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異世界人の経世済民 転移者は経済を立て直す  作者: キャズ
民主派VS復権派

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第56話 転生者を失って

 その日、笹霧富楽は死んだ。

 ペンブローク領の経済顧問として各領で説明会をしていた最中、元経済学者のランツ・リッチャーにナイフで腹部を刺され、内臓をひどく損傷した事により死に至ったのだ。

 ランツの動機は、言ってしまえば単なる逆恨みだ。ペンブローク領の一件で自身の立場が失われ、半ば浮浪者の様になってしまっていたランツは富楽を恨む様になり、殺害を決意したとの事。

 捕まった後のランツは燃え尽きたように無気力であり、うわごとの様に富楽が悪いんだと言いつつも罪は認めており、刑を受け入れるつもりの様だ。


 富楽の死亡を知らされたメディナは自身の屋敷の中でうなだれていた。


「私の・・・、私のせいだ。私が富楽さんをこの世界に呼び寄せてしまったからこんな事に・・・」


 助けて欲しいからと別の世界から読んだのに、その結果が逆恨みで殺されるなんて。富楽の悲惨な最期にメディナは心を痛めている。


「メディナ様・・・」


 メイドのリアは、そんなメディナを見て何と言えば良いのか分からず言葉が出てこない様子。

 一方執事のジェーツはメディナに活を入れる。


「メディナ様。お気持ちは分かります。ですが、いつまでも落ち込んでいては困ります。貴方は今やペンブローク領のみならず、民主派全体の経済を背負うお人なのですから」


 メディナも自分がしっかりしないといけない事は分かっている。いつまでも富楽に頼ってばかりじゃいけないし、それなりの立場に立った以上、これからは自分が出来る様になろうとも考えていた。だけど突然の死別になるとは考えもしなかった。気持ちに整理がついていないのだ。

 メディナが割り切れない気持ちでいたそんな時、部屋のドアがバンと開き、それと共にヴィヴィエットの力強い声が部屋に入り込んだ。


「ただいま帰りました!メディナ様!早速ですがこれをご覧になってください!」


 ヴィヴィエットは帰って早々一枚の手紙をメディナに手渡した。


「これは?」


「フーさん、いえ、富楽さんからの手紙です。自分にもしもの事があったらって渡されてたんです。富楽さんは前に言っていました。自分は別の世界から来た存在で、この世界に来た仕組みもよく分かっていない。だから突然消えて居なくなってしまう事もあるかもしれない。だから定期的に手紙を書き残しておくって」


 メディナは手紙を受け取り、富楽の事を思いながらそれを読んでいく。手紙にはこう書かれていた。


<この手紙を読んでいるって事は、俺が突然居なくなるなり何なりしたんだろう。きっと今頃、これから自分の力でやっていけるのかなって不安になっているんじゃないかな?だから、これから経済政策を間違えないため、俺からのアドバイスを残しておこうと思う。何度も言っているが、経済の基本は供給能力。価値ある品が生産・供給出来るからこそ、その国に流通する紙幣に紙切れ以上の価値が生まれる。故に紙幣を流通させる政府は、国の供給能力を支える人材と設備と資源を守らなくてはならない。そして通貨が流通する社会のために、国民がカネを使える社会にしなくてはならない。国民は価値ある品を生産・供給し、国民が価値ある品々を買える様にする。それが経済政策の本質だ。だからこそ正しい経済政策を行うためには、国民がどんな仕事をしていて、どんな商品が流通していて、どんな生活をしているのかを理解する必要がある。必ず産業の現場や作られる商品や国民の生活と照らし合わせて政策を進める事。それを徹底すれば、経済政策も間違いも減るし、間違ってしまった場合も早く修正出来る様になるだろう。メディナさんが今まで学んできた事を生かせば、必ずルプス連邦の経済を立て直し、成長させていく事が出来るだろう。後、もし俺が死ぬなり何なりして今気に病んでいるのだとしたら、出会ったときにも言ったが、気にするな。俺は元々死ぬ運命だったのが、この世界に来た事で生き長らえただけなんだ。むしろ、この世界に呼んでくれた事を感謝している。長い様な短い様な付き合いだったけど、この世界に来てからの生活はなかなかに楽しかったよ。今までありがとう、メディナさん>


 手紙を読み終わったメディナは少しの間黙祷し、決意と共に目を開く。


「助ける義理もない私達のためにここまでしてくれたなんて。私もくよくよしてはいられませんよね」


 そう言うとメディナは自分の頬をパンパンと叩き、気合を入れる。


「富楽さんが居なくなってしまった以上、私達は彼無しで経済政策を進めねばなりません。幸い、もう政策の大部分は進めてくれていますし、私も多くの事を富楽さんから学んできました。富楽さんが居なくとも、やってみせますよ!」


 そんなメディナを見て、ジェーツは安心した様子で言う。


「微力ながら、我々も全力でメディナさまをお助けします」


 その言葉に続くようにリアとヴィヴィエットは静かに力強く頷いた。

 富楽という助っ人が居なくなったからこそ、自分達が頑張らなきゃいけない。それが逆に3人の士気を高めている様だった。

 これにて心機一転。富楽の頑張りを無駄にしないために、そして何より自分が暮らす国のために、メディナは自分の力での経済政策を進める決意を固めた。


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