我が左眼に宿りし・・・
「じゃあレック兄ィ、俺はカネーちゃんを送ってくるね」
「がっちりガードするっす!」
ロックは、護衛クエストの成功を祝う打ち上げが終わったので、
特別参加をしていたガッポリ商会の娘カネーを、
王都の街中にある自宅まで、送り届ける事とした。
「ああ、頼むぜ」
「ロック、送り狼になるんじゃねえぞ!」
「そうだそうだ!」
「ああゆう真面目そうに見えるヤツが、一番危ないんだよな」
「俺は、3馬鹿トリオさん達とは違うから大丈夫ですよ」
「紳士っすね」
「「「誰が3馬鹿トリオだ!」」」
「私、ロック君になら襲われても良いな・・・」
「あら、言うわねカネーちゃん」
「まあ、ロック君は安全な番犬タイプだから安心よね」
「言えてるわ」
「分かりませんよ、俺も、
こう見えて、心の中に野獣が潜んでいるかも知れませんよ」
「ビーストっす!」
「ロック君の野獣が牙を剥くのは、魔獣や盗賊に対してだけだけどね」
「そうだな、魔獣には容赦無いもんな」
「ああ、頭を一発で粉砕だからな」
「あの狩り方も、ドラゴンとか狩るぐらいの腕前になったら、
考えなくちゃならんよな、
ドラゴンの頭部って結構、素材が集まってるからな」
「そうね、粉々にしちゃったら、結構な損害が出るわね」
「ドラゴンを狩れる様になるなんて、まだまだ先の話ですから良いですよ」
「目指せドラゴン・スレーヤーっす!」
「ロック君、帰り支度が出来たから、
そろそろ送って貰っても良いかな」
「ああ、じゃあ行こうか」
「行って来るっす!」
ロックは、ウィルと一緒に、
カネーを自宅に送る為、冒険者ギルドの酒場を後にした。
「さすが王都だけあって、夜になっても灯りの魔導具で明るいんだね」
「遠くまで良く見えるっす!」
「うん、コウガ王国の魔導具屋さんが、
安い魔石でも、長く明るく灯る魔導具を発売したから、
王都にも導入されたんだって」
「へ~、そりゃ凄い技術力だね、
他の魔導具にも、色々と応用が利きそうだもんね」
「技術革新っす!」
「うん、もうサリエ・ブランドの名前で、
色んな魔導具が売り出されてるんだよ」
「へ~、面白そうだから、
王都の魔道具屋を覗いてみようかな」
「お供するっす!」
「ウチのお店にも結構置いてあるから買いに来てよ」
「そうなんだ、じゃあ明日にでも行ってみようかな」
「行くっす!」
「兄さんに値引きしてくれる様に頼んで・・・あら何かしら?」
会話の途中で、突然カネーが路地裏の暗がりに向かって走って行ってしまった。
「カネーちゃん、どうしたの?
王都とは言っても、暗がりは危ないから入らない方が良いよ」
「注意一秒っす!」
ロックとウィルは、カネーの後を追って路地裏へと入って行った。
路地裏の気配を辿って行くと、
袋小路になっている場所に、沢山の箱が積み上げてあり、
その前に佇んでいるカネーが見えた。
「あんな所で、何してんだろ?」
「誰かに話掛けてるみたいっすね」
「でも、何の気配を感じないんだよな、
ウィルは、どうだ?」
「自分も感じないっす」
ロック達が近付くと、
確かに、カネーが箱の物陰に向かって話しかけていた。
「私は、あなた達に危害を加えるつもりは無いから、
どうか顔を見せてくれないかしら」
ロックは、カネーが誰も居ない場所に向かって話し掛けているのを見てゾッとした。
「カネーちゃん、霊が見える人とかじゃ無いよね・・・」
「地縛霊っすか?」
「ホントに、奴隷商の人達じゃ無いんですか?」
「ええ、違うわよ」
「「えっ!?」」
ロック達は、誰も居ないかに見えた暗がりから返事が返って来たので、
ビックリして声を上げた。
「じゃあ、今、出て行きます。」
そう声が聞こえると、
突然、今まで感じなかった何者かの気配が現れて、
積み上げられた箱の物陰から人が出て来た。
「キツネタイプの獣人?」
「みたいっすね」
ロックもウィルも夜目が利くので、
薄暗い路地裏でも、ロックと同い年ぐらいのキツネ獣人の少女が、
少し年下ぐらいの同じキツネ獣人の女の子を背負って現われたのが見えた。
「全然、気配を感じなかったよ」
「ホントっすね」
「私達は、種族の特性として隠密スキルを所持しているので、
通常の気配察知には感知されないんですよ」
「へ~そうなのか、
でも、カネーちゃんは何で分かったの?」
「そうっすね」
「私、生れ付き、魔力の流れが目に見えるの」
「えっ!?カネーちゃんて『魔眼持ち』だったんだ!?」
「『我が左眼に宿りし』っすね!」
「『魔眼』って程、立派なもんじゃ無いけどね」
「いやいや、俺達が全然分からなかった
彼女達に気付いたんだから大したもんだよ」
「凄いっす!」
「はい、私達も隠密スキルが見破られたのは初めてなので、
とても驚きました。」
「え~、そうかな~」
カネーも、皆に褒められると満更でも無い様子であった。
「ところで、君達は何で、あんな所に隠れてたの?」
「追われる身なんっすか?」
「はい、実は・・・」




