第59話 決着
説明会や討論会等、民主派と復権派両派閥の選挙前活動が終わり。後は結果を待つばかりとなった。
選挙期間の最後は有力者達がどこに投票するかを決めるための最終調整の期間。国民自らが考えて答えを出すための時間だ。
選挙権を持つ有力者達は、有力者同士や自身の所属する組合の中で話し合ったり自分で政策の内容や現状を調べたりし、最終的にどちらを支持するかを決め、それぞれ票を投じていく。
そして結果発表当日。決着の時が来た。
その日、民主派と復権派、領主と領主候補は一堂に会し、その会場で発表される結果を聞いていた。
ルプス連邦の選挙は一部の人しか選挙権を持っていないという事もあって誰がどこに票を投じたかが公表される形になっている。どんな有力者が民主派と復権派どちらに票を投じたか、そしてどの領で民主派と復権派どちらが優位になっているのか、その結果が読み上げられていく。
結果は割れていた。民主派の領だからと言って民主派への票が圧倒している訳でもなく、復権派の領だからと言って復権派への票が圧倒している訳でもない。労働者の組合だからと言って民主派を支持している訳でもないし、貴族の様な既得権益だからと言って復権派を応援している訳でもなかった。
その結果からもルプス連邦全体の迷いが見て取れる。民主化の方針には問題があった。だからと言って政府主導に戻してハイ解決となるものなのか?民主派は今までの問題を修正すると言っているが、このまま任せて良いものなのか?ルプス連邦国内の空気は正しく賛否両論であった。
「では、最終結果の発表を行います」
議長が決着の言葉を放とうとしている。この言葉によってこれからしばらくの間民主派と復権派どちらが国の舵取りをするのかが決まるのだ。
メディナは緊張で息を飲む。これで自分のやってきた事が無駄になるかどうかが決まる。気を張るなという方が無理な話だ。
「民主派452票。復権派431票。これにより、ルプス連邦第32回の国政は民主派が担う事となります」
議長のこの言葉によってメディナの緊張は解けた。さっき飲んだばかりの息を吐き、胸を撫でおろす。
そしてメディナは心の中で富楽へと送る言葉を浮かべた。
(勝ちましたよ。富楽さん)
結果が発表され、選挙が終わり。集まっていた領主や領主候補だった有力者達は会場を一人また一人と去っていく。ある者は安堵の表情で、ある者は決意と覚悟の表情で、ある者は失意の表情で会場を後にする。
メディナもこれから帰ろうとしていたその時、
「やぁ、メディナさん」
アルダートが声をかけてきた。
「あ、アルダートさん」
「今回は民主派の勝利おめでとう。悔しい気持ちはあるが、グダグダな民主派がだいぶ改善されたし、復権派がただ独裁を目的とするものではないという事も十分に広まった。民主派と復権派がただ対立する関係ではなく、ルプス連邦を良くするために協力出来る関係という事も周知された。今回の選挙、負けはしたが結果としては悪くなかったと私は思っている」
復権派が負けて悔しそうな顔をしているかと思っていたけれど、アルダートの表情は爽やかでどこかスッキリした様な表情をしている。まるでスポーツでいい勝負が出来た後の様な、そんな雰囲気だ。
そんなアルダートにメディナも謙虚な姿勢で返す。
「今回の選挙。結果としては民主派の勝利で終わりましたが、票数は僅差でしたし、昔は多くの人に支持されていた民主派が負けそうになっていた事を考えると、むしろ今は失望されている、それだけの支持を失っているという事だと私は思っています。これでは勝ったとはとても言えません。私達民主派は失われた信用を取り戻すために、これから頑張らなければならないんです」
アルダートはフッと軽く笑い、挑発的に言う。
「今回の任期でもし民意を取り戻せない様なら、次こそは復権派が勝たせてもらう」
それに対しメディナは望むところといった感じで強気に言い放つ。
「そうならないように全力を尽くします」
ここでアルダートの穏やかな顔に変わり、メディナに一つの提案を投げかける。
「それと良かったら、これまで富楽とどんな話をしてきたのかどんな事を教わってきたのか、私に聞かせてくれないか?彼がどんな事を考え、どんな事を伝えてきたのか、知りたいんだ」
知識を得たいだとか今後の政策に生かしたいだとかの打算を持った表情ではない。ただ、笹霧富楽という人物の事を心に留めておきたいといった感じ。敬意と誠意による質問であった。
そんなアルダートにメディナは微笑みを向けて答える。
「はい。喜んで」
そして二人は握手を交わした。
選挙の結果民主派は勝利を収めた。
長い間経済の衰退をもたらし支持を失っていた民主派だったが、今回勝利できたのは今までちゃんと民主化を進める事が出来なかった事を認めた事が大きかった様だ。復権派に変えるよりも制度変更の際の負担も少なくて済む事や、民主派が復権派をただ批判するのではなく、ある程度は相手を認める方針になっていた事が決め手となり今回の辛勝に繋がったのだ。
ルプス連邦は国民が主権を持つ国家として新たな一歩を踏み出したのだった。




