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異世界人の経世済民 転移者は経済を立て直す  作者: キャズ
民主派VS復権派

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第49話 ピンシャー領の領主シャラセア

 工場地帯から少し離れた所の住宅地、その一角にピンシャー領の領主シャラセアの屋敷があった。そこまで土地に余裕がないからか、領主の屋敷としては余り土地も広くなく、建物もそこまで大きくない。そこらの家よりも気持ち大きい程度の代物だった。

 シャラセアは既に待っているとの事で、富楽とヴィヴィエットはすぐにグラブスに応接室へと案内された。

 応接室にはピンクの髪にピンクの瞳と目を引く色合いの女性が一人。歳は20代後半くらいだろう、メディナ程ではないが領主としてはとても若い。何やら気だるげで覇気がなく、メディナと違う意味で領主らしくない雰囲気の人だ。

 その女性はゆったりとした口調で挨拶をする。


「やぁ。アタシがピンシャー領の領主シャラセアだよ」


 明らかに貴族と言われる様な人達がする話し方ではない。近所の人が世間話をする様な軽い口調だ。そんなシャラセアの様子に少し呆気にとられながらも、富楽とヴィヴィエットは挨拶を返す。


「ペンブローク領の経済顧問、笹霧富楽だ。この度は領内の案内感謝する」


「私は富楽さんのお付きのヴィヴィエット・フービエンです。視察のご協力に感謝します。シャラセア様」


「良いって良いって。こっちもペンブローク領を視察するんだしお互い様だよー」


 と挨拶を交わした所でシャラセアはパンッと手を叩き、本題に入る。


「それはそうと、どうだった?うちのピンシャー領は」


 シャラセアは前に乗り出し期待の眼差しで聞いてきた。

 富楽とヴィヴィエットはその軽いノリに合わせて気軽に返す。


「噂通りの工業力だな。優れた製品を作るためのサポート。現場で働ける様にするためのサポート。働きやすい職場を作るためのサポート。どれも良く出来ている」


「ですね。現場で働く人達の意見もちゃんと政治に反映されてる様でしたし、民主派よりも民主的って感じでした」


「でしょう?」


 シャラセアはふふんと自慢気な様子を見せ、そのまま語っていく。


「政府がちゃんと方針を伝えて、それに合った制度を用意する。やって欲しい事をすれば得をして、やって欲しくない事をすれば損をする。そんな仕組みをちゃーんと作れば国民はそれに応えてくれるんだから。政府と国民がそれぞれの役割をきちんと果たす事で、国家は繁栄する。そういうもんだよ」


 どうやらシャラセアはいわゆる天才肌という奴の様だ。当たり前の事を当たり前にやれば上手くいくという感じのノリで話している。

 それをヴィヴィエットは興味深そうに聞いており、納得した様子で確認のための質問をする。


「貴族の権力を取り戻すのは国民の上に立ちたいからじゃなく、役割分担を徹底させたいという事なんですね?」


 シャラセアは「そういう事ー」と軽い返事をした後、少し呆れた表情をしながら話を続ける。


「今では役割分担が上手くいっているけどさ。少し前までは大変だったんだよー?民主化が進められてから、政治に関わろうって人が増えてさ、意識が高いっていうのかな。頑張ってもっといい仕事に就きたいとか、もっと政治に関わろうとか言い出してさ。その結果、庶民がどんどん労働者じゃなくなっていったんだよね。頭脳労働者なんてそんなにいっぱい要らないのに、皆が皆頭脳労働を希望して、その結果労働者不足だよ。その上、制度や法律に関しての知識も無いのに政府に意見する様にもなってさ、かえって行政の負担も増えちゃう始末。国民が政治に関わってもおかしな事になっちゃう訳だし、やっぱり役割分担はちゃんとしなきゃだめだって思うんだよね、アタシはさ」


 シャラセアは半ば愚痴になりながらも自身が復権派に所属する理由を語った。過去を思い返しながら話すその姿からも苦労が見て取れる。


「そっちも色々とあったんだなぁ」


 富楽が同情の声をかけると、シャラセアは切り替えて富楽に質問する。


「それで思うんだけどさ。なんで富楽さんは民主派にこだわるの?なんでアタシ達復権派と対立するの?富楽さんも国民が経済活動に専念できる社会作りは目標としている筈。なら、それよより良く出来ている復権派との協力関係を結んだ方が良いんじゃないかな?」


 暗に仲間にならないか?と誘っている様な、そんな質問。富楽が優秀だから欲しいというよりは、富楽は復権派の方が合っていると思っているという感じだ。

 富楽は一呼吸置いて返答する。


「シャラセアさん。確かに民主化によって国民の労働意欲が失われたり知識の無い人が知ったかぶりで政治に意見する人が増えるという問題はある。ですが、国民の権力を弱体化させても、それはそれで問題になると思いますよ?」


 シャラセアは首を傾げる。


「というと?」


「一部の人間だけが権力を持つ様になると、その権力者が現場を知らずにいい加減な制度や法を作ったり、搾取の構造を作って労働者をないがしろにしたり、権力者の方が自身の役目を果たさなくなってしまうリスクがある。民主化でちゃんとした政治が出来なかったのは事実だが、現状有力者の方にも十分な知識があるとは言えない。復権派も一部が優秀というだけで、貴族の権力を戻して上手くいく状況じゃない、というのが俺の考えだな」


 富楽の意見にシャラセアはうんうんと頷き言葉を返す。


「民主化とは違った形で政府が腐敗する可能性があると。なるほどねー」


「まぁこれに関してはどっちが正しいというものじゃない。今のルプス連邦には民主化を進めるだけの準備が出来ていない。だからいったん戻そうというのが復権派で、国民が正しく政治参加をできる様にしようというのが民主派といった所だな」


 と、ここでヴィヴィエットはシャラセアに聞いてみる。


「逆に聞きたいんですけど、シャラセアさんは民主派の方に協力する気とかはないのですか?大衆が政治に関わる今のままでも、貴方が言っていた役割分担も十分に作れていると思うんです。復権派の皆さんが協力してくれれば、ちゃんとした民主化が進めれるんじゃないかって」


 それを聞いたシャラセアはヤレヤレといったポーズを見せる。


「気乗りしないねー。アタシ達も政府主導で政策を進めれる様にするためにこれまで頑張ってきたんだし、せっかく上手い事やれているんだから、上手くいっている内はそのまま進めたい。上手くいっているのに政府主導止めますなんて言い出したら、それこそ領民や有力者達の支持を失っちゃうよ。もしアタシ達に言う事聞かせたいのなら、次の選挙に勝つことだね。富楽さん」


 協力は否定しつつも、シャラセアは富楽に対してはそこまで悪い印象はない。対立はするが嫌いじゃないという感じか。

 そんなシャラセアの態度に富楽はフッと笑う。


「そりゃあ残念だ」


「とは言え、経済政策の大まかな方針はアタシも富楽さんもあまり変わらない様だし、敵ながら応援してるよ。明日の説明会も頑張ってねー」


 こうして今回のシャラセアとの話し合いは終わった。相手の人となりを知りたい程度のものだったためそこまで重要な内容ではなかったけれど、復権派のシャラセアという人物がどういう人なのかは概ね分かった気はする。

 明日はピンシャー領の有力者達に民主派の事を知ってもらうための説明会。支持を獲得できるか正念場だ。

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