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ヒスティマ Ⅳ  作者: 長谷川 レン
第三章 聞き込み捜査
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 Intermission ミュア・バレンタイン

サブタイの題名の人は雁也です(・・*

雁也は改名しましたヾ(・・*


魂が定着した肉体がミュアですので(;・・


 次に目を開けた時は、誰かが頭を撫でてくれていたのに気づいた時だ。

 うっすらと目をあけると……。


「あ、ごめん。起こしちゃった?」


 目の前にリンの姿。メイド服からパジャマ姿へと変わっている。ということは私は数時間寝ていたと言う所か。


「ううん。そんな事ないよ」


 外を見るともうなんにも見えないほど暗い。ライコウと違ってヘレスティアには電灯が無いのだ。

 光が無い町というのは、とても暗い。夜目が利かなければ深夜を歩くことなんてまったくと言っていいほどできないだろう。


(それを回避するために、何らかの光魔法を放つのだろうですけど)


 ちなみに私は夜目が利く。だてに潜入のプロという仕事をしていないのだ。

 そして、そろそろ行動したいと思ったのだが、いかんせん。目の前に心配そうに覗いているリンをどうしようか。

 友達で、唯一の親友だし、いつだって理解者で居てくれたリンだ。とは言っても、それはミュアの時代の頃の話で、私の頃の話では無い。

 切り捨てる。なんて考えが浮かぶけど、それはあまりにも酷だ。


「ねぇ、ミュア。どうしたの? さっきっから黙り込んじゃって……まだ体辛い?」

「そ、それは……」


 素早く決断しなければ。

 右手に持つ麻痺弾の入ったサブレッサー短銃を撃つか。左手に用意している睡眠魔法を放つか。

 ……後者だな。


「ねぇ、リン」「あのね? ミュア」

「「…………」」

「「そ、そちらからどうぞ!」」


 見事にハモってしまった。

 その後に気まずい空気が流れる。


「リンから言って。何?」


 こちらからの話は、「ごめん」だけで済むのだ。リンに、ミュアに対する最後の言葉ぐらい話させても、何も問題がない。


「うん。わかった」


 リンはそう言うと、私と丁度反対側にあるリンのベッドに座る。


「あのね? 昼間に、ミュアが倒れたのと同じ時間にね? 訓練場で侵入者の処刑があったんだって。黒騎士様が処刑したんだけど……その処刑された人ね? レグルに乗り移ってたんだって」


 その話しはよくわかる。なぜなら当事者だし。でも、初めて聞く話なので驚いておかないと。


「レグル……が?」

「うん。昼間にミュアを見に来てくれたレグルはもう処刑後だから本人だったけど、それまでは違ったの。……だからね? ミュアは侵入者の(、、、、)乗り移った(、、、、、)レグルに好意を寄せていたと思うの」


 …………ん? それは違うと思うが?


 ミュアが好きになったのはまだ乗り移っていないレグルであって、乗り移ったレグルでは無いはずだ。


「えっと、リン? それはどういう事?」

「侵入者がね? 人に乗り移れるような魔法を使ってレグルの中に居てレグルを操っていたの。もうこれだけ言えば分かるよね? ミュアは、レグルじゃなくて、その侵入者に好意を寄せていたのよ」


 まさかとは思うが、目の前にいるリンスマリアはミュアに彼氏を無くさせたいとか? でも、親友がそんなことをしてどうするのだろうか。

 ミュアの記憶ではリンは恋路を応援してくれているはずだ。


「そりゃぁ驚きよね? 恋人が実は違う人間でしたなんて。その人間が……もう死んじゃったなんて……」


 そう言うと、リンがベッドから立ちあがって私へと近づく。


「それだけじゃないの。レグルと……ううん。侵入者と恋人だったミュアも怪しまれてるの。レグルはなぜか否定してるけど、きっと侵入者が操っていた時の記憶が曖昧なんだわ」


 リンは私の隣へと座ると、そのまま真正面から抱きしめる。かと思ったら、顔はなぜか私の目の前で止まっている。


「ミュア。私とここから出よう。ここに居たらきっと死んじゃう。一番近い国で、難民を受け入れてくれるとしたらライコウしかない。そこに行こう!」


 それは確かに、私にとっては好都合だが、リンは戦闘ができないはずだ。リンの戦った姿なんて見た事がない。もしかして、リンはどこかで戦闘ができるように訓練を受けていた? いや、リンはヘレスティアで生まれ育った……はずだ。

 しかし、これは彼女から聞いた話。あまり信用はできない。


「でも、どうしてリンが私のためにそんなことを?」

「そ、それは……」


 急に顔を赤くしてうつむくリン。あれ? もしかしてリン……。


「も、もしかして、リンって私の事……す、好き? ……って、そんな事ないよね。私達、女同士だし」

「…………」



 そこで黙って顔を赤くしないでよーーーーッ!?



 やばい。今ミュアの素が出た。魂が融合したのだから出てもおかしくは無いが。

 えっと、これってなんて言うの? ガールズラブ? 百合? 百合なの?


 と、頭の中で混乱していた時。


「ミュア!」




 リンの唇と、私の唇が重なり合った。




 そして、そっと放していくリン。


「私ね? 初めてみた時からミュアの事好き。ショウから派遣されて、潜入した時、初めて合ったミュアがとてつもなく可愛くて、私のモノにしたくてッ。可愛い顔で慌てる姿とか、コップを割っちゃいけないって言うのに割っちゃうドジっ娘属性とかめちゃくちゃタイプで! だからレグルなんかにあげない。ミュアは私の天使なの!」


 それだけ言うと、またリンがキスをしてきた。今度は大人のキスで、自然と声が漏れてしまう。


「ん。可愛い、ミュア。このまま襲いちゃいたいけど、でも今この時間帯に逃げないと」

「ち、ちょっと待って!? 今、ショ――」


 私がつい大きな声をあげてしまったので、リンが口元を塞いだ。


「しー。もう深夜なんだから、ばれたらマズイでしょ? って言っても、ミュアなら驚くと思って防音壁を張っておいてよかったぁ」


 これは……ミュアの魂と融合したのは本当にまずかったか?

 ってちがう。今はリンが自分の国を証言した事だ。


「今、リン。ショウから派遣されたって……」

「うん、まぁね。ライコウと一番の同盟国だし、実力もヘレスティアに劣らない。だから安心して私に身を任せて。絶対にミュアをここから出してあげるから」


 自信満々に言うリン。まさかライコウと姉妹国とまで言われるショウの国が此処にいるとは思わなかった。ということは、ヘレスティアと戦争をする時、ショウが増援として来てくれることは間違いない。


「あ、あのね? リン……。私は――」


 自分の国を言おうとして、黙る。リンは黙って私室の部屋の扉を見ていた。

 分かる。あの扉の外側に誰かいる。防音壁が張ってあるから聞こえるはずがない。


「誰かいるね」

「ミュア、わかるの?」

「うん。だてに派遣されてきてないからね。でも、同盟国がいるとは思わなかったな、リン」


 私がそう言うと、リンがぱちくりと目をニ、三回ほど瞑った。


「え゛? まさかミュアってライコウから?」

「昼間処刑されたってリンが言った人、私……の仲間なの」


 こちらが【侵入者(カメレオン)】というのは黙っておこう。リンはミュアが好きなのだから。


「でも、ミュアの武器ってサバイバルナイフよね? イーグルタガーの形をした。戦える? あんまり得意そうじゃないけど」

「あまり近接は得意じゃないかな」


 そう言ってパジャマをまくしあげて、銃帯を見せながらウィンクをしてあげる。

 リンが驚いた顔をして「あわわ」と慌てている。自分が惚れた人がまさか同盟国だとは思わなかったのだろう。実際は違うのだが。ここは誤魔化されてくれた方がいい。それに、ミュアはすでに私なのだから間違いは無い。

 しばらくすると、扉の外から人の気配が消えていった。おそらく外に居たのはレグル。心配で来たのだろう。だが、彼は生粋のヘレスティアで生まれた子。ついてくる事はありえないし、口がそこまで堅いわけではない。


「それじゃあ、行こうか。ミュア、夜目は使える?」

「夜目が利かないと外を歩こうなんて思わないよ?」


 そう言って、用意してあったフックショットを空間から取り出した。


「そ、そんな物まで持ってるんだね……」

「この国に何人か仲間がいるから、そっちに先に行ってもいいかな?」

「了解。って待って、私まだミュアの返事聞いてない」


 リンがそう言うと、ギクッと肩が大きく揺れた。

 完全に話を逸らせたかと思ったのに、覚えていたのかと思う。


「嘘がばれた時の肩の揺れは治らないんだねぇ、ミュア!」

「ひゃぁ!」


 急に後ろから抱きつかれた。まだ防音が張ってあるので大きな声を出しても大丈夫だ。


「まだ返事はいいよ。でも、ちょっとこのままで居させて」

「う、うん……」


 ドキドキが止まらない。これまで男の姿で居たからか、女に耐性がなかったのかと訊かれればあるはずだと言える。なのに胸の鼓動が早まると言うことは、ミュア自身があまり百合に抵抗がないと言う事。


 これはホントに厄介な魂だな……。完全に扱えるのに少し時間がかかりそうだ。


「それじゃあ、いこっか」


 そう言ってリンが体を放す。その手にはいつの間にかハンマーが握られて……。


「え゛?」

「どうしたの?」


 リンがハテナを浮かばせながら、こちらに向いた。


 ……ツッコンだらきっとダメな奴だ。


 私はそう思って、手に持ったフックや、リンの協力もあって城の外にすみやかに出る事が出来た。


誤字、脱字、修正点があれば指摘を。

感想や質問も待ってます。

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