14、小屋の中
「つまり……君は母親がジプシーで、父親が……あのルーカス・コルヴィナス?」
「はい。お母さんが病気で亡くなって路頭に迷っているので、養育費を請求しに行く途中なんです」
「……そう」
両親がそういう感じなので変な魔法が使えてもおかしくないですよ、という私の主張をオルハンは黙って聞いてくれて、ややあって、顔をしかめながら頷いた。
「……それは、そう、大変だね」
「いや!?おかしいだろ!?なに納得してるんだよオルハン!?」
「でも、この子、嘘は言ってないと思うし……」
こんないたいけな幼女が嘘をついているとか疑うリオンはあんまり性格がよくないですね??それに引き換え、オルハンは良い子認定のままで大丈夫そうだ。
「バカなのか!?おい、チビ、お前……死にに行くようなもんだぞ!?あのルーカス・コルヴィナスに……金をせびりに行くだって!?」
あ、そこは信じてくれているらしい。
リオンが信じられない、と言っているのは私の行動そのものということか。
「でも、私に対して責任がある人は、もう実父くらいしかいないので……」
「~~いやっ、そう、そうだったとしても……だ!!」
「国の施設に入るのはどう?孤児院は少し先の町にもあるし……君が貴族の血に誇りを持っていて、貴族としての生活をするためにコルヴィナス卿の元に行く、というのなら、僕らの知り合いの貴族の家の養女になれるよう、口添えしてあげることもできるよ?」
「そ、そうだぞお前!い、一応……命の恩人だからな!あんな化け物のところに行かなくても、俺たちが助けてやるよ!なんたって俺たちはおう、」
「僕らも貴族なんだ。ね、リオン」
リオンは何か言いかけたけど、それをオルハンが遮った。
「なるほど貴族。だから誘拐されたとかなんですかね?となりますと……身代金…………を、私がもらっても?」
「それはちょっと……」
「なんでそうなるんだよ!」
助けたお礼に、本来誘拐犯に支払う予定だったお金を、私にくれてもいいと思う。なんでダメなんだろう……。不思議。
「僕らは身代金目的じゃなくて、ここで死ぬように連れてこられたんだ」
「縛って小屋に放り込むのは……生存率高くないですか?」
じわじわと餓死させるのは時間がかかるし、ひと思いに殺して埋めなかったのはなぜなのか。小屋の中だと雨風もしのげるし、縛って森の中に放り出せば獣が食べてくれるだろうに。
「少しでも罪の意識を軽くしたかったんだと思うよ」
「子供を誘拐はできても殺すのはちょっとってことですか?意外に善人だったんですかね、誘拐犯」
「子供を殺す経験はあっても、僕らは……ほら、貴族だからね。貴族の子供を殺すのには抵抗があったんだよ」
貴族殺しは罪が特別に重いのだろうか。生まれが貴族でも平民でも同じ人間で命の価値は同じでは?と、現実の日本での意識があるので疑問に思わなくはないけれど、賢い優等生な感じのオルハンがいうのだから、そうなんだろう。
「それに最近、このあたりじゃ悪魔が出るって話だ。俺らをそいつに呪い殺させようってつもりだったんだろ」
「悪魔」
「うん、真夜中になるとあらわれて、月の下を踊って歌うとてもきれいな赤い髪の女の子だって……北の……コルヴィナス卿の方の領地に向かっているみたいだけど……」
リオンとオルハンの視線がじぃっと、私に向けられた。
「へぇ、そんな悪魔がいるんですね」
「どう考えてもお前じゃん!!!!お前じゃんその悪魔!!」
なんということでしょう。
真夜中の自由な移動が、そんな感じの怪談扱いされることになっていたとは……。
「きっと、君があんまりにも神秘的だからそんな噂が流れちゃったんだね」
落ち込む私にオルハンが慰めの言葉をくれるが……大人もためらう子供殺しもするだろうと思われる歌い狂う悪魔に見間違えられたのは……神秘的という言葉が、ふさわしいのだろうか……?




