表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/157

49 豹変


「……はッ、まるで気付いていましたとでも言わんばかりじゃないか?」


見下すような表情でそう言ったバーンズは扉の前で拳銃を構えている。


ライナが部屋の外へ逃げられないように、そして扉の外の音が聞こえやすいようにする為だ。


明らかに人目を憚って行動する事に慣れている動きだ。


そんなバーンズを、ライナは動じる事も無く冷めた表情で見ながら言った。


「お前はダントツだったからな」


「……何だって?」


一切動揺する様子も無く、いつもと変わらない口調でその様な事を言うライナ。


バーンズは何を言われているのか分からない、といった様子で困惑した表情を見せる。


そんなバーンズに対し、ライナはわざとらしく呆れたように溜息を吐いた。


「握手した時手が強張ってた、『青い花』が妨害してるんじゃないかって話の時目が一瞬泳いだ、ホテルの悪い噂について言葉を濁した、操がホテルにいた理由に関して無難な意見に終始した、クロフォードがサイディス関連のメールを操に送ってたって事に反応した、アレンの事を知ってたのと急に思い出したのが不自然、俺が資料を調べる事に関与しようとし過ぎ」


つらつらと並び立てられるライナが上げた内容に、バーンズは若干怯んだような顔を見せる。


いくつかは心当たりがあるのか、明らかに目が泳いでいた。


「……とまぁ俺の基準では合計7ポイントってわけだ。 だから生き残りの中にネズミがまだいるんなら………お前だろうとは思ってたよ」


ライナは警察署にやって来た当初から、生き残りの警官達の中にまだサイディスと繋がっている者がいるのではないかと考えていた。


それ故、会話の中で違和感を感じる部分や表情の変化、あるいは仕草などに注意を払っていたのだ。


「……だったら何だっていうんだ? 結局お前はこうやって追い詰められてる。 負け惜しみにしか……」


そう言って反論しようとしたバーンズを無視してライナは話しを続けた。


「因みに次点がアンナで、その次がジェフリーな。 それ以外の3人は選外だ」


ライナの言葉にバーンズは目を瞠った。


それはつまり、バーンズ以外の人間も疑っていたという事だからだ。


「……呆れたな。 周りの人間を一切信用してなかったって事か? ……ふん、薄情な奴だ」


バーンズはライナに蔑みの目を向けている。


親し気に会話していたアンナの事すら信用していなかったという事実を論い、ライナを非難するバーンズ。


しかし、それに対するライナの返答は彼の予想していないものだった。


「寧ろなんで信用出来ると思うんだ? 知り合って1日どころか半日も経ってない相手を? そんな短い時間しか接してない相手を使用出来る程、人を見る目に自信があるのか、お前は?」


そういって笑みさえ浮かべるライナに、バーンズは思わず気圧される。


銃を向けて相手の動きを封じている自分の方が有利な筈なのに、バーンズは背中に寒気を感じた。


「……そうかよ。 だが、そんな事はもうどうでも良い。 お前はここで死ぬんだからな」


そう言って顔を歪ませたバーンズの表情は優越感に満ちている。


相手の命が自分の手の中にあるという事が楽しくて仕方がない、という様子だ。


ハッキリ言って、まともではない。


「……お前がサイディスの犬だって事は分かったけど、何でこの状況で俺を殺すんだ? こんな中でもご主人様に良い顔する為の『点数稼ぎ』か?」


しかしライナはそんなバーンズを意に介さず、呆れた口調でたっぷりと皮肉を込めそう問いかけた。


対するバーンズは面白くなさそうに顔を顰めつつ吐き捨てた。


「ああ、そうさ! サイディスの事を探る奴は始末しろって命令なんでな……。 警部補からお前らの話を聞いた時からどう殺そうか考えてたんだぜ?」


ニヤニヤと笑いながら楽しそうにそう話すバーンズには最早、初対面の時の真面目そうな雰囲気は欠片も残っていない。


既に口調すら変わっていて完全に別人と化している。


今ライナの目の前にいるのは、獲物を前にして舌舐めずりをする一匹の獣だった。


「……なるほど、お前、犬は犬でも『猟犬』か」


サイディス・カンパニーがこの街で行っていた人身売買や誘拐など、様々な犯罪行為。


普通ならそのような事を続けていれば警察機関に気付かれ、そうした行いは世間に明るみになるだろう。


しかしあろう事か、ここGF警察署の署長と一部の署員はサイディス・カンパニーと癒着し、そうした犯罪行為の揉み消し工作を行っていた。


その為、長年怪しまれつつもサイディス社はその行いが明らかになる事も無く今日まで存続し続けて来たのだ。


そしてその場合、揉み消されたのが証拠や情報だけではなかったという事は……容易に想像が付く。


「あの署長は元ハッカーだったって経歴をサイディスに消して貰ったらしいし、そっちの方面は有能なんだろうけど、『駆除』に関してはそうとも限らないからな」


ライナが事前に調べた限りでは、この警察署の署長だったウォルター・サザランドは、揉み消しなどの裏工作などには向いた能力の持ち主だった。


しかし、こういった違法行為を行っている企業の周りには、企業側が隠している事を暴こうとする邪魔者が付き物だ。


そういった邪魔者の駆除に関しては、恐らく署長は自分と同じ『サイディス側』の配下に命じて行わせていたのだろう。


バーンズはそんな『サイディス側』の駆除係であろうとライナは見当を付けていた。


「ご苦労なこった。 バケモノだらけの街ん中でも署長以下一丸になってご主人様に尻尾振りかよ」


ウンザリした様子で肩を竦めるライナ。


金で釣られた下っ端なのだろうが、この状況でもなお自分勝手な理由で命を狙われるなど迷惑以外の何物でもない。


「……ふん。署長も他の連中も、聖メアリーの連中も死んだのが分かったからな。 ここで『本社』の連中の意を汲んで有能な所をアピール出来れば、俺が署長のポジションに収まれるのさ!」


バーンズの言う『署長のポジション』とは、この警察署の署長になれるという事ではあるまい。


つまり、署長はサイディス側の意を汲んで動く『私兵』の中でも、指示役として重要な地位にあったのだろう。


サイディスとどの様な密約を彼らが交わしていたのかは不明だが、少なくともバーンズはこの状況でも律儀に()()()する価値があると考えているようだ。


「ああそうかい。 そりゃよかったなー」


聞いてもいない事をペラペラと喋るバーンズに辟易していたライナ。


しかし、次にバーンズが口走った話の内容は聞き捨てならないものだった。


「それにラッキーだったよ。 まさかあの『サクラギ博士』をここで見つけられるとはな。 連中もさぞかし報酬を弾んでくれるだろうぜ」


「……何?」


ライナはバーンズが操の事を知っている素振りを僅かに見せていた事に気付いていた。


それは常人にとっては全く気が付かないようなわずかな変化だったが、少なくともライナにとっては十分な情報だった。


しかし、今目の前で操について語るバーンズの様子は、『僅かに知っている』程度の事ではなく、操の詳しい素性を知っているように見えた。


「お前、操の事を知ってるのか?」


「……ハッ! 寧ろ知らないのによくぞまぁ記憶喪失なんて面倒な状態になったあの女を連れ歩けたな? ……もっとも、俺にとっては幸いだったがな」


操を自分の金づるとしか思っていないバーンズは下卑た表情を浮かべる。


だが、ライナは表情を変えず再度バーンズに問い掛けた。


「質問に答えろ。 お前は操の素性を知っているのか?」


確かに表情は変わっていない。


しかし、背中に感じる寒気がさらに増し、バーンズは狼狽えた。


「あ、ああ、知ってるとも。 街がメタクソになる前に、サイディスの連中からから見つけ次第捕えるように指示があったからな」


「……なるほど」


やはり操はサイディスに追われていた為に身を隠していたのだろうか?


しかし、それならば何故サイディスが支配していると言っても過言ではないグリーンフォレストにやって来たのか……。


「……もう一つ質問だ。 お前、操に何かしたか?」


底冷えするようなライナの声に、思わず若干後退るバーンズ。


しかし、手に銃を持っている事を思い出したのか、銃口をライナの顔に向けるとがなり立てた。


「そ、そうだとしたらどうだってんだ!? わかってるのか? お前はこれから俺に殺されて……」


「簡単な事だよ」


虚勢を張るバーンズの言葉を遮ってライナが話を続ける。



「もしもお前が、操を殺したりしていたら―――」



ライナの表情は変わらない。


いや、その表情は不気味な程に無表情となっていた。




ライナはゆっくりとした語り口調で言葉を紡ぎ―――




「お前を生かしておく理由が無くなるってだけだ」




―――瞬間、()()などと言う生易しい物ではない、空気が軋むような濃密な殺気が室内を満たした。




「ひっ……」


思わず、といった様子でバーンズの口から悲鳴が漏れる。


突如雰囲気が一変したライナに気圧され、全身を強張らせて一瞬だけ動きを止めてしまった。


……そう、一瞬だけだった。


ほんの一瞬だけバーンズは反射的に動きを止めただけだった。


にも拘らず、その一瞬の後に視界に映った光景を、彼は理解する事が出来なかった。


「……は?」


目の前に居た筈のライナが―――消えた。


バーンズの視点で状況を説明するならその様になるだろう。


そして、瞬きをする程度の一瞬で目の前にいた人間が消失した事をバーンズが理解したのは、何かが床に落ちた音が耳に届いた時だった。


ポトポトポトポト、という、小さく軽い物が複数床にぶつかる音を聞き、バーンズは反射的に音のした場所に視線を落とす。



「え?」



それは人間の指だった。



人間の右手の、第一関節の少し下辺りから断ち切られた人間の指が、バーンズの足元に転がっていたのだ。


バーンズは状況を理解するべく頭を働かせようとした。


しかし、その思考も一瞬の後に自分の右手部分から襲い掛かる激痛によって吹き飛ばされた。


自分の身に何が起きたのか理解した瞬間、切り落とされて床に転がった()()()()があった場所から、大量の血が噴き出した。


「ぎッ――――!!??」


突然の激痛に叫び声を上げようとするバーンズ。


しかしその前にバーンズの体は宙を舞った。


「ぎゃッ!!?」


空中で一回転したバーンズは背中から床に叩き付けられる。


右手の激痛に加え、肺から空気を無理やり吐き出させられてバーンズは悶絶する。


指を切り落とされた右手からはとめどなく血が噴き出していた。


そして、その段階になってバーンズはようやく自分が銃を持っていない事に気が付いた。


慌てて銃を探すが、何か行動を起こす前に誰かの足がバーンズを床に押し付けた。


「グェッ!!?」


足で踏み付けられ身動きが取れなくなった所で、カチッ、という音が床に仰向けに倒れたバーンズの頭上で響く。


そこには、先程と変わらず無表情のライナが、先程までバーンズが持っていた減音機付きの銃を手にして立っていた。


ライナの右手に握られた銃の銃口はバーンズの顔にぴたりと向けられており、左手にはいつの間に抜いたのか黒色の短剣を持っていた。


「いくつか質問をするから答えろ。 答えなかったら殺す」


極めて簡潔に告げられたライナからの要求に、バーンズは声を出す事も出来なかった。


先程と表情の変わらない、しかし呼吸を止めてしまいそうになる程の圧力を伴った殺気を放つライナに、激痛に苛まれて全身から脂汗を流すバーンズは即座に反応を返す事が出来なかった。


そんなバーンズに対し、ライナはやはり表情を変えずにバーンズを床に押さえつけている足に力を込めた。


「わ、わかった! こ、答える、答えるから……!」


傍から見ればライナが少し体重を掛けただけに見えただろう。


しかし、実際に力を掛けられているバーンズは自らの生命の危機を敏感に感じ取っていた。


銃で撃たれるのではなく、このまま踏み潰されて殺される、という事が本能的に理解出来たのだ。


「なら、まずは1つ目だが……お前、実際に操に何かしたか?」


殺気が先程よりも増す。


もはや物理的な圧力が伴いそうなレベルの濃密な殺気に、バーンズは全身を震わせながら必死に言葉を絞り出した。


「ち、違う! お、俺は何もしてない! ほ、本当だ!」


返答を誤れば死ぬ。


そう理解している為に、バーンズの口は震えながらも滑らかに動いた。


「……本当か?」


ライナは短くそう言っただけだった。


しかし、バーンズには自分の内心を正確に読まれているように感じられ恐怖した。


「う、嘘じゃない! 本当に何もしてないんだ! た、確かに、あんた達の事を聞いた後に、あんたの相棒を先に……とは思った。 でも、俺が仮眠室に行った時にはもう誰もいなかったんだ!」


どうやら当初バーンズは、操とライナの話をハリソンから聞いて知った後、サイディス側から最重要人物と伝えられていた『桜木操博士』を先に確保するべきと考えたらしい。


理由としては、操を人質にすればライナの始末を簡単に付けられると考えたから、という極めて碌でもない理由だった。


「署内を探しても何処にもいなかった……。 だ、だから予定を変更してあんたから片付けようとしたんだ……」


「……なるほど」


やはり操は既に署内にいないらしい。


周囲を建物に囲まれ、唯一出入りが出来る正門には見張りが付いている。


そんな警察署から見つからずに脱出する事は普通なら難しい。


しかし、『青い花』の特殊な力を持つ操ならその限りではない。


(考えられるとしたら………上か)


ライナは操が建物の屋上から外へと、文字通り()()()のではないかと考えた。


確か、操から聞いた病院までの出来事の中でそんな話があった筈だ。


「お前が仮眠室を確認したのはどれくらい前だ?」


「……あんたと正門のバリケードの所で会った30分位前………だったと思う。 お、俺も正確には……」


そう尻すぼみに話して目を泳がせるバーンズ。


その様子は嘘を吐こうとしているのではなく、本当に自信が無い事による態度のようだった。


「じゃあ、次の質問だ。 お前は『桜木操博士』について、どれくらい知ってる?」


特にバーンズの態度に関しては追求せずにライナが質問を続ける。


次にライナが尋ねたのは操の素性についてだった。


「お、俺も人となりを詳しく知ってる訳じゃない……。 知ってるのは、れ、連中から聞いた事だけだ……」


「それで良い。 話せ」


ともすれば機械的とさえ言える無機質さでライナが命じる。


微塵も緩まない圧力に、バーンズは脂汗を流しながら声を震わせ言葉を発した。


「さ、桜木操博士は……十代で博士号を取得した天才科学者……って話だ。 詳しくは知らないが、どこぞの大学の研究室に所属する優秀な研究者だったらしい………」


ゆっくりと慎重に、言葉を選んで知っている事を話すバーンズ。


しくじれば自分の命が消し飛んでしまう。


恐怖から来る極限の緊張感故に、息が若干荒くなって来る。


「そこまでは知ってる。 何故操はこの街にいた? よりによって、サイディスの支配してるに等しいこの街に……」


実際にはライナが知っていたのは、操が何らかの研究を行っていた研究者だったらしい、という事だけだ。


一方で、他ならぬ操自身からクロフォードとの会話の中で『桜木博士』と呼ばれていた、とも聞いていた。


故に、彼女が『博士』と呼ばれるような立場の人間だったのであろう事は、ある程度予想が付いていた。


「……く、詳しくは俺も知らない……。 だが、桜木博士は大学の研究室を辞めてこの街に移住して来たって話だった……。何か、研究室でトラブルがあったとか……」


バーンズの話にライナは若干の反応を見せる。


操がこの街に隠れ住んでいたのではないか、とはライナも考えていたが、大学の研究室を辞めてこの街へ来た……という事は、サイディス絡みではないのだろうか?


「……サイディスの連中はどうして操を狙う?」


「お、俺達が署長に命令されたのは、桜木博士を捕まえて来いって事だけだ……。 詳しい理由は聞いてない……が……」


そこまで話してバーンズは言い淀む。


続きを話すのを躊躇しているように見える。


「何だ?」


「……っ………しょ、署長が独り言を呟いてるのが聞こえたんだ……。 『小娘一人から花を奪わせたと思ったら、今度は本人の誘拐か』って……」



――――花。


どう考えてもそれは『青い花』の事だろう。


小娘から奪った?


つまり、青い花の出所はサイディスではなく………。


「……花を操から盗んで、その後に別口で操自身を誘拐するように命令が来たって事か?」


「しょ、署長が言ってた通りならそうだ……。 けど、少なくとも俺達は、花がどうとかって話は聞いてない………多分、サイディスの抱えてる他の手先の仕事……だと、思う」


言い淀みながらそう答えるバーンズ。


何でも、署長から指示を出すのは警察署内の『駒』だけではないのだそうだ。


サイディスが自分達の手足として使う者のへの指示も署長が行っていたらしく、そういった者達が『花』を奪ったのではないか、との事だった。


だがどうやら、バーンズ自身にも確証はないようだ。


(サイディスは操から『花』を盗んだ。 確かなのはそれだけ……。 それが『青い花』なのかも現時点では不明確……)


仮に『青い花』だとしても、その結果として、街が()()()()()理由が分からない。


そして何より、『花』を操から盗んだ後に、サイディス側が操自身の身柄を求めた事が不自然だ。


(こいつが知っている事とは別に何かがまだあるな。 大学で起きたトラブルってのも気になる)


視線はバーンズから外さずにライナは頭の中で考える。


操がこの街にやって来たおおよその背景は理解出来た。


操は所属していた大学の研究室で何らかのトラブルに遭い、このグリーンフォレストに移住して来た。


そして、この街で何かの研究を行っていたのだ。


(何の研究だ? ……当然『花』の、だ)


しかし、経緯は不明だが研究の内容をサイディスに目を付けられ、研究対象だったと思われる『花』を奪われてしまった。


そして、こちらも何故そうなったかは分からないが、操自身もサイディスに身柄を狙われる事になってしまったのだ。


(『捕えろ』と命令が出ていた以上、操には生きていてもらわないといけなかった筈。 となれば、考えられるのは………『花』の研究に加える事……か?)


自分達で奪った『花』の研究が進まなかったのだろうか?


理由は不明だが、サイディスは『花』だけではなく『桜木操博士』も必要とした。


その結果、操の誘拐を企んだ……という事か。


(そうなると、クロフォードが聞いたっていう、アレンの件も繋がって来るな)


クロフォードが操に遺したメールによれば、アレンは聖メアリー記念病院に侵入しようとして捕らわれ、何処かへ連れて行かれたという事だった。


メールにも書かれていたように、操に協力させる為の人質だと考えれば説明が付く。


それに対して実際に操がどの様に行動したのかは不明だが、少なくとも操とサイディスが接触したのは間違いないだろう。


その結果何が起こったのか……タイミングを考えると、ライナとしては嫌な予感がするのだった。



「……じゃ、最後の質問だ。 お前、サイディスのご機嫌取りの為に俺を殺そうとしたって言ってたが、その後どうする気だったんだ?」


「………え? ど、どういう事だ?」


純粋に質問の意味が分からない、といった様子のバーンズ。


すると、ライナはもう少し具体的な内容で質問を投げかけた。


「点数稼ぎだったってのは分かった。 だが、この街の状況から逃れられなきゃ意味はないだろ? どうやってこの状況から脱するつもりだったんだ?」


ライナの問いにバーンズは、何を当然の事を聞いているんだこいつは? とでも言いたげな顔を一瞬作ったが、ライナの機嫌を損ねる事を恐れたのか慌てて表情を取り繕った。


そして、相変わらず無表情のライナに困惑した顔を向けるとこう言った。


「ど、どうって…………署長は死んだ。 他の『駒』の連中も死んだ。 生きてるのはもう俺だけだ。 ……だ、だったら、最後に残った、仕事に忠実な俺は……助けて貰えるだろ?」


そう答えたバーンズの目は、確信を持って発している言葉とは裏腹に左右に泳いでいた。


引き攣った顔で縋るように笑うバーンズにライナは呆れの溜息を吐いた。


本心ではバーンズも助けが来ないのではないかと頭の片隅で考えているが、絶望的な状況から目を逸らす為に無理やりその考えを封じ込めているのだ。


それは、聖メアリーの副院長であるレナード・ニーマンスと同じ、現実逃避の結果だった。


非道かつ身勝手な行為に手を染めて来た彼らが、自らの身が危うくなった時に同じ様に都合よく物事を解釈して暴走するのは―――何とも皮肉な話だ。


「生憎だけど、助けなら来ないぞ」


「……え?」


ライナはアンナから街に『青い花』の根と思われる物体が溢れ出した際の話を聞いている。


その話の内容から判断して、ライナは街がこうなった切っ掛け……つまりはこの異変の震源地がサイディス・カンパニーの研究所であると見当を付けていた。


レナードが病院の通信設備を使用して連絡を取ろうとしても一切反応が無かった事から考えて、研究所は既に壊滅している可能性が高い。



……だが、ライナが助けは来ないと言った理由はそういう事ではなかった。



「お前が連中に尻尾を振ろうが振るまいが、この騒ぎが終わったら、サイディス・カンパニー自体がこの世から消えて無くなる事はもう決定してるからな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ