表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
1章 始まり
11/40

11戦目 謝罪

 それから三人でフィールド内を当てもなくさ迷う。当然、その間に何人かプレイヤーとすれ違った。もちろんプレイヤーからの襲撃には気をつけているが、こちらも三人いるし襲ってくることはなかった。


 やがて中央校舎へとたどり着いた。そこは昨日までと違って多くのプレイヤーで賑わっている。



「うわー、すごいね!」

「今日は人が多いな……」

「た、多分どこのギルドも、本格的に活動し始めたと思うから……」



 なるほど、ワーワー騒いでいるようだが、その声は部員募集中だの、入りませんかなどの声がほとんどだった。つまり部活の勧誘合戦のようなものだろう。



「でも、フィールド内で戦闘が起こらないのか?」



 こんだけ人がたくさんいたら、小競り合いが起きても不思議じゃないけど。



「こ、校舎とその周りの校庭は、非戦闘区域に設定されてるから……」



 非戦闘区域とは、町や村などに適応される設定のことだ。サーバーの管理者が自由に設定することができる。その区域内では技を出すことができないし、ダメージも一切通らない。



「も、揉め事とか起きたら、ステージ対戦に移動して決着つけるの……」



 どこのサーバーでも同じだな。揉めたら最終的には戦って決めるというのは。



「まぁ、私達はもうギルドに入ってるから問題無いけど、他の人は大変だろうねー」

「どうする、俺達も勧誘に混ざるか?」



 人混みに混ざって勧誘するかとの提案だ。正直ゲーム内でも勧誘するのは気が進まないが。



「や、やめた方がいいと思う。こ、校庭はだいたい上位ギルドが場所取りしてるから……」

「そっか……」

「ん?」



 遠くから見守るようにしていた俺達だったが、人混みから離れるように出てきたプレイヤーがいて、ふと目についた。何やら二人のプレイヤーがまとわりつくようにして歩いている。やがてそれはこちらの方に来た。



「なぁなぁ、いいだろ?」

「入ってみようぜ、な?」

「……いい加減しつこい」



 取り囲まれているのは、女性プレイヤーだった。小柄な体格にマントを羽織り、山高帽を被ってまるで魔女のような格好だった。



「今の声……もしかして室町さんじゃない?」

「ああ、俺も思った」



 俺達がひそひそ話している間にも、その三人はこちらに歩いてくる。というか、室町に二人がついてきているような感じだ。二人のアバターはソフトモヒカンと二本角の付いた兜の二人組だった。



「いいじゃんか、な?」

「そうだよ、うち強いからさ、絶対楽しいって!」



 会話の内容からなんとなくわかった。二人は室町を勧誘しようとしているらしかった。



「なんか室町さん困ってるみたいじゃない?」

「そうだな……」



 俯いて何か考えている様子だったリンクスだったが、顔を上げて俺の方を向いた。



「ねぇ、ゴースト」

「ん?」

「これはチャンスじゃない?」

「というと?」

「今、室町さん困ってるっぽいよね?」

「そうだな」

「ここで私達がかばってあげたらさ、少しは室町さんの怒りも治まるんじゃないかな?」

「つまり恩を売ろうって?」



 俺が尋ねると、リンクスは舌をペロッと出して微笑んだ。真面目な子かと思ってたが、意外としたたかな部分もあるんだな……。



「……まぁ、悪くないな」

「だよね! そうと決まれば……」



 ティアーには待機してもらい、俺とリンクスで向かう。全く面識がないティアーが行くより、俺達二人で行った方が印象いいと思ったからだ。



「あのー、ちょっといいですか?」



 口火を切ったのはリンクスだ。その言葉に室町含め三人の視線がこちらに集中する。



「んん? なに、君ら?」

「えっと、その子はうちのギルドに入るのが決まってるんで、勧誘はやめてもらってもいいですか?」



 そう言ってリンクスはさりげなく室町にウインクしてみせる。室町は表情が変わらなかったが、軽く目を見開いた。その後頷いていた。どうやら意図が伝わったらしい。



「はぁ? こっちが先に誘ってんだけど?」

「そーそー、邪魔だから引っ込んでてよ」



 しかし、先輩らしき二人には通じなかったようだった。あくまでこっちが先だと主張してくる。



「いや、だから私達は昨日のうちに誘ってて……」

「証拠がないじゃん?」

「それに、うちに入った方が絶対強くなれるし! 君らこそどこのギルド?」



 聞かれてグッと言葉に詰まる。堂々と名乗るには少々抵抗があるな。



「へ、平和の園ですけど……」

「平和の園? お前知ってるか?」

「いや、知らねーな」



 先輩達は顔を見合わせていたが、お互い知らないようでキョトンとしていた。



「そんな誰も知らないようなところ、やめときなよ」

「うちに入った方が絶対お得だって!」



 先輩達は全く引く気はなさそうだった。リンクスを押し退けて、室町に勧誘を続ける。



「……わかった。ならこうする」



 そこで、黙ってやり取りを見ていた室町が口を開いた。



「……そんなに入って欲しいなら、戦って決める」



 突然の提案に、ここにいる全員は戸惑っていた。



「……勝った方のギルドに入ることを考えてもいい」

「面白い、やろうぜ!」

「ああ、それなら俺達が勝つに決まってる!」



 先輩達は早速乗り気だった。やる気満々で俺達の方を見て、不敵に笑っている。



「どうしよ、ゴースト……」

「このまま引き下がる訳にもいかないだろ。だが……」



 いよいよ持って、ピンチだった。今の俺ではろくに戦うことはできない。覚悟を決めるしかないかと思った、その時だった。



「わ、私がやる……!」



 振り返るとそこにはティアーがいた。いつの間にか近づいており、どうやら話も把握しているようだった。



「お姉ちゃん、大丈夫……?」

「し、正直怖いけど……」



 ぶるぶる震えているのがわかる。やはり人見知りが発動しているようだった。



「で、でも私ギルドマスターだもん……! な、仲間を守らなくちゃ……!」

「ティアー……」



 必死な表情で顔を上げるティアー。どうやらレベル1の俺を気遣って、守ろうとしてくれているらしい。まだ入ったばかりの俺のことを、仲間だと言ってくれるのか……。素直に嬉しく思う。



「あん、お前、姪原か?」

「じゃあ平和の園って……。ははは! あの最下位のとこかよ!」



 ティアーに気づいた先輩達は大笑いし始めた。おそらく同級生らしかった。その大笑いを受けてティアーが縮こまる。そんなティアーをリンクスは抱き締めていた。はっきり言って、ムカつくな。



「心配いらないさ」

「? ゴースト?」

「こんな弱そうな先輩達より、リンクスとティアーの方が強いに決まってるさ」



 俺はわざとらしく挑発する。大笑いしていた先輩達は、俺の言葉に血相を変えて怒りを向けてきた。



「ああ!?」

「なんだと、コラァ!!」



 気が短そうと予想した通りの反応だった。単純だな。



「という訳で、頼んだ」

「ゴースト……煽るだけ煽っといて……」

「ひいい……」



 俺が二人の背中を押すと、リンクスは呆れティアーは怖がっていた。



「まぁ、落ち着け。ちゃんと理由はあるから」

「どんな……?」

「怒らせたってことは、視野が狭くなってるはずだ。攻撃や動きが単調になる」

「そこを狙えってこと?」

「そうそう」

「うん……なんとなくわかったけど……」



 そこでリンクスはチラリとティアーに視線を向けた。ティアーは変わらずガタガタ震えまくっている。俺は柄じゃないと思いつつも、ティアーの両手を握った。



「え、え、ええ!?」

「大丈夫、ティアー。自信を持って。ティアーの実力なら勝てるから!」



 半分くらいは、はったりだった。ティアーはかなりの実力を持っているが、相手の実力は未知数だ。だがティアーに安心してもらうためには、これくらい大袈裟に言わなければダメだと思っていた。


 ティアーは目を白黒させて、わたわたしていた。



「ふぇぇ……。う、うん、わかった……」

「ゴースト……そういうのどうかと思うよ……」



 なぜかリンクスに白い目で見られていた。理由はよくわからないが。



「おい、いつまで喋ってるんだ! さっさとやろうぜ!」

「そうだ、ぶっ殺してやる!」

「……だそうだ。頑張ってくれ」

「もー……」



 渋々と言った感じで、ティアーとリンクスが前に出た。メニュー画面を呼び出し、対戦の申し込みについて操作している。



「よし、行くぞ!」



 ほどなくして、ステージが決定された。四人はぞろぞろと、出現した扉をくぐっていく。


 俺も観戦モードを選択する。横目で見ると、室町もメニューをいじっていた。おそらく観戦するつもりなのだろう。







「…………」

「…………」



 観戦モードに移動したのはいいのだが、俺はものすごく気まずい思いを味わっていた。室町がすぐ隣にいたからだ。観戦者が二人しかいなければ、そりゃこうなるよな。


 だがいつまでもこうしてる訳にもいかない。俺は意を決して口を開いた。



「あの……」

「……」



 前を向いていた室町は、ゆっくりとこちらを向く。その表情からは感情は読み取れない。



「その、この前はすまなかった!」



 俺は体ごと室町に向けて、そのまま九十度の角度で頭を下げた。下を向いたまま、話を続ける。



「どんな理由があっても、たとえ俺が災害衆を嫌いであったとしても、バカにする権利はなかった。ましてや、人に言い触らすようなことじゃなかった」



 ここは誠心誠意込めて、謝らないといけない場面だろう。



「だから謝らせて欲しい。本当にすまなかった!」



 俺は頭を下げたまま、そこで言葉を区切る。そのまま沈黙の時間が流れた。ほんのわずかな時間しか経っていないはずだが、とても長く感じる。


 やがて、俺の後頭部に何かが触れた感触があった。



「……?」



 恐る恐る顔だけ上げると、室町は俺の頭を撫でていた。その表情は無表情だが、心なしか口元が笑っているようにも見える。



「……謝ってくれてありがとう」

「あ、ああ……」



 俺がゆっくり体を起こすと、今度は室町の方が頭を下げた。



「……私の方こそ、頬を叩いたのはやり過ぎだった。申し訳ない」

「い、いや、悪いのは俺だから……」



 どうやらかなり律儀な性格のようだった。頭を撫でられたのは謎だが。室町は頭を上げると、右手を差し出した。



「……仲直り」

「ああ」



 俺も右手を出し、握手を交わす。室町は微笑んでいた。



「……改めて。室町一縷。アバター名は【ブレイズ】。よろしく」

「霜屋真偽。アバターはゴーストだ。よろしくな」



 ようやくマイナスの関係からゼロに戻すことができた気がする。



「それで、勧誘の件なんだが……」

「……? それはまだ保留」



 無表情に戻った室町……いやブレイズは首を傾げていた。



「でも、勝った方のギルドに入るんだろ?」

「……入るとは言ってない。入るのを()()()()()()と言った」



 確かにそう言っていた気がする。だがその言い回しだと……。



「まさか……」

「……考えた結果、入らない可能性もある」

「ちゃんと考えてたんだな……」



 ブレイズはブレイズで、しっかり考えた上での提案だったらしい。どう転んでも自分に有利になるようにと。



「……それより、もうすぐ試合が始まる」



 ブレイズの言うとおりだった。四人はすでにステージ上で待機していた。ステージはどうやら『砂漠』らしい。ただ砂が広がっているだけでなく、大きな砂丘があちこちにあり、割りと平らな場所の方が少ない地形だ。


 カウントダウンが始まる。既に四人は武器を構えていた。そしてカウントがゼロになった瞬間、全員が駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ