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71 籠城戦1

本日は3話投稿。

元の話が長すぎた……。


『!!!?』


『!!!!!』


『!!??』


『!!!』


「あーはいはい、お邪魔しますよっと!」


「思ったより数が少ないね。 好都合だけど……」


製材所跡に駆け込んだ私達は、予想した通り敷地内に屯していた『礫花』を掃討しに掛かった。


敷地内の群れの数が多いのではないかと懸念していたが、意外にも感じ取れる気配は少なかった。


私とライナの二人がかりなら、それ程間を置かずに処理が出来そうだ。


……などと考えている内に、既にライナが半数を切り刻んでしまっているが。


『……!!?』


「……これで8匹っと。 こいつら、あの光の弾以外は体当たり位しか攻撃手段無いみたいだな。 良くも悪くも遠距離攻撃型ってわけだ」


ライナは製材所の敷地内にある廃材や廃車を遮蔽物にして、離れた場所から光弾を放って来る『礫花』へあっという間に接近すると、短剣を用いて次々両断して行った。


『礫花』自体の耐久力が低い事もあり、接近さえしてしまえば銃を使わずに倒す事は容易なのだ。


問題はどうやって接近するか、という事なのだが……少なくともライナにとってはその辺りは最早問題ではないらしい。


既に相手の攻撃パターンに慣れてしまったのか、飛んで来る光弾を遮蔽物を使わずに躱してさえいる。


正面は元より、どう見ても死角から飛んで来ている光弾すらひょいひょい躱して『礫花』に近付き『礫花』の頭部を刎ねて行く様は、相変わらず人間離れして見えた。


やっぱり、私よりライナの方が人間辞めてる気がするなぁ……。


『!!!!!!』


『!!!!』


『!!!!!』


私のそんな思考を遮るように、建物跡の屋根上から3体の『礫花』がこちらに向けて光弾を放って来た。


左右から飛来する光弾は絶妙に避け難いタイミングで放たれており、私の動きを読んだ攻撃である事が伺える。


『礫花』の光弾は流石にサブマシンガンの様な発射間隔で連射出来る物ではないが、それでもある程度連続して放つ事が出来る。


それ故、仮に躱す事が出来ても二射目以降の回避は更に困難になる。


だが、今の私にとっては……それ程危機的な状況ではない。


「……ッ!」


私は背中から生やした四本の蔦の触手を高速で振り回し、飛来した光弾を全て叩き落した。


続け様に放たれた2射目以降の光弾も同じ様に蔦で弾き、『礫花』達の攻撃を無効化する。


しかし、攻撃を防がれた『礫花』達は動じた様子も無くそのまま連続で光弾を放ち続けた。


どうやら、微妙にタイミングをずらした射撃は、私の移動を制限してその場に縫い止めておくという意図があるらしい。


『!!!!』


『!!!』


『!!!!!!』


そうして防御の為に私が足を止めた直後、崩れた小屋の残骸の陰から新手の『礫花』が飛び出して来た。


新たに現れた『礫花』達は、屋根上の『礫花』達同様に私を囲むようにしながら光弾を放って来る。


どうやら屋根上からの攻撃で足止めし、足元からの攻撃を行う事で私を仕留めようという事らしい。


確かに上からの攻撃に意識を向けながら、下からの攻撃に対処するのは難易度が高い。


疑似的な挟み撃ちの様なものだ。


相変わらず、『花』の怪物達は思わぬ連携攻撃をして来る事がある。


だけど、伏兵の存在は先刻承知だ。


「……ふッ!!」


私は両手を広げると、周囲から攻撃を仕掛けて来る『礫花』へ向ける。


そして両腕に『茨の鞭』を展開すると、一気に『礫花』へ()()した。


『!!?』


『!??』


一本の矢のように撃ち出された鞭が地面に居た2体の『礫花』を撃ち抜き、それぞれを粉砕する。


私はそのまま体を捻ると、背中と両手、合わせて六本の()を大きく振り回し、周囲の建物諸共残る4体の『礫花』を薙ぎ払った。


『!!!??』


『!!??!?』


『!!??』


『???!!!』


『茨の鞭』と蔦の触手による一閃………いや、()()


空気を引き裂く音を発しながら振るわれた鞭によって、4体の『礫花』達が引き裂かれる。


屋根上に居た3体は足場にしていた屋根ごと引き千切られ、地面に居た1体は複数の鞭によってバラバラに寸断されて絶命した。


私を囲んで集中砲火を浴びせて来た『礫花』はこれで全滅した事になる。


しかし、私は攻撃の手を緩めるつもりは無い。


「……はぁっ!!」


周囲の『礫花』を薙ぎ払った勢いのまま、私は両手の鞭を自分の正面に向けて打ち出した。


『……!!?』


『!!??』


製材所内に放置されている廃材の陰から、今まさに飛び出して来た『礫花』の集団を『茨の鞭』が襲う。


超高速で打ち出された鞭は、ギロチンの如き殺傷力を持って新手の『礫花』達を引き裂いた。


姿を肉眼で確認出来たのは数体だったが、廃材の向こうの暗闇に更に倍程の数が潜んでいたようで、鞭を通して感触が伝わって来る。


これで、ライナと合わせればかなりの数の『礫花』を減らす事が出来ただろう。




「これで23っと……。 おーい、操。 なんかすごい音したけど平気か?」


……と、粗方周辺の『礫花』を処理出来た事を確認していると、ライナが緊張感に欠ける声を上げながら物陰から顔を出した。


その手には絶命した『礫花』が1体握られている。


………素手で倒したようにしか見えないのは気のせいだろうか。


「うん、大丈夫。 こっちは終わったよ。 ……それで、ライナはどうしたの? それ」


「ん? あ、これか? いや、こいつら耐久力低いみたいだから、どの程度の攻撃で倒せるのか確認したんだ。 具体的には素手で殺れるかどうか」


どうやら本当に素手で『礫花』を倒したらしい。


……ライナって、武器使う必要あるのかな?


「弾薬の節約になるから短剣で殺るのは良いんだけど、ちょっと威力過剰なんだよな。 それに、出来ればもうちょっとリーチが欲しい」


「そ、そうなんだ……」


私には良く分からない事で悩んでいる様子のライナは、手に持っていた『礫花』の死体を放り捨てる。


死体は既に枯れ始めており、私が倒した『礫花』の残骸も枯れ落ちてしまっていた。


敷地内の気配を探ってみるが、他に潜んでいる『礫花』は居ないようだ。


「コホン! と、とにかく、製材所跡に居た『礫花』達は全部倒せたみたいだよ」


「お、そうか。 ………で、周りの奴らは相変わらずか?」


ライナの言う『周りの奴ら』というのは勿論、森で私達を追い掛け、周囲を囲もうとしていた『礫花』の群れの事だ。


あの群れは私達が製材所跡に逃げ込むと同時に動きが変わり、私達を追い掛けるのではなく、製材所跡を取り囲むのを優先し始めていた。


製材所の敷地内に入った時点で動きの変化は感じ取っていたが……どうやらライナも察していたらしい。


「……うん。 製材所の周りを包囲してる。 数も段々増えてるよ」


製材所を包囲した『礫花』の大集団は、徐々にその数を増していっている。


その数は地下水路で遭遇した怪物の群れを既に超えていた。


いくら『礫花』が脆いと言っても、この数を相手にするのは流石に無茶だ。


それでも私達が籠城戦を選んだのは、このまま逃げても森の中で同じ様に囲まれた状態になってしまうからだ。


要するに、建物に籠城して迎え撃った方がマシ、という事だ。


たとえ、籠城する建物がボロボロに朽ちた廃墟だとしても。


「ご親切に中の掃除が終わるまで待ってくれるとは行儀が良いな。 ……ま、包囲が完了するまでの時間稼ぎだったんだろうけど」


製材所内に居た『礫花』は全部合わせても50体に満たない数だった。


ライナが言った通り、時間稼ぎの為の当て馬だったのだろう。


私達が敷地内の掃討を行っている間も、周囲の森の中では『礫花』達が忙しなく動いて『配置』に付いていた。


そして、今はその動きがだんだんと緩やかになって来ている。


恐らく、もう間もなく攻撃が始まるのだろう。



「ライナ、あのハンターの人の車は使えない?」


私はライナにハンターの男性が遺して行った車について聞いてみる。


この状況を脱する事が出来るなら、一時撤退も有りだと思うからだ。


だが、流石に徒歩で『礫花』の群れを振り切るのは難しい。


その為の足として車が必要だった。


しかし、ライナは難しい顔をして放置された状態の車を見ると、首を横に振った。


「……難しいな。 完全にオシャカって訳じゃないけど、電気系統がやられてホイールも歪んでる。 動かそうとしたら修理しないとだし……仮に動いても、ちょっと進むのが限界だろうな」


車はボンネットのカバーが吹き飛び、中のエンジンが剥き出しになってしまっている。


更にタイヤが一ヶ所パンクしているとは思っていたが……ホイール自体が歪んでしまっているらしい。


「そもそも修理なんてしてる余裕は無いだろうし、これ使って逃げるのはちょっと厳しいな」


「そっか……なら、やっぱりここで迎え撃つしかない、か……」


製材所跡にはハンターの車以外にも、放置されたままになっている木材や機械類が残されていた。


建物自体もボロボロではあるが、一応そのままの形で建っている。


籠城戦ともなれば、これらを遮蔽物としつつ『礫花』の群れを迎え撃つ事になるが………少々心許ない。


私は少し考えた後、製材所の周りの壁と建物を自分の能力で補強する事にした。


そうすれば少しは防御力が増すだろう。


「ライナ、私の能力で壁とか建物を補強しようと思うんだけど、どんな風にすればいいかな?」


私がそう提案すると、ライナは驚きを浮かべた顔をこちらに向けた。


「え、大丈夫なのか? そんな事して。 結構な広さがあるぞ、この製材所」


どうやらライナは私の体調を心配してくれていたようだ。


倉庫街での戦いから時間が経ち、少なくともあの直後よりは体の調子は良くなっている。


あの後何度も能力を使用しているが、大きく体調を崩す様な事も無かった。


しかし、ライナの視点で見ると、私はまだ本調子ではない様に見えるらしい。


ライナの洞察力は私などより遥かに優れている。


私自身が気付いていない私の不調を彼は感じ取っているのかもしれないが、この状況を打破するには多少の無茶も必要だろう。


私は心配そうにこちら見るライナに笑顔を向けると、心配はいらないと告げる。


「うん、大丈夫。 あくまで補強だから。 このままの壁と建物だと、『礫花』の光弾を受けたらそのまま崩れちゃいそうだし……」


「うーん……まぁそうだけど………本当に大丈夫か?」


ライナは私が大規模に能力を行使する事に消極的だが……口ぶりからすると、ライナ自身も壁と建物が心許ないとは思っているようだ。


多分だけど、『礫花』の迎撃に関しては自分が頑張れば良いとか思っていたんだと思う。


……無茶はお互い様だよね。


「大丈夫だってば。 流石に敷地内全部を茨で覆うとかだったら無理だけど、『礫花』の攻撃に耐えられる位に補強するだけならそれ程消耗しないよ」


因みにこれは本当だ。


以前の私ならライナの心配通り、かなり疲弊してしまったと思うけど、今の私ならそこまで力を消耗せずに出来ると自分で分かるのだ。


能力の応用の幅も増えているし、能力を使った際の消耗も最初に比べて遥かに小さくなっている。


……思えば私も、随分と強くなったものだ。


「……分かった。 なら急いだ方が良いな。そろそろ来るだろ、あいつら」


ライナも敷地の周囲を包囲している『礫花』の動きを感じ取ったらしく、周りの森を見渡して嫌そうな表情を浮かべる。


……時間的な余裕はあまり無いのかもしれない。


そうして私はライナと一緒に建物と壁の補強を行う為、脆くなっていそうな壁、或いは既に崩落してしまっている建物の一角へと急いだのだった。



「これで大体全部……かな?」


「まあ、これ以上はキリが無いしな。 後は上手くやるしかない」


『礫花』の襲撃まであまり時間も無い中、私とライナは足早に製材所跡の敷地内を回り、壁や建物の破損個所を可能な限り補強して行った。


場所はライナの指示で選び、補強は私の身体から伸ばした蔦を束ねたり結んだりする形で穴を埋めて行く。


崩れた建物も、ある程度逃げ場として利用出来るよう最低限ではあるが、柱を立てて屋根と壁の体裁を整えた。


因みに、柱も私の能力で作り出したものだ。


私はこれまで何度か、異常成長した『ブルーフィリア』が茎や蔦同士が融合し、木の幹のように変質しているのを目にしている。


同じ『ブルーフィリア』に出来ているのであれば、私も恐らく出来るのではないかと思いやってみた所、思った以上に簡単に、そして強固に『柱』を作り出す事が出来た。


当初の予定としては、周りの木や朽ちていない柱に蔦を巻き付けて引っ張る形で崩れた建物を補強するつもりだったんだけど……。


「なんか思ったより頑丈に出来たな。 ……っていうかこれ、金属並みに硬くね?」


手で軽くコンコンと私が作り出した柱を叩くライナ。


柱からは何本か枝が伸びており、意図した訳ではないがちょっとした槍衾の様になっている。


枝や柱の強度を考えればかなり殺傷力があるのではないだろうか。


まあ、私が武器にしてる『棘』って、これの延長線上みたいな物だしね。


『棘』よりは柔らかいかもしれないけど、その分形の成型が自由に出来る。


この能力を使えば、その内小屋くらいは自分の身体から作れるようになるのではないだろうか。


……そこまで行ったら、もう花どころか植物ですらない様な気もするけど。


とにかく、今の状況を脱するには有用な能力ではあるので、可能な限り利用して行こうと思う。


「頑丈ならそれだけ遮蔽物として使えるし、ちょうど良いんじゃない? ……いざとなったら武器にもなると思うし」


「……成程? でも、これも一応操の一部なんだろ? 枝を折ったりとかして大丈夫なのか?」


ライナが恐る恐る、といった様子で柱から伸びた枝に手を触れる。


私の身体から生み出した植物細胞で構成された物質は、例え私の身体から切り離したとしてもある程度操作する事が出来る。


それ故ライナは枝を折ったりした場合、私が痛みを感じたりしないのかと心配したようだ。


「うん、平気だよ。 痛覚……と言うか、感覚は繋がってる訳じゃないから」


「へぇ、それなら良かった。 ……そんじゃ、いざって時は使わせて貰おうかな」


そう言って微笑むライナ。


私はその笑みが、悪戯を思い付いた子供の顔に見えたのだった。





『――――――――!!!』


「!」


「……来たな」


ライナと共に補強した箇所を最終チェックしていると、周囲の森の空気が明らかに変わった。


風に乗って殺気が伝わるとでも言えば良いのか、肌がチリチリとするような独特の感覚が体に伝わって来る。


いよいよ、『礫花』達の攻撃が始まるようだ。


「なるべく身を隠しつつ数を減らす事優先でな。 勿論、安全第一で!」


「了解!」


ライナからの簡潔な指示に声を上げて応える。


私の左手にはショットガンが握られており、右手には『茨の鞭』を既に展開してある。


光弾による遠距離攻撃力が高い『礫花』だが、耐久力の面では恐らく今まで遭遇した怪物の中で最も低いと思われる。


その為、ライナが私に言った様に、『数を減らす事』が重要になる。


大量の『礫花』に一斉に押し寄せられては、流石に私も対応し切れなくなってしまうからだ。


なので、私は武器をショットガン+鞭という範囲殲滅能力を重視した組み合わせにした。


森の中では木々が密集していた為『茨の鞭』を大きく振るう事が難しかったが、製材所の敷地内は障害物こそ多いものの森の中よりはマシだ。


当然、防御用の四本の蔦も背中から伸ばして振り回すので、周囲が動き易いに越した事はないのだが、相手が飛び道具を使って来る以上、完全に開けた場所で戦う訳にも行かない。


そうなると、『茨の鞭』や蔦を使いつつ、都度物陰に隠れながら銃で『礫花』を倒す、といった事も必要になって来るだろう。


一度に複数の『礫花』を倒しつつ、飛来する光弾を防御するのは困難だが……やるしかない。



殺気が満ちた製材所の敷地一帯が、一瞬の静寂に包まれる。


だがその直後、製材所の周囲の森で、無数の青い光が瞬いた。


「……ッ………!!!」


同時に襲い掛かる、凄まじい衝撃と音。


『礫花』の群れが放った光弾の雨が、私達が身を隠す建物や敷地の周囲の壁に次々着弾しているのだ。


「おお、凄いな! あの青い光の弾が当たってもビクともしないぞ」


横合からライナの呑気な声が響く。


現在私達が身を隠しているのは、補強ヶ所が一番多かった大きな建物だ。


建物としては一番そのままの形を残していたのだが、木造の建物はボロボロの状態であり、最も傷みが激しかった。


しかし、私の蔦で脆くなった柱と壁を補強した結果、寧ろ元々の状態よりも強度が増す結果になったのだ。


そこで、どうせならという事で一部の壁を特に頑丈に補強する事で、頑丈な防壁としての体裁を整えている。


『礫花』達が製材所に攻め込んで来たなら、一ヶ所に留まって迎撃するのは難しくなるだろう。


その為、それまでの間身を隠す簡易拠点代わりに作った場所がここだった。


私の身体の植物細胞から作り出しただけあり、非常に堅固な防壁となって『礫花』の光弾を防いでくれている。


このまま攻撃を凌いでいる限り、『礫花』の攻撃を受ける心配は無い。


しかし、先程の森での戦闘と同様であれば、私達に攻撃が当たらないという事で『礫花』達はある程度接近してくるはずだ。


その時こそが私達にとっての攻撃チャンスなのだが……同時に『礫花』にとっても、『標的』が現われる瞬間でもある。


そして、今回の攻撃は森の中で襲撃された時よりも遥かに多くの『礫花』が集っている。


数の上ではこちらが完全に不利だ。


だからこそ、建物や壁、敷地内にある障害物として使える物を利用した地形戦法と言うべき戦い方で、数の上での不利を覆さないといけない。



やがて、森からの光弾の雨が止む。


すると、すぐさま森から無数の『礫花』が製材所の壁へ向かって押し寄せて来た。


……とんでもない数だ。


恐らく、100や200では利かない数の『礫花』が、私達の居る建物へ一斉に向かって来ている。


大集団で攻め寄せるその姿は、巣から溢れ出た蟻の群れの様だ。


あんな数が一気に押し寄せて来たら、いくら何でも対応し切れないだろう。


森から走り出て来た『礫花』達は、そのまま敷地の周りに建てられた製材所の壁に取り付こうと走り寄って来る。


しかしその時、異変が起こった。


『――!?』


『―――!!?――!?!?』


『!!?!?』


突然、壁に近寄った『礫花』の集団の内、先頭集団に当たる群れがバチンッ!という大きな音と共に砕け散った。


突如として何体もの同胞が砕け散った事で、後続から続いていた『礫花』達の歩みが若干遅くなる。


後続集団は何が起きたか分からない様で、前進を躊躇っているようだ。


製材所の敷地を囲う壁と森の間には特に何かがあるという訳ではない。


強いて言うなら長年放置された結果、伸び放題になった雑草が生い茂っているくらいだ。


膝下程まで伸びた草は、製材所の正面入り口以外の全ての方角に生えており、人間が歩いて通ろうとすれば足元の雑草を掻き分けて来る必要があるだろう。


つまり足元が非常に見難い為、そこに()()があったとしても気が付き難いのだ。


それは通常の花で言う所の花弁に当たる部分に、恐らく眼球と同じ役割を果たしている結晶体を持った『礫花』にも同じ事が言える。


根を足の様に用いて移動し、茎を伸ばして首のように動かす『礫花』は人間程ではないが視点が高い。


暗がりで分かり難いが、先頭の『礫花』達は大きな口を持った『何か』に噛み砕かれていた。


しかもそれは一体毎にではなく、数体纏めて捉えられている。


言ってしまえば、それは巨大なトラバサミだった。


周囲に生えた雑草と同じ色に着色された巨大トラバサミが、数体の『礫花』をその咢に捕え、鋭い歯で噛み砕いていたのだ。



「――よし、上手くいったみたいだね」


防壁の陰に隠れ、『探査』の能力で『礫花』の動きを確認していた私はそう呟いた。


あのトラバサミは当然だが私が仕掛けた物だ。


明らかに数の上で防衛側が不利な状況で、防衛側が取る作戦として(トラップ)は定番と言えるだろう。


私はライナと一緒に壁の補強を行った際、壁の周辺に私の体の植物細胞からトラバサミを作って設置しておいたのだ。


今の私は、かなり自由自在に自分の細胞から生み出した植物質の塊を変形・融合させる事が出来る。


今までは単純に、蔓や蔦、花や葉など植物の形に囚われた物しか基本的には作れなかった。


しかし、怪物達との戦いの中で、『茨の剣』や『茨の鞭』等の『植物』に囚われない形を成形する事が出来るようになり、私自身も固定観念を捨てて自分の能力を工夫するようになって来ていた。


そんな中、私が自分の正体を知り、その上で自分の存在を受け入れた事で、心と体の不均衡が是正されたからなのか、今までとは比べ物にならない程に自分の能力を十全に扱える様になったのだ。


結果として、私自身の能力が全体的に底上げされた形となり、肉体面での強度は勿論、能力の汎用性が劇的に増す事となった。


要するに、今までは出来なかった事が、ほぼ何でも出来る様になったのだ。


『花』どころか『植物』ですらない、機械的な『罠』であるトラバサミを、自身の身体の細胞から作成出来る程に。


そして不思議な事に、こうした今まで出来なかった事を私が頭の中で『出来ないかな?』と考えると、自然と出来るかどうかが自分の中で判断が出来るのだ。


今までにも同じような事はあったが、その時以上に確信を持って自分の能力で可能かどうかの可否が分かる様になっていた。


呼吸の仕方を生物が最初から知っているのと同じ様に、私自身が当たり前に自分の能力について把握しているのだ。


今までと違うのは、『自分が知らない知識』として自分の中にそういった情報があるのではなく、『そうと確信出来る知識』としてしっかりと私の中に息づいている事だ。


本当に出来るのか分からず疑念と不安に怯えながら能力を行使するのではなく、確信を持って自在に能力を扱えるのだから強力にもなるだろう。


そうした確固たる自認の元、今回の籠城作戦で出来る事を考えた結果、製材所周辺にトラップを仕掛けて『礫花』の数を減らすという策を思い付いたのだった。


「……なんかすごい音したけど、操が何かしたのか?」


ライナが壁の方を警戒しながら声を掛けて来る。


トラップを仕掛けた事はライナには話していなかったので、突然の轟音と『礫花』達の悲鳴………らしき奇怪な音が響き渡った方向に、訝し気な表情を向けていた。


「あ、うん。 壁の補強のついでに……えっと、トラバサミ?みたいなのを地面に仕掛けておいたの。 ……建物の周り、背の高い草が結構生えてたでしょ?」


「あー……そういや補強してる時に草むらの方見てたな……。 っていうか、そんな事まで出来るんだな」


壁の補強をしていた時の事を思い返したらしいライナは、少々複雑そうな顔をしている。


私が能力を使うと私に負担を掛けてしまうと考えているのだろうけど、この状況を二人とも無事に潜り抜けるには、私の能力を活用するのが最も確実だ。


ライナもそれが分かっているから籠城するに当たり、私が能力をフルに使う事を受け入れたのだろうけど……やはりまだ思う所はあるようだ。


「そんな顔しないで、ライナ。 私は大丈夫だよ。 串刺しにされたり腕を喰い千切られたりした事に比べたら、この程度はどうって事ないよ」


「……それ聞かされて安心しろって言われても、余計に心配になるんだが………はあ、分かったよ。 今はとにかくあいつら始末するのが最優先だ」


言いたい事はあるが、状況を鑑みて取り敢えず飲み込んでくれたようだ。


……心配掛けちゃってるなぁ。


実際の所、本当に壁や建物の補強に加えてトラップを仕掛けた事で、私がそれを負担に感じているという事は無い。


ライナに言った通り、倉庫街で重傷を負った時に比べれば怪我も何もしていないのだから当然だが……。



『―――!!!』


『―――!!!!!』


『――――!!!』


仕掛けたトラップによって、壁を越えて来ようとした『礫花』の先頭集団を壊滅させた事で『礫花』の群れ全体の出鼻を挫く事には成功した。


しかし、それもほんの一時の事だ。


当然だが、群れ全体を全滅させる程の数のトラップを仕掛ける事は出来ていないのだ。


時間的な問題もあるが、流石にこの数……ギリギリ千には届かないが、確実に数百匹は居るであろう『礫花』を全て処理出来るほどのトラップを仕掛けるのは体力的に無理がある。


故に、先頭集団の数をある程度減らす事が出来た段階でトラップはお役御免であり、ここからは私とライナが直接戦う必要がある。



壁を登り、何体もの『礫花』が敷地内に飛び込んで来る。


森からの光弾による攻撃を行うと同時に、直接乗り込んでこちらを仕留めようという事だろう。


基本的だが、非常に有効な戦術だ。


但し、相手が普通ならば、だ。


『!?』


『!!??!』


『!?!?!?』


『礫花』達が壁を乗り越え、敷地内に飛び込もうとジャンプした瞬間、数発の銃声が鳴り響いた。


放たれた銃弾は、まだ滞空中だった数体の『礫花』の頭部を正確に射抜いている。


空中で撃ち落とされた『礫花』達は、急所である頭部の花を撃ち抜かれ、一撃で絶命していた。


私が視線を横に向けると、そこには防壁から顔をほんの少しだけ覗かせ、『礫花』達に銃口を向けるライナの姿があった。


「一発で倒せるのがせめてもの救いだな」


『礫花』が飛び込んで来たと同時に空中で撃ち落としたライナの射撃の腕は、私では及びもつかないレベルだ。


しかし彼曰く、これでも『射撃は得意ではない』のだと言うのだから呆れる。


尤も、私は私の得意分野があるので、張り合う気も必要もないのだが……。



撃ち落とされた『礫花』が完全に枯れ崩れる前に後続の『礫花』が飛び込んで来る。


今度は射撃だけで撃ち落とすのは間に合わない程の数が一度に押し寄せて来た。


その数は………30体は居るだろうか?


感じ取れる気配からは、その後ろからも続々と『礫花』が迫って来ているのが分かる。


私は即座に判断を下し防壁から飛び出すと、壁を乗り越え、或いは飛び越えて来た『礫花』へ向けて疾走する。


そして、右手に展開してあった『茨の鞭』……一本に束ねたパワー重視タイプではなく、複数の茨を伸ばした攻撃範囲を重視した形状の鞭を振り被った。


加速された思考の中で、周囲の光景がゆっくりと流れる中、私は腕の筋肉を引き絞り『茨の鞭』へ力を込めて行く。


そして、ギリギリと音を立てて引き絞られた腕と鞭に、込めた力が伝達した瞬間―――


「ふッ――!!」


力を解き放ち、呼気と共に前方から迫る『礫花』へ『茨の鞭』を横薙ぎに叩き付けた。


『――――!!!??』


強烈な風切り音と共に振るわれた『茨の鞭』が壁を越えて来た『礫花』達を纏めて薙ぎ払う。


『礫花』の中には、壁の上や屋根の上に飛び乗っていた個体も居たが、それらも含めて細切れになっていた。


束ねた状態ではない『茨の鞭』は単純なパワーが若干低い為、相手の耐久力や防御力が高いと攻撃の際に引っ掛かったりしてしまい、攻撃自体を受け止められてしまう場合がある。


そうした欠点を攻撃範囲を限定する事で解消したのが、茨を一本に束ねたパワー型の『茨の鞭』だった。


しかし、以前よりも私自身の能力が向上し強化されたのは『茨の鞭』も同じであり、茨を解いた状態の鞭もまた性能が向上している。


そんな向上した性能を遺憾無く発揮したのが、私の背中から伸ばした四本の蔦だ。


背中から伸びた四本の蔦は『茨の鞭』と異なり表面に棘は生えていないが、基本的には『茨の鞭』と同等の性能を持っている。


四本の蔦をバラバラに操作している為、当然ながら一束に纏めた『茨の鞭』と比べると本来ならばパワーも低い。


と言っても、元々私の身体を持ち上げる位のパワーはあったのだが………それでも、『礫花』の光弾を弾いて防御出来る程だったかと言うと、決して断言は出来なかっただろう。


だが、能力が全体的に向上した現在、蔦の触手も強化されて一本ずつでもかなりのパワーを発揮出来る様になっている。


その結果が対『礫花』における光弾の迎撃能力であり、あの攻撃を余裕で捌ける時点で一本毎にかなりの攻撃力を持っているという事になる。


それは、私が腕から生じさせた解いた状態の『茨の鞭』でも同じであり、鞭を振るう私自身の腕の筋力も合わさった結果、『低威力広範囲の攻撃』とは言い難い程の殺傷能力を発揮する様になっていた。


「うへぇ、エグいな、こりゃあ……」


ライナが若干呆れを含んだ視線を周囲に向けながら呟いた。


……因みに、飛び込んで来る『礫花』を銃撃しながらという器用な真似をしつつである。


その視線の先では、飛び込んで来た『礫花』が細切れになって飛び散ると同時に、製材所の敷地内に放置されていた木材や機械類すらも引き裂かれていた。


破壊された機械からは盛大に火花が散り、飛び散った金属片が辛うじて無事だった『礫花』に突き刺さって更に数体を倒している。


性能が向上した範囲型の『茨の鞭』は、この状況に対する相性が非常に良いようだ。



「……はぁぁっ!!」


私はそのまま鞭を連続で振るって製材所に侵入して来る『礫花』を迎撃し続ける。


既に最初に『礫花』が飛び込んで来た壁のある方角以外からも、無数の『礫花』が押し寄せて来ている。


今の所、壁を乗り越えるというワンアクションがある為、その瞬間を狙って攻撃する事である程度纏めて『礫花』達を仕留める事が出来ている。


しかし、私の能力で補強したとはいえ、製材所を囲う壁がいつまで持つか分からない。


もしも壁が一部だけでも破られてしまえば、その瞬間に均衡が崩れてしまう恐れがある。


そもそも、相手が『礫花』であるという点から来る問題もやはり厄介な事柄なのだ。


「……ッ!!」



バチンッ!



周囲から迫る『礫花』の大群を纏めて駆逐していた私目掛けて、青く輝く光弾が飛来する。


私の背中から生えた蔦が光弾を叩き落とし、衝撃音を響かせながら光弾が砕け散った。


『―――!!』


『――!!!』


しかしその直後、目の前の『礫花』の群れからも同じように何発もの光弾が私目掛けて放たれる。


飛来した光弾に私が意識を向けたのを察知して、隙を付くべく連携して攻撃して来たのは明らかだ。


私はそんな『礫花』達が放って来た光弾を同じ様に叩き落としつつ、右手の鞭を振るって前方の『礫花』達を薙ぎ払った。


『―――!!!』


『―――!!!!!』


『――!!!!』


『―――!!!!!!』


しかし、息つく暇もなく後方にある製材所の建物の屋根の上から、別の『礫花』の群れが私の背に向けて光弾を放つ。


現状の私は、別の方向からの光弾を背中の蔦で防御しており、更に右手の鞭で前方の『礫花』達を攻撃している状態だ。


いくら私に手足の様に操れる蔦が何本もあり、『茨の鞭』も同様に自在に扱えると言っても限度がある。


要するに、単純に手が足りない状態なのだ。


「くっ!!」


飛来した無数の光弾を、不安定な体勢で体を捻りつつ何とか躱す。


その際、頬と肩を光弾が掠めた事で僅かに傷を負ったが、構わず左手のショットガンを屋根上の『礫花』へ向ける。


狙いもそこそこに轟音と共に放たれた散弾は、群れの中で特に一ヶ所に固まっていた数体を纏めて吹き飛ばした。


私はショットガンに巻き付けた蔓でショットガンの銃身下部にあるフォアグリップを操作し、次弾を装填すると同時に再び引金(トリガー)を引いた。


再度轟音と共に放たれた散弾は、屋根上に居た残る『礫花』を的確に捉え、その体を砕け散らせた。


と、そこへ更に銃声が響く。


銃声がした方をを見やると、ライナが私の死角側にある壁の方面から襲い掛かろうとしていた『礫花』を撃ち抜いた所だった。


「ありがとう!ライナ!」


「気にすんな!……って言うか、まだまだ来るぞ!」


ライナの援護射撃に感謝の意を伝えるが、返事もそこそこに再び迎撃に戻って行く。


……本当に息つく暇が無い。


数の差があり過ぎて、物量で攻められてしまうと防御が間に合わなくなってしまう。


その場合は単純に光弾を回避するしかなくなるのだが、当然回避した瞬間は新たな隙を生む。


『礫花』達は物量でこちらを攻めつつ、同胞を犠牲にしてでも私に隙を作らせようとして来ているのだ。


攻撃範囲の広いショットガンを使える内は鞭が間に合わない状況でも、『礫花』を銃撃して迅速に数を減らす事が出来る。


しかしそれも、あくまでもショットガンが使える状況ならばの話だ。


当然だが、ショットガンに限らず銃器類は弾薬に限りがある為、弾切れになっては攻撃手段として用いる事が出来なくなってしまう。


現状において私達が『礫花』の大群に対抗出来ているのは、銃器を含めた手持ちの攻撃・防御手段を全力で使う事で、何とか均衡を保っているからだ。


無数の『礫花』に完全に囲まれた状態で光弾の嵐を浴びせ掛けられる様な事になっては、流石に回避も防御も不可能になってしまう。


もしも、弾切れとなってしまった場合は………そうした状況に容易に追い込まれかねない。


数発の光弾を体捌きでもって回避する事は出来なくもないが、少なくとも私にはそれも難易度が高い。


ライナはむしろ得意分野なようで、今も遮蔽物を殆ど使わずに光弾を最小限の動きで躱しながら『礫花』を銃と短剣を使って次々屠っている。


…………本当に、何であの弾幕の中を平気な顔してスイスイ進んで行けるんだろうか?



「んー………やっぱりちょっと数が多いなぁ」


通算何体目か分からない『礫花』を斬り捨てながらライナが呟いた。


一応、製材所に放置されていた作業機械らしき物の陰に身を隠してはいるが、正直、私から見ると隠れる必要があるようには見えない。


今も何やら思案しつつ、背後から光弾を放とうとしていた『礫花』をワイヤーが連結された短剣を横薙ぎに振るい、数体まとめて首を刎ねている。


「やっぱりもうちょっとリーチが……」


などとブツブツ言いながら、最早『礫花』の方すら見ずに光弾を最小限の動きで躱しつつ、ワイヤーを振り回す事で文字通り草を刈るように『礫花』を屠って行くライナ。


私の方でもかなりの数の『礫花』を倒しているが、押し寄せて来る『礫花』の勢いは衰えていない。


この状況でライナの身に何か問題が発生してしまったとしたら、それをきっかけにこの状況の均衡が崩れてしまう恐れがある。


「ライナ! どうしたの?大丈夫?」


「ん? ああ、悪い。 別に何かあった訳じゃないんだけど……うん?」


私の問い掛けに答えようとしたライナだが、その言葉が途中で途切れる。


その視線の先には………棒?


「おっ、良い物みっけ!」


そう言ってライナが錆びてボロボロになった何かの機械の横から拾い上げたのは、同じく錆が浮いた工具だった。


所謂バールとか釘抜きとか言われる物であり、特に何の変哲もない物だが……長さが80センチ程もある大型のものだ。


先程、良い物とライナは言っていたが、あれを一体どうするつもり……………なんでワイヤーをバールの片側に結び付けているの?


「これで良し。 ……操、ちょっと頭下げてくれ」


言われた直後、嫌な予感がした。


周囲には『礫花』が再び集まりつつあり、隙を見せるのは危険な状況だ


しかし、それ以上の危険信号を感じ取り、私は疑問を差し挟む余地もなくライナの言葉通りに即座に身を伏せた。



地面に身を伏せた私の視界に体を大きく捻るライナが映った。


手には先程目にした、袖口に仕込んだワイヤーが結び付けられたバールが握られている。


周囲に集まって来た『礫花』は花弁の中の結晶体を輝かせ、今にも光弾を私達に放とうという状態だ。


このままでは無数の光弾を浴びせられてしまうだろう。


周囲の光景がゆっくりと流れて行く中、私は冷静に周囲の状況をそう分析していたが……同時に、そうはならない事も確信していた。



視界の端でライナが動いた。


ゆっくりと流れる周囲の光景の中で、明らかに周囲を上回る速度で手にしたバールを振りかざし……そのまま『礫花』目掛けて投げ放った。


『!!???!』


『――!??』


『!?!?!?』


『―――!!??』


ライナの手元とワイヤーで繋がった状態のバールは、私達に向けて光弾を放とうとしていた『礫花』達に凄まじい速度で襲い掛かった。


伸ばしたワイヤーを手元で引っ張る事で強烈な遠心力が加わったバールは、そのまま私の頭上を通過しながら周囲に集まって来ていた『礫花』達を悉く引き裂いて行く。


さながら、巨大な獣に鉤爪で襲われた様にズタズタにされた『礫花』の集団は、一瞬の内に殲滅されてしまった。


「よしよし、振り回すんならこの位の方が良い火力出るな」


ワイヤーを結んだバールを鎖分銅のように回しながら、ライナが満足気に言う。


「……何でもありなのは、ライナの方だと思うな」


私はそんなライナに、何度目か分からない呆れを含んだ溜息を吐いた。


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