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鳥籠姫と黒い翼の魔法使い  作者: 飛翔生姜
第七章 聖女か魔女か 運命の女
112/118

魔女たちの後日談





 この牢に繋がれてから、もうどれくらいになるだろう。さほど日数が経過しているとは思えないのだが、松明以外に頼るもののない地下では、時間の感覚が狂ってしまいそうだった。

 結界のせいで魔法がうまく扱えない上に、魔力の拘束まで受けてしまった。おまけに、牢の外の気配は遮断されるという念の入れよう。

(今日はまた一段と……)

 精霊たちが騒がしい。自分の紛い物の魔法(メロディア)には気づきもしていないようだ。

(立太式、だったか?)

 ノアリス王女に手ずから放り込まれた牢で過ごした日数を計算する。感覚が狂っていなければ、今日は国民にとって待ち望まれた、王太子公表の慶事だった。

「参ったなぁ」

 思わずため息がもれる。

 合流できなかったイアーーサズは、無事だろうか。自分と違い、前向きに、想う少女を迎えにいくのだと語った彼には、どうか幸せになってほしいと、ついつい気にかけてしまう。

(早く出ないと、またラミアに怒られる)

 気まぐれで我が儘な赤毛の同僚。イアを拾ってきたのも彼女だった。重症のイアを二人で世話するうち、よく三人で過ごすことも増えて。ああ、彼女も潜入班だったが、自分のせいで捕らわれてはいないだろうか。

(……ないな)

 断言できる。

 自分は鈍臭いし、イアも少々抜けた面を持つが、ラミアならちゃっかり逃げ切るだろう。寧ろ、彼女さえ無事ならお荷物な男二人もなんとか命を拾えるはずだ。

「待つしかないかな……」

 なんとも情けない話だが、現状のままではどうしようもない。

 こんな時、あの少女(いもうと)がいたら一体どれだけ罵られるか。

「無様ですね」

 そう、多分そんな風にーー。

「……え?」

 牢の前に、女が立っていた。

 豊かな銀の髪、白すぎる肌。さながら雪の女王のように。

「メ、ア」

 かつて殺めた最愛の恋人と瓜二つの姿見ながら、明確に違うのは瞳の色だ。

 あの落ち着いた紫色ではない。この女の目は夕暮れの色。

 そうだ、彼女(メア)は死んだ。

 自分が殺した。

 大切だったから、罪を重ねる前に、真っ白な冬の中で眠らせてやりたかったのだ。

 だから、目の前にいる、よく似た彼女の名は。

「ルー……シンルー、なのか?」

「はい。お久しぶりです、ロッドさん」

 10年ーーいや、11年ぶり再会だった。

「貴方を探してました」

「……知ってる」

 驚きの衝撃に体は依然として痺れている。それでも、言葉は自然と口から溢れ落ちた。

「俺を調べ回ってる銀髪の女がいると、仲間から聞いていた。やっぱり君だったか」

「ええ。ですが、残念ながら私だけでは貴方に辿り着けなかった。私も、仲間の手を借りたのです」

「仲間……?」

 本来ならとても嬉しい言葉のはずだった。姉を守ることが使命であると信じて疑わず、狭い雪の村で孤独に戦っていた少女が、誰かを頼れるようになったのだから。

 それなのに何故、こんなにも胸がざわめくのか。

「その、仲間って」

「僕たち“星空の宴”だよ」

 シンルーの後ろから、癖の強い茶髪の少年が顔を出す。小柄な体躯に、音が鳴りそうな量のピアスが目を引いた。

「……なんだって?」

「奇縁ですね」

 敵対組織の名に、耳を疑う。そんなロッドに答えたのはシンルーだった。淡々と続ける。

「私から姉さんを奪った仇のくせに、憎ませてもくれない酷い人」

「まだ俺にすがりたいのか? お仲間が聞いて呆れる」

「その分かりやすい義悪的な態度も、いい加減に飽きましたよ」

「………」

 相変わらず辛辣で毒舌だった。夕日色の眼差しが、反して故郷の雪の村を思わせるくらいに冷たく感じられる。

「……あなたが来る前から、姉さんは村人たちを恨んでいた。そして、私を愛しながら、だからこそ私を殺したがっていることも、私は知っていた」

 自分の知らない話に、ロッドは瞠目する。

「貴方は被害者です。私はあの日、間違えた。一時の慰めになるならと、姉の我が儘を受け入れてしまったんです。そのせいで、貴方は無用の罪を犯してしまった」

「なにを……」

「迫害され続ける日々の中で、姉はもう既に人格が破綻していた。だから、遅かれ早かれ村の人達を……」

「村を焼いたのは俺だ! メアじゃない! そのメアだって俺が殺した!」

 被せるように叫んだ。

 聞きたくないし、言わせたくない。

 シンルーは知っているというのか、真実を。

 それならあの日、彼女を振り払ったことの意味は? 

「村人を一人一人、埋葬したのは私です!」

 シンルーも格子を掴み、叫んでくる。

「彼らの身を整える時、傷を見た。どれも氷の魔法痕や、女の背格好でないと与えられない位置だった!」

 雪女の村と呼ばれるかの地で、氷魔法はさほど脅威にはならない。村の誰もが扱う魔法であり、皆に耐性があるからだ。

 例外があるとすればーーそれは、並みより強い魔力を持っていた場合。

 シンルー達の家は、もともと敬遠されていた。その理由は簡単で、彼女たちアーゼ家が代々濃い魔力を持っているから。シンルー本人に至っては赤眼であり、その姉メアの魔力もまた強大なものだった。

 対して、ロッドは希少魔法こそ扱えるが、魔力の量も質も姉妹には劣る。ロッドに村人全員を殺して火をつけるまでのことは、そもそも技量の問題として不可能なのだ。

「きっと姉さんは、最後に私を殺そうとしたんじゃないですか」

 絶句するロッドに、シンルーが震える声で問う。

「だから、貴方は姉さんを殺すことで救った。私の命も守った。……違いますか?」

「訂正がある」

 言いたくない。

 だけど、もう隠すことに意味があるのだろうかと考えてしまった。寧ろ、真実を話さなければ、自分は永遠にメアを独占することになる気がした。

 全て伝えてこそ、シンルーにたった一人の家族(あね)を、還してやれる。

「あの事件の前に、メアは薬物を投与された。そのせいで、理性の箍が外れた。確かにお前の姉は全てを恨んでいたし、お前には矛盾した感情を抱いていたけど、不器用ながら必死に慈しんでいた」

「そんな当たり前のことは知ってます」 

 さらりとシンルーが応じる。ロッドはげんなりだ。

 殺したいほど妹を可愛がっていた(メア)と、殺されてもいいから姉を守りたいと思っていた(ルー)。似た者同士だと嘆息する。姉妹愛(シスコン)もここまで来ると拍手したい。

「でさ、その薬物(ドラッグ)についてなんだけど」

 茶髪の少年がひょい、と牢に歩み寄ってくる。シンルーよりもまだ幼い。というか、彼本人が童顔だ。

「やあ、僕はリオン。“星空の宴”だよ」

「……ルー。頼む、今からでも抜けてくれ。俺がどこに属しているか、もう分かっているんだろ? 俺は君の敵になりたくないんだ」

 リオンから目をそらし、シンルーを見つめる。しかし、彼女には微塵の動揺もなかった。

「故郷を出た後、レイラという婦人が幸運にも私を拾ってくれました。だけど、この容姿のせいで一つ所にには留まれません。そこに声をかけてくださったのが“星空の宴”であり、かの国の女王陛下です。裏切ることなどできません」

「ルー。君になら殺されても構わない。それは本当だ。だけど、それでもまだ死ねない。やり残したことがあるんだ。だからっ……」



「ーーお母様への復讐、というわけではなさそうですね」



 静かなのに、よく響く声だった。

 もう一人いたのか、と驚く反面、そういえば、と思い出す。

「そういえば、ノアリス王女も似たようなことを言っていたな」

 現れたのは、あまり見ない顔立ちの娘だった。一昔前は見世物として、高額奴隷の代名詞でもあった東洋人の風貌。

 いや、それ以上にーー。

「君、歌手のヒルダに似てる……?」

「姉さんというものがありながら、(わたし)の前で他の女性を口説くのですか」

「違う違う! 東洋人が珍しくて!」

 一応、自分たちは敵対者同士のはずなのだが、いまいち空気が緊迫しないのは何故なのだろう。

「えっと、俺の母親もそちら側にいるのか?」

 揃いも揃って言及される母親の存在に、その実ロッドはさほど興味がない。恋人の仇討ちをおいて、一体何をなせというのか。

 確かに、ノアリスと親しい関係なら、腹いせに彼女の前で惨たらしく殺してやろうかと思ったのは事実だ。しかし、逆にいえば個人的な関心がないのだ。

 だから、今更シンルーまで巻き込んで話をする必要も感じていない。

「僕と黒髪の彼女は、あんたの母親に育てられたんだ」

 神妙な顔で言ったのはリオンだ。その静かな告白に、ロッドの返事は淡白そのものだった。

「ふうん」

 そうなのか、という程度の感想しかわかないのだから、他に何もない。寧ろ、だから何だと言わなかっただけ節度を弁えていたと自負できる。

「私はサーシェスです。……あなたから母親を奪っていたのに、憎くないんですか?」

「檻の中の囚人に聞く言葉としては、少し悪趣味だとは思う」

 ロッドの皮肉に、黒髪の娘ーーサーシェスが顔を曇らせる。

「……すみません」

「謝ってくれるなら、今すぐルーを君たちの組織から脱退させてくれ」

「嫌ですよ」

 即座に切り返すのはシンルー本人だ。

「あなたが“黎明の騎士団”を辞めればいいじゃないですか」

「……それは無理」

「姉さんに薬を盛った輩が、そこにいるからですね?」

 ……いつか、イアについて嘘が下手だと評したことを謝りたい。自分の方がよっぽど間抜けだった。

「そりゃあ、気づくか」

「それ以外にあなたが件の組織に執着する理由が思い付かないんですよ。実母にさえ興味を持たないあなたが、そこまで拘るのは、きっと姉の死が関係してるんだって」

「……」

 ロッドは目を伏せた。まったく、自分の間抜けさが恨めしくなる。

「黙秘ですね? いいですよ。残念ながら、あなたの命はもう、私がトロナイル王室から買い取ったので、私のものですから」

「……え?」

 ぎょっと振り向けば、シンルーがニヤリと笑っていた。ああ、こんな悪女のような笑い方ができるほど大人になったのだと、妙なところで感心してしまう。

「買ったって……ど、どうやって!? 詐欺とかにあってないか!?」

「心配するところがそこですか」

 あきれたように、シンルーが言った。

「トロナイルの次代の王の元で働く。それだけが条件です」

 ルー姉、ルー姉。

 出会ってからずっとそう呼んできながら、甘えてくることは一度もなかった(ジャス)

 それは嬉しくもあり、少し寂しくもある選択だった。だけど、これ以上もないのだ、お互いに。

「さあ。これで、あなたは私のものですよ」

 この国の王太子に思いを馳せつつ、シンルーは悪役そのものの笑顔と台詞を、ロッドに向けたのだった。

















 ヴェーズリーズ郊外、ヴァレンティノア公爵家の別邸。

 その高い身分と広大な敷地に反して、この屋敷は人が少ない。主の意向で、使用人の数も限られている。唯一の嫡子であるシリウスが病弱で、やや神経質なきらいがあるためだ。

 華やかな王都の喧騒から離れたここは、夜空の月と星、豊かな緑と咲き誇る花が彩る、妖精の園のようだと、リアは思う。

 が。

「いくらなんでも大勢で押し掛けすぎたんじゃない?」

 チュニアール使節団のほぼ全員に加え、ガストロイヤ連邦からセトまで引っ付いてきた。

 そしてーー。

「だって仕方ないです。強化された結界に、私はどうしたって影響を与えてしまいます」

 ぷん、と頬を膨らませてみせるのはリーシャだった。なんだか、随分と久しぶりな気がする。離れてから、ほんの数日しか経っていないのに。

「べ、別にリーシャが悪いって言いたいんじゃないからね!?」

 王城は強化された結界があるから無理、王都にも特殊な結界があるからシンルーはともかくリーシャに長期滞在はつらかった。かといって【星空の宴】の隠れ家も、今このタイミングで戻るのは組織の意向として不可。ならば郊外に、ということで、ジャスが懇意にしているヴァレンティノア公爵家を頼る形になった。

「わかっていますよ。ふふ、ちょっとした意地悪です」

 青にも緑にも見える不思議な碧眼と、淡く光を放つ金の髪。

 ここ数日での疲労を癒すかのような慈愛深い笑みに、リアは胸がつまった。

「もう」

「ごめんなさい。……でも、こうしてみると、本当に賑やかな世界になりましたよね、私たち」

 二人がいるのは、ヴァレンティノア邸の庭園だ。人様の家だというのに、皆いつも通りに騒いでしまっている。

 だが、それが我ながら不思議なくらい、心地よくて。

「随分と遠いところまできたものね」

 あの日から。ーーあの夜の出会いから。

 リアもリーシャも、それぞれ“彼ら”との出会いがなければ、今頃は死んでいてもおかしくはなかった。

 そんな共通の認識があるから、お互いにすぐ打ち解けて、親友にもなれたのだろう。

「きっと、リアの道はまだまだ先まで続いてますよ」

「それを言うならリーシャだって同じでしょ」

 縁起でもないことを言うなとばかりに口を尖らせた時だった。

「あ、お姫様と天使様。ここにいたんだ?」

 ヴァレンティノア公爵と話していたヒルダが、挨拶を終えたのか近づいてきた。天使様、というのは勿論リーシャのことである。

「どうしたの?」

 何か用事だろうかと首を傾げるリアに、ヒルダはこっくり頷く。

「殿下が探してたよ。話したいことがあるんだってさ」

「まあ、それは!」

 リーシャが明るい顔をリアに向けた。

「良かったですね、リア。ジャスに会いたくてトロナイルまで来たのに、結局まだまともに話せてなかったのでしょう?」

「う、ん……」

「殿下は今はシリス様の部屋だけど、またこっちに戻るって言ってたよ」

 ヒルダとリーシャの優しい笑顔を直視できない。

 ジャスとは、確かに話したい。色んなことがたくさんあって、事態は予想外な方向へと、転がり続けている。チュニアールで、トロナイル王室の始祖が件の魔女であることを、ルフィスから聞いただけでも動揺したのに、実際の魔女はジャスの先祖ロゼッタではなく、彼女が政争により陥れられ、処刑されると聞いた隣国の聖女、つまりはリアの先祖ステラこそが、親友に惨い最期を与えた全てを憎み、虐殺を行ったのだいう。

 このままでは各々に内紛と王家転覆の危機を孕んだまま、 両国間の戦争になりかねない事態だった為、当時の指導者たちにより、情報操作が行われた。もともと、情報伝達の手段が乏しかった為に、民が噂する【真実】より早く、お上の【嘘】を各地に広めるのは、そう難しいことではない。

 まずトロナイル王国は、ステラの行いをロゼッタの仕業にすりかえた。

 悪行の報いとして魔女(ロゼッタ)を処刑したと、真実を原因と結果に分解して、都合よく組み換えたのだ。

 二人の共通点であり、当時からさほど多くなかった赤眼も、重要な特徴であり象徴になる。

 こうして長い時間と手間をかけ、口伝や書物さえ書き換えて、トロナイル王国は魔女による破壊から始まる国物語を創った。

 そして帝国はーー当時は多くの国が覇権を争っていたーーこの失態を絶好の機をいわんばかりに、ステラの故郷マギル王国を併呑した。七皇六帝時代の終わりの始まりでもある。

 マギル王国は国土こそ小さいが実り豊かな国であり、有能な魔導師を多く輩出しており、その筆頭こそ、マギル王家の末娘ステラだった。

 目障りなステラを無力化し、肥沃な土地まで手に入る。帝国からすれば、こんなに旨い話はない。マギル王国としても自国だけではトロナイルと対等に渡り合えるはずもなく、他国へ無断で侵略した女王を売り渡すことに、さほど抵抗はなかっただろう。

 ステラが帝国に身をおいたのは、単なる政略結婚であり、マギル王室はその後に衰退していったのだと聞いていたリアは、その真実にしばらく放心していた。

 滅んだ王家の末裔が、他国を民を虐殺した魔女の子孫が、この自分なのだと。

(……何故かしら)

 ひどい話だと思う。それなのに、リアはどうしてもステラを責めることができない。

 だって、もしーージャスが無実の罪で理不尽に処刑されると聞き、慌てて駆けつけた先で惨い最期を見せつけられたら。

 ーー果たして自分は、何も憎まず、誰も傷つけず、激情を抑えられるだろうか。

 ……こういう風に考えてしまう自分は、やはりステラの末裔なのだろう、と自嘲した時だった。


「こんばんは」


「……はい?」

 綺麗な身形の子どもが、自分の横に立っていた。きらきらした目で見上げてくる。

「え、えっと……」

 リアには弟はいても、関係は冷えきっていたし、そもそも閉鎖的な環境で育ったので子守りの勝手も分からない。というか、見も蓋もないが、正直リアは子どもが苦手だった。

「ありゃ、シリス様」

「こんばんは、ヒルダおねぇさん」

 シリスと呼ばれた子どもは、にっこり笑った。リアもリーシャも、目を丸くする。

「じゃあ、こちらがジャスの従兄弟様ですか?」

「はい! シリスです」

「初めまして。私はリーシャです」

 子ども好きなリーシャはにこやかに挨拶しているが、リアは対応に困って固まってしまう。

 というか、シリスがここにいるということは。

「シリス、人が多いんだから、あまり動き回るんじゃない。ぶつかって転んだらどうする」

「ラズお兄様!」

 シリスが満面の笑みで名を呼び駆け寄ったのは、リアが今まさに思い浮かべた人物だった。

「やあ、殿下。お姫様ここにいたよー」

 つい黙り込んでしまうリアを見兼ねてか、ヒルダがいつもの調子で軽く手を振る。

「見たら分かる。……じゃあ、悪いけど。ヒルダ、シリスを頼む」

 ヒルダとシリスにはかなりの信頼関係があるのだろう。二人は何の不満も無さそうに手を繋ぎ、リーシャも交えて和気藹々と話し始めてしまった。

「リア」

 その光景に呆気にとられていたリアだったが、名前を呼ばれ、思わず肩が飛び跳ねた。

 振り向いた先では、先程までシリスに向けていた優しい表情を消したジャスが、掌を差し出している。

「話があるんだ」

 ーーこの真っ直ぐな眼差しを受けて、断れる人間なんかいるのだろうかと、ぼんやり思いながら、指を載せる。

 その手の大きさと熱に、全く今更の気恥ずかしさを覚えたのは、なんとなく秘密にしようと思った。










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