ニャンダフル・ライフ
「こっちはファニーの武器ね、ご購入下さった
ロック様とウィル君に、ちゃんとお礼を申し上げるのよ」
カレンは魔導バックの中から小弓を取り出すと、
妹のファニーへと差し出した。
「うわ~!カッコイイ小弓だね、
ロック様、ウィル君、ありがと~」
「どう致しまして」
「無問題っす!」
「ファニーに弓だって?
確かに練習しちゃいたが、実戦で使うには心許無いんじゃないかねぇ」
カレンらに訓練を付けていたアンジェラが告げる
「それが、アンジェラさん、
ロック様方に、ご購入頂いた小弓はファニーと相性の良い風魔法が付与されているんですよ、
本人の風魔法と合わせれば、そこそこの威力は期待出来ると思います。」
「は~、冒険者デビューから魔法付与付きの武器とはね・・・
普通なら、中堅ぐらいに成らなきゃ手に入れられないもんだからね」
「俺とウィルの戦闘スタイルは、今まで遠距離からの魔法による攻撃が主体だったから、
魔獣から採れる素材をダメにしちゃう事が結構あったんですよ、
ファニーちゃんが後衛でウィルと一緒に牽制出来る様になれば、
俺もアンジュラさんやカレンと一緒に前衛が出来ますからね、
魔獣の種類によっては近接戦闘で倒して、良い素材が回収出来る様になると思います。」
「ロックは近接戦闘も出来るのかい?」
「ええ、ホワタ村では父にミッチリと扱かれましたから、
剣も人並みには使えますよ」
「自分は魔法一本っす!」
「そうか、ロックは、あの『ホワタ村』出身だって言ってたね、
あの村から出て来た者は、即実戦で通用するって有名だから、
ロックの剣の腕前にも期待が持てそうだね」
「ええ、ご期待に沿えるよう頑張りますよ」
「自分も頑張るっす!」
「それで、カレンの武器は何にしたんだい?」
「はい、私の武器はアンジェラさんと同じ黒魔鋼製のシャムシールにしました。」
「シャムシールって、背が反った刃を持つ片刃刀だっけか?
また変わった武器を選んだもんだね」
「ええ、私も今回、初めて持ったんですけど、
手に持った感じが、何か一番シックリ来る気がしたので買って頂きました。」
「まあ、武器とのフィーリングってのは結構大事だからね、
今まで訓練で使っていたミドルソードと違って『切る』事に重点を置いた剣だから、
私の目が上手い事治ったら、使い方を教えてやるよ」
「ありがとう御座いますアンジェラさん
是非、お願いします。」
「ああ」
「そんじゃ、武器は一度、魔導バックに仕舞って貰って、
明日からの予定なんだけれど、
カネーちゃんのとこで馬車や、旅に必要な物を一通り揃えたから、
明日の朝、王都を発って、俺達の活動拠点としているヒデブの街に向かいたいと思います。」
「いよいよ、でっぱつっす!」
「馬車を購入したって?
目の見えない私は元より、王都生まれで王都育ちのカレン達じゃ、
馬車なんて操れないだろうに、
御者を務めるのがロックだけじゃ大変じゃ無いのかい?」
「それに付いての、ご心配は要りませんよ、
今回、俺達の馬車を曳くのは馬では無くて、
俺が土魔法で造り出したゴーレム馬ですから、
造る時に指示を出す人物を俺達に設定して置けば、
ファニーちゃんでも御者台から告げるだけで走らせる事が出来ます。」
「自分でも操車出来るっす!」
「土魔法でゴーレムが造れるなんて初耳だね」
「ええ、土魔法を極めようとする人なんてナカナカ居ないですからね、
結構レベルを上げなきゃ使えないから、一般には知られて居ないんじゃないですかね」
「私は見せて頂きましたが、ガッチリとした頑丈そうな馬でした!」
「馬並みのアレは付いて無かったっす!」
「へ~、私も、目が見える様になったら、
是非、見てみたいもんだね、今から楽しみだよ」
「私も見たいです!」
「ええ、ご覧に入れますよ」
「きっと、ビックリすると思いますよ、アンジェラさん」
「ビックリするアレも付けるっす!」
「しかし、ヒデブの街かい懐かしいね~」
「やっぱりアンジェラさんも初心者の頃は、ヒデブの街に居たんですか?」
「ああ、あの街の近辺は、そんなに強い魔獣が居ないからね、
初心者が実力を付けて行くのに最適なのさ、
私も、あの街で知り合った連中とパーティーを組んで、
腕を磨きながら、ここまでやって来たって訳さ・・・」
「確か・・・『ニャンダフル・ライフ』でしたっけ?」
「ああ、偶々あの街で知り合った連中が、
私と同じネコ系の獣人だったもんで、そのパーティー名になったんだよ、
黒ヒョウ獣人でシーフの『クロ太郎』、虎獣人で戦士の『トラ吉』、
獅子獣人で盾職の『ライ夫』、ミケネコ獣人で弓職の『ミケ代』、
みんな一癖二癖あったが良い仲間だったよ・・・」
「名前!名前!」
「分かり易いっす!」




