を使わざるを得なくなっていた。


 お互い少しずつHPが減っていく。均衡状態が続けば、体力の少ないリンクスが不利と思われたその時だった。



「そこっ!」



 リンクスが勝負に出た。金棒を振り切ったところでかわし、がら空きになった脇腹に爪を刺そうと腕を伸ばす。だがそこでモヒカンはニヤリと笑った。



「『馬鬼の鉄槌』!」



 振り切ったと見えたのはフェイクだった。振り切る途中で金棒を止め、ちょうどリンクスの真上で構えた。そして一気に振り下ろした!



「リンクス!」



 俺は思わず叫ぶ。あのままでは頭に直撃だろう。だが、次に見た光景は、俺の予想と違っていた。



「にゃあああ! 『両手招きダブル・キャットパンチ』!」



 スキル発動とともに、リンクスの両手の爪が光り伸びた。そして左手で金棒を受け止める。ぶつかった爪と金棒は互いに弾かれた。本来なら両手じゃないと受けられなかった金棒を、片手一本で弾いてみせた。そして今度こそフェイクでなく隙ができたモヒカンの脇腹に、リンクスの爪が迫る。



「にゃあ!」

「ぐはっ!」



 確実に爪は脇腹に刺さっていた。そのままリンクスは殴るように腕を振る。モヒカンは金棒を手放し、衝撃で体が浮き上がる。そして、仰向けに倒れた。


 動かなくなったモヒカンの体は光り始め、次の瞬間無数の光になって、パッと消えた。



「うおい、メズ!?」



 兜の先輩が叫んだ。どうやらモヒカンのアバターはメズと言うらしい。


 先ほどからリンクスの戦いに集中して見ていたが、ティアーの動きも視界の片隅で捉えていた。だが、ティアーは防戦一方というか、積極的に攻撃にいかないので膠着状態になりつつあった。



「ちっ、こうなったら俺一人でぶっ倒してやる!」

「ふぇっ!?」



 兜は大きく金棒を振り、攻撃が激しくなる。ティアーは下がりながら薙刀を振り、兜を寄せ付けない。



「おりゃ!」

「あっ!?」



 だがここで不運が起きた。金棒を受けた勢いでティアーの足が滑ったのだ。砂丘の斜面で打ち合っていたことも災いしたのだろう。ティアーはその場で尻餅をついてしまう。



「お姉ちゃん!」



 ティアーを助けようと、リンクスが駆け出す。だが両者の間には大きな距離がある。瞬間移動でもしない限り間に合わない。


 そこで隣のブレイズが呟いたのが聞こえた。



「……これは無理。やられた」



 普通に考えたらそうだろう。だが俺は一度見ている。ティアーのスキルを……!



「『涙雨(バレットスプラッシュ)』!」



 ティアーは座り込んだまま、腕の力で薙刀を振っていた。すると、薙刀の刃から無数の水球が飛び出す。



「何っ!?」



 兜は驚きの声を漏らす。ここまで防御一辺倒で全く攻撃してこなかったので、油断があったのだろう。ティアーの気弱な性格も関係していたのかもしれない。


 飛び出した水球のうち二発ほどが、兜の腹部に直撃する。倒れるまではいかなかったものの、勢いで後退した。



「くそっ、まだだ……」



 体勢を立て直し、もう一度ティアーに攻撃を加えようとする兜。だがその間に走ってきたリンクスが合流した。



「にゃあ!」

「しまっ……!」



 兜の後ろからリンクスが一撃を繰り出す。兜は咄嗟に振り向いたものの、防御が間に合わない。そのまま背中から海老反りになって吹き飛んだ。



「ぐおお!?」

「え、えい!」



 今度は前に吹き飛ばされた兜。そして立ち上がっていたティアーが薙刀をまっすぐ突き出す。見事に薙刀の刃は兜の首に刺さり、一撃でHPはゼロになった。







「二人ともよくやったな」



 俺は元の場所にて、戻ってきた二人を迎えていた。



「えへへ、ありがとー」

「う、うん……」



 二人とも表情は明るい。いつもおどおどしているティアーも笑みを浮かべていた。



「ちっ……」

「くそっ!」



 一方兜とモヒカンのコンビはというと、悔しそうにしながらこちらを睨んでいた。それに気づいたリンクスが一歩前に出る。



「約束通り、彼女はこちらで頂きますから」

「覚えとけよ!」



 リンクスが毅然と宣言すると、二人は捨て台詞を吐いて人混みの中に紛れて行った。逆恨みとかされないといいんだがな。



「……二人ともなかなか強かった」

「うん、ありがとね。室町さん」

「……ブレイズ。そう呼んで」



 俺が二人の後ろ姿を見送っていると、ブレイズは既にリンクス達と話していた。



「それで、入る話なんだけど……」

「あー、いや、リンクス。その話は……」



 俺が割って入ろうとしたら、更にブレイズがそれを遮った。



「……約束通り、ギルドに入る」

「本当!?」

「マジか……」



 リンクスは文字通り飛び跳ねて喜んでいた。そのままティアーに抱きつき一緒に跳ねている。俺はブレイズに近づくと、そっとささやいた。



「いいのか?」

「……構わない」

「でも、お前は災害衆に入るのが夢なんだろ?」

「……確かにそう。でも」

「でも?」

「……その前に、ギルドに入って経験を積むのも悪くない。そう思っただけ」

「そうか……。まぁ何にせよ、入ってくれて助かった。これからよろしくな」

「……よろしく」



 もう一度、ブレイズと握手を交わす。そこにリンクスとティアーも混ざり、もみくちゃになりながら喜びあった。


 一段落したところで、ブレイズを新しく加えた四人で移動する。目的地は平和の園のギルドホームだ。



「ようこそ、ブレイズ! 歓迎するね!」

「……ありがと」



 ギルドホームの中心部、リビングでそれぞれ適当に座っていた。一応ティアーはギルドマスターとして、一人掛けのソファーに座っていた。本人は遠慮しまくっていたが。



「さて、これからのことについて話そっか!」



 リンクスが音頭を取り、全員が姿勢を正した。



「えーっと、とりあえずブレイズが入ってくれたことで、四人集まった訳だけど……」



 そこでリンクスはチラリと俺の方を見た。俺が仮入部扱いなのをどうするかと、問いかけているのだろう。視線の意味を正しく受け取り、俺は話し出す。



「まぁ……正式に入ってもいいかな」



 今のところ、少人数で居心地も良さそうだった。口うるさそうな先輩もいないし、この雰囲気が続くなら居てもいいかな。俺はあくまで普通に暮らすのが目的だから。



「本当!? ありがとう!」

「よ、良かったぁ……」



 リンクスは両手を挙げて喜びを表し、ティアーは胸を撫で下ろしていた。



「じゃあ次の目標は何にするか……」



 そこで黙っていたブレイズがスッと手を挙げた。無言のまま主張してくる。



「はい、ブレイズどうぞ」

「……一位を目指したい」

「えっ?」



 予想外のことを言われた感じに、リンクスは目を丸くしていた。俺もティアーも驚いている。



「一位って……?」

「……当然、まずは校内ランキング一位を目指す」

「ええ!?」



 いきなりそれはどうだろうか。今のところランキング最下位のギルドだぞ。



「とりあえずランキング上げるとかじゃダメなの……?」

「……やるからには一位を目指すべき」



 気合いが入ってるようだった。心なしか声が興奮してるようにも聞こえる。



「うーん……。私としてはやってもいいかなって、思うけど……お姉ちゃんとゴーストはどう思う?」

「わ、私が一位なんて、お、恐れ多いよぉ……」



 間髪入れずにティアーが答えた。ある意味では予想通りの発言だった。



「俺は……微妙だな」

「……むう。どうして?」

「俺は普通に暮らしたいんだ。一位は普通じゃないだろ?」



 トップになってしまったら一躍有名になってしまう。



「……でも、私は日本一を目指したい」

「なかなか壮大な目標だな……」

「……当然。私の目標は災害衆……最強だから」



 確かに災害衆は長いこと日本一として、君臨し続けていた。最強がいなくなったことで、様々なギルドが一位を目指して頑張っている。



「まぁ、いいか」

「いいの、ゴースト?」

「ああ、今から心配するのは先を見すぎだしな」



 俺は一人で納得していた。そんな簡単に一位になれるとは思えない。もし俺が本気を出したら……いや、やめておこう。

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