第54話 アルダートに気づかれて
対談も終わったので屋敷に帰ろうとしたその時、
「少し良いかな?メディナさん」
アルダートが帰ろうとするメディナに話しかけてきた。
「なんです?」
首を傾げるメディナにアルダートは真剣な表情を向けて言う。
「貴方に少し聞きたい事がある。ペンブローク領の経済顧問、笹霧富楽の正体についてなんだが」
「え!?」
富楽に対する突然の追及にメディナは驚愕の声を上げた。
まさか富楽が異世界から来た事を知っているの?知っていたとして何を言うつもりなの?もしかして富楽がこの世界に来た理由とかも知っているの?色々な思考が頭の中を駆け巡る。
「その様子。やはり彼には何かある様だな」
メディナの反応でアルダートも察しがついた様だ。異世界人という事までは分かっていないみたいだけど、富楽が普通の存在でない事は分かっている様子だ。
メディナは少し考える。
この反応。もしかしたらアルダートは異世界云々について何か知っているのかもしれない。富楽は気にしなくて良いとは言っているけれど、メディナとしては出来る事なら帰れる様にしてあげたい。何か手がかりでもあるのなら聞いておきたい。そう思い、メディナは「分かりました」と答え、アルダートを屋敷に呼んで話し合う事にした。
メディナの屋敷の応接室。メディナとアルダートが向かい合い座った所でメディナはアルダートに問う。
「さてと、アルダートさん。聞いた感じだと何か感づいている様ですが、貴方は富楽さんの何を何処まで知っているんですか?」
現状アルダートが何を何処まで知っているのかが分からない。それが分からない以上、何をどう話していけば良いのやらだ。
アルダートはため息を吐いた後、答える。
「何を何処までと言われても。何一つとして分からない、としか言いようがない」
「え?」
メディナは首を傾げた。
アルダートの口ぶりからある程度の目星はつけて聞いてきたものだと思っていたけれど、返ってきた答えは何も分かっていないというもの。じゃあなんで富楽の正体を聞いてきたのかメディナにはピンと来ていなかった。
そんなメディナにアルダートは理由を教える。
「あまりにも分からな過ぎるんだ。私は少し前から笹霧富楽の身辺調査を進めてきた。笹霧富楽は民主派の経済政策を進める存在として今後のルプス連邦の政策に関わる可能性のある人物だからな。調査をするのは当然だ。だが、調査を進めても進めても何も出てこない。容姿から異国の出身である様だが、何処の国なのかも分からない。いつルプス連邦に来たのかも分からない。経済顧問になるまで何をしてきたのかも分からない。もはや突然湧いて出てきたとしか思えん存在だ。いったい何者なんだ?あの笹霧富楽という男は」
「なるほど。そういう事ですか・・・」
合点がいった。確かに大した経歴の無い人物が政府の役職についたら何事かと思うだろう。それで政策が失敗するのであれば、無能領主がおかしな奴に騙されたというよく有りそうな話しになるが、しかし富楽は経済の立て直しに成功している。よけいに何者なんだという話になるだろう。
メディナは富楽の事を包み隠さず伝えた。屋敷にあったオカルトグッズを使ったら出て来てしまった事。どうして富楽がこの世界に来たのか、どうしたら帰せるのかも分からない事。この世界にきた富楽がペンブローク領の経済を立て直してくれた事。
メディナの話しを聞いたアルダートは頭を抱えて言葉を漏らす。
「そんな訳の分からん奴に頼ったのか。全く、あんたは・・・」
呆れた様子のアルダートにメディナはばつが悪そうに返す。
「あの時は私も切羽詰まっていまして・・・」
少しの間の沈黙。
そしてアルダートは再びメディナに聞く。
「メディナさん。貴方はこのまま富楽さんに頼り続けるつもりか?別の世界から来たという事は、いつか彼も帰る時が来るかもしれん。いつまでも富楽さんに頼り続ける訳にはいかんだろう」
メディナは一切の迷いもなく答える。
「私は富楽さんに頼り続けるつもりはありません。突然居なくなる場合も覚悟していますし、なんなら帰る方法はないか調べ続けてもいます。だからこそ、富楽さんが居なくなっても政策を続けていける様に富楽さんに教えてもらって、私自身も学び続けているんです。富楽さんも私の力で政策を進めれる様にするべきだと考えているみたいで、積極的に教えてくれてもいます。今はまだ富楽さんの協力が必要ですが、必ず富楽さんに頼らずに政策を進めれる様になってみせます」
決意を秘めた眼差し。有力者に良い様に使われてい頼りない領主の姿はもう無い。自分で学び、政策について真剣に考え、領の運営を考えるいっぱしの領主の姿がそこにはあった。
そんなメディナを見てアルダートは安堵の表情でフッと笑い、語っていく。
「別の世界から来たってのは意表を突かれたが、過去がつかめないのも公表しないのも合点がいった。そりゃあ異世界人が経済立て直してくれましたなんて言えんよな。証拠も無しに公表した所で世に混乱をもたらすだけだ。まぁ、事情を知ったからにはこちらも異世界云々の話に関して協力出来る事は協力しよう」
「ありがとうございます。アルダートさん」
予想外の事実に気疲れしたのはアルダートは再びハァとため息をついた。
「私は、正体が分からん奴に任せきりにするのは問題だって指摘しに来ただけだったんだがなぁ」
妙な事に関わっちゃったなといった感じのアルダート。そんなアルダートを見たメディナは気まずそうにハハハと笑った。
そんなこんなで、アルダートは異世界云々の話に関しては協力してくれる事となった。身分等はなんとか誤魔化せる様にしてくれるとの事。アルダートに詰められて焦ったけれど、結果オーライだ。
富楽さんが帰ったらこの事を教えなきゃなとメディナは富楽に思いをはせた。




