39 光を求めて
無事に発電機を起動する事に成功した操達は水路入口近くの管理室に戻って来ていた。
操が警戒した通り、管理室に戻る道にも水死体の怪物が現れていたが、幸いにも数は多くなかった為、特に問題無く管理室まで辿り着く事が出来た。
しかし、以前通った時には確かに何もいなかった通路に怪物が居るという事は、操の『気配』を察知する能力でも気付けなかったという事だ。
更に言うなら、操が推測したように怪物達は何らかの手段で離れた場所の仲間に意思を伝達している恐れがある、という事でもある。
「なるほどな。 確かに有り得なくは無いなぁ……」
管理室に設置された制御端末を操作しながらライナが呟くように言う。
発電機の起動を終えた現状、残る作業は電力の供給ラインを変更するだけなのだが、セキュリティの認証などを色々突破する必要があるのだという。
ライナが今行っているのがその為の作業だった。
「確証はないんだけどね。 でも、そうだとすると色々と辻褄が合う気がするの」
操は貯水池で怪物達に遭遇した後に考えた事について、ライナに話しをしていた。
最初にこの街に蔓延る花の怪物達についての情報を操に齎したのはライナだ。
その情報から齎された怪物達の特徴を知っていた事で、ここまで無事にやって来れたと操は思っている。
しかし、花人や木人などの基本的な形態の怪物はともかく、それ以外の怪物については操もライナも持っている情報は多いとは言えない。
しかしそれでも、操は自分よりもライナの方が怪物に対する観察力が高いと考え、自分の怪物の意思疎通に対する考察について意見を求めたのだ。
「実際、今まで見たあの化物達の様子を見ると、否定出来ないからな」
顔を顰めながら話すライナ。
この街で操に出会う前に街の調査をしていた時にも、妙に連携が上手い怪物と遭遇した事があるのだという。
違和感自体は以前から感じていたそうだが、その考えを中々受け入れる事が出来なかった。
「何せそれって、テレパシーとかって事だろう? そこまで行くと超能力とかそういう領域の話になっちまうからな」
「そうだよね……。 私も最初はそう思ったんだけど……」
超能力などという物は無い……と言ってしまいたいところではあるが、他ならぬ操が『青い花』によって超能力紛いの力を身に付けているのだ。
そこから考えると、決して有り得ないとは言い切る事は出来なかった。
「実際の所どうかってのは俺にも判断付かないけど…………そういう可能性がある前提で考えておいた方が良いだろうな」
「……そうだね。 結局、実際目にした事しか私達は知らないんだし、何が起こっても受け入れられるようにしないとね」
操は溜息を吐きながらそう零した。
「よし、これで…………起動っと!」
と、丁度会話が一段落した所でライナの作業が完了した。
電力の供給ラインの切り替え、排水システムの起動とやる事は複数あったようだが、至極あっさりと終了したようだ。
ライナが操作していた端末の画面には『緊急排水中』の文字が赤く表示されて点滅している。
「え? もう終わったの? 作業を始めて5分も経ってないと思うんだけど……」
「外をうろついてる『根腐れ』共の事を考えると時間かけてらんないからな。 ちゃちゃっと終わらせました!」
『根腐れ』とはあの水死体の怪物の呼称だ。
頭部にある大きな花に対して、腐り膨れ上がった体が根、あるいは球根を思わせる姿をしていた為に付けた名前だ。
水を与え過ぎて根を腐らせた花、という意味合いも含んでいる。
話しの中で仮称としてライナに伝えた所、気に入ったのかライナも使うようになったのだ。
「……もしもさっきの話の通り怪物共が本当にテレパシーみたいなものを使えるんなら、このまま獲物を逃がすとは思えない。 絶対何か仕掛けて来るぞ」
椅子から立ち上がりながら、ライナは嫌そうな顔をしながらそう述べた。
確かに、このまま何もないとは思えない。
何か仕掛けられる前に速やかに脱出をするという事には操も賛成だった。
「賛成。 ……ところで、下層エリアへの道って貯水池とかに向かう水路の反対の道で良いの?」
「ああ、そっちで合ってる。 途中に階段があって、そこを下りたら後は真っすぐ行くだけだ。」
そんなライナの返答に、操は少しだけ疑問を抱いた。
てっきり下層エリアも上層エリアと同じように通路が入り組んでいる物だと思っていたのだ。
そんな操の表情から疑問点を察したのか、ライナが補足の情報を教えてくれる。
「下層は普段も水没する程じゃないけど水に満たされてるんだ。 だから、観光地化って話が出た後も下層に関しては通れる場所は殆ど無いんだよ」
ライナの話によると、下層エリアもやはり入り組んだ水路が張り巡らされているのだそうだが、人が通れるような通路は東西に延びた大水路だけなのだという。
それ以外の水路は鉄格子で仕切られており、人が立ち入る事はそもそも出来ないのだそうだ。
「なるほど……でもそれなら、その大水路ってちゃんと通れるようになるの? いくら排水システムがあるとはいえ……」
「そこは心配ないよ。 なんせ“緊急”排水システムだからな。 下層の水路内の水を全て排出するようになってるのさ」
そもそもこの緊急排水システムは、グリーンフォレストを流れるウェイン川(という名前らしい)の水量が度々増水し、処理し切れなくなった水が地上に溢れるという事態が起こった事で後から設置された物らしい。
その為、下層の水が溢れそうになった時点で川から引き込んでいる水の流れを止め、水路内の水を別の場所に排水するのだという。
「……それって、排水された別の場所が溢れるだけなんじゃない?」
「まあ……水量の分散、って事なんじゃないか? ……いや、知らんけど」
何となくだが、観光資源として利用したいが水量が増えると水が溢れて損害を発生させる、しかし水路は利用したいので解体したくない……そんな街の行政側の皮算用が透けて見える気がした。
尤も、今の操達にはそう言った事情はどうでも良いのだが。
「ま、とにかくこれで西側の区画へは行けるようになってるはずだから、何も起きない内に行ってみようぜ」
「そうだね。 ……あんまり出て来ないと良いんだけどな」
ライナの言葉に頷きつつ、ベルトに吊られた散弾銃を見て呟く操。
燃料を探しに出た時には既に散弾銃の残弾は残り少なかったが、貯水池での『根腐れ』の群れとの戦闘で、拳銃も弾数が心許なくなって来ている。
出来る事なら怪物と遭遇せずに通り抜けてしまいたいのが本音だ。
だが、恐らくそれは無理だろうという事を、操は既にこの時から何となく察していたのだった。
上層エリアから下層エリアに降りる為の入り口は管理室のすぐ近くにあった。
一見するとただの金属製の扉に見えたが、内部は階段室になっており、地下へと続いている。
そこから暫く階段を下りて行くと同じ様な扉が現れ、扉を開けた先は大きな水路横の、一段上がった所にある通路に繋がっていた。
その水路は今まで操達が通って来た水路に比べて古びてはいるが、非常に縦横のスペースが広かった。
「うわ……広いね、ここ……。 ここが水没してたって事は相当水が流れ込んでたんだね」
操が眼下に広がる大水路を見渡しながら呟く。
大水路内は薄暗いが、非常灯らしき物が辛うじてまばらに点灯している為、上層エリアの水路よりはむしろ明るかった。
「この水路が水浸しになる位って事は、どっかにでかい穴が空いてるか、そこら中に穴が空いてるかだろうな」
ライナが天井を見ながら答える。
操もつられて天井を見上げると、天井にはそこかしこにヒビが入っている。
しかし、見た限りではそこから水が漏れて来ている様子は無い。
「……水、治まったと思う?」
「いやー……どうかな? まあ、今も水が流れ込んで来てるとしても、また水没するぐらいになるのには時間が掛かるだろ」
現状、操達が居る一段高くなった通路部分も含め、大水路内は水浸しの状態だ。
天井の高い位置は比較的濡れていないが、壁等の濡れ具合を見る限りかなり高い位置まで水が溜まっていたらしい。
緊急排水システムで水を抜いた為、現在は水路内に僅かに水が流れている程度まで水位が下がっており、再び同程度の水位まで水が溜まるのには相当時間が掛かるだろう。
「また水没しちまう前にとっとと抜けちまおうぜ。 多少濡れるのは我慢しないとだけど……」
そう言って肩を竦めるライナに苦笑しつつ、操は階段を下って大水路へ足を踏み入れた。
ライナが言った通り、水路内はまだ水浸しだった。
とはいえ、足首程まで水に浸かっていた貯水池に比べれば、水溜りの中を歩く程度の物だ。
「確かに水浸しだけど、その分何も居ないみたいだね」
操はライナと連れ立って水路内を進みながら周囲を見渡す。
大水路の左右には鉄格子で仕切られた別の小さな水路があり、そちらからチョロチョロと水が流れて来ていた。
今まで操達が通って来た狭い水路と同程度の広さがあるが、大水路と違って明かりの類は無い為、奥の方は暗闇に満たされている。
「完全に水没してただろうしな。 そこから考えれば明かりが生きてるのは運が良かったかもな」
ライナが天井の電灯を見上げながらそう述べる。
確かに、真っ暗闇でこの広い水路を進むという状況はあまり考えたくない。
ライトで照らせば当然見えるが、それでも限られた範囲しか見えない状態というものは想像以上に操の恐怖心を煽っていた。
「何にせよ早く地上に出たいなぁ……。 ずっとここにいると気分が滅入りそうだよ」
「賛成。 まあ、このまま真っすぐ進めば地上に上がる階段がある筈だから、もうすぐ…………うん?」
先を歩いていたライナが何かに気付き足を止める。
何事かと身構える操だったが、理由はすぐに分かった。
「これは…………酷いね」
ライトで照らされた前方に広がっていたのは、天井を突き破って床まで伸びた巨大な植物の根だった。
一目見てあの巨大花の物である事が分かったのは、根のあちこちに大小の『青い花』が咲いていた為だ。
巨大な根からは血管を思わせる細い根が伸びて壁や天井を覆っている。
根はギリギリで床まで届いていないが、垂れ下がった先端が操達の行く手を阻んでいた。
「あー…………多分、水没の原因はこれだな。 こりゃあ水浸しになる筈だよ……」
天井から伸びた幾本もの根からは、ジャバジャバと音がする程の水が流れ落ちている。
ここから流れ込んだ水で下層エリアが水没したのだろう。
さながら滝のようではあるが、再び周辺が水没するまでにはまだ余裕がありそうだ。
「根が床まで届きそうだけど……間を通れば先には行けそうだね」
床にギリギリ届いていない巨大花の根は、まるで大水路の柱のように見える。
しかし、太い根が所狭しと天井から垂れ下がってはいるが、通る隙間もない程にひしめき合っているという訳でもなく、間を抜けて先へ進む事は出来そうだ。
「そうだな。 けど、視界が悪い場所ではある。 周りを警戒するのと……あと音に注意な」
「分かった」
操とライナはそう言葉を交わすと、銃を構えながら巨大な根の間を慎重に進み始めた。
周囲を警戒しつつ、垂れ下がった根を避けながら水路を進む二人。
根から直接生えた『青い花』が無数に咲き乱れている事もあり、まるで薄暗いジャングルの中を進んでいる様だった。
操は物陰に怪物が潜んでいる可能性を考え散弾銃を腰だめに構えていた。
根を避けながらだと、拳銃は腕を伸ばして照準し辛い。
対して、多少照準が甘くとも相手に当てる事が出来る散弾銃であれば、威力は勿論取り回しの面でも扱い易かった。
「花……っていうか、植物の事ってあんま詳しくないけど、根っこから直接花が咲くような事ってあるのかな?」
先へ進みながらライナが呟く。
根から直接、茎すら無く湧き出るように花を咲かせる巨大花の根を見ての疑問らしい。
実の所、操もそこに関しては気になっていた。
「普通は無い……と思うよ。 でも、植物に何らかの異常が起きると、本来は花が咲かない場所から花が生えて来たりって事はあるから、絶対に無いとは言い切れないかも……」
「……この『青い花』が普通の花かは疑問だけど、もしそうなら……こいつにも何か異常が起きてるって事か」
正直言って操にも自信は無い。
ライナが言った通り、『青い花』を通常の植物……いや、通常の生命体として考えるのは無理がある気がしているからだ。
だが、尋常の生命体ではないとしても、青い花は植物としての性質が強いのは間違いない。
であれば、通常の植物として見た場合、無節操に花を咲かせ、広範囲に異常繁殖している今の状態は『青い花』としても正常な状態ではない可能性もある。
(仮にそうだとすれば…………『青い花』は、花自身の意に反して暴走している……?)
流石の操も花と会話が出来るわけではない。
『青い花』に自我があるかもしれないというのも操の推測だ。
それ故に、相手の……花の意を慮るような事は不可能だと理解もしている。
しかし……。
(なんでだろう……悍ましい怪物を生み出す花なのに、話しをしたいって感じてしまう……)
それは、操が青い花に寄生された存在だからなのか、それとも別の理由からなのかは、操には分からない。
だが、それでも操は、いずれ自分が花の意思を理解しなければならない、という予感を確かに感じていた。
「……操」
歩みを進めながら思考の深みに嵌まりそうになっていた操は、警戒を促すライナの声で我に返った。
前方を見ると、『根腐れ』と思われる水死体が床に数体転がっている。
まだ起き上がってはいないようだが……どう考えても、ただ倒れて息絶えているという事はあるまい。
しかし操は『根腐れ』と思われる目の前の水死体に対して、奇妙な違和感を感じていた。
死体のふりをしているにしては擬態がお粗末なせいかとも思ったが、相手を『根腐れ』と認識してもなお違和感が拭えない。
と、操が考えを巡らせていると、ライナが操に目配せをして来た。
どうやら一当たりしてみる、という事のようだ。
出所不明の違和感もあり少々心配ではあったが、安心させるようなライナの視線を受けて、操も了承の意味を込めて頷いた。
ライナが銃を構えながら一番近くに倒れている『根腐れ』に近付いて行く。
すると案の定、ある程度近づいた所で『根腐れ』がおもむろに起き上がった。
「ホ゛ホ゛ホ゛ ホ゛ッ」
呻き声を上げながら立ち上がろうとした『根腐れ』だったが、完全に立ち上がる前に銃声が響き渡った。
『根腐れ』が動き出した段階で既に頭部の花に狙いを定めていたライナは、一切の躊躇なく引き金を引いていた。
素早く二連射された銃弾が正確に『根腐れ』の頭部の花を粉砕する。
立ち上がりかけていた『根腐れ』は花が破壊されると同時に動きを止め、再び床に倒れた。
倒れた怪物は体を暫く痙攣させていたが、やがて完全に動かなくなり、その様子を見た操が息を吐く。
しかしその直後、倒れたままだった他の『根腐れ』達が一斉に動き出した。
「ホ゛ホ゛ホ゛ホ゛ホ゛ォォォォォ…………」
「ホ゛ォ゛ォ゛ォ゛エ゛エ゛エ゛………………」
「エ゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛………………」
まるで示し合わせたかのように動き出した『根腐れ』達を見て、ライナは顔を顰める。
「……1匹やられたら残りで襲うって打ち合わせでもしてたのか? こいつら」
相変わらず動きは遅い『根腐れ』だが複数を同時に離れて相手にするとなると、それなりに弾薬が必要になる。
弾薬を節約したい操達にとっては好ましくない状況だ。
しかし、周りに巨大花の根がひしめいているとはいえ、他の水路よりも広い大水路内であれば、操には対処法がある。
「ライナ、私に任せて」
操は銃を下ろすと、右腕から『荊の鞭』を生成する。
そして後方に大きく振りかぶると、前方の『根腐れ』に向かって撃ち出すように勢いよく振り下ろした。
バンッ!! という空気を叩く音と共に繰り出された『荊の鞭』は、一瞬で一番手前の『根腐れ』まで伸びると、その首を跳ね飛ばし、その後ろを歩いていた個体の花まで粉砕した。
周囲に乱立する巨大花の根の間を縫うように、そして根の表面を削り取る程の威力を持って放たれた鞭の一撃で、2体の『根腐れ』は声も上げられずに倒れると動かなくなった。
「おお……すごいな、こいつら一撃なのか」
ライナのそんな呑気な声に脱力しかけるが、まだ『根腐れ』は一体残っている。
「ホ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ェ゛ッッッッ!!!!」
ライナより操の方が危険と判断したのか、近くにいるライナではなく操に向き直って向かって来ようとする『根腐れ』。
しかし、相変わらずその動きは花人や木人に比べて緩慢だ。
「いやいや。 素通りかよ」
そして当然、ライナが何もしない筈もなく、ライナを通り過ぎようとした『根腐れ』の首が唐突にボロリと落ちた。
「オ゛………………」
ヨタヨタと歩いた首なしの『根腐れ』は、数歩歩いた所で崩れ落ち、動かなくなった。
「……お見事」
苦笑しながら声を掛ける操。
薄暗い水路の中とはいえ、肉体が強化された操にすら見えない速度の攻撃を当然のように行うライナに驚きつつ、最近慣れて来ている自分にも気が付く。
ライナの左手にいつの間にか握られている短剣を見ると、血の一滴も付いていない。
つまり、それ程の速度で短剣が振られているという事なのだから、当然と言えば当然だろう。
ライナの短剣は一般的な物より大型で重量もある。
それを目視出来ない程の速度で振るえば、その一撃は斧にも匹敵するのではないだろうか?
ライナがこの状況であまり武装していないのは、そういった自身の能力を鑑みると特に必要ないと判断しているせいなのかもしれない。
「こいつら動きは遅いし弱点丸出しだから、対処し易いけど…………やっぱり例の件が気になるよなぁ」
「私が言ったテレパシーが……って奴? でも、あれもただの思い付きだから本当にそうかは分からないよ?」
『根腐れ』に限らず、花の怪物達は何らかの手段で繋がっている可能性がある。
そう言った推測を操は確かにしたが、あくまで推測だ。
だが、ライナは何かしら確信めいた事を感じているようだ。
「違ってるんなら違ってるでいいんだよ。 ……けど、本当にそうだとしたら、この3匹は警報装置なんじゃないかな」
「警報装置?」
ライナの言葉に、思わず床に転がった怪物達を見る。
操としては単純に、大水路内にあった死体に『青い花』が寄生して、水中を漂っていただけだと考えていたのだが……。
「わざわざ3匹だけ道を塞ぐようにか? どっかから流れ込んで来てるだけだとしたら、ちょっと不自然じゃないか?」
そう言われて操は、先程感じていた違和感の正体にようやく気付く。
『根腐れ』の数が中途半端なのだ。
3体が固まって倒れているという状況が、偶然なら多すぎるし、必然なら少なすぎるのだ。
操は先刻、貯水池で『根腐れ』の群れに遭遇している。
あの場所が、水路に流れ込んで来る水の集まる場所である為に、必然的にあれ程多くの『根腐れ』が居たのだと操は考えていたのだが、そうだとすれば大水路に3体だけ、というのは不自然だ。
一方で偶然流れ着いたのだとすれば、一か所に固まって3体も転がっている、というのは考えにくい。
何より、視界が悪い巨大花の根が乱立している場所で道を塞ぐように倒れている、というのが作為的に感じる。
「もしもわざとこの場所に3体だけ「配置」してたんだとしたら、こいつはいよいよ…………」
そこまで口にしてライナは突然言葉を切った。
顔を顰めたその表情に、操も何事かと思いつつ周囲の『気配』を探る。
「…………!!」
そして操は、感じ取る事が出来た『気配』に思わず息を飲む。
操が周囲の怪物の気配を探ったその瞬間、今まで感じられなかった『根腐れ』と思われる無数の反応が、今まさに操とライナの周辺に出現しつつあった。




