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VRゲームで歩む最強への道  作者: 仮面色
1章 始まり
10/40

10戦目 ギルドホーム

なぜか深夜にブックマークが増えてることが多いです……なんででしょう?

「なんだと……!」

「『災害衆』……!?」



 俺は驚きを隠せなかった。当然投網も驚いている。そしてそれは無理もない話だった。


 『災害衆』。それは、かつてデイドリに存在していた、最強……いや最凶最悪のギルドと呼ばれたギルドのことだ。


 ある日突然表舞台に現れたそのギルドは、たった十人にも満たない少人数で数々の戦いに勝ち抜き、一気に最強の座に登り詰めた。その後も連戦連勝を重ね、もはや敵無しと言われていたが、突然解散宣言を発表。何の前触れもなくデイドリから姿を消した。



「災害衆は、引退したって言われてるよ……?」



 投網がおそるおそる室町に尋ねる。どこまで本気なのか確かめたいのだろう。



「……全員が引退なんて、おかしい。誰か一人くらいまだゲームしてるはず」

「それはそうかもだけど……どうやって探すの?」

「……それは」



 続けて出された投網の疑問に室町は口ごもってしまった。それには訳がある。


 災害衆を探すのが困難な理由。それは、災害衆が全員正体を隠していたからだ。多くのプレイヤーは目立つ為、あるいは自身の実力を証明するため、アバターを隠したりはしない。だが災害衆は全員アイテムの仮面とマントを着込んでおり、どのようなアバターなのか姿がよくわからなかったのだ。


 おまけに大会に出場する際も、一目で偽名とわかる名前を使っており、逆にアバター名の登録が必要な大会には一切出なかった。それでも無敗記録が続き有名になったのだから、周囲は皆厄介に思っていたことだろう。



「……今はまだ見つからないけど、いつか探しだしてみせる。そして私も仲間に入れてもらう」



 室町は心なしか興奮してるようだった。頬がうっすら赤くなっているし、口数も増えたような気がする。


 そして、俺はそんな室町を見て……言わなくてもいいことを言ってしまった。



「やめとけ」

「ちょ、ちょっと真偽君?」

「……どういう意味?」



 室町は怪訝そうに、片方の眉をピクリと上げてみせた。だが俺の言葉は止まらない。



「災害衆なんて、ろくな奴らじゃないってことだ」

「……聞き捨てならない」



 室町が椅子から立ち上がった。そして俺と向かい合う。頭一つ分くらいの身長の差があったが、睨むように俺を見上げてくる。



「だって、そうだろ? そもそも正体を隠してるのだって、何かやましいところがあるからだ」

「……そんなことない。きっと騒がれるのを防ぐ為」

「それに能力だって怪しいもんだ」



 災害衆が強かったのは、圧倒的な能力を持っていたからだ。場合によっては一撃で相手を倒せるほどだ。その原理や条件を解析しようと色々な人が調査を試みたが、きちんと納得いく解明ができた人はいなかった。


 俺と室町の言い合いは止まらない。



「きっと、チートな改造か何かを使ってたんだ。ずるい奴らなんだよ」

「……それはデマ。運営の公式発表で、チートがないことは認められている」

「じゃあきっと運営もグルなんだ。運営が用意した演出に違いない」



 そこまで言ったところで、パチンと音が響き俺の視界が揺れた。遅れて頬にジンジンと痛みが走る。頬を押さえながらゆっくりと室町の方を見返すと、手を振り切った格好で止まっていた。その表情は無表情に近いが、泣きそうにも見える。



「……もう話したくない。帰って」



 それだけ言うと、室町は席に座った。そして何事もなかったかのように、再び本を読み始めた。



「ご、ごめんね、室町さん。ほら、行くよ!」



 ぼうっとしていた俺の腕を引っ張りながら、投網は教室を出ていく。







「もー、真偽君! なんであんなこと言ったの!」

「……すまん」



 自分の教室に戻った俺は席に座って頬杖をついていた。そしてその前には、腰に手を当てた投網が怒りの表情を浮かべている。が、あんまり怖くはなかった。



「あんなこと言ったら、室町さんだって怒るよ!」

「だって、つい……」

「だってじゃないから!」



 机をバンバン叩きながら、俺への追及をやめない投網。はぁはぁと肩で息をしていたが、やがて息を整え始めた。



「もう……真偽君」

「はい……」

「真偽君は災害衆が嫌いなの?」

「……嫌いだな」



 俺としてはそう答えるしかなかった。



「できれば関わりたくない連中なんだよ」

「うーん……好みは人それぞれだから、そこは置いとくけど……室町さんにあれはないよ」

「本当にごめん……」



 俺は平謝りすることしかできなかった。投網もしばらく怒っていたが、やがて気持ちを切り替えるように手をパンと叩いた。



「……うん! 悩んでてもしょうがないよ。他の人を探そう!」

「わかった、でも室町は?」

「今は一旦時間を置いた方がいいよ。お互いに冷静になるまでね」

「うむ……」



 俺も少し落ち着いてきた。災害衆が嫌いなのはさておき、言う必要はなかった。ついカッとなってしまったと、後悔している。頃合いを見て室町に謝るか。



「じゃあ、手分けして聞き込みしていこうよ」

「う……俺はそういうの苦手で……」



 そういうとため息をつかれてしまった。不甲斐なくて申し訳ない。



「気持ちはわかるけど、頑張ろう? お姉ちゃんも頑張るって言ってたからさ」

「網目先輩が……だと……!?」

「そのリアクションはどうかな……」



 投網は苦笑しているが、さっきのように強く注意はしてこない。自分でも、姉の人見知り具合をわかってるからこそだろう。



「とにかくよろしくね」

「善処する……」



 そう締めくくり、昼休みは解散となった。そして時間は経ち、放課後。



「疲れた……」

「真偽君、大丈夫?」



 俺は机に突っ伏していた。顔を上げる気力も湧かない。



「まぁそう言ってやるなよ。真偽も頑張ってたからさ」



 他に誰もいなくなった教室で、俺と内助、投網の三人が残っていた。内助は苦笑している。


 今日一日は本当に大変だった。休み時間の度に他のクラスに行き、誰かギルドに入ってないかと知らない生徒に話しかけ、と慣れない仕事でどっと気疲れしていた。



「誰だこいつ、って感じの視線を向けられるのが一番辛かった……」



 途中で心がへし折られそうになりながら、なんとか頑張った。本当に頑張った、俺。



「もう当分はやりたくない……」

「うん……それで成果は?」

「それは……無いけど……」



 結論から言ってしまえば、他には見つからなかった。誰に話しかけてもすでにギルドに入ってると言うし、他にも知らないと言う。結果は全滅だった。



「そりゃ残念だったな……姪原はどうだった?」

「うん……私もダメだった。女子に聞いてまわったけど、さっぱりだよ」



 八方塞がりだった。残るは網目先輩に期待するしかないが、二年生ともなるとソロで活動してる方が少ないだろう。仮にいたとしても、そんなすぐには入ってくれないと思う。



「今日はこのくらいにして部活に行こっか」

「わかった……」



 俺は落ち込んだ気分をなんとか上げようと、体を起こした。そしてノロノロと投網についていく。



「じゃあ、板宿君また明日」

「またな」

「おう。二人とも、また」



 打開策は思い付かないが、先輩の待ってるだろう部室への長い道のりを歩いていく。



「そ、そっか……ダメだったんだ……」



 部室で三人で席に着いていた。今日の結果について報告し合う。



「うん……室町さん以外には見つからなかったの」

「わ、私も当たってみたけど、見つからなかった……。ご、ごめんね……部長なのに頼りにならなくて……」

「そんなことないよ、お姉ちゃんはよくやってるよ」



 そうだよね、と投網は俺の方を向く。



「客観的に見て頼りないな」

「うう……」

「もー! 真偽君!」



 しまった。また余計な一言を……。その後、三人でしばらくウンウン唸っていたが、いいアイディアは出てこない。



「どうする……?」

「いい考えは浮かばないし……気分転換でもしよっか!」



 投網の提案で、フィールドの探索でもしようかということになった。確かにこのまま部室で考え事してても、打開策は浮かんでこないだろう。時にはパーッと忘れて他のことをやった方がいい時もある。というか、勧誘はしばらくやりたくない……。



「「「リンクスタート」」」



 早速フィールドへと移動した。そこはやはり山の中だった。



「ところで、ティアー」

「な、何かな……?」

「ふと思ったんだけど、『平和の園』にはギルドホームはないんですか?」



 ギルドホームとは、文字通りギルドで使用する家のような物だ。基本的にギルドメンバーしか利用できず、大手のギルドになると、城やビルのようなサイズで所有してるところもある。


 平和の園もそこそこ歴史があるとのことだったので、あってもおかしくはないと思ったのだ。



「あ、あるよ……こっちについてきて……」



 ティアーの案内で、リンクスと共に山の中を移動していく。静かな山の中で、プレイヤーはほとんど見かけない。



「つ、着いたよ……ここ……」

「おお……」



 平和の園のギルドホームは、現実世界と同じように山のふもとに存在していた。だが、現実世界の古びた建物と違い、かわいらしいデザインの一軒家だった。



「へぇー、かわいいね!」

「ちょっとデザインがファンシーだな」

「ど、どうぞ中へ……」



 中もソファーや棚はかわいいデザインの家具で埋め尽くされている。どちらかといえば、女性が好みそうなデザインだ。それを指摘すると、ティアーが答えてくれた。



「へ、平和の園は女子の方が多かったから……」



 意外だった。てっきり男子の方が多かったと思い込んでいた。いや、実際にはそんなこと言われてないから、俺が悪いな。



「よし、じゃあホームも確認したし、探索に行こ!」



 すっかりリンクスが指揮を取るのが当たり前になっている。ティアーは別に文句なさそうというか、むしろ妹を頼りにしてる感じはあるが。


 ともかく俺達はホームを後にして、フィールドの探索に出掛けた。



「ところでここのサーバーって、どのくらいの広さがあるんだ?」



 移動しながら問いかける。確かこの高校の生徒数は一学年で約四百人。三年までで千二百人。仮に教師を合わせても、関係者は二千人にも満たないと思われる。



「え、えっと、面積で言うと……香川県くらいあるって聞いたことが……」

「マジか!?」



 思わず大声が出てしまった。いくらなんでも広すぎだろう。いくら香川県が日本最小の県とはいえ、人口は何十万人もいるはず。その面積で二千人しかいないとなると、相当出会うのは難しい気がする。



「で、でも……学校内でログインすると、だいたい中央の校舎からログインするから……」

「なるほど」



 どこら辺がサーバーの端っこかは知らないが、たどり着くまでは時間がかかると言う訳か。



「でも、強いギルドはやっぱり広い土地を持ってるんじゃない?」

「う、うん……」



 確か内助から聞いた話では……黒騎士と百獣団だったか?その二つが上位だとか。



「それなら私も勧誘が来てたよ。確か……『ローズガーデン』ってとこから」

「えっ……!?」



 リンクスの呟きに、ティアーはめちゃくちゃ驚いていた。



「ろ、ローズガーデンって、ランキング二位のところだよ……」

「ほう、そんなところから勧誘が来るなんて、やっぱりリンクスはやるな」

「もー、からかわないでよ」



 照れたようにほっぺたを押さえてみせるリンクス。軽く体を揺らして、まんざらでもなさそうだった。



「え、えっと、とあちゃん、ギルド移籍しちゃうの……?」



 一方、震えた声で問いかけるティアー。その声からは不安が感じ取れる。



「もー、何言ってんの、お姉ちゃん。私はいつもお姉ちゃんの味方だよ?」

「と、とあちゃ~ん……」



 またしても抱き合う姉妹。なんか恒例のアクションになりつつあるな。

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