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異世界人の経世済民 転移者は経済を立て直す  作者: キャズ
民主派VS復権派

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第50話 信用の回復

 シャラセアとの話し合いを終えた次の日。

 資本家、大きな企業の最高責任者、組合の代表といったピンシャー領の有力者が集まる中、富楽は民主派で行われている経済政策について話し始める。

 復権派の領で復権派の恩恵を受け取っている人達だからか、民主派の領で経済顧問をしている富楽に対してあまり快い感情は持っていない様で、表には出さないものの好かない人を見る様な視線が富楽に向けられていた。


「現在民主派は領民を政治参加させた上での経済政策を進めています。先ずは領民に政策の目的を伝え、どうすれば良いのかの意見を募り、それを元に政策を進めていくというもので、現場で働いている人達へのアンケート調査や役所に窓口を設ける等で領民の意見が政府に届く様にしています。ただ領民に自分の意見を出してくださいと言っても専門家でもない領民からすればどんな意見を出せば良くなるのか分からないので、そのままだと領民もいい加減で的外れな意見しか出せないのですが、どうすれば自分がお金を使う様になるのか考えてみてくださいだとか、どうすればより良い商品をより安定して生産出来る様になるのか生産者の視点から意見をくださいだとか、領民に説明する際、景気を良くするだとか生産性を上げるだとかの曖昧な言葉は極力使わない様にする事で知識の無い領民もどんな意見を出せば良いのか分かりやすくし、政府と領民双方が意見を交わせる環境を作り出しています」


 話し合いに参加している有力者達は、富楽の説明を聞きながら富楽が用意した資料に目を通していく。

 一通り資料に目を通した有力者の一人は質問を投げるために手を上げた。富楽は手を差し出して発言を促す。


「確かにペンブローク領では貴方の言う事を実現出来ている様ですが、私が調べてみた限り、実現出来ているのはせいぜいペンブローク領くらい。民主派の筆頭であるディバルさんのスパニエル領ですら、その政策が進められたのは最近の事。富楽さん。貴方は民主派全体の方針として政策を説明していますが、一部しか出来ていない事を全体の政策かの様に伝えるのは如何なものかと思いますが、そこはどうお考えですかな?」


「いやはや。お恥ずかしながら、この政策の方針はつい最近決まったばかりのものでして、方針が決まったは良いもののいまだ十分に広める事が出来ているとは言えません。ですが、スパニエル領でも順調に進めれており、他の民主派の領とも連携を深めているため、民主派全体での実現も時間の問題だと考えております」


 有力者の質問は批判的なものではあった。だが正論でもある。

 富楽の経済政策は民主派全体の方針と掲げていながら、その実ペンブローク領とスパニエル領くらいでしか実績が無い。そりゃあツッコミも入れてくるというものだ。

 しかし逆に言えば、それだけちゃんと調べた上で質問してきたという事。決して悪い傾向ではない。

 富楽は続けて手を上げた人に向けて手を差し出し、質問を聞く。


「民主派の考えは、政府が国民の声を聞く事で領民の働きやすい社会作りや生産性の向上に繋げるというものの様ですが、働きやすい仕組みや生産性の向上であれば復権派の領の方がより達成出来ていますし、労働者の意見を取り入れるという点でも復権派の領は結果を出せています。現場の意見を政治に生かす様な政治をしたいというのであれば、民主派の理念をより実現出来ている復権派でも良いのではないですか?民主派でなければならない理由があるのならお聞かせ願いたい」


 今度は就活の面接の様な質問。

 復権派の領で復権派の成果を享受している彼らにとって、なぜ復権派は政府主導で結果を出せているのに国民主導の政治を進めようとしているのか、当然気になる所だろう。

 予想通りの質問だ。富楽はスラスラとそれに答えていく。


「確かに、復権派はアルダートさんを筆頭に強いリーダーシップを持った領主が主導となって政策を決め、有力者と労働者をまとめ上げ、政府主導による経済政策を成功させています。労働者の意見を聞く場も用意されていて、領民の声が蔑ろにされているといった事もありません。ですが、それでも我々民主派が民主化を進める理由が二つあります」


「ほう」


「一つは民主化自体が間違っていた訳ではないという事を証明するため。ルプス連邦は民主化を進めた結果、適切な政策を行えなくなり、経済に混乱を引き起こしてしまいました。これは十分な準備もせずに民主化を進めたせいなのですが、その失敗のせいで、民主化は実現できない、国民に政治参加させるべきではないという考えを持つ人が増えてしまいました。ですが、我々民主派は民主化のための制度設計と教育を行えばルプス連邦での民主化は可能だと考えています。それを政治によって示し、民主化は実現可能である事を証明したいのです」


「ふむ。失敗によって失われた民主化への信用を取り戻したいという事ですな?」


 富楽は頷き、続けて語っていく。


「もう一つは、今の復権派の構造に少々問題があるという点です。復権派が有力者と領民を一つにまとめ上げる事ができたのは、優秀な人間に権限を集め、優れた政策を円滑に進めれる様にしたからです。ですが、この構造は優れた人間が権力を持つ事が前提のもの。確かに現在の復権派は優秀です。現状は彼らに任せていれば大丈夫と言って良いでしょう。しかし指導者は代替わりもするし、権力闘争に敗れる事だってあります。その時に優秀な人が居なくなったから何も出来なくなりましたじゃあダメなんです。政治とは、制度とは、優秀な人が居なくなったとしてもちゃんと機能する様に作らなければいけません。そしてそれは、優秀な人が居る時にやっておくべき事なのです。先のため、未来のために、国民はいかに政治に参加すべきかを伝え、国民主導による政治も出来る様にしておくべきだと我々は考えております」


 有力者の一人は情報を整理し、富楽に聞く。


「つまり民主派は、復権派と対立はしているものの敵視はしていないと?」


「はい」


 別の有力者が呆れた様子で言う。


「それにしては、民主派を支持する有力者や民主派の領主はこれまで散々批判意見を並べていた様ですがね」


 富楽はそれに面目ないといった態度で返す。


「これまたお恥ずかしい話しなのですが、復権派との対立路線を止め協調路線を進めようとなったのも最近の話しでしてね。これからの民主派は、支持を得るために対立構造を作るのではなく、協力し、強調し合いながら政策を進めたいと考えています。これまでの事で民主派を信用出来ないと考えている方々も多いかと思いますが、これからの民主派を見て、再度評価して頂ければ幸いです」


 そこからこれから進めようとしている政策についての質問にいくつか答えていき、その後の締めの挨拶によって今回の説明会は終わった。

 最初はあまり好かれていない印象であったものの、復権派を敵視する気はないという態度と、これから問題点を修正しますといった対応から、ある程度は印象も良くなった様に感じる。心なしか、参加者の表情がほがらかになっていた様にも見えた。


 説明会を終え、宿へと帰っていく途中、街中を歩きながらヴィヴィエットは富楽に話しかける。


「なかなかの好印象でしたね、フーさん。これなら民主派を支持してもらえる様になるんじゃないですか?」


 好印象に終わった説明会。それに期待に胸を膨らませるヴィヴィエット。

 だが富楽はあまり楽観的ではなかった。


「正直、これで支持を得るってのは厳しいだろうな」


 その答えにヴィヴィエットは腑に落ちないといった表情。


「えー?会場に居た有力者の人達、悪くないなって表情してましたよ?」


「まぁヴィヴィの言う通り、印象は悪くなかったよ。だが、それはあくまでこれまでの悪印象が多少解消されたに過ぎない。これまで民主派は支持を得る手段として、復権派が勝つと国民の権利が失われるだとか、権力者が好き勝手する様になるだとか、不安を煽る様な発表をして民主派を支持させる様に国民を誘導してきた。しかしピンシャー領で見てきた様に、復権派は一定の成果を出せている上に領民をないがしろにする様な事もしていない。復権派を支持する人達からすれば、民主派は成果を出せていないのに批判ばかりしているといった印象だったろう。今回の説明会では、そんな民主派の悪印象をある程度晴らす事に成功した。これまでは信用できないから話しも聞く気はないってなっていたのを、信用できないけど話くらいは聞いてやろうって所に持っていけたって所だな」


 ヴィヴィエットはウンウンと頷き、納得の表情に変わる。


「なるほどー。これまでマイナスだったのをゼロに近づけたって感じなんですね」


「あぁ。復権派が指示を得ているのは、民主派が結果を出せない中で復権派が結果を出し、経済の立て直しに貢献したからだ。民主派が復権派の領でやらなきゃならないのは失われた信用を取り戻す事。そのために先ずは話しを聞いてもらえる環境を作っていく。信用を得るのに近道をしようとすればかえって信用を失う事になるからな。こればっかりは地道にやるしかない」


「ですね!」


 とりあえず、富楽はこの調子で復権派の領を巡り、マイナスであった民主派への信用をゼロに近づけていく予定だ。ヴィヴィエットに言った様に、信用の回復に近道は無い。先ずは話しを聞いて貰える様、これまでの口先ばかりの民主派ではない事を伝え、デフォルトの状態で話しを聞いてもらえる様にしていく。そのために富楽は復権派の領を巡っていく事になるだろう。

 その後はこのルプス連邦の民主派領主の活躍次第となる。民主派の領主が失われた信用を取り戻す事ができればルプス連邦はこのまま民主化の道を進む事になるだろうし、できなければルプス連邦は一部の人間だけが権力を持つ構造に戻る事になるだろう。こればっかりは富楽が手を貸せるものではない。領主自身に頑張ってもらうしかないのだ。

 後は民主派の領主次第という事で、富楽は(後は貴方次第だ)とペンブローク領に居るメディナに思いをはせた。

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