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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第四章 森の中の小屋
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深夜

視点はリクに戻ります(・・*


「ん……。……あれ? なんか騒がしい……?」


 ボクは夜に窓の外から聞こえるガシャガシャと鳴る音に気がついた目が覚めた。

 電気もつけていない部屋で、すでに窓に張り付いて窓の外の様子を見ているアキにボクは聞く事にする。


「あの、アキさん」

「しっ」


 アキが口元に人差し指を立てて、その後に手で招くようにする。

 ボクは何だろうと思ってアキの隣まで移動する事にした。

 ボクが隣に来ると、アキがある一か所を指差した。

 そこには全身を鎧で囲んでせわしなく探している兵士の姿が合った。門で見たような兵士が来ているような鎧よりもしっかりとしているので、おそらく城の兵士だろうということは分かる。


「さっきっから城の人たちがせわしなく行ったり来たりしてるの。たぶん誰か探してるんだと思う」

「誰かを?」


 そう呟いた時、ハッとして一つの事に気がついた。


「まさか雁也さんが見つかったんでしょうか」

「かもしれない。城内の情報を知らされないように、ね」


 そうすると、ボク達はどうしたらいんだろう。

 とにかく、キリやヘル、マナを起こして隣の部屋へと行き、雑賀に指示を仰いでもらった方がいいだろう。


「キリさん、マナちゃん。起きてください」

「ヘルちゃん、起き……てたか」


 ボクはキリとマナの肩を揺すって二人を起こす。すると二人とも目をうっすらと開けながら寝ぼけたまま訊いてきた。


「どうした……?」

「ん~。まだ深夜だよ~? リクちゃん~」

「緊急事態……だと思います。すぐに起きてください。隣の部屋に行きますよ?」


 ボクがそう言うと、寝ぼけていた二人ともすぐにシャキっとした。

 マナは下ろしていた髪を櫛で梳かしながらいつものツインテールに縛っていた。キリはしっかりと起きるように洗面器に向かって水を顔にかけた。


「ルナ、シラ、ツキ……は起きてよね。二人とも起きて」

『むぅ……なんじゃ?』

『まだよるですよ? りく』

『あたしは起きてるって確証があるだって!? まぁ起きてたけどね! 外の兵士の音。結構最近だよ? 鳴り始めたの』


 三人が起きた事がわかると、ボク達は五人とも隣の部屋に向かった。


「起きてますか? リクです」


 扉をコンコンとノックし、自分の名前を答えると、カチャと控えめな音が鳴って鍵が開いて扉が開く。

 扉を開けたのは雑賀。昼間みたいな雰囲気ではなく、かつてジーダスやマナを助けるために竜田と一緒に戦ったその雰囲気を纏っている。

 ボク達はすぐに電気もつけていない部屋の中に入るとそこはすでに全員が起きて床に座っていた。


「丁度リクちゃん達の所に向かうとこだった」


 雑賀は座ったボク達を見て話を始めた。


「外にはもう誰がいるか分かるな?」

「はい。城の兵士達だと思います」


 それはもう確認済みだ。


「そうだ。雁也が見つかったかもしれないが、俺達はここを動く気はない。だてに英名を名乗っていないわけではない。雁也と一緒に同行を始めるのは雁也が此処に来てからだ。それまでは各々戦闘の準備をしておけ。何もなければ、明日雁也が昼には帰る手はずになっている。帰って来なければ……いや、あまり考えたくはないな。迂闊に動いてこちらまで怪しまれてはならん。わかったな?」


 雑賀がこれからの行動を教えてくれたのでボク達はそれぞれ顔を縦に振った。

 それぞれ魔力解放を終え、武器も呼び出しておく。魔力を感じ取られないように遮断する魔法を唱えたのは妃鈴。雑賀は何か道具を取り出して目を瞑っている。取り出したのは魔具なのか。魔力が通った事により光りはじめた。


 ボク達は雁也が来るのはいつだと今か今かと待ち続けた。


 そして……控え気味に叩かれる扉。

 全員が息をひそめてノックされた扉に注目した。


「神は存在し、神より愛されし子へと姿を現す」


 突如として扉の外からの声に、ボク達は頭の上にハテナを浮かべる。

 だけど、それを聞いた雑賀がホッとしたような、そんな雰囲気を出して扉を開けた。今の言葉が合言葉か何かなのだろうと言う事がボク達の中で定着した。


「雁也。無事だった――」


 雑賀が扉を開けたと思ったら、そこに立っていたのは緑色の髪にあどけない顔つきの女の人が立っていたのだ。その後ろにはハンマーを担ぐ黄色の髪の女の人だった。

 すぐに戦闘隊形に移行しようとした雑賀を、ユウが静止した。


「敵じゃないよ。さっき合言葉訊いたじゃん」

「だったら、こいつは……」

「雁也だよ。魔眼の力を使ってこうなったってことかな。お母さんからは聞いてたけど、実際見ると魔力の質もちょっと変わってるね……。でも、今はなんて呼べばいいのかな?」


 どうやらユウは目の前にいるこの緑色の髪の子が雁也だという確証があるようだ。一体何故?

 どこからどう見ても雁也には見えないが……。だが、ユウが雁也だと確証する以上、こちらも確証せねばなるまい。あまり時間をくう訳にはいかない。魔力の色を見ても、雁也の色と似ている部分があるが、一部混ざっているような混色も見えた。まるで取りこんでいるようだ。


「ミュア・バレンタインと呼んでくださいユウ様」

「ほぇ。ミュアの仲間に男が二人しかいない。もっと強靭な体格をした男を想像してたんだけどなぁ」

「リン。あんまり見くびってると痛い目見るよ?」

「は~い」


 どうやら後ろに居る人は味方のようだが、来るときに見た人では無いので城に居たのだろうか?

 ボクが不思議がって見ていると、ハンマーを担いでいる女の人と目が合った。


「うそぉ!? 子供じゃん!? 可愛い!!」


 いや、だったらなんでユウを見た時点でその子供と言わないのか。

 明らかにボクを見てから言ったよね? その言葉。

 背の高さか……背の高さがこんな悲劇を生んでいるのだろうか。ヘルや寝虚の方が背が低いはずなのに……。

 ちなみに可愛いと言う部分はスルーした。ボクには何も聞こえていない。


「その子はリク様。ライコウを納めている人の息子さんなの」

「へぇ。社会見学……みたいな? ……ん? 息子さんって事は……男の子?」


 今は指輪をしているもんね! 女の子に見えても仕方ないはず。

 なのに、胸の内に来るこの怒りは何だろう……。元はと言えば、ユウが変な提案をするから……。


「そんなことより、雁也……じゃなくてミュアか。ミュアが戻ってきたならいつまでもここには居れないだろう。転移陣は用意してある。国の外ぐらいしか飛ばせないが十分だろう」


 雑賀が部屋の中央まで行くと、急に魔法陣が浮き出てきた。先程まで何かをやっていたなとは思っていたがこれを描いていたのか。

 雁也……では無くミュアともう一人、リンと呼ばれていた人も部屋に入ると、急に目の前が白くなった。


 次の瞬間にはヘレスティアの外。そこに立っていた。

 後ろを振り返ると大きな壁が見えている。入口の所にテレポートしたわけではなさそうだ。


「よし、さっさと森に入ってからライコウに帰還する」


 またあの森を!?

 しかも今は深夜だから絶対に出そうなのに!?


「あ、あのぉ。森を抜けないと帰れませんか?」

「……すまんリクちゃん。帰れない」


 雑賀に申し訳なさそうに言われ、意識が遠くなりそうになる。


「えっと、大丈夫? お姉さんがおんぶして運んであげる?」

「リン。そんなことしたら戦えないじゃないの」


 心配しながら言ってきたリンにミュアが答える。

 絵的におんぶされたくないし、確かに戦えない。だけど恐怖でも戦えない。あの森、回避できないかな……。


「お兄ちゃん、いつまで現実逃避してるの? 行くよ?」


 ユウに言われ、ボクは前を走って行く雑賀の後を追い始めた。

 だけど、その雑賀が急に走っていた足を止める。


「どこに行くのだ?」


 目の前に……。


「逃がさん」


 黒い甲冑と白い甲冑がそろって立っていた。



 『黒騎士(ブラックナイト)』と『白騎士(ホワイトナイト)』だと、一発で気がついたと同時に、二人の物凄い量の魔力を見て、驚きと恐怖に包まれたと錯覚してしまった――。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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