第58話 民主派VS復権派
民主派と復権派の討論が始まった。
民主派はディバルとメディナの二人。復権派はアルダートとガルザックとシャラセアの三人。有力者達に見られながらも互いに向かい合っていた。
挨拶をし、軽く話をした後、アルダートは本題に入る。
「民主化を進めて以降、ルプス連邦の政治は混乱を続けてきました。国民も政治に参加出来る様にするという理念の元、国民が政策に意見出来る様に整備が進められてきたのですが、国民の大多数は専門的な知識を持っておらず、政策に対する意見も感情論ばかりで政策に生かせる国民の意見はほぼ無く、知識が無いまま政策の是非を決めつけ、円滑な政策実現を阻害する要素にしかなりませんでした。ルプス連邦は民主化を進めるには若すぎたのです。本来であれば国民に十分な教育を施し、最低でも自分が何の政策を支持し何の政策を批判しているのか分かる様になるまで旧体制に戻すべきだと我々復権派は考えています」
続いてディバルが民主派の主張を語っていく。
「確かにルプス連邦の民主化には問題がありました。国民の政治参加という聞こえの良い言葉に浮かれ、よく分からないまま政治に意見し、雑然な主張のせいで政治に混乱を招いてしまった。ルプス連邦の民主化が上手くいっていなかった事は事実です。ですが、ペンブローク領での経済政策の成功もあり、本来想定していた民主化の流れが出来つつあります。問題が修正されつつあるのです。ルプス連邦は民主化を進めるには未熟だったというのは同意しますが、わが国は今まさに成長を続けようやく国民の政治参加に慣れだした頃。民主化の方針を止めるのは時期尚早だと我々民主派は考えております」
復権派と民主派、双方の方針が打ち出された。ここから主張のぶつけ合いだ。
先ず指摘をしたのはメディナだった。
「先ほど申し上げた様に、既に民主化の道筋は出来ています。前までは、国民の政治参加と言うと国民全員が専門的な知識を持つ事と思われており、半端に学んだ知識のせいでにわか知識で専門家を気取った意見が横行していました。ですが、今では国民も自分が政治に参加するとは何かを理解してくれています。国民が政治に参加する意義は、現場の声を政治に届けそれを生かす事。大衆がしなければならないのは以前と変わらず労働であり、大衆が学者や指導者の真似事をするのは国民の政治参加とは違う。それを十分に理解し、現場の声を届けてくれています。それが出来ているのだから、今のまま民主化の方針を進めた方が良いのではないですか?」
その意見にガルザックが異を唱える。
「国民が適切な意見を出せる様になってきたというのは分かる。民主化を始めた当初は知識もないのに政策に意見するなんて事が多くあったが、今では産業の現場の事を伝えてくれる様にもなっておる。だが、民主派の領主は十分に民主化に対応出来ていないのではないか?国民の政治参加の道筋を作ったのは大した成果ではあるが、肝心の政府側に民主化の進め方が周知されておらん様だ。現にペンブローク領とスパニエル領くらいしか進められていまい。民主化全体で出来ていないものを国全体で実施しようというのは、流石に早計ではないかね?」
メディナはそれに対して否定せず、頷いて言葉を返す。
「ガルザックさんの言う通り、現在の領主や政府関係者は民主化へ十分に対応出来ているとは言えません。ですが、一番の課題であった国民が適切な意見を出せる様にするというのは実現しています。後は政府側の体制を整えるだけなので、むしろあと一歩の所まで来ていると評価して欲しいですね」
それにガルザックは「ふむ」とだけ答え、言及を終えた。
今度はシャラセアが意見する。
「そっちは国民の意見を政治に生かすって言っているけど、現場で働く人達の意見を聞いて政策に生かすってのはアタシら復権派でも出来ている事。わざわざ民主派でなくとも良いんじゃない?」
お返しと言わんばかりにメディナは言う。
「それはこちらも言える事です。復権派も民主派も、国民に生産と消費という経済活動をしてもらわなければならない事に変わりありません。どの道経済を成長させるためには現場の声を聞かなきゃいけないのですから、わざわざ政府主導の方針を進める必要はないんじゃないですか?」
経済成長には国民の経済活動が必要不可欠。国民が主導になろうと政府が主導になろうと、国民に優れた商品を生産供給してもらう事と国民が色んな物を買える様にするという目的は変わらない。どの道現場の声を聞く姿勢は必要なのだ。これに関してはお互い様といった所。
その後も5人は討論を続けていく。
ある時は自分達の派閥の功績を言い、ある時は相手の派閥の問題点を追及し、しばらく一進一退の問答を続けた後、終わりの時間が迫ってきた。ここでアルダートは最後の問いを繰り出す。
「民主化の方針が上手くいっている事は分かりました。民主化最大の課題であった国民が自分が伝えるべき情報が分からないという問題にここまでの答えを出したのは見事という他ありません。ですが、それは長期間持続出来るものなのでしょうか」
「というと?」
「確かに今の国民は経済政策に協力的です。自分さえ良ければいいという考えを持たず、どうすれば国の産業を成長させる事が出来るのか考えてくれています。ですがそれは、国民の多く長らく不況を経験し、経済を立て直さなければ自分達の生活が危うくなるという意識が高まっていたという要因は否定出来ません。経済を立て直した後、年月が経ち大衆がその経験を忘れていったその時、国民は今と同じ様に国全体産業全体の事を考えて意見を出してくれるでしょうか。労働は他人にやらせればいいだとか、他人にカネを出せと言いながら自分はカネを出さないなんて事にならないのでしょうか。その事についてどう思うか、ディバルさんにお聞きしたい」
そんな指摘にディバルは怯まず言葉を返す。
「それは復権派とて同じ事でしょう。一部の人間に権力を集中させるやり方は、やるべき事がハッキリしている序盤は上手くいく可能性は高いでしょうが、長期化すれば腐敗の温床になるのが常。意識が高まっている時は上手くいき、意識が薄れると個々の我欲で機能不全となるのは民主派も復権派も同じではないですか?アルダートさん」
「ふむ。長く続けた際のリスクはお互い様、という事ですか」
「はい」
そんなアルダートとディバルのやり取りの後、復権派と民主派それぞれの意気込みを語り、終わりの挨拶をしてその日の討論は終わった。




