舟行
江州路上作
帆影日漸高 閑眠猶未起 起間鼓枻人 已行三十里
船頭有行䆴(こうそう) 炊稲烹紅鯉 飽食起婆娑 盥漱秋江水
平生滄浪意 一旦來遊此 何況不失家 舟中載妻子
帆影を見ると、日は少しずつ高くなっている。
そうはいっても、 ただただ眠ってしまい、まだ起きられない。
それでも起きて、舟に一緒に乗る人に聞いてみると、もう三十里も進んだと言う。
舳先には小さな携帯コンロがあって、それを使って米を炊いたり、赤い鯉を煮る。
満腹となったので、ようやく立ち上がって背伸びをする。
川の水は、秋ならではの冷たさ、その水で手水を使う。
そう言えば、いつも隠棲をしようと思っていた。
そして、思いがけず、ここでのんびりとしている。
よく考えれば、家族の離散もない、この舟にはわが愛する妻子も乗っている。
※鼓枻人:舟を漕ぐ人。「枻」は舟の「かい」
※已行三十里:出港は明け方、三十里進んだ。
※行䆴(こうそう):旅行で使う携帯コンロ
※婆娑:背伸びをすること。
※盥漱:手を洗い口をすすぐ。
※滄浪:青い水。隠棲を意味している。
※何況:懲戒処分となり左遷される場合は、命が下された日に本人は都から出なければならない。家族は後から合流する。
○元和十年(815)、江州へ向かう間の作。
○左遷のおかげで、逆にのんびりできると喜んでいるのだろうか。
○左遷程度で殺されなかったから、白楽天の詩が多く残ったとも言われている。
○紅鯉料理は、興味がある。かつて横浜中華街で出していたらしいけれど、最近は見かけない。すぐに金になる焼き小龍包ばかりになってしまった。




