13、詰もうぜ善行、磨こうぜ誠意!
街を出て数日、私の旅は順調だった。
途中「なんでこんな幼女が一人で歩いてるの!?」と親切な旅の夫婦にうっかり保護されそうになったり、通りかかった傭兵団の人たちに「どっかの街で売りさばくか」と攫われそうになったりしたけど。
基本的には順調です。
とりあえず移動は真夜中、歌いながら月明りを頼りに進んでいくと案外危ない目にもあわないもので!日中は身を隠せる所で爆睡し、夜進むという安全面を考慮した計画的な旅。
「……そんな平和な私の旅に…………………まさかの、事件?」
もうすぐ太陽も登ってくるから、お休みできる場所を見つけなければとして、見つけたのは……森の中の……小屋。
小屋ということは誰かの所有物なんだろうけれど、夜中にいないっていうことは普段あまり使われていないのだと思ってお邪魔したところ……
小屋の中には、両手足を縛られた男の子が二人。
口に布も噛ませられていて、明らかにこう……誘拐事件では?
「……」
「……」
「もごもごっ、もご!!」
私と目が合うと、二人の内一人、黒髪の大人しそうな男の子はにっこりと微笑んで、もう一人の金髪の男の子は暴れた。
「はっ……飛んで火にいる、人助け……!」
良い事をして徳を積んで聖女になりたい私に、もしかして天が用意してくださったボーナスステージとかだろうか?
見るからに訳ありそうな二人に、私はあわてて駆け寄ってとりあえず口の布を取った。
「おい!お前!サッサとしろよ!トロいグズめ!ぼさっとしてるんじゃない!」
金髪の男の子は喋れるようになると、私に向かって怒鳴ってくる。
わぁ、大変お元気で何よりですね。もう少し弱ってから助けた方がよかっただろうか?
「……ありがとう。君は、この森の住人かな?」
黒髪の男の子は静かな声。私は首を振って、偶然通りかかっただけだと説明すると、また金髪の男の子が怒鳴った。
「嘘だろ!こんな森に、なんでこんな時間にチビがうろついてるんだよ!あいつらの仲間……ってわけじゃないだろうけど、なんだ、お前……浮浪児か?ふーん、村や町で食えないから、森に草でも食いにきたんだろ!」
じろじろと金髪の男の子が私を上から下まで眺めて鼻を鳴らす。
確かにこの道中、食べられる草とか、木の実とか、魚とかそういうサバイバル生活をしているけど……泥や汗で汚れた私を見て金髪の男の子は顔を顰める。
「臭い奴だな。さっさとこの縄を解いてここから出てけよ、鼻が曲がりそうだ」
そんなに酷い?
くんくん、と私は自分の身体の臭いを嗅いだけど、自分じゃわからないのかも。
現実でも学校で男の子に臭いって言われることがあったから、朝は学校の水道と石鹸で体を洗ったりしてたんだけど、今、ここに石鹸とかないからなぁ。
「リオン。女の子に酷い言葉を言っちゃだめだよ」
「でもさ、オルハン。だって、こいつホントに臭いじゃん」
「森で生活している人間なら、森の獣たちと同じにおいをさせて危険を回避する習慣があるのかもしれないよ」
臭いことは事実なので、なんとかフォローしようとしてくれているらしいオルハン。優しい?
私はオルハンの縄を取ってあげたかったけど、固く結ばれていて駄目そう。
夜なので短く歌を歌ってみると、塵のような、ノミのような、影のような小さな悪魔さんたちがチョコチョコ現れて「お礼」「お礼」「うたの」「お礼」と、オルハンとリオンの縄を溶かしてくれた。
「!?」
「……?」
二人とも驚いて私から一歩、というか、壁まで下がる。
「……今、何をしたの?」
オルハンがさっきまでの優しそうな雰囲気と変わって警戒するように、リオンを背中に庇いながら私に質問する。
「え、縄……取らない方がよかった?」
「その事に関してはお礼を言いたいけど、問題は方法だよ」
「でも……私がナイフとか剣を持っててそれを使って縄を切っても、オルハンは私の事、警戒したと思うんだけど……」
「……まぁ、それは、そう」
幼女が鋭利な刃物を持ってるというのは怪しいし危ないことこの上ない。私も思う。
「じゃあなんで私に縄をどうにかしてほしいって要求したの?」
「僕が想像、予想、あるいは期待したのは……君は誰か大人、親、兄弟、そうした保護者と一緒にいて、彼らを呼んできて縄を解いてくれるっていうことで、君が刃物を使うことでも、君が何か……得体の知れない、怪しい魔法を使うというのは、想定してないんだ」
「気持ちの悪い魔法を使った……!オルハン、こいつは魔女だ!」
違いますが??
善良で清純な聖女を目指している幼女を指差して、なんて酷いことを……?
助けたのにどうして。




